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伝説の「ブラ1」は今のところ残念ながら音源を入手できていない。金大フィルがロマン派の領域へ第一歩を踏み出した記念碑的な演奏ということ。是非とも聴きたいところだが、現在マスターテープを捜索中である。2度目のブラ1は第6回サマーコンサートとして、81年の夏に行われた。当時の名学生指揮者の花本康二氏によるものである。1回目のブラ1当時は、初めての音楽世界に踏み入った喜びに満ちたものだあろう。 10年後の81年の「ブラ1」時においては、ブラームスはもちろんのこと、すでにチャイコフスキー、シベリウス、そして、マーラーを演奏しようという時代となっていた。この演奏は、自分も当事者として必死に練習した想い出がある。今、聴いてみると有り余るエネルギーに満ちた演奏だ。「ブラ1」の聴き所はいろいろあるが、まず、そしてコンマスの纐纈氏、Hrの名手、土定氏のソロが聴ける2楽章から。そして、4楽章のFl,Tb,Hrと続く4楽章序奏部、ここでのHrは金大フィルの全歴史の中でも名演と言える部分だ。そして、最終部を聴く。この最終部で、些細なものであるが、ある弦楽器奏者のミスがあった。彼は、普段はクールで学生のくせにワイシャツにネクタイのスタイリストだったが、コンパでは、いつになく荒れていたのを懐かしく思い出す。 3度目の「ブラ1」は、金洪才氏との96年の第57回定期から、同じ4楽章最終部分をお聴きいただこう。会場が観光会館のせいもあり、音はよりマイルドだ。15年の時間経過はオケにどういう変化をもたらしたのだろうか?
![]() それにしても、23年間眠っていたオープンリールテープから再び流れ出てくる音の生々しさ、熱っぽさ。デジタル技術でつぎはぎにミスを修正されたものからは決して得られない真実性。当時の団員の方々は、古い古いカセットテープにしかこの記憶をとどめていないのだろう・・。そうだとすると、これをCDにして、もう一度聴いてもらえるならば、どれだけの幸せを共有できるだろうか?ワクワクする。(これは後日、お知らせする。) この時の演奏から、まず、1楽章終わりのHrのソロを聴こう。伴氏独特の息遣いが聴ける。そして、もう一つ、4楽章最終部分の爆発するクライマクスを聴こう。Tbの難所の下降音階はどうだろう?ブラ2はこの最終部の盛り上がりが命のような曲である。2番の多くの時間を占める独特の冗長な部分のエネルギーが最後にすべて開放される最終部。ひょっとしたら、この演奏を顔をしかめて聴く人もいるだろう。しかし、自分は無条件に受け入れられる・・・、そのように生まれついたのはきっと幸せなんだろう。 そしてこの演奏からほぼ10年後の、第48回定期から金氏との3度目の「ブラ2」もお聴きいただこう。金氏の2年目の共演だった(この前後は、「幻想」と「悲愴」)。この10年間で、オケの団員数は実に、80人余りから、140人を超える大所帯へと大幅に増加した。弦楽器の増加がオケの音に厚みをもたらしたのだろう。濁ったという意見もあるかもしれない・・・。同じ部分をここでも聴こう。TbのD-durのコードは見事に決まった。あと0.5秒、音を張っていたら100点満点だったろう。しかし、正直に言って、思いっきりの良さで77年のブラームスが自分は好きだ。 演奏サイクルからすると、近く金大フィルが挑戦するのは、「ブラ2」だろうか。団員数が若干減った状況でも、一番アマオケが取り組みやすいのは「ブラ2」である。
「ブラ3」は、堤俊作氏との1回だけの演奏が記録されている。これについては、こちらを御覧いただきたい。また、選曲の面白い経緯については、牛山氏の「えぴそーど」も御覧頂きたい。繰り返しをすべて実行して、重量感を増しての演奏だが、メインとして演奏する難しさも感じた演奏会だったように思う。
「ブラ4」は、ほぼ10年置きに3人のプロ指揮者とともに演奏している、佐藤氏、山下氏、磯部氏の3人だ。佐藤功太郎氏は20年の時をおいて都合3度の共演をした、金大フィルにゆかりの深い指揮者と言ってよいだろう。3度もの共演をするからには、お互いに何らかの信頼関係があったのだろう。少なくとも相性が良かったとは言えるはずだ。このような指揮者は、堤俊作氏(3回)、金洪才氏(6回!)が該当する。実際に、この3人で、21年間の金大フィルプロ指揮時代の内12年間を振って頂いた。一方、1回限りのプロ指揮者が何人かいる。山下氏、磯部氏ともこの範疇に入る。おそらく、マエストロのポリシーか、金大フィルが愛想を着かされてか、それとも逆なのか・・・、真相をちょっと知りたい気もするが詮索は止めよう。 最初の「ブラ4」は、本格的なプロ指揮者佐藤功太郎氏を迎えた、金大フィルのやる気満々の演奏会だった。こちらと、こちらも御覧頂きたい。4楽章から最終部分を聴く。2度目の「ブラ4」は90年の山下氏とのもの、ワーグナーとブラームスという重厚長大なプログラムだった。同じく、4楽章の同部分をお聴きいただこう。この演奏会のワーグナー「トリスタンとイゾルデ」は、こちらで聴くことが出来る。金大フィル3度目の「ブラ4」は同じく一回指揮者の磯部氏、この演奏会は実演を聴いた。ブルッフのコンチェルトを弾いた篠崎史紀氏の格好いい演奏姿が印象に残った演奏会だった。実は、この演奏会の録音は、磯部氏がすべての録音スタッフ、機材を自ら東京より準備されて、完全管理体制で録音されたと聞く。そして、演奏ミスは完璧に?修正され、さらには、そのCDはかなりの高額で団員に独占販売されたという。従って、ここでのMP3掲載は見送る。このような至れり尽せりのサービスが、団員たちにとって価値あるものであったか否か、どうだったのだろう。(86年卒中西記) (注1):2トラ38(つーとらさんぱち)と呼ばれる、既にほぼ絶滅したテープ録音フォーマット。カセットテープが出現する前に、オーディオマニアが使っていた。カセットテープの倍の幅の磁気テープを2トラック(つまり片道だけ)で、38cm/sec(または半分の19cm/sec)のスピードで録音される。放送局などのプロが使用した。金大フィルの演奏は、89年ごろまで各ホールの設備でこのオープンリールで記録された。単位時間あたりの記録容量(テープ幅×長さ)では、カセットの32倍の容量を持ち、カセットとは次元の違う音で録れる。DATが出現し、その取り扱いの面倒さから滅びた。 |
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★交響曲第1番 ![]() 指揮:花本康二 コンサートマスター:纐纈直樹 2楽章から 4楽章序奏部 4楽章最終部 ![]() 指揮:金 洪才 コンサートマスター:唐木 玲 4楽章最終部 ![]() ★交響曲第2番 ![]() 指揮:伴 有雄 コンサートマスター:岡部陽三 1楽章最終部 4楽章最終部 ![]() 指揮:金 洪才 コンサートマスター:北原隆文 4楽章最終部 ![]() ★交響曲第3番 ![]() 指揮:堤 俊作 コンサートマスター:山口泰志 3楽章より 4楽章より ![]() ★交響曲第4番 ![]() 指揮:佐藤功太郎 コンサートマスター:大沢謙三 第4楽章より ![]() 指揮:山下一史 コンサートマスター:村田 淳 第4楽章より ![]() |