Beyond Pesticides 2006年9月8日
米ポトマック川で魚のメス化
内分泌かく乱物質が疑われる


情報源:Beyond Pesticides Daily News, September 8, 2006
"Intersex" Fish Found in Potomac River, Endocrine Disruptors Suspected
http://www.beyondpesticides.org/news/daily_news_archive/2006/09_08_06.htm

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html

掲載日:2006年9月10日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_06/06_09/060908_bp_intersex_fish_Potomac_River.html



 AP通信によれば(訳注1)、ポトマック川及びその流域で、メスの性的特徴を持ったある種の魚のオスが通常ではない高い頻度で見つかっており、この問題を引き起こしているかもしれない汚染物質についての懸念が高まっている。環境保護主義者らは長らく、農薬やその他の内分泌かく乱化学物質がそのようなホルモンかく乱を引き起こす可能性を持っていると指摘していた。

 同通信の記事は、バージニア州のシェナンドア川を含むいくつかのポトマック川流域で、昨年、米国地質調査所(USGS)による調査で捕獲されたオスの小口バスのほとんど全てが、精巣中に未熟の卵を生成しているいわゆる間性化(メス化)した魚であった。ポトマック川自身でも13尾のうち7尾の大口バスがメスの特徴を備えており、そのうち3尾は卵を産んでいた。

 メス化した魚は2003年にポトマック川流域で発見されており、またアメリカの他の場所でも発見されている。しかし、この調査で発見された頻度は、かつて他のどのような場所で発見されたものよりはるかに高い−とUSGSの魚類病理学者ビッキー・ブレイザーは述べた。この調査で捕獲されたオスもメスも汚染に関連する障害やその他の問題を示していたが、メスの魚からはどのような異常な性的特徴も見いだされなかったと調査を統括したブレイザー女史は述べた。

 ノースカロライナ州立大学の環境毒物学者ゲラルド・レブランクは、ポトマック川の調査でメス化した魚がこのように高い割合で発見されたことは驚くべきことである述べた。この国の他の場所でそのような魚が発見されることは珍しいことではないが、それはもっと低い頻度であるとレブランクは述べた。

 ほとんどの学者らは、このような変化は農薬と避妊ピルのような内分泌かく乱汚染物質と合成エストロゲンの組み合わせによって引き起こされると信じている。内分泌かく乱物質は、農薬や難燃剤から化粧品や医薬品にいたるまで多くのものに使われている様々な化学物質である。内分泌かく乱物質は体内でホルモンと間違えられるので、それが体内に存在すると通常のホルモン作用が阻害されるか又は体内でのそれらの生成の仕方がかく乱され、体のホルモン機能が変更されるかもしれない。
 ホルモンは成長と体の発達などを制御するので、大きなダメージを与える可能性がある。特に、ある内分泌かく乱物質は女性ホルモンと間違えられる。これらのエストロゲン様物質は生殖系を阻害し、不妊、生殖器官の異常、及び感受性の高い器官のがんを引き起こす。

 不安なことには、一般的に使用されている農薬の中に内分泌かく乱物質として知られている又は疑われているものがたくさんあり、それらにはアトラジン2,4-Dリンデン、及びペルメトリンがある(訳注2)。最近の調査では、一般に使われる芝生用農薬で、活性成分グリホサートからなるラウンドアップは胎児における内分泌効果にダメージをもたらすことが発見された。EPAは現在、農薬の登録及び再登録の際に内分泌かく乱作用を考慮していない。

 これらの化学物質の環境的影響はよく報告されている。切り株のようなペニスをもった偽雌雄同体ホッキョククマ、精巣が退化したヒョウ、両性的奇形を持ったカエル、精巣中で卵を生成するオスのマスなどは全て、環境中の内分泌かく乱化学物質の可能性ある結果として報告されている。多くの科学者らは、野生生物は、ヒトにはまだ観察されていない内分泌かく乱物質により生じる影響の早期の警告を与えると信じている。


訳注1(関連報道記事)
訳注2(日本での状況)


化学物質問題市民研究会
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