ハマスの攻撃を奇貨としたイスラエル・ネタニヤフ政権が開始したハマス撲滅を呼号する無差別作戦は、多大な人命喪失(最近のハマス側発表では25000人以上)とガザ地区の多くの瓦礫化、そしてガザ地区住民(230万人)の大半が難民化するという大惨事を生み出しています。ネタニヤフ政権のハマス撲滅作戦を全面的に支持(武器供与を含む)するアメリカ・バイデン政権は、国際世論の非難に直面して、ピンポイント作戦に切り替えることをネタニヤフ首相に要求すると共に、エジプト、カタールなどを… 

昨年(2023年)12月6日付の人民日報海外版が、私の敬愛する陳映真に関する文章を掲載しました。陳映真夫人・陳麗娜が中国現代文学館に寄贈した彼の資料の贈呈式兼陳映真研究計画始動式が行われたことを紹介するものです。主催は中国作家協会、中国作家協会港澳台弁公室と中国現代文学館が担当して行われたこの会合には、中国と台湾の学者30人余が出席し、彼を追憶し、記念するとともに、彼の文学精神の研究、伝承に関して研究討論を行ったことが紹介されています。陳麗娜夫人が述べた(と紹介されている)発言は、今回の催しの意義を… 

 12月7日のコラムで、ロシア・ウクライナ戦争は今後どのような形で終結に向かうことが考えられるか、そのことは今後の国際関係にいかなる影響をもたらすだろうか、について次のコラムで考えると述べました。このように述べた背景にあったのは、ウクライナの反転攻勢失敗後、米西側から出されるようになった様々な提言・提案でした。しかし最近、プーチン・ロシアがあくまで初志貫徹の構えであること(特別軍事行動発動の3目標は不変)を再確認することにより、米西側の諸提言・提案が…

11月1日付けのエコノミスト誌は、ウクライナ軍総司令官であるザルジュヌイ将軍とのインタビュー発言を掲載しました。喧伝された反転攻勢が成果なく、対ロシア戦争は膠着状態("stalemate")に陥っており、先行きも明るくないとする悲観的見解は、失地全面回復まで戦争をやめないと言い続けるゼレンスキー大統領の立場・姿勢を根底から揺るがす「爆弾発言」として、西側メディアがこぞって注目するところとなりました。日本のメディアがほぼ黙殺しているのは、ノルドストリーム爆破事件に続く異様な偏向報道姿勢の今ひとつの証左… 

  私は、NK問題の調停役としてOSCEミンスク・グループ(MG)という国際的に公認された調停役が存在するにもかかわらず、実際にはMGに加わってもいないEU(EU理事会のミシェル議長)が調停役としてパシニャン首相及びアゼルバイジャン・アリエフ大統領との直接交渉に当たってきたこと、また、パシニャンとアリエフが最近までミシェルの調停に「素直」(?)に応じてきたことに違和感を覚えました。EU(及びアメリカ)の調停については、…

コーカサス山脈の南側に位置するジョージア、アルメニア及びアゼルバイジャンの3ヵ国は、モスクワ在勤時代に訪れてみたいと思いながら果たせなかった魅力を感じる国々です。それだけに、2020年9月に起こったアルメニアとアゼルバイジャンとの間の軍事衝突にショックを受けるとともに、戦争勃発の原因(ナゴルノカラバフ問題)について理解したいと思い、それ以来、関連情報をファイルしてきました。本年(2023年)9月19日にアゼルバイジャンがナゴルノカラバフ(以下「NK」)を全面支配する軍事行動を決行したことで大勢が決した感があります。この機会にNK問題の歴史的経緯特に国際的含意について理解を深めてようと思い立ち、溜めてきたファイルを…

「東方外交」にシフトを切ったロシアにとって、シベリア・極東の経済開発は重点中の重点国策の一つであり、極東・シベリアと朝鮮との経済関係を発展させることはロシアにとって重要課題の一つであることは疑いの余地がありません。したがって、安保理制裁決議の「縛り」から朝鮮を解放することは、露朝経済関係の発展を展望する上での大前提です。
 しかし、ロシアは中国とともに制裁決議成立を主導したアメリカに同調した「共犯者」であり、制裁決議はロシア(及び中国)の今後の朝鮮政策に対する「縛り」にもなっています。金正恩の今回のロシア訪問において安保理制裁決議問題はどのように扱われたか。私の関心が…

8月10日の実質合意を経て、9月18日にイランとアメリカは「捕虜交換」(本質は、限られた金額の在外イラン凍結資金へのアクセスとイランの核活動自粛のバーター)に関する取引(以下「捕虜交換取引」)を完成しました(9月25日「コラム」)。アメリカのメディアを含め、これがきっかけとなって、2018年にトランプ政権が一方的に脱退したイラン核合意(JCPOA)の復活のための国際交渉が再び開始されるのではないかとする希望的観測を行う向きもあります。しかし、結論から言えば、交渉本格再開の可能性は限りなく小さいと言わざるを得ません。第一に、イランとアメリカの相互不信は極めて強く、…

9月18日、ホワイトハウスは「5人のイラン人に対する恩赦及びイランの制限付き口座への60億ドルの移転を見返りとして、イランに拘留されていた5人のアメリカ人が解放された」と発表しました。
私が、今回のイランとアメリカの第三者(主としてカタール)を介した間接交渉の経緯を追いながら連想したのは、朝鮮半島非核化をめぐるいわゆる6者協議でした。米伊間の今回の交渉が曲がりなりにもまとまったのは捕虜交換とイランの凍結資産解除という限られたテーマに関してであり、イラン核合意(JCPOA)の復活といういわば本命に関しては、米伊の相互不信は根強くかつ強烈なものがあって、この本命を切り離したからこそ… 

近刊(三一書房)のご案内

新年のご挨拶(コラム)の中で触れましたが、年明けからほぼ4ヶ月余をかけて取り組んできた原稿がある程度形をなし、出版の目途が立ってきましたので、ご案内を始めることにしました。

新著のタイトル(まだ確定ではありません)は、『日本政治の病理診断 -丸山眞男:執拗低音と開国-』です。出版社は三一書房、刊行予定日は8月15日です。「私の考えを本にまとめてみないかというお誘い」(1月1日コラム)に即し、今のところ、以下の章立てとなっています(編集過程で変更があるかもしれません)。

一 個人的体験
(一)「執拗低音」との出会い
(二)外務省勤務時代の体験
(三)大学教員時代の体験
(四)外務省の「親米」体質
(五)歴史教科書検定と中曽根靖国公式参拝
二 執拗低音
(一)丸山眞男の問題意識
(二)石田雄の批判
三 開国
(一)丸山眞男の日本政治思想史の骨格
(二)「開国」の諸相
四 「普遍」と「個」
(一)「普遍」
(二)「個(尊厳)」
五 日本の「開国」への道のり
(一)精神的「開国」
(二)物理的「開国」
(三)強制的「開国」
六 21世紀国際社会と日本
(一)21世紀国際社会について正確な認識を持つ
(二)国際観を正す
(三)「脅威」認識を正す
(四)国家観を正す
(五)国際機関に関する見方を正す