EHP 2006年4月 特別号 論文集
野生生物に化学的に引き起こされる内分泌かく乱の生態学的関連
農薬混合、内分泌かく乱作用、そして両生類の減少
我々はその影響を過少評価していないか?

タイロン B. ヘイズ(カリフォルニア大学バークレー校/脊椎動物博物館/アメリカ)ら
(アブストラクトの紹介)
情報源:Environmental Health Perspectives Volume 114, Number S-1, April 2006
Pesticide Mixtures, Endocrine Disruption, and Amphibian Declines: Are We Underestimating the Impact?
http://www.ehponline.org/docs/2006/8051/abstract.html
Tyrone B. Hayes, Paola Case, Sarah Chui, Duc Chung, Cathryn Haeffele, Kelly Haston, Melissa Lee, Vien Phoung Mai, Youssra Marjuoa, John Parker, and Mable Tsui

Laboratory for Integrative Studies in Amphibian Biology, Department of Integrative Biology, Museum of Vertebrate Zoology, Group in Endocrinology, and Energy and Resources Group, University of California, Berkeley, California, USA

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2006年6月18日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehp_2006_April_S-1/06_04_ehp_s-1_Amphibian_Declines.html

 アブストラクト
 両生類の個体群が全世界で警告を発する速さで減少している。農薬がこれらの減少の原因であるとする意見が数多くある。両生類に及ぼす農薬影響を検証しているかなり大きなデータベースも存在するが、これらの研究の大部分は、比較的高用量(ppb)での毒物学的影響に焦点を合わせたものである(致死性、外的奇形など)。低用量における内分泌かく乱のような影響に焦点を当てた研究は非常に少ない。さらに、ほとんどの研究は単一化学物質だけへの暴露を検証している。
 本研究は、アメリカ中西部のトウモロコシ畑で使用された9種類の農薬(4 除草剤、2 抗菌剤、3 殺虫剤)を検証した。個々の農薬単独の影響(0.1 ppb)又は、その組み合わせが検証された。さらに、我々はアトラジンと S-メトラクロールの混合(各農薬濃度は 0.1 又は 10 ppb )及びビセップUマグナム(アトラジン及びS-メトラクローなどの成分を含む市販調剤)を検証した。これらの二つの農薬は野生中で年間を通じて残留しているので、組み合わせて検証された。
 我々は、オタマジャクシの成長と発達、性差、及び ヒョウ・カエル(leopard frogs (Rana pipiens / Rana pipiens)の免疫機能を検証した。追加調査で、我々はまた、大人のオスのアフリカ・ツメ・カエル(African clawed frogs / Xenopus laevis)に、9種類の農薬混合(各農薬濃度0.1ppm)を処置し、プラズマ・コルチコステロン (訳注:副腎皮質ホルモン)レベルの影響を検証した。
 農薬のあるものは個々にオタマジャクシの成長と発達を抑制したが、農薬混合はもっと大きな影響を与えた。オタマジャクシの成長と発達の遅れも見られたが、最も顕著なこととして農薬混合は、コントロール群では観察された変態の時間と変態におけるサイズとの肯定的な関連性が打ち消された又は逆転したということである。暴露したオタマジャクシは変態に時間がかかり、もっと早く変態したオタマジャクシよりも小さかった。
 9種の農薬混合はまた、胸腺(訳注:免疫系に重要)に損傷を与え、免疫抑制とflavobacterial髄膜炎(flavobacterial meningitis)を引き起こした。研究 のアフリカ・ツメ・カエルは、ストレス・ホルモンであるコルチコステロンの血漿レベルの上昇のために有害影響が起きたのかもしれないことを示した。
 混合物中の全ての農薬がこれらの有害影響に寄与しているかどうか、または、ある農薬はエフェクターであり、あるものはエンハンサーであり、あるものはニュートラルなのかどうか決定することはできないが、本研究は高レベルの単一農薬だけでは両生類の減少に対する農薬の役割をはなはだしく過小評価することになることを検証し、農薬が両生類に及ぼす推定される生態学的リスクと影響を明らかにした。

キーワード:両生類減少、両生類、アトラジン、コルチコステロン、発達、内分泌かく乱、成長、免疫抑制、混合物
Environ Health Perspect 114(suppl 1) :40-50 (2006) . doi:10.1289/ehp.8051 available via http://dx.doi.org/ [Online 24 January 2006]


訳注:
この論文についてはOur Stolen Future (OSF)が非常に分りやすく詳細にに解説していますので、下記を是非ご覧ください。
農薬混合物、内分泌かく乱作用、そして両生類の減少−我々はその影響を過少評価していないか?/Our Stolen Future (OSF)による解説(当研究会)



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