農薬行動ネットワーク(PAN)
2011年11月17日
農薬多国籍企業(TNCs)6社
人権侵害で常設人民法廷(PPT)に立たされる


情報源:Pesticide Action Network (PAN) 11/17/2011
Permanent People's Tribunal:
Six largest agrochemical TNCs to stand trial for human rights violations
http://www.agricorporateaccountability.net/en/post/media-resources/35

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html

掲載日:2011年11月18日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_11/111117_PAN_PPT_on_TNCs.html



空中散布を通じて、農薬は目標地を
越えて数キロも漂流し、人々や動物、
その他の作物を汚染する。
(写真:Wikimedia Commons)

中国のバナナ農場で、防護具をつけずに
農薬を散布する農民。
多くの国で一般的なやり方である。
(写真:Pesiticide Eco-Alternative Center)
 農薬とバイオテクノロジー産業の巨人は、12月3日〜6日にインドで開かれる画期的な常設人民法廷(PPT)に人権侵害の訴えで立たされると、農薬行動ネットワーク・アジア太平洋(PAN AP)が発表した。

 国際農薬行動ネットワーク(PAN International)に組織されて、農薬多国籍企業(TNCs)に関する常設人民法廷(PPT)は、モンサント(Monsanto)、シンジェンタ(Syngenta)、バイエル(Bayer)、ダウ(Dow)、バスフ(BASF)、デュポン(DuPont)による生命、健康、及び生計に対する権利の侵害訴訟を審理する。これらの訴訟は世界中から生存者(遺族)と専門家を証人として招き、また高名な国際的審査委員により審理される。

 ”企業の人権侵害に対する責任を求めることができる国際的な司法メカニズムは存在しない。政府と制度に助けられて、農薬多国籍企業は、人々全体を有毒物質で害し、環境を汚染し、特に小規模食料生産者の生計を破壊した責任を逃れている。このような”とがめなし”は終らせなくてはならない”と、農薬行動ネットワーク・アジア太平洋(PAN AP)の執行ディレクターであるサロジェニ・レンガムは述べた。

 常設人民法廷(PPT)において強調されるべきことは次のような訴訟事実である。▼バイエル社のエンドスルファンとシンジェンタ社のパラコートによりアジアで引き起こされている農薬中毒、▼バイエル社にネオニコチノイド系農薬に関連するヨーロッパ及び北アメリカにおけるミツバチの広範な死滅、▼シンジェンタ社のアトラジンによるアメリカ中西部における飲料水源汚染、▼モンサント社の種子の独占と農民の権利の侵害、▼アフリカにおける廃農薬の有毒な投棄、▼モンサント社の遺伝子組み換え(GE)穀物のためのグリホサートに関連するラテンアメリカにおけるひとりの子どもの死、▼様々な残留性有機汚染物質による北極圏先住民の中毒、▼科学者への嫌がらせ、▼その他多くのこと。

 ”農薬多国籍企業(TNCs)の人権侵害の生存者が正義を貫くために立ち上がり、その経験を共有しようとするのは初めてのことである。この常設人民法廷(PPT)はまさに被害者のために開かれるが、しかし、次世代の子どもたちを含む将来の被害者のためのものでもある”と、PAN AP 議長イレーナ・フェルナンデスは述べた。

 フェルナンデスは、常設人民法廷(PPT)は企業の責任を確実にする効果的なシステムのための勧告を提案すること目的としていると強調した。

 アジア太平洋地域では、マレーシアのパームオイル農場の労働者代表、インドのケララ州カサルゴトの村民代表、インドの綿花農場の児童労働者の代表が、農薬と遺伝子組み換え技術によりもたらされた深刻な危害に関して証言する予定である。

 さらにまた、常設人民法廷(PPT)で裁判を受けるべきは、これらの農薬多国籍企業(TNCs)6社が拠点を置き、これらの会社が環境と人々に大規模な危害を与えることを許し、世界規模で農業の企業支配を許し、1984のボパールの悲劇のような恐ろしい犯罪を含んで説明責任を果たさないことを許しているアメリカ政府、ドイツ政府、スイス政府である。

 国際通貨基金(IMF)、世界銀行(WB)、そして世界貿易機関(WTO)はもまた同様に裁きを受けるが、それは、それらの構造的調整プログラムと自由貿易協定が、農薬多国籍企業(TNCs)が農業を支配し、世界で数百万人の農民を立ち退かせ、第三世界の諸国政府が農薬多国籍企業(TNCs)の製品の販売と使用を促進することを確実にする道を開いたという理由のためである。

 農薬多国籍企業(TNCs)は、世界の食料システムの要である農業支配を強めている。世界的に、この6社だけで、440億ドル(約3兆5,000億円)に値する世界の農薬市場の72%、及び270億ドル(約2兆1,000億円)に値する世界の種子市場の73%を支配している。1960年代の緑の革命(Green Revolution)以来、数百万の農民が農薬多国籍企業(TNCs)の農薬に依存させられてきた。いわゆる遺伝子革命(Gene Revolution)もまた、農民を遺伝子組み換え(GE)種子に依存させている。

 ”緑の革命のほぼ50年後及び遺伝子革命の20年後の現在、飢餓の人々の数が増大し続けるときに’世界に食料を供給する’という彼等のウソは最早通用しない。これらの企業の数十年間にわたる不正義と貪欲な活動を直ちにやめさせ、それらにについて説明させる緊急の必要がある”とレンガムは述べた。

 モンサント(Monsanto)、シンジェンタ(Syngenta)、バイエル(Bayer)、ダウ(Dow)、バスフ(BASF)、デュポン(DuPont)は、健康と生命に対する権利、安全で健康的な環境に対する権利、安全な労働環境、生計に対する権利、食料と食料主権に対する権利、自身による決定に対する権利、参加と情報に対する権利、人権擁護者の権利、女性と子どもの権利に関する20以上の国際法の違反を問われるであろう。

 今や、世界のコミュニティが農薬多国籍企業(TNCs)によって引き起こされる人類と地球に対する危害の程度に気づき、彼等に責任を持たせるための行動を取るべき時である”とPANインターナショナルを指揮するPANラテンアメリカのジャビエル・ソーザは述べた。

 常設人民法廷(PPT)は、国際的な意見法廷(opinion tribunal)である。ベトナム戦争とラテンアメリカの独裁政権に関する裁判を引き金に1979年にイタリアで始まった。現在までに常設人民法廷(PPT)は35回の法廷を開き、択一判断(alternative judgments)と法的な明確な表現(legal articulations)を通じて、様々な人権侵害を明らかにしてきた。

E-mail:
inquiry@agricorporateaccountability.net, media@agricorporateaccountability.net
Website:
http://www.agricorporateaccountability.net

 農薬多国籍企業(Agrochemical TNCs)に関する常設人民法廷(PPT)は、農薬とその他の有害技術の使用を廃絶するために活動している90ヶ国、600以上の組織の世界的ネットワークである国際農薬行動ネットワーク(Pesticide Action Network International)によって組織されている。

 常設人民法廷(PPT)を支援する我々の現在実施中の請願に賛同署名してください。


訳注:
 日本からも是非署名して、これらの企業の人道に反する活動をやめさせる国際キャンペーンに参加しましょう。個人でも団体でも賛同署名をすることができます。署名期限は特に書かれていませんが、12月3日〜6日のインドでの法廷開始前がよいと思います。(賛同署名はここから



化学物質問題市民研究会
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