岡山市学校給食運営審議会の中間報告

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岡山市における学校給食の今後の在り方について
      (中間報告)



平成11年12月24日
岡山市学校給食運営審議会


       目      次

1 はじめに                        
2 調査審議及び中間報告の取りまとめ方法    
3 学較給食運営の現状と課題           
4 学絞給食の在り方                 
5 諮問事項に対する主な意見           
6 目標値及び目標年度               
7 今後の検討事項及び審議予定          
関係資料      
                  
(注:ホームページ掲載上の都合で、ページと関係資料は省略しました。)


1 はじめに
  岡山市学校給食運営審議会では,平成11年8月5日に諮問を受けて以来、審議会を3回,合同部会を1回,第一部会,第二部会をそれぞれ3回,計10回の会議を開催し,諮問事項に沿って真剣に議論を重ねてきたところである。
  この度,岡山市の学校給食の今後の在り方について,基本的な考え方を取りまとめたので中間報告する。
  なお,当審議会では審議の状況をできるだけ情報公開していく観点から,報道関係者だけでなく,一般の方々にも傍聴を許可するとともに,会議資料や会議概要(会議録)についても公開してきたところである。また,会議録、
 や一部資料については,岡山市のホームページにも掲載している。
  *調査審議経過
  ・平成11年8月5日(木)   審議会開催(まきび会館)
  ・平成11年9月3日(金)   第二部会開催(ほっとプラザ大供)
  ・平成11年9月9日(木)   第一部会閑健(ほっとプラザ大供)
  ・平成11年10月3日(日)  合同部会開催(市庁舎第3会議室)
  ・平成11年11月2日(火)  第二部会開催(ほっとプラザ大供)
  ・平成11年11月4日(木)  第一部会開催(市庁舎保健福祉委員会室)
  ・平成11年11月18日(木) 第二部会開催(市庁舎保健福祉委員会室)
  ・平成11年11月20日(土) 第一部会開催(市庁舎第3会議室)
  ・平成11年12月5日(日)  審議会開催(市庁舎第3会議室)
  ・平成11年12月23日(木) 審議会開催(市庁舎第3会議室)

2 調査審議及び中間報告の取りまとめ方法
 当審議会では,岡山市の学校給食の今後の在り方について総合的に調査審議していくため,審議会に2つの部会を設け,各部会を中心に諮問事項に沿って専門的に調査審議してきた。
 第一部会においては主に健康教育,安全管理・衛生管理面について,第二部会においては主に効率的運営,その他学校給食の運営・改善の上で必要な事項についてそれぞれ調査審議し,審議会に諮って意見調整のうえ,中間報
告を取りまとめた。

3 学校給食運営の現状と課題
  岡山市では,開校間もない岡山後楽館中学校を除くすべての小学絞,中学校において共同献立,共同購入方式を基本に市直営による完全給食を実施している。その実施体制は,全校に学校栄養職員を配置するなど安全衛生面に
配慮するとともに,給食調理員についても国の配置基準に加え,各種パートタイム職員を加配するなど恵まれた職員配置の下で運営されている。
 しかしながら,岡山市の学校給食は,制度開始以来,いくつかの改善や見直しが行われてきたものの,給食制度開始当時とは,社会的背景が大きく変化する中で,社会的要請との問に格差が生じ,運営方法そのものに制度疲労をきたしていると言わざるを得ない状況である。
 また,学校給食運営に要する経費は,年々増加しており,教育費全体に占める割合や1食にかかる経費の現状は,今後の教育行政全般に深刻な影響を与えることが予想されるとともに,市財政全体にも一層大きな負担を強いる
ことが予測されるところである

(1)学校給食運営経費の状況     
         

年度 経費総額 1食当り経費
6 7,416,956千円 
 (7,308,736千円)
651円
(642円)
7 7,557,036千円
(7,403,282千円)
664円 
(651円)
8 7,569,498千円 
 (7,547,975千円)
679円
(677円)
9  7,753,636千円  
 (7,602,911千円)
710円 
(695円)


*経費総額及び1食当り経費には,退職金は含めていない。
*(  )は,備品等を減価償却した場合の数字である。

 さらに,子どもの食に関わるあらゆる問題に対する家庭や学校などの責任と役割分担が不明確になっている。そのうえ,学校栄養職員,給食調理員,その他の教職員並びにPTAを加えた関係者それぞれの役割分担や機能もあいまいなものとなっている。
 その外にも食器や食材の問題,集団給食としての学校給食に個別性尊重の考え方を持ち込むかどうかなどの課題があり,岡山市の学較給食は,一つの岐路にさしかかっているのではないかと思われる。

4 学校給食の在り方
  飽食の時代と言われる今日,給食制度開始当時とは社会的背景が大きく変化した中で,学校給食の役割は終わったという考え方もある。そこで,当審議会では学校給食を存続すべきかどうかについても審議したが,次代を担う児童生徒が生涯を通した健康づくりや食文化についての基礎知識を身に付けるとともに,集団生活のマナーやルール,経費負担の仕組みなどを体験しながら習得していくという教育的意義は依然として大きなものがあるとの認識に至った。
 しかしながら,岡山市の学校給食運営については,食器や食材の問題をはじめとしたいくつかの課題が浮かび上がっている。また,集団給食としての学校給食に個別の事情を尊重し,対応していくという考え方を持ち込むかどうかなど,今後の学校給食運営の在り方について検討を加える必要も出てきた。
 そのためには,現在の安全管理・衛生管理水準を確保し,給食の質を向上しつつ,学校給食運営経費の半分以上を占めている人件費をはじめ,実効ある経費削減に取り組むべきであり,現行運営体制の在り方を根本的に見直す必要がある。
 なお,時代に合った食文化の創造や効果的な健康教育,食教育の観点からも学校給食に関わる教育委員会,学校の教職員員,保護者,児童生徒,PTA,級ェ山市学校給食会,地域等,それぞれが担うべき役割と責任を明確にする必要がある。

5 諮問事項に対する主な意見

(1)健康教育の観点からの学校給食の在り方
  ア 児童生徒の食文化形成にふさわしい献立に見合った食器具を使用すべきである。
  イ 生産や流通システムを理解し,日本古来の食文化を学ぶ観点から,地場産の食材使用促進,米飯給食日の増加を図るとともに,自校献立や自校炊飯方式についても検討すること。

  まとめ                         
   食生活の基礎知識を身に付けるとともに,食文化形成にふさわしい教材として次のような改善が必要である。             
 ・ 献立に見合った食器具を使用すること            
 ・ 地場産食材の使用促進,米飯給食日の増加を図るとともに,自校献立や自校炊飯方式についても挨討すること  
         
(2)安全管理・衛生管理面からの学校給食の在り方
 ア 安全管理・循生管理の面はもとよりおいしく食べられるようにするため,温かい物は温かく,冷たい物は冷たく提供できるよう給食センターでは,保温・保冷車等の導入を促進すべきである。
 イ 安全管理・衛生管理の観点から今後整備する給食場については,ドラ
  イシステムの施設整備を促進していくとともに,新たに整備する場合は,強化磁器による食器の導入にも対応できるスペースを確保していくべきである。
 ウ 保健所には食品衛生監視員が配置され,食品について指導と検査を実施している。保健所が民間に対すると同様に学校給食の安全管理・衛生管理に関わることにより,現行以上の安全管理・衛生管理水準が確保できるはずである。こうした市行政内のチームワーク体制を整備する必要がある。
    また,学校給食現場における学校栄養職員の位置付けと保健所を加えた管理体制を明確にし,チェック機能と指導性を発揮すべきである。
 
 まとめ
  運営体制を見直す中で,必要な安全管理・衛生管理水準を確保していくためには,次のような改善が必要である。           
 ・ 給食センターにおいては保温・保冷車等の導入を促進すること 
 ・ ドライシステムによる給食場の整備を促進すること      
 ・ 学絞栄養職員のチェック機能と指導性の発揮及び保健所機能との連携強化を図ること 
                     
(3)学校給食業務の効率的運営
 ア 学校給食運営経費の削減方策については,経費の52.4%(平成10年度)
  を占めている人件費の削減方策に取り組まざるを得ない。
   具体的には,勤務労働実態に見合った賃金体系への見直し,パートタイム職員への切り替え,可能な業務は民間委託,第三セクターの活用,定年年齢の見直し,国基準以上配置している学校栄養職員をはじめ,加配職員の見直しなどいくつかの方策を組み合わせながら実効ある対策を見出していくべきである。
 イ 共同調理場方式と単独校調理場方式
   岡山市においては,3か所の共同調理場を運営しているところであるが,1食当たり経費は単独較調理場方式より共同調理場方式の方が高くなっている実態がある。
   この主たる要因は,職員の配置方法にあることから,共同調理場の運営体制の見直しを行うとともに,施設設備の集約化を検討する必要がある。
 ウ 業務拡大による単価の低減現体制のままで部活動を行う生徒や地域の高齢者,学童保育児童,朝食欠食者等へ給食範囲を拡大するなど多機能化すれば,教育委員会が負担している人件費等を低減することができるはずである。

 まとめ                             
  年々増加する学校給食運営経費を社会的評価に耐え得る水準に低減するためには,次のような改善が必要である。
 職員の賃金体系及び定年年齢を見直すこと
 学校栄養職員の配置を国基準並に見直すこと
 パートタイム職員など加配職員の配置を見直すこと
 パートタイム職員への切り替えを検討すること
 可能な業務は民間委託すること
 第三セクターの活用を検討すること
 共同調理場運営体制の見直し及び施設設備の集約化について検討すること
 現体制下で可能な学絞給食の多機能化について可能性を検討すること

(4)その他学校給食の運営・改善の上で必要な事項
 ア 食文化の創造,健康教育及び食教育に対する教育委員会,学校の教職員,保護者,児童生徒,PTA,(財)岡山市学校給食会,地域等の役割分担と責任を明確にするとともに,学校給食で対応できることとできないことについても明確にするべきである。
 イ 作業量が多くなることに配慮して設けられている食材の使用制約や献立の制約は廃止すべきである。
 ウ 教室とは異なった雰囲気で食事ができる環境(ランチルーム等)を整備する必要がある。
 エ 新学習指導要領に合わせて楽しくゆとりのある学校給食を目指すとともに,選択献立方式の導入,学校行事に合わせた自由献立日の変更,弁当持参日の設定,給食時間の見直しなど,学校給食の運営に柔軟性やある程度の弾力牲を認めていくべきである。
 オ 集団給食である学校給食に個別の事情を尊重し,対応していくという考え方を持ち込むことの適否及び受益者負担という考え方についても原点に立ち返って検討すべきである。
 カ 給食現場から発生する残菜については,家庭ごみと同様に収集処理しているが,残菜処理について環境教育に取り入れるとともに,献立の面からも残菜を少なくする工夫が必要である。
 キ 児童生徒の食に対する家庭機能の現状を踏まえたうえで,学校給食に対する保護者の役割,責任についても原点に立ち返った議論が必要である。そうした議論を踏まえ,PTA組織が学校給食運営に主体的に参画する方途を検討する必要がある。
 ク 同種同業の仕事であれば,経費的には公も民間も同じであるのが普通であり,理論的には税負担していない公の方が安いはずである。
  そこで,経費格差をチェックする評価システムを導入すべきであり,経費面を含めて市民の批判に耐え得る学校給食でなければならない。
 ケ 食材購入システムの見直し
  学校給食の食材は,(財)岡山市学校給食会を通した共同購入方式が主として行われているが,(財)岡山市学校給食会は購入価格に対して一律3%の手数料を徴収することになっており,良質の食材を安価で購入するインセンティブ(動機)が機能しにくいシステムとなっている。
  このため,共同購入方式を見直し,良質の食材を安価で,かつ,安定的に購入できるシステムの導入について,検討する必要がある。

 まとめ
  社会情勢の変化に対応していくとともに,社会的要請に的確に応えていかなければならない。このため,現行システムには,次のような見直しが必要である。
 ・ 学校行事に合わせた献立や弁当持参日などを導入し,弾力性のある学校給食にすること
 ・ 食材や献立の制約原因を見直し,改善すること
 ・ ランチルーム(食堂等)の整備を促進すること
 ・ 献立を工夫し,残菜を少なくすること
 ・ PTA組織による学校給食運営の方途を検討すること
 ・ コスト評価システムを検討すること
 ・ 共同購入方式を含め,食材購入システムを見直すこと
 ・ 削減できた経費については教育施設・設備等の充実に還元すること
                                     
6 目標値及び目標年度
 第一部会で調査審議してきた健康教育,安全管理・衛生管理面に関する取り組みについては,経費を伴う一面もあるが,ドライシステムによる調理場やランチルーム(食堂等)の整備,丼,保温・保冷コンテナの導入,食材や献立の制約廃止,地場産の食材使用など可能なものについては来年度から実施若しくは試行され,より良い学校給食になることを期待する。
 次に第二部会で調査審議してきた効率的運営に関する取り組みについては,それぞれの関係者に厳しい面があることから,その実施に当たっては諸々の困難が伴うものと思われる。しかし,そうした困難を乗り越え,岡山市の学校給食業務の効率的運営の実効を上げるためには一定の目標を設定し,関係者が一丸となり,設定した目標に向かって努力する必要がある。    
 そこで,効率的運営の目標設定に当たっては,「同種同業の仕事であれば,経費的には公も民間も同じであるのが普通であり,理論的には税負担していない公の方が安いはずである。」との審議会での議論を踏まえ,民間の同様業種と同等の経費水準にすることを中期目標(平成12年度から5年間程度)として設定する。
 具体的には,売上げに対する製造原価の構成比を民間の同様業種と同じ水準にすれば,この中期目標を達成することが可能である。現在,岡山市の学校給食では,その構成比が79.9%(平成10年度)であり,これを民間の同様業種の構成比52.5%(中小企業庁調査による平成6年度から平成10年度までの平均値)と同じ水準にする必要がある。
 この考え方に基づいて積算すれば,岡山市の学絞給食1食当たり経費は,731円が200円軽減され,531円となり,目標を達成した時点での1年間の経費削減額は,21億円程度となる。(いずれも,平成10年度ベースで積算)この中期目標の達成に向けては,経費の大きな部分を占めている人件費削減が中心的課題にならざるを得ないので,退職者が生じた場合には,その後任者の補充は行うべきではない。それに代わる方策として,可能な業務について民間委託やPTA組織の参画など今回取りまとめた中間報告に沿って,来年度から実施若しくは試行され,児童生徒にとって安全で楽しい給食を引き続き提供されるとともに,目標年度における目標値に向かって着実な成果を上げられることを期待する。

7 今後の検討事項及び審議予定
 これまでの調査審議状況は,以上のとおりである。今後は,見直しや改善に向けた具体的手法等について,さらに調査審議を深めていくとともに,この報告に基づいて来年度から試行されるものについての検証を当審議会で行い,最終報告(答申)に反映していくこととする。
 なお,最終報告(答申)は,来年の秋までに取りまとめる予定である。