岡山市の学校給食がリストラの危機に
「学校給食運営審議会」が設置され、学校給食の今後のあり方が論議されており、12月24日に中間報告が出されました。5年間で一食コストを200円程度削減、民間委託やPTA組織の参画の来年度試行、栄養士の削減などを求めています。
市議会で学校給食の民営化を求める質問が出され、一食710円は高すぎるとの議論の中で、今後の学校給食のあり方を審議する「岡山市学校給食運営審議会」が設置され、審議が進められてきました。
その岡山市学校給食運営審議会は2000年のクリスマスイブの24日、市教育委員会と市長に5年間で一食経費を200円程度引き下げることを中心とした中間報告を提出しました。私たちが求めてきた献立に合った食器の使用や地域の食材の使用、自校献立・自校炊飯、共同購入方式の見直しなどが盛り込まれていますが、栄養士配置の国並への削減、可能な業務の民間委託、パート職員への切り替え、第三セクターの活用などが盛り込まれ、しかも人件費削減を中心課題として民間委託やPTA組織の参画を来年度から試行するよう求めています。岡山市の子どもたちにとっては、とんでもないクリスマスプレゼントといえそうです。
中間報告が必要な方は、事務局までご連絡ください。
良くする会も加入する市民運動実行委員会では、27日にニュースレターを発行。中間報告の内容を伝えています。そのニュースレターや中間報告全文のコピーを会員や各学校のPTAにも送っています。
学校給食運営審議会の中間報告全文が必要な方は、良くする会か市民運動実行委員会の事務局までご連絡ください。お送りいたします。
岡山市学校給食運営審議会の中間報告(1999.12.24)全文がここにもアップしてあります。
良くする会、市民運動実行委員会の中間報告への対応
・教育委員会は即日、来年度から民間委託や父母などによるボランティア調理参加等を複数の小中学校で試行すると発表
市教育委員会は中間報告を受けたその日に、来年度4月から民間委託や父母などによるボランティア調理参加等を複数の小中学校で試行すると発表しましたが、試行の方法や内容によっては、現状よりも作業の低下が予想され、子どもたちが犠牲にされかねません。
・心配される民間委託などの試行
すでに民間委託されている堺市では、委託した17校の調理員が一学期間に48人も替わり、一つの学校では、ある日突然栄養士も調理員も一度に全員が辞めた例すらあります。このように従業員の入れ替わりが多く、研修不足・経験不足で作業の不手際が多くなっており、業者の対応も不十分なものになっているとのことです。
・子どもに財政危機のツケを回さず、教育予算全体の拡充こそ本来取るべき道
市が行っている業務の中でも、お金をかけてもやるべき部分と、削るべき部分の見極めが大切です。
学校給食でも同様でしょう。岡山市の財政悪化は大変な問題ですが、それは学校給食の負担が大きすぎてそうなったものではありません。契機対策のための大規模な建設事業、しかも必要以上に豪華な施設を作ってきたことなどが大きな原因です。そうした行政のツケを子どもたちの食に押し付けるのはおかしいと考えます。
・私たちの運動で改善項目も盛り込まれる
学校給食パンフレットを発行するなどの私たちの市民運動の展開で、コストだけの論議になりがちだった審議会の中で、17項目の改善提言の中から、いくつかの改善提案を盛り込ませることができました。
今必要なことは、栄養士の全校配置や自校方式が多いこと、熟練した調理技術を持った正規の調理員が配置されているという全国的にも進んだ制度を生かして、それにふさわしいより豊かな学校給食内容を実現することが必要ではないでしょうか。学童保育の子どもたちや部活の生徒たちにも食事を提供し、地域の独居高齢者に配食サービスの食事作りなどでもその力を生かすことが、岡山市らしい施策と言えるのではないでしょうか。
岡山市学校給食運営審議会のホームページ(岡山市のホームページ)へ
岡山市のホームページの「組織検索」から「教育委員会」「保健体育課」を選ぶと、その中に学校給食運営審議会の情報が載っています。
審議会の議事録はこちらにあります。(岡山市のホームページからダウンロードしたものです)
H11年12月5日全体会議
H11年11月20日第一部会
H11年11月18日第二部会
H11年11月4日第一部会
H11年11月2日第二部会
H11年10月3日合同部会
H11年9月9日第一部会
H11年9月3日第二部会
H11年8月5日全体会議
中間報告へ向けた考え方の概要(岡山市学校給食運営審議会第一部会・第二部会)
これに対する私たちの意見・考え方
- 第一部会の中間報告へ向けた考え方の概要について
@関係者の役割と責任の明確化について
学校給食に関わる者の役割分担と責任が強調されています。当然のようにも思えますが、それぞれが責任をきちんと果たしながら、連携・協力していくことが今求められているのではないでしょうか。そうでなれば、家庭ではちゃんと食の責任を果たしているから学校給食は知らないとか、教科教育に責任を果たしているのだから、学校給食は栄養士さんに任せたというのでは困ります。
また、調理員は子どもの教育には関係ない、調理をするだけが責任範囲だという考え方は誤りですし、調理は民間委託でよいという論理につながる恐れが強いとも思えます。
A食器や食材の見直しについて
内容には賛成です。食器は強化磁器が望ましいと考えています。
食材については、単に皮付き里芋・旬の柿やリンゴを剥いて出すだけでなく、地場の新鮮で安全なものを自由に使えるようにすることが必要です。
そのためには統一献立や学校給食会からの一括購入というシステム(これ以外は認めないという規制なっている)を見直すことが不可欠です。
温かいものを温かいままで食べられるようにするために、現場の調理員も休憩時間などを子どもの食事時間に合わせる努力もしていこうとしています。
Bドライ方式・ランチルームについて
内容には賛成です。
ランチルームはすでにかなりの数の学校で整備されていますが、全校までには距離があります。余裕教室が生まれるとランチルームに活用することができますが、余裕がないとできません。
新たに建築される学校では、地域開放もできる形でランチルームが整備されています。そうした施設であれば、ランチルームに地域のお年寄りを招いて交流給食を行うなど、あらたな可能性も広がります。校舎の大規模改修等の時には2教室以上の広いランチルームを作りたいものです。
C選択献立方式の導入について
一定の選択が可能な献立は、食教育と連動させて取り入れていくと良いと思われます。弁当持参日をあえて作ることについては、運動会や遠足などの際に弁当持参が行われているだけに、今以上に弁当持参を増やすことの意図がわかりにくいと思われます。
むしろ、三期休業の前後の試験期間など、学校給食を出そうと思えば出せるのに、学校の都合で出さず、子どもを早く帰らせていることなどは、教育としての学校給食の位置付けや親の負担、一食単価を問題にする現在の見直しの観点からしても、逆に改善すべきでしょう。
個別の事情を尊重し対応することは、例えばアレルギー等では当然必要なことなので、可能な範囲で努力すべきだし、市が直営でやる意味がそこにあると思います。
D残菜処理のあり方について
内容には賛成です。各学校にそのための施設を整備すると、それなりにコストがかかりますが、それは学校給食のコストと考えるのでなく、環境教育のコストと考えるべきでしょう。
残菜が出ること自体について罪悪視する論調がありますが、子どもが残さないように努力することは栄養面からも指導面からも当然ながら、子どもが残さない献立だけにしようというのは問題です。子どもたちの嗜好が洋風化し、そこに問題が生じているもとで、たとえ残す子がいても伝統的な日本食の献立をとりいれて、学校給食のなかで食べる習慣を育てていくことが大切だと考えます。
E保健所によるチェック機能の発揮について
基本的には賛成です。
しかし、保健所の食品衛生監視員は数も限られ、毎日学校給食を見て回ることは事実上できません。連携を取って適切な指導を求めることは当然ですが、あくまで日々の作業の中での細かな努力こそが安全の絶対条件です。その意味では調理員がころころ変わったりすることは安全性を脅かす要素になります。体も成長途中の幼い子どもたちが毎日食べる学校給食だからこそ、安全には通常の給食や弁当以上の配慮とそのための条件を整えることが必要でしょう。
- 第二部会の中間報告へ向けた考え方の概要について
@制度疲労の問題について
制度疲労があることは事実でしょう。それだけに今、改善充実が求められているといえます。問題は何を制度疲労と見るのかです。
Aコスト削減に向けた方策について
人件費の削減に取り組まざるを得ないとしていますが、一部加配職員の見直しなどは可能としても、ただコストを下げればよいとばかりに、調理員をパート職員ばかりにしたり、栄養士を削減したり、民間委託したりするというのは問題です。学校給食の内容や質、どういう機能を果たしていくのかいうことと、セットで考える必要があります。
B保護者の役割、責任、PTAの参画について
基本的には賛成です。子どもの食に対する家庭機能の現状として踏まえるべきは、それがすべてではないにしても、栄養の偏り、子どもの欲しがるもの、手のかからないものが中心になりがちで、献立の欧米化からくる子どもの肥満や小児成人病の発生など、色々な問題を抱えています。本来の家庭教育の機能であるはずの、日本の伝統的な食文化を伝えることも困難になりつつあります。
こうした事態の背景には、女性の就労率の高まりや核家族化など、今後もいっそうその傾向が強まる要素があります。
それだけに、家庭・親が子どもの食や育ちに責任を持つことは当然として、それを支えるための情報提供や教育的機能の発揮が学校給食に求められるでしょう。
PTA組織が学校給食運営に主体的に参画することも検討すべきとされています。当然の発想と言えますが、それがかつてPTAが調理員を雇って学校給食を運営していたころのような困難な状況に逆戻りするような発想でなく、PTAと学校で委員会組織を作るなどして、献立づくりや食材の供給、地域の一人暮らしのお年よりへの配食サービスをPTAが中心となってボランティア活動で支えることなど、多面的で、より多くの会員が関わる中で、学びがひろがり、開かれた学校づくりにもつながるような取り組みこそが求められていると考えます。
C共同調理場方式と単独校方式について
いわゆる給食センターが単独校と比べて、コストが高いのはおかしいとの指摘がなされています。配送のための車や人員が必要になるわけですから、作る食数が少なければコスト高になるのは当然です。そういうセンターは、むしろ廃止して、単独校方式にすることか効率的だということがここに示されているわけです。
D業務拡大による単価の低減について
私たちの主張でもあり、全面的に賛成です。
これは単に単価の低減のためにだけ考えられたものではなく、それぞれが切実な要求であり、それに市がその持つ機能を有効に活用して行政としての責任を果たすべきだという考え方がベースにあります。また、実施されれば子どもたちと地域のお年よりの交流も深まり、教育的な機能の面からも貴重な取り組みになると思われます。ですから、単に学校給食のコスト論だけでこの課題への取り組みの是非を決めるべきではないと考えます。
Eコスト評価システムの導入について
いたずらにコストをかけることはどうかと思いますし、低減の努力は当然と思います。しかし、公と民のコストの差をチェックする評価システムの導入をうたっていることには、疑問を抱かざるを得ません。
なぜなら、民間の給食業務の多くは低賃金のパート職員(多くの場合女性)で担われていることは良く知られており、賃金を下げれば下げるほど人材の確保は困難になり、優秀な人材の定着が困難になる傾向にあります。民間の場合、幼く抵抗力のない子どもたちだけを対象にしている業者はほとんどないのが現状であり、学校給食と単純に比較することは明らかに子どもたちの利益に反します。安全性や教育的な機能の部分をどうコストに反映させていくかのシステムも、当然考慮されるべきでしょう。
F食材購入システムの見直しについて
この意見はもっともと感じながら、今の時代に、財団を作ってそこから食材を購入することを義務付けるという「規制」が必要なのかという問題に踏み込んでいないことが残念です。地場の新鮮な食材を購入できるようにして、学校給食と地域とのつながりを強め、地域の農業の発展にもつなげていこうとすれば、学校給食会のあり方は根本的な見直しが必要であり、そちらの方こそ、今回の審議会で大きく取り上げるべきことと思われます。
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