オーケストラの中において、なんと言っても目立つのはラッパである。一糸乱れぬボウイングのヴァイオリンや髪を振乱して演奏するチェロ、ライトの怪しげな反射で人を惑わすフルートも目立つことは目立つ・・・。
しかし、音量において音色において、そして、その演奏する姿においても、ラッパ=トランペットは目立つのである。音の出る穴を観客に、恥ずかしげも無く露出しているのは、トランペットだけなのだ(トロンボーンもそうだが・・)。従って、少しだけベルラッパの出口のこと)を上げるならば、好むと好まざると音は前に飛んでいくのである。
それならば気持ちが良くて仕方ないのではと思うだろうが、世の中そんなには甘くない。音は一旦出たら戻らない。間違えた音も、元気に飛んでいくのだ。音を外したと言う。そう、トランペットは音が外れるのだ。
これは楽器の発音原理を考えればわかる。ピストンはたった3つしかない。簡単な算数でわかるが、可能な組み合わせは最大で7つだけだ。これで、2オクターブ半に渡る半音階をカバーしなければならない。つまり、同じ指(ピストン)使いでも、いろんな高さの音が出る(出てしまう)のである。
ここで諦めてしまってはラッパ吹きの名がすたるわけで、日々練習を積み重ねることで、音を外す確率が小さくなれば、プロにもなれるチャンスがあるのだ。
しかし、外さなかったらばプロになれるか?それでは足りない。そうだ、ラッパは鳴らないと駄目なのだ。鳴るというのは、豊かに鳴り響くことと言って良い。実際に、いくらベル(ラッパの出口)を上げたとしても、音が飛ばない人(そば鳴りのラッパ等という)は客席に音は届けられない。マーラーやブルックナーに限らず、ここぞと言うクライマックスで、オーケストラの奥からトランペットが君臨する姿は、オケを聴く1つの醍醐味であり、一種のカタルシスを呼び起こす。ラッパの豊かな音量は、ラッパの最重要ポイントであり、実際、超一流オケと言われるオケのラッパはものすごい音量を誇っている。ベルリン・フィル、シカゴ交響楽団、ウィーン・フィルな然り、やはり、ラッパはオケの看板なのだ。 |
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