借地権の境界

■土地の境界があるように借地権にも境界があります。厳密に言うならば借地権の効力の及ぶ範囲と言うことになります。この問題点としては、土地の隣地境界の確定等において、地主の境界確認書で分合筆が実務上、可能であり借地権者の同意不要であることです。土地の境界と借地の効力の範囲は同一でなければおかしいのですが、お互いの認識の違いにより同一では無いケースも考えられます。それを防ぐには、貸主より借地権者に対して説明により理解をしていただくことが重要と思われます。測量士の方のなかには、少数ですが立会いを借地権者に任意で求める方もいらっしゃいます。ただし、借地権の設定の登記がされていることは、極めて稀であり公的書面での確認ができない為、現状では貸主側にて注意をしないと把握ができません。トラブルのケースとして、借地権者に確認を怠り貸主の判断のみで同一人所有地の貸地境を決めてしまい、紛争になることも実例としてあります。結果として、貸主・借地権者及び借地権者同士の争いとなってしまい、測量士を交え解決つかぬ問題になってしまうことも少なくありません。借地権者に、通知する等の手段も必要と考えます。

相続人の確定  

■相続が発生しても、相続税を支払う必要が無い場合、申告義務が無い為、故人名義のまま遺産分割協議及び相続登記をしていない例が多く、見受けられます。貸主側は多くの場合相続納税義務者になる為、土地所有者の名義が変更されています。借地権者は結果として放置していることが、大変多いのが現状です。放置をしていても、さほど日常生活に不便が無い為と思われますが、借地権も財産であり、承継者の特定を明確にし、貸主に対して報告するべきものと考えます。トラブルのケースとして、離婚・譲渡等で承継者が多数いることが発覚して名義変更に数年かかってしまった。場合によっては名義変更ができないことも少なくありません。承継人が決定している場合は遺言の作成をお勧めします。相続が発生したら、速やかに相続承継作業を、すべきことがトラブルの防止につながります。

無道路地

■古くからある住宅地は、借地権が設定されてしまっている多くの土地が存在します。その為、建築基準法の施行前より存する貸地の多くは、無道路地になってしまっており、借地権者の建物が建立し相当数の時間が経過しているのが現状です。既存不適格と呼ばれ、接道要件に満たさない為、建替え時等の建築確認がおりません。正攻法では、どうにもならないのが現状です。また、借地権者のみならず 貸主側も、接道要件が満たさなければ有効利用等も困難です。相続評価においても、減額はされるのですが、実勢と合わない評価となってしますケースが多いようです。借地権者・貸主ともに、非常に解決の難しい課題と言えそうです。

借地権・底地の共有

■借地権・底地とも相続承継により借地権の数人での共有、底地の同じく共有になってしまうことは、少なくありません。しかしながら実務上、所有権の共有にも言えることですが、維持・管理が共有者の意思統一のなかで、大変困難なものになることが多々見受けられます。貸主の方は他の資産の状況により、単独名義にもできることが可能な為、(交換等)まだ解消の余地はあるのですが、借地権者の方は、自宅にしている借地権のみの固定資産(土地・建物)の方が大半で、分割協議による借地権の単独名義にしている方が少なく、実態上、借地権の共有はめずらしくありません。持分に応じて現金を要求されることもあり、上記で述べた様に維持・管理上好ましいものでは無いものと考えます。借地権者の方は特に共有の状況をまねかないよう、遺言等の対策が望まれます。

資産の劣化

■借地権・底地とも言わずと、資産としての価値は、所有権÷権利割合とは限りません。特に借地権者の方でいつでも、借地権の権利割合分を貸主が買い取ってくれると思いこんでいる方もいるようです。言いすぎかも知れませんが、実務上の資産性は借地権・底地とも大変厳しいものと考えられます。不動産鑑定等による理論値とかけ離れて取引されることが多いようです。借地権の資産価値は、貸主の考え方で大きく左右されます。底地についても単独では一般流通できるものではなく、借地権者が買い受ける以外での売却は底地買受業者に限られ、所有権価格の10分の1ないし2程度で取引されているのが現状です。

長期契約

■旧法借地権による借地契約は最低で20年ともなる長期の契約です。借地権者・貸主ともに契約当初とおなじ状況で契約満了を迎えるとは限りません。貸主、借地権者・貸主双方、承継もしくは承継と同等の状況になっていることも良くあることです。お互い意思疎通ができる時は良いのですが、契約状況を承継者等に、いつでも把握できるよう契約の変更を証する書面等を作成すべきが望ましいと考えます。先代の時の口約束が稀に借地権の紛争に発展することもあるようです。