「まえがき」から著者のことばを引用する。
本書は代数的整数論において不可欠の基礎知識である代数体の理論を,近代的視点から検討し,配列構成しなおして記述したものである. しかし,入門書という性格を考慮して,あまり極端な表記法の変更は避け,できるだけ普通にみられる形におさめるようつとめた.(後略)
演習問題はない。
私は頭が弱いので、本書の内容がわからなかった。
本書には図がほとんどない。かろうじて、可換図式が p.6 で説明されたのち、p.27、p.30、p.62 などに出てくる。グラフはない。
用語が味わい深い。p.3 から引用する。集合 `M` から集合 `N` への写像 `f` について、次の説明がある。
`f(M)=N` のとき `f` を上への写像または全写、`a, a' in M` が異なれば `f(a) != f(a')` であるような写像を単写という. `a in M` をそれ自身にうつす写像を `M` の恒等写像といい,`i d_M` または `i d` と記す.
今なら全写を全射と、また単写を単射と記すだろう。ところがどっこい、pp.3-4 の例題 1 はこうなっている。
例題 1i) 集合 `M` から `M` へ全写 `delta` が `delta @ delta = delta ` を満足すれば `delta = i d_M` である. ii) また,`M` から集合 `N` への全写 `f` および `N` から `M` への写像 `g` があって,`g @ f = i d_M` なら `f @ g = i d_N` である.
解 i) `x in M` について `delta(y) = x` とすれば,`delta(x) = delta @ delta(y) = delta(y) = x`. ii) `f @ g @ f = f @ (g @ f) = f` が全射だから `f @ g` も全射.一方 `(f@g) @ (f@g) = f@(g@f)@g = f@g` .故に i) より `f@ig = i d_N`.
おいおい、全写なのか、全射なのか、どちらなんだろう。索引には、「全写」、「単写」のみが載っている。念のため、同じ基礎数学シリーズの他の本を調べたが、 位相数学入門でも、 微分解析幾何学入門でも、「全射」「単射」である。
用語ということでは p.205 に出てくる「テンサー積」もかっこいい。
数式表現は ASCIIMathML を、数式表現はMathJax を用いている。
書名 | 整数論入門 |
著者 | 久保田富雄 |
発行日 | 昭和 50 年(1975 年) 4 月 15 日 3 版 |
発行元 | 朝倉書店 |
定価 | 1700 円(本体) |
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その他 | 川口市立図書館で借りて読む |
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