EWG 2006年8月4日
ケムリスク社CEOへの手紙
六価クロム評価研究に不正に関わったコンサルタント:
研究者らはしばしば産業界とのつながりを公表しない


情報源:Environmental Working Group, August 4, 2006
Consultant in Chrome Fraud:
Researchers Often Fail to Disclose Corporate Conflicts
Letter to ChemRisk CEO
http://www.ewg.org/reports/chromium/ltr_paustenbach_20060804.php/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年8月17日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_06/06_08/060804_ewg_letter_to_ChemRisk_CEO.html

【2006年8月4日】 クロム汚染者から金を支払われ歪められた研究報告を出したコンサルタント会社の毒物学者は、”数十編”の発表された論文が企業からの資金供与を公表していない−と述べている。EWGは、彼に真実を話すよう求めるとともに、彼の職業的倫理規範への違反は非難を免れることができないと主張する。
2006年8月4日
デニス・パウステンバッハ博士、ケムリスク社創設者、社長
25 Jessie Street at Ecker Square San Francisco, California 94105

拝啓、パウステンバッハ博士:

 我々は、『Journal of Occupational and Environmental Health (JOEM)』1997年4月号に発表されたジアンドン・ザーンとシュクン・リによる六価クロムの論文中の資金供与源の秘匿に関するあなたの理論的根拠を『The Scientist』で読んで、大変驚いた。

 本質的にあなたの防御は、”誰でもがしていること”である。

 特に、科学的研究において企業の影響が生じる利益競合(conflicts of interest)についての新たな懸念があるので、このことは、実際の公衆健康に及ぼす結果に関わる非常に重大なことがらをあまりにも軽視した対応である。それは、倫理規範の違反に対する”毒物学会”による非難があってしかるべき基本的な倫理基準を無視するあなたの態度を完全にとらえるものである。

 エンバイロンメンタル・ワーキング・グループ(EWG)は、科学的知識の健全性と力を強く信じるものであり、あなたの無法なやり方が是認されるような倫理の侵食を食い止めるために我々は全力を上げるつもりである。

The Scientist』 は次のように報告している。

・・・しかしパウステンバッハは 『The Scientist』 に、ケムリスクの科学者はだけがそのようなことをやっているわけではないと述べた。” もし、そのジャーナル(機関誌)に過去10年間遡ってこの完全公開ルールが適用されたなら、私は公開には不適切な論文が数十編 (dozens of papers)あったであろうと思う。”

 実際、そのジャーナルはこれらのルールを過去10年間適用している。もしあなたは他の研究者らが『Journal of Occupational and Environmental Medicine(職業環境医学誌)』で資金供与源を秘匿していたということを公に述べたいなら、あなたは、この違反についてあなたが持っている情報を同ジャーナルの編集者に提供する倫理的責任を持つことは明らかである。

 我々はあなたが下記の二つの重要な質問に早急に回答するよう求める。

(1)あなたは何かの理由のために、他の研究の資金供与源を隠したことがあるか?

(2)あなたは科学誌には秘密とされているところからの資金供与を受けている他者によって実施された研究についてしているか?

 我々は、あなたが、この研究はケムリスクによってかかれたものであり、太平洋ガス電気会社(PG&E)によって金が払われたということを、中国の科学者らが彼らの政府から欧米の研究者らとの共同作業を認められなくなることを守るという幾分英雄的行為として、隠したあなたの決定は正しいと主張することを知っている。

 この声明はケムリスクがその役割と PG&E からの資金供与を故意に隠したという告白以上のものである。もっと言えば、職業環境医学誌(JOEM)の編集者も協力して、ただ一人生き残っている1997年論文の中国人”著者”がこの論文をJOEMが撤回することを支持したという事実がある。もし”著者”がその論文が倫理的にも科学的にも耐えうるものであると感じたなら、彼女は撤回を支持することはあり得なかったであろう。

 毒物学の分野は、あなたのインチキで今は撤回された研究により政府の決定に影響を与えようとしたあなたの試みが示すように、環境的汚染から公衆の健康を守るという極めて重要な役割を演じている。ここに示された問題はあなた又はあなたの部下が犯した不正行為ほど多くはないが、利害競合の公表を隠すことは毒物学と環境のコンサルタントの分野ではよくあることなので、あなたの科学者としての名声と評判は彼らをそのような傲慢なやり方を払いのけることができる。

 我々はこの件は公衆の健康問題を危うくする深刻な問題であるということを申し添え、あなたの回答をお待ちしている。

敬具

リチャード・ワイルス、副代表

写し:
ジェームス A. ポップ博士、毒物学会会長
ポール W. ブランド−ラウフ博士、『職業環境医学誌(JOEM)』編集長


訳注(当研究会訳関連記事)




化学物質問題市民研究会
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