憂慮する科学者同盟(UCS) プレスリリース 2007年1月3日
科学者らが報告
エクソン・モービルは地球温暖化科学に関し
タバコ産業のように偽情報キャンペーンを展開

石油会社は混乱を引き起こすために懐疑的なグループに約1,600万ドル(約18億円)提供

情報源:Union of Concerned Scientists (UCS), January 3, 2007
Scientists' Report Documents ExxonMobil's Tobacco-like Disinformation Campaign on Global Warming Science
Oil Company Spent Nearly $16 Million to Fund Skeptic Groups, Create Confusion
http://www.ucsusa.org/news/press_release/ExxonMobil-GlobalWarming-tobacco.html
オリジナル レポート:Smoke, Mirrors & Hot Air
How ExxonMobil Uses Big Tobacco’s Tactics to Manufacture Uncertainty on Climate Science
http://www.ucsusa.org/assets/documents/global_warming/exxon_report.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年1月5日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_07/07_01/070103_ucs_ExxonMobil.html


 【ワシントンDC】 「憂慮する科学者同盟(UCS」)の報告書は、気候変動の科学的理解を曇らせこの問題に対する行動を遅らせるために、エクソン・モービルがどのようにしてタバコ産業界と同様に、同じ組織と人や偽情報戦略を採用したかを包括的に報告している。同報告書によれば、エクソン・モービルは1998年から2005年までの間に約1,600万ドル(約18億円)を地球温暖化科学に関し公衆を混乱させようとする43団体のネットワークに注ぎ込んだ。

 エクソン・モービルは、まさにタバコ会社が彼らの製品(タバコ)が肺がんを引き起こすということを否定したように、地球温暖化の人為的原因は確かではないという見解を作り出した”と「憂慮する科学者同盟(UCS)」の戦略・政策ディレクターであるアルデン・メイヤーは述べた。巨大タバコ産業が40年以上前にやったように、石油大資本は控えめな、しかし効果的な投資行い、地球温暖化についての疑いの火に油を注ぐことで政府の行動を遅らせることに成功した。”

 報告書 『曇った鏡と熱い大気:エクソン・モービルは気候変動に関する”不確実性を作り出す”ためにどのようにして巨大タバコ産業の戦術を用いているか』 Smoke, Mirrors & Hot Air How ExxonMobil Uses Big Tobacco’s Tactics to Manufacture Uncertainty on Climate Science によれば、石油会社は過去数十年間にタバコ産業が行ったような以下のことをした。
  • 最も明白な科学的証拠についてすら疑いが起きるようにした。
  • ピアレビューされた科学的発見を歪曲し気候変動について声高に異議を唱える人々の小さなグループが大きく見えるような外観を作り出すために様々な前線組織に資金を提供した。
  • ビジネスでの自己利益のためではなく、”健全な科学”を積極的に追求するために反対しているのだと見えるよう試みた。
  • 地球温暖化に関する連邦政府の政策とコミュニケーションを阻止するためにブッシュ政権への接近を利用した。
 エクソン・モービルが金を出した組織は、気候変動説に反対する人々の小さなグループの出版物を発行しさらに再発行するスタッフ、委員会メンバー、そして科学アドバイザーとして何重もの役割を果たす個人の重複した集団からなっている。例えば、エクソン・モービルから63万ドル(約7,000万円)を受け取ったジョージ C. マーシャル研究所は最近、エクソン・モービルが金を出している少なくとも11の組織に加入している長年の気候変動説反対者パトリック・ミカエルスによって編集された本を押し売りした。同様にエクソン・モービルは”科学ベース公衆政策アナポリス・センター”や建設的な明日のための委員会”のようなほとんど名前の知られていない多くのグループに金を出している。両方のグループは、エクソン・モービルが金を出している少なくとも9つのグループに加入している天文科学者サリー・バリウナスを含んで、何人かの気候変動説反対者の仕事を推進している。

 バリウナスは、彼女の論文の中で誤った説明をされたと述べている13人の科学者らによって反駁を受けた、”気候はこの1000年間、大きく変動していない”と主張する2003年の論文でよく知られている。このような反駁を受けてもエクソン・モービルから金の出ているグループはこの論文を推進し続けることを止めなかった。このような方法を通じて、エクソン・モービルは、名声ある気候学者らから信用を失った論文を増幅し支えることができている。

 ”よく見れば、エクソン・モービルの姑息な戦略は科学的研究として信用が置けないことは明白で議論の余地がない”とUSCの報告書を書いた研究ジャーナリストであるセス・シュルマンは述べた。”論文の跡をたどれば、会社の利益に資するために、エクソン・モービルは、地球温暖化についての偽情報を広げる目的をもった見かけは独立系であるグループの大きなエコー・チャンバー(反響効果を作り出す宣伝部隊)を作り出していたことがわかる。”

 エクソン・モービルは温室効果ガスの排出削減の措置を無期限に遅らせようとする悪質なグループのために”健全な科学”を装って、地球温暖化の科学的理解を向上させるという”一見立派に見える”目標を利用している。エクソン・モービルはまた議会の気候変動否定者に資金調達しブッシュ政権の主要人事にうまく介入して地球温暖化に関するアメリカの政策に前例のない影響力を行使した。

 ”1人の科学者として、私は事実がいずれは勝利すると考えたい”とハーバード大学の海洋生物学教授で前気候変動の影響に関する政府内委員会気候変動ワーキング・グループ議長ジェーブズ・マッカーシー・アレクサンダー・アガシズ博士は述べた。”エクソン・モービルが、我々の地球の将来が今、そして今後の数年の間に我々がとる措置に依存している時に、このように長い間、事実を曇らせようとしてきたことは恥ずべきことである。”

 石油や他の化石燃料を燃やすことは地球を覆い熱を閉じ込める大気中の二酸化炭素を増やすことになる。大気中の二酸化炭素の量は、前世紀に大幅に増大しており、その結果、地球の温度が上昇している。雇用を確保し消費者の出費を防ぎ、我々の国家の安全を守ることを可能にする一方で、地球温暖化ガスの排出を削減する方法が存在するのに、エクソン・モービルは気候変動科学に混乱を引き起こし、これらの悪辣な行為が将来の気候変動の影響を最小とする有意義な行動を損なうことになる。

 ”エクソン・モービルは地球温暖化に関する偽情報キャンペーンの責任を取る必要がある。消費者、株主、そして議会は同社に対し、この問題に対する行為は受け入れることはできず、変更せよと大声で明確に知らせなくてはならない”と「憂慮する科学者同盟(UCS)」の戦略・政策ディレクターメイヤーは述べた。


訳注:企業の不正・科学者の不正に関連する記事




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