洲之内 治男:改訂関数解析入門

作成日:2017-11-19
最終更新日:

概要

著者曰く、 理工系の基礎として学ぶ数学と現在第一線で用いられる数学の間には大きなギャップがある. そのうちで関数解析と呼ばれる部門に到達する道筋の展開を与えることを目標にこの本を書いてみた.

感想

ルベーグ積分

著者は改訂にあたってのところで 本書付録ではリース(f. Riesz)とナジイ(S. Nagy)による,一般にむずかしいといわれている測度論を通過しないで, 直接ルベーグ積分に到達する方法でルベーグ積分を導入している.と述べている。 うっかりすると、一般に難しいといわれている測度論の導入がリースとナジイによるものだと勘違いして読んでしまうが、 実際のところはその逆である。本書付録にはこう書いてある。 ルベーグ積分の導入の仕方はいろいろあるが,(中略) そこでリース流に測度 0 の考えだけ用いて測度論を用いないで直接積分を定義する方法によることにしよう. ということは、リースとナジイによる導入は、直接ルベーグ積分に到達する方法であることがわかる。

カタカナ表記か原語表記か

人名をカタカナで表記するのか、原語で表記するのかは悩ましい問題だ。 この本ではカタカナ表記を貫いている。

表記の揺れ

p.44 の最後に次の問題がある。

問3 `L^2(-oo, oo)` において,
`varphi_k(t) = (-1)^k 2^(-k//2) (k!)^(-1//2) pi^(-1//4) e^(t^2//2) (d/(dt))^k e^(-t^2) quad (k = 0, 1, 2, cdots)`
は正規直交系であることを示せ.これをエルミット(Hermite)の直交系という.

一方で、p.98 では、次のような定義がある。

定義 有界作用素で,`A^** = A` を満足するものを自己共役作用素(エルミート作用素), `U^(**)U = UU^(**) = I` (恒等作用素) をみたすものをユニタリー作用素という. これらは有限次元のときのエルミート行列やユニタリー行列の拡張になっていることが予想される.

Hermite の直交系も、Hermite 行列も、同じ Hermite である。日本語表記では、エルミートの方が多いのではないか。

数式の記述

数式表現は ASCIIMathML を、数式表現はMathJax を用いている。

関数解析の本

書 名関数解析入門 改訂版
著 者洲之内 治男
発行日2014 年 9 月 10 日(改訂第 8 刷)
発行元サイエンス社
定 価1800 円
サイズ4-7819-0742-3
ISBN
NDC

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MARUYAMA Satosi