藤田 宏、黒田 成俊、伊藤 清三:関数解析 |
作成日:2015-07-02 最終更新日: |
関数解析の研究者として有名な3氏による関数解析の標準的教科書。
同書は長らく絶版であったが、2015 年 6 月に復刊された。 ちなみに、藤田、黒田には単著としての関数解析の本もある。
私の友達が次のように力説していた「伊藤清は有名だけれど、その兄弟の伊藤清三のほうがもっと偉い」。 伊藤清は伊藤の補題という、確率微分方程式の記述に不可欠な事実を証明した。この確率微分方程式が、現代の金融商品の基礎となっている。
伊藤清三の偉さはどこにあるのだろうか。私には残念ながらわからない。
関数解析の本を読んでいて困るのは不等式が頻出することである。
この本でも Hölder の不等式、Minkowsky の不等式、Schwatz の不等式、Bessel の不等式、Poincaré の不等式、Young の不等式が出てくる。
ここでは、p.15 で述べられている Hölder の不等式の証明を追う。
ここで, `p, q` は `1//p + 1//q = 1` を満たす正数であり、`1 < p < oo` とする。
まず、最初に `alpha >= 0, beta >= 0` に対して
`alpha beta <= 1/p alpha^p + 1/q beta^p`
が成り立つことを示している。
宮島の本では、この上記不等式を Young の不等式として紹介していて、式の証明には `beta` を変数 `x` のように扱い、右辺 - 左辺を `x` の関数とみなして微分により関数の挙動を調べるという手法をとっていた。
この本では、この不等式を Young の不等式と呼ぶことはせず、 また証明も `log(x)` が凸関数であることと `p` と `q` の間になりたつ関係式 `1//p + 1//q = 1` とから、
`log (1 / p alpha^p + 1 / q beta^q)` | `>= 1/p log alpha^p + 1/q log beta^q` |
`= log alpha + log beta = log alpha beta` |
として導いている。
数式表現は ASCIIMathML を、数式表現はMathJax を用いている。
p.2 まえがきの上から5行目に Hilbelt 空間とあるが、正しくは Hilbert 空間である。 せっかくの復刊だったのだから、大事な空間名のスペリングは直してほしかった。
書 名 | 関数解析 |
著 者 | 藤田 宏、黒田 成俊、伊藤 清三 |
発行日 | 年 月 日 |
発行元 | 岩波書店 |
定 価 | 円 |
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備考 | 岩波基礎数学選書 |
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