極私的関数解析:用語集 |
作成日:2013-01-23 最終更新日: |
用語は順に日本語、エスペラント、英語である。
以下、係数体としては、実数体 `RR` あるいは複素数体 `CC` のみを考える。`RR` または `CC` を表す記号として `K` を用いる。
コンパクトな距離空間 `S` 上の連続関数の列 `{f_n}` が `S` 上で一様有界かつ同程度連続ならば、 `{f_n}` は `S` 上で一様収束する部分列を含む。
アナイアレーターとは、ヒルベルト空間の任意の部分集合の直交部分空間のことをいう。 アナイアレイターとつづることもある。日本語では零化域と訳されることがある。
`X` をバナッハ空間とする。 `X` が閉部分空間 `X_1, X_2` の代数的直和になっているとする。すなわち、`X = X_1 o+ X_2` が成り立っているとする。 このとき、`X_1, X_2` は互いに他の位相的補空間という。
コンパクトな距離空間 `S` 上の連続関数列 `{f_n}` が `S` 上で一様有界であるとは、 `x, n` に関係しないある正数 `N` により `abs(f_n(x)) le N, AA x in S, AA n` が成り立つことをいう。
`(X, d)` を距離空間、`x in X, epsilon > 0` とするとき、 `X` の部分集合 `B(x, epsilon) := {y in X | d(x, y) < epsilon}` を 中心 `x` 、半径 `epsilon` の (距離 `d` に関する)開球と呼ぶ。参考:近傍
可測空間とは、空でない集合 `Omega` とその部分集合からなるある集合族 `F` について `F` が次の条件をみたすときの組 `(Omega, F)` のことをいう。
可測集合とは、可測空間 `(Omega, F)` における `F` の要素の集合をいう。
ノルム空間 `X` が可分であるとは、 `X` の部分集合 `M` で次の条件 i. ii. を満たすものが存在することである。
すなわち、`X` の中の可算集合 `M = {f_1, f_2, cdots, f_n, cdots}` を選んで、 任意の `u in X` が `M` の触点になるようにできることである。
`{e_n} sub H` を有限または可算個の点からなる正規直交系とする。 すべての `e_n` に対し `(x, e_n) = 0` を満たす `x in H` が `x = 0` だけであるとき、 `{e_n}` を完全正規直交系という。 CONS と略される。
完備とは、距離空間についてのある種の性質をいう。 距離空間 `M` が完備であるとは、 `M` 内の任意のコーシー列が `M` に属する極限を持つ、すなわち任意のコーシー列が収束することをいう。
`T in B(X)` とする。ある `S in B(X)` が存在して、
`TS = ST = I` (ここで `I` は恒等作用素)
となるとき、`S` を `T` の逆作用素と呼び、`T^(-1)` で表す。
ノルム空間 `X` から `X` の係数体(実数か複素数)`Y` への有界線形作用素の全体を $ \mathcal{L}(X, Y) $ で表す。このとき、 $ \mathcal{L}(X, Y) $ は `X^**` と書かれ、`X` の共役空間と呼ばれる。
共役空間とは別に双対空間 (dual space) という用語もある。両者を同一の概念とする流儀と別の概念とする流儀がある。
`H` をヒルベルト空間、`x, y in H` とする。`H` から `H` の有界線形作用素全体を `B(H)` で表す。このとき、ある `A in B(H)` が存在し、 `(Tx, y) = (x, Ay) quad (x, y in H)` を満たす。この `A` を `T^**` で表し、`T` の共役作用素という。すなわち、`(Tx, y) = (x, T^**y) quad (x, y in H) `
集合 `X` が距離空間であるとは、`X` の 2 点 `u, v` に対し、距離関数とよばれる非負実数値関数 `d(u, v)` が与えられていて、 距離関数が次の距離の公理を満たすものをいう。
しばしば距離空間 `(X, d)` と書かれる。
`(X, d)` を距離空間、`x in X, epsilon > 0` とするとき、 `X` の部分集合 `B(x, epsilon) := {y in X | d(x, y) < epsilon}` を `x` の `epsilon - ` 近傍と呼ぶ。 参考:開球
`X`, `Y` をノルム空間、`T in B(X, Y)` とする。 `T` がコンパクト作用素であるとは、`T` による `X` の単位球の像が `Y` の中で全有界であることをいう。
作用素とは、関数空間上の変換、すなわち関数を別の関数にうつす写像をいう。 特に、関数解析学におけるヒルベルト空間上の線形写像のことを指す。
`H` をヒルベルト空間、`x, y in H` とし、`H` から `H` の有界線形作用素全体を `B(H)` で表す。また、`T in B(H)` の共役作用素を `T^**` とする。 このとき、`T^** = T` であるとき、`T` を自己共役作用素またはエルミート作用素という。
`H` をヒルベルト空間とする。`M` を `H` の閉部分空間とする。このとき、`H` の任意の元は一意的に `x = z + y, z in M, y in M^(_|_)` と分解される。 これを射影定理とよぶ。
`X` を `K = RR or CC` 上のノルム空間、`X^**` をその共役ノルム空間とする。`X^*` は `X` から `K` への写像の族なので、 `X^**` により `X` 上の逆位相が定義される。これを `X` の弱位相といい、`sigma(X, X^**)` で表す。
Banach 空間の点列 `{x_n}` が `x_0` に弱収束するとは、`x_0` の弱位相での任意の近傍 `V` に対して `n` が十分大ならば `x_n in V` となることである。
点 `x` が集合 `A` の触点であるとは、任意の `epsilon > 0` に対して開球 `B(x, epsilon) nn A != O/` となっていることである。
`T` をバナッハ空間 `X` における閉線形作用素とし、`rho(T)` を `T` のレゾルベント集合とする。 `CC` における `rho(T)` の余集合を `T` のスペクトルといい、 `sigma(T)` で表す
点列 `{x_n} in H` は、すべての `m != n` に対して `(x_m, x_n) = 0 `をみたすとき、直交系であるという。 さらに、すべての `n` に対し `norm(x_n) = 1` がなりたつとき、`{x_n}` を正規直交系 (ONS) という。
係数体 `K` の線形空間 `X` が線形位相空間であるとは、`X` に位相が導入されていて、それに対して和やスカラー倍の演算が連続になっていることをいう。
すなわち、
`{((x"," y), |->, x + y) , (X xx X, ->, X):} quad {((lambda"," x), |->, lambda x) , (K xx X, ->, X):}`
が連続になるということである。
線形空間とは、抽象的なベクトル空間のことである。 `X` が線形空間であるとは、`X` に属する任意の要素どうしの加法、 および `X` の要素にスカラーとよばれる数を乗じるスカラー乗法が定義されている空間をいう。 なお、線形のかわりに線型と表記することもある。
`X` 、`Y` を係数体 `K` のノルム空間とする。 `X` から `Y` への作用素 `T` が、`D(T)` が `X` の部分空間であり、かつ次の条件を満たすとき、 `X` から `Y` への線形作用素であるという。
`{(T(x+y) = T(x) + T(y), (x, y in D(T)) ), (T(ax) = aTx , (a in K, x in D(T)) ):} .`
`X` を `K` 上の線形空間とする。写像 `f : X -> K` が線形性をもっているとき、すなわち、
`f(u + v) = f(u) + f(v) (u, v in X)`
`f(alpha u) = alpha f(u) (alpha in K, u in X)`
が成り立つとき、`f` は `X` における線形汎関数と呼ばれる。
距離空間 `X` の部分集合 `A` が全有界であるとは、任意の `epsilon gt 0` に対して有限個の `x_1, x_2, x_3, cdots, x_n in X` で、 `A sub uuu_(i=1)^n B(x_i, epsilon)` をみたすものが存在することをいう。ここで、`B(x, epsilon)` は中心 `x`, 半径 `epsilon` の開球である。
可測空間`(Omega, F)` に対し、`F` 上の広義実数値関数 `mu` が以下の性質を満たすとき測度という。
測度空間(mezurhava spaco, measure space) `(Omega, F, mu)` とは、可測空間 `(Omega, F)` と測度 `mu` の組(数学的構造)をいう。
ヒルベルト空間 `H` の閉部分空間 `M` を考える。任意の `x in H` に対して、
`underset(y in M)("inf") norm(x - y) = norm(x - P_M(x)) = min_(y in M) norm(x - y)`
となる唯一の点 `P_M(x) in M` が存在する。この点を `M` への直交射影と呼ぶ。
コンパクトな距離空間 `S` 上の連続関数の列 `{f_n}` が `S` 上で同程度連続であるとは、任意の `epsilon gt 0` に対して、
`x, x', n` に関係しない `delta gt 0` があって、
`d(x, x') lt delta` ⇒ `abs(f_n(x) - f_n(x')) lt epsilon, AA x, x' in S, AA n`
が成り立つことをいう。ここで、`d(x, x')` は `S` 上の距離を表す。
`X = L^2(a,b)` が実数値関数からなっているとし、`u, v in X` とする。`u, v` の内積(interna produto, internal product) `(u, v)` は、
次の式で定義される。
`(u, v) = int_a^b u(x)v(x)dx`
`X` が複素数値関数からなっているとすれば、`u, v in X` の内積は次の式で定義される。
`(u, v) = int_a^b u(x)bar(v)(x)dx`
ここで `bar(v)(x)`は `v(x)` の共役複素数である。
記法は次のいずれかである。名前のリンクはその著者の書いた本を表している。
`(u, v)` 宮島、藤田、樋口-芹澤-神保、日合-柳、黒田、藤田-黒田-伊藤、吉田(善)
`(:u, v:)` 山田、洲之内、西白保
`x` が `A` の内点である(または `x` が `A` の内部にある)とは、ある `epsilon > 0` で `B(x, epsilon) sub A` を満たすものが存在することをいう。 `A` の内点全体の集合を `A` の内部または開核といい、Int `A` あるいは `A^@` で表す
`X` をバナッハ空間とし、`T in B(X)` が `norm(I - T) lt 1` を満たすとする。 このとき、`T` の逆作用素 `T^(-1) in B(x)` が存在し、次の級数で書き表せる。この級数をノイマン級数と呼ぶ。
`T^(-1) = I + (I - T) + (I - T)^2 + cdots + (I - T)^n + cdots`
線形空間 `X` で定義された汎関数 `norm(*) : X |-> RR` がノルムの公理をみたすとき、 `norm(*)` を `X` のノルムという。とくに、`u in X` に対し `norm(u)` を要素 `u` のノルムという。
ノルム空間とは、ノルムが定義されている線形空間のことをいう。ノルム線形空間、ノルム付き線形空間 線形ノルム空間ともいう。
ヒルベルト空間 `H` に対し、`{e_1, e_2, e_3, cdots, e_n, cdots} sub H` を正規直交系とする。
このとき、任意の `x in H` に対して成り立つ次の等式をパーセバルの等式という。
`norm(x)^2 = sum_(n=1)^oo abs((:x, e_n:))^2`
バナッハ空間とは、完備なノルム空間のことをいう。
空間 `X` が反射的であるとは、
`X` の第2共役空間 `X''` の任意の要素 `F` に対して、
`F(f) = (: f, a :) (AA f in X') `
となるような `a in X` が選べることをいう。
なお、反射的のかわりに、回帰的あるいは再帰的であるともいう。
ハーン - バナッハの定理は次のように表される。
`X` を実線形空間とし、`X` 上の実数値関数`p(x)` が次を満たすものとする。
また、`M` を `X` の線型部分空間、`f` を `M` で定義された実数値線形汎関数で、`f(x) le p(x) (x in M)` を満たすものとする。 このとき、`X` 上の実数値線形汎関数 `F` で次を満たすものが存在する。
ヒルベルト空間とは、完備な内積空間のことをいう。通常 `H` または $ \mathcal{H} $ で表される。
有界作用素 `T` が完全正規直交系 `{phi_n}` に対して、`sum_(n=1)^oo norm(Tphi_n)^2 lt oo` となるとき、 `T` をヒルベルト=シュミット作用素という。
`T` を ヒルベルト空間`H` から `H` への線形作用素とし、`T` の定義域を `D(T)` で、 また `T` の値域を `R(T)` で表す。ここで、`D(T)` は `H` の部分空間である。
線形作用素 `T : D(T) sub H |->H ` は次の条件を満たしているならば,閉作用素であるという。
条件:`x_n in D(T), n = 1, 2, cdots, lim_(n->oo) x_n = x, lim_(n -> oo) Tx_n = y` がともに存在しているとき、必ず `x in D(T)` かつ `Tx = y` が成り立つ
ヒルベルト空間 `H` の正規直交系 `{phi_j}` が与えられたとき、`x in H` に対し、次の内積を作る。
`c_j = (:x, phi_j:), quad j = 1, 2, 3, cdots` .
これを `x` の `{phi_j}` によるフーリエ係数といい、これを用いて作った級数
`sum_(j=1)^oo c_j phi_j`
を、正規直交系 `{phi_j}` による `x` のフーリエ級数と呼ぶ。
`C(H)` をヒルベルト空間 `H` 上のコンパクト作用素の全体とする。 `A in C(H)` ならば次のいずれかが起こる。
ここで `I` は恒等写像、`ker T` は `T` の核(または零空間)である。
有界作用素(barita operatoro, bounded operator)とは、 二つのノルム空間 `X` および `Y` の間の線形変換 $ \mathcal{L} $ であって、 `X` に含まれるゼロでないすべてのベクトル `v` に対して $ \mathcal{L} $`(v)` のノルムと `v` のノルムの比が、 `v` に依存しない一つの数によって上から評価されるような $ \mathcal{L} $ のことをいう。
式で書けば、`X` に含まれるすべてのゼロでない `v` に対し
`||` $ \mathcal{L} v$ `||` `<= M norm(v)`
が成り立つ定数 `M > 0` が存在する線形変換 $ \mathcal{L} $ のことをいう。
なお、有界線形作用素、有界線型作用素ともいう。
ノルム空間 `X` からノルム空間 `Y` への有界線形作用素の全体の記法は次のいずれかである。
$ \mathcal{L} $`(X, Y)` 宮島、 藤田、黒田、伊藤、 藤田、 松田06、
`B(ccX, ccY)` 黒田、
$ \mathcal{B} $`(X, Y)` 日合、柳、 山田
`B(X, Y)` 樋口、芹澤、神保、
$ \boldsymbol{B} $`(X, Y)` 洲之内、
`B[X, Y]` 西白保、
リースの表現定理とは、 数学の関数解析学の分野におけるいくつかの有名な定理に対する呼び名である。 ハンガリーの数学者、リース・フリジェシュ(Riesz Frigyes)の名をとっている。
`L^p` 空間の別名。`1 le p lt oo` のとき,区間 `(a, b)` で定義された実数値または複素数値関数 `u(x)` で、 `int_a^b abs(u(x))^p dx lt oo` を満たす関数を p 乗可積分な関数といい、このような関数の集まりを `L^p(a,b)` で表す。
`T` をバナッハ空間 `X` における閉線形作用素とし、`rho(T)` を `T` のレゾルベント集合とする。 `(zeta I - T)^(-1)` を `T` のレゾルベントといい、`R(zeta; T)` で表す。日本語では解素という訳がある。
エスペラントでは dissolvilo という語をあてている。これは https://epo.wikitrans.net/Resolvent_formalism からの引用である。
`T` をバナッハ空間 `X` における閉線形作用素とする。`zeta I - T` が 1 対 1 でかつ `(zeta I - T)^(-1) in B(T)` であるような `zeta in CC` の全体を `T` のレゾルベント集合といい、`rho(T)` で表す。
このページの数式は MathJax で記述している。