TOMOCA
カレーライスQandA

004 かつお節とスリランカのカレー

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スリランカのカツオ節
උඹලකඩ ウバラカダ
スリランカで売られるモルディブ産のかつお節。
カビ付けをしてないので日本の荒節のよう。
製法は日本産とはちょっと異なる。


 かつお節のシンハラ語名はウンバラカダඋඹලකඩ
 スリランカにかつお節があるのかですって? はい、ちゃんとあります。スリランカ産のかつお節もありますが、高級品はモルディブ産。それで、英語名はモルディブ・フィッシュになっています。
 かつお節を何に使う? おひたしにのせる、ご飯に振りかける。なんて、そんなことは残念ながらありません。料理の隠し味として使います。そう、本来のかつお節の役割がこの南の島ではかたくなに守られています。
 むかし、サツ、サツ、サーと振りかけてと極東の島でCMされた化学調味料がこの南の島にも上陸してTVや映画館のスクリーンで派手に宣伝されました。サツ、サツ、サーのフレーズもそのままに。サツ、サツ、サーの某メーカーのロゴを入れた車もコロンボを走り回っていました。ですが、この島の伝統家庭料理には全く浸透しなかった。この島の家庭料理書にもサツ、サツ、サーは載っているのですが、それは中国系の料理ばかりで、地元シンハラ料理には組み込まれていません。40年近く前のことでした。組み込まれない状態は「MSGはオーストラリアで爆発的なブームを生んでいるがスリランカでは使いません」とサンデー・タイムスが報じています。これは10年前の記事。そう、サツ、サツ、サーはあまり話題にならない。
 なぜあの菊苗先生考案の優秀な食材がこの南の島で広まらないか? だって、南の島には大昔からかつお節があるのですから。それも生体を傷つけないナチュラルな本物が。
 かつお節は一本を粉々に砕いて使います。スリランカ料理の煮物に、砕いたかつお節をパラパラと振り入れます。そして料理を煮こみます。主に野菜料理の出汁として使いますが、肉料理の時にも使っていいとスリランカの家庭料理書にはあります。

 これぞスリランカ・シンハラ料理の真髄というべきポル・サンボールにも、かつお節が欠かせません。どんな田舎の食料品店へ行ってもかつお節が売られています。でも、かつお節は高くてなかなか手が出せない。荒節のような一本ものは買えないからはね物を買います。あら、まるで、ナチュラル・ブームに帰った今の日本のようだと思われるでしょう。
 日本でもかつお節は高嶺の花ですから、枯節一本が台所にあるなんて家庭は希少です。かつお節の代用の科学的ほんだしやら何やらはあるという時流ですのに、スリランカ料理には化学調味料、旨味調味料がまだ出回っていません。
 かつお節はスリランカのどこででも買えます。スリランカへ行ったならコロンボのペッタ市場へ出掛けてモルディブ産の極上のかつお節を買ってください。小売店で買うよりずうっと安いですから。 2016-Mar-08加筆改稿

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