CORIDS News 2011年11月30日
新たな国際研究が除草剤アトラジンと
生殖系問題との関係を確認


情報源:CORIDS News 2011-11-30
Study confirms link between herbicide atrazine and reproductive problems
http://cordis.europa.eu/fetch?CALLER=EN_NEWS&ACTION=D&SESSION=&RCN=34083

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年12月4日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/news/111130_CORDIS_atrazine.html


 化学物質アトラジンへの曝露は、動物に生殖系障害を引き起こすことを、新たな国際研究が確認した。『Journal of Steroid Biochemistry and Molecular Biology』に発表されたこの研究は、アジア、ヨーロッパ、南北アメリカからの科学者らが世界60カ国以上で使用されている除草剤アトラジンへの曝露と、哺乳類、両生類、魚類、及び爬虫類における生殖系問題との関係を示す証拠をレビューした。

 特にアメリカではアトラジンの高い使用が報告されており、7,500万ポンド(約3万4,000トン)がトウモロコシを含む様々な作物に使用されている。この除草剤はまた、アメリカの地下水、地表水、そして雨水からでさえ、農薬汚染として最もよく検出されている。

 この報告書の目的のために、研究チームは、アトラジン曝露と、哺乳類、両生類、魚類、及び爬虫類のアンドロゲン(訳注:男性ホルモンの一種)の異常なレベルとの関係を示す研究、及び、アトラジン曝露と様々な動物のオス生殖腺の”女性化”を関連付ける研究の評価を行なった。

 彼等の調査は、10を下らない研究がアトラジンへの曝露が実際にオスのカエルのメス化を引き起こすこと発見したことを示している。ある場合には、この動物の性は逆転さえしている。

 アメリカにあるイリノイ大学アーバナ・シャンぺーン校の教授でこの研究の著者の一人であるバル・ビーズレイと彼のチームは、野生でアトラジンに接触したオスのカエルは、除草剤のない環境で生きているカエルより、オスとメスの両方の生殖腺を持つリスクが高いことを発見した。

 アメリカのカリフォルニア大学バークレー校のタイロン・ヘイズ教授により実施された2010年の研究を引用して、ビーズレイ教授は次のように述べている。”カエルのアトラジンへの曝露は、遺伝学上のオスがメスになり、メスとして機能することに関連した。このことは高い濃度で起きたわけではない。これらは環境中で見出される濃度である”。

 この最新の報告書は、この除草剤に曝露した様々な動物とヒト細胞の研究の中で報告されているホルモン機能と性的発達のかく乱に光を当てている。

 その結果は、アトラジン曝露は、ホルモン信号に関係する遺伝子の発現の変化、変態の阻害、エストロゲンとアンドロゲンの生成を制御する主要な酵素の抑制、オスとメスの正常な生殖発達と機能への影響を含む様々な変化を引き起こすことを確認している。

 ”この報告書を書いていて明確になったことのひとつは、アトラジンは多くの異なるメカニズムを通じて機能するということである”と、この報告書の主著者であるヘイズ教授は述べている。”それは、コルチゾール(訳注1)の生成を増やし、ステロイドホルモン(訳注2)中で他のものは増加させるのに主要な酵素は抑制することが示されている。それはまた、アンドロゲンが受容体に結合することを幾分阻害することを示している”。

 ビーズレイ教授は次のように述べている。”コルチゾールは、慢性的ストレスへの非特定の反応である。しかし、それが何かを想像してほしい。今日の多くの生息環境下の野生生物は、大きなストレスを受けている。彼等は、小さな半端な生息環境に押し込められているのでストレスを受ける。彼等は、水中の植物が十分でないこと(除草剤使用のもうひとつの結果)のために起きる水中の酸素不足でストレスを受ける。彼等は、水中の他の汚染物質のためのいストレスを受ける。そして長期間のコルチゾールの放出が免疫不全を引き起こす”。

 いくつかの研究は、アトラジンへの曝露の影響が全くない、あるいは影響が異なることを示しているが、研究は全てが同じではない。”異なる生物種、異なる曝露時間、異なる発達段階、生物種内での異なる系統がある”とビーズレイ教授は指摘する。

 ヘイズ教授は次のように結論付ける。”私は、この報告書が、政治家にこのデータの全体を見るよう促し、基本的な疑問を提起したい。我々は、環境中のこばかげたこと(汚染)を望んでいるのであろうか? 我々は、我々が知っていること−子どもたちがこの汚染を飲んでいるということを望んでいるのだろうか? 答えはノーであろうと私は思う”。

 この研究には、アルゼンチン、ベルギー、ブラジル、カナダ、クロアチア、日本、イギリス、及びアメリカからの科学者らが貢献した。

 更なる情報:
The Journal of Steroid Biochemistry and Molecular Biology:
http://www.journals.elsevier.com/the-journal-of-steroid-biochemistry-and-molecular-biology/

University of Illinois: http://www.uillinois.edu

CORDIS: Community Research and Development Information Service
http://cordis.europa.eu/
訳注1:コルチゾール
訳注2:ステロイドホルモン
訳注:アトラジン関連記事


化学物質問題市民研究会
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