公益科学センター(CSPI)プレスリリース 2006年7月24日
米科学アカデミ−は公平でバランスが取れているか?
科学アカデミ−各種審議会の委員の5人に1人は
審議会の調査結果と利害関係のある会社と結びついている


情報源:Center for Science in the Public Interest (CSPI), July 24, 2006
Are the National Academies Fair and Balanced?
One in Five Scientists on NAS Issue Panels Tied to Firms Involved in Issue
http://www.cspinet.org/integrity/press/200607241.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年7月28日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_06/06_07/060724_cspi_NAS_scientists.html


 議会は米国科学技術アカデミ−(NAS)を独立した科学ベースの勧告を政府の政策立案者に提供するために創設した。しかし、非営利の”公益科学センター(CSPI)”による NAS の21の審議会についての1年間にわたる検証報告 『米国科学技術アカデミ−(NAS)の独立性と客観性を確実にする』 によれば、NAS 審議会に任命されている科学者の内、ほとんど5人に1人は、審議会の結論に直接的な利害関係を持つ会社又は産業グループと直接的な資金的関係を持っている。そして検証した審議会の約半分には、容易に特定できる偏向をもった何人かの科学者がいる。

 CSPI は、米国アカデミー(米国科学アカデミ−(NAS)、米国医学会、米国技術アカデミー、及び米国研究協議会を含む)により作成される報告書の高い品質に疑義をはさむものではない。しかし CSPI は、米国科学技術アカデミ−(NAS)は、NAS が現在得ている信頼を維持するつもりなら、利害関係の競合を回避し、それを明らかにするための、そして バランスを保つための施策を強化すべきであると述べている。

 CSPI が検証した320の審議会のうち18%が、審議会の調査結果に金銭的利害を持つ会社又は産業に直接的で最近の利害関係を持っている。例えば、魚の水銀のリスクを評価している医学会の審議会には、産業界寄りの研究とロビーイング団体である米マグロ基金及び米食品加工協議会から資金を得て研究を行っている一人の科学者がいる。もうひとつの例では、”自動車排出源基準設定検討会”の11人の科学者のうち10人は炭素排出産業と関係があった。同様に、エネルギー省の炭素隔離(訳注:炭素隔離(Carbon Sequestration))プログラムをレビューする NAS 審議会で、11人の委員のうち10人が石油、エネルギー、又は化学産業と結びついていた。このような利害関係の競合は世間に公表されることはほとんどない。

 ”NAS はもっと透明性を保ち、利害関係のない科学者を見つけるよう努力すべきである”−と CSPI の科学の健全性プロジェクトのディレクターであり、この報告書の共著者であるメリル・グーズナーは述べた。”異なる又は対照的な見解をもつ科学者と適切にバランスをとるために、これら偏向をもった審議会メンバーを任命していないかもっと注意を払うべきである。”

 CSPI は、NAS は利害関係と偏向に関する定義を拡張すべきであると勧告する。利害関係の競合には、審議会の作業によって直接的又は間接的に影響を受ける会社と過去5年以内に金銭的結びつき持ったことを含めるべきであり、また、審議会に関するバランスは、専門性だけでなく偏向と見解を反映すべきであると同グループは述べている。不釣合いな数の産業界側科学者からなる審議会は、少なくとも公共の利益を志向する科学者と同数とすべきである。完全な公表に役立たせるために、審議会メンバーが NAS 公表フォームに基づく適切な情報の公表を怠った場合には、3年間はどのような NAS 審議会に任命することを禁ずるというような、遵守を促すための罰則を NAS が採用するよう、この報告書は勧告している。

 ”米国科学アカデミーからの勧告は一般的には米国内及び世界中の政策策定者から受ける尊敬に値する”と CSPI 代表ミカエル・F.ヤコブソンは述べた。”その種の信頼を維持するために、同アカデミーは審議会がしばしば調査対象とする産業界から真に独立していることを確実にしなくてはならない。利害関係の競合を公表させるは役に立つが、そのような利害競合者を排除することに目が向けられなくてはならない。”

 CSPI はワシントンで開催したパネル討議の場でその報告書を発表した。そのパネル討議には、FDA、産業グループ、学界からの代表者らが連邦政府機関及び NAS における審議会での利害競合問題を討議した。

 下院議員モーリス・ヒンチェイ(民主党/ニューヨー州選出)によって提案された医薬品会社や医療機器会社と資金的関係を持つ科学者らが FDA 諮問委員会の委員になることを禁ずる法案が、5月に議会を通過し、秋には議会委員会によって審議される。この法案を支持する CSPI は、NAS のみならず米環境保護局や他の政府機関も連邦審議会法(Federal Advisory Committee Act)の下に同様の施策を取り入れるために調査委員会を立ち上げるよう促している。


訳注(参考資料)
科学技術政策をめぐる米国の科学者たち/科学技術政策研究所 環境・エネルギーユニット 浦島 邦子



化学物質問題市民研究会
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