世界のEDC政策の動向
国際的な動き


化学物質問題市民研究会
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更新日:2021年2月2日
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■国際的な動き
(内容)
 ▼IPEN/内分泌学会 プラスチックは人間の健康に脅威を及ぼす (21/02/02)
 ▼最近のレビューが内分泌かく乱物質に関して警告を発する (21/02/02)
 ▼EHP 2020年7月30日 ビスフェノール暴露と 2 型糖尿病:潜在的リスク要素の新たな証拠 (21/02/02)
 ▼UNEP/WHO 報告書に対する批判への反証
 ▼内分泌学会の新たな報告書
 ▼内分泌学会とIPEN による内分泌かく乱化学物質に関する新たなガイド
 ▼UNEPとWHO の新たな報告書
 ▼SAICM の新規政策課題

▼UNEP/WHO 報告書に対する批判への反証 (15/11/14)
  • 2015年7月31日にRegulatory Toxicology and Pharmacology に論文 『内分泌かく乱物質の科学についての疑念を作り出す:UNEP/WHO 報告書 ”内分泌かく乱化学物質の科学の現状 2012年版”に対する産業側の後援を受けた批判的コメントへの反証』 が発表されました。これは バーグマン(Ake Bergman)ら UNEP/WHO 報告書の著者らによるラム(James C. Lamb IV )ら産業側学者の批判論文に対する詳細な反証です。

  • 反証論文の要約は次のように述べています。

     ”我々は、ラムらを著者とする金銭的利害関係者らによる ”State of the Science of Endocrine Disrupting Chemicals 2012”(UNEP/WHO, 2013)(内分泌かく乱化学物質の科学の現状 2012年版への批判(2014)に対する詳細な反証を提示する。UNEP/WHO, 2013 は内分泌かく乱に関するバランスのとれた展望を提供していないというラムらの主張は、研究の目的、結果、及び結論の適切な記述の抜け落ちと不正確な記述を通じて報告書の不完全で誤解を与える引用に基づいている。 ラムらは、証拠の統合のために極めて狭い基準を定義し、UNEP/WHO 2013 報告を欠陥あるものとして退けるために使用している。我々は、ラムらが経験的な観察から因果関係を推論する時に存在する基本的な問題を無視することにより、特にブラッドフォード・ヒル基準(Bradford Hill criteria)のための概念的な枠組みを誤用していることを示す。我々は、ラムらの UNEP/WHO 2013 報告を潰そうとする企てはとりわけ学問的ではなく、彼らの批判は科学界を納得させるのではなく、科学的データを混乱させることを意図していると結論付ける。その結果、それは内分泌かく乱の話題に本質的になじみのない、従って偏りと主観の誤った普遍化(false generalizations )に影響されやすい非専門家、官僚、政治家及びその他の意思決定者が UNEP/WHO 2013 報告を誤解することを助長する”。

  • また、ラムらのやり方は世界の大手タバコ産業がタバコ規制を阻止するために用いた科学的証拠の虚偽記載と類似するして次のように述べています。
     ”・・・UNEP/WHO (2013) の信頼性を損ねるためにラムらにより用いられたやり方は、全ての商標イメージと本文を取り除くための標準パッケージを求めるタバコ規制について現在行われている論争で、タバコ産業により用いられているやり方に著しく似ている。タバコ産業の干渉についてアンカラら( Ulucanlar et al. (2014))により実施された分析は、これらが科学的証拠を虚偽説明するために仕組まれた多くのやり方に基づいていることを示している。これらのやり方の多くはまた、ラムらによって用いられている。
     最も基本的なレベルで、研究目的、手法、及び結果の不正確な報告を通じて誤解を招く証拠の引用がある。これは、元のソースを部分的にそして選択的に引用する”ピンセット”手法と言われるものであり、それにより適切な情報を故意に省略している (Ulucanlar et al., 2014)。ラムらは、故意かどうか分からないが、 WHO/IPCS 2002 報告書に関連して、報告書の中で使用されている手法を歪曲することにより、また特にブラッドフォード・ヒルの見解の使用に関連して適切な記述を意図的に落とすことにより、このやり方を非常にしばしば用いている。”ピンセット”手法の他の例は、TBT と DDE 及びそれらの野生生物への影響についてラムらが作りだした論争の中にも見い出すことができる・・・”。
▼内分泌学会の新たな報告書 Executive Summary to EDC-2 (15/11/14)
  • 内分泌学会(Endocrine Society)は、2015年9月28日に『Executive Summary to EDC-2:内分泌かく乱化学物質に関する内分泌学会の第二次科学的声明 (Executive Summary to EDC-2: The Endocrine Society's Second Scientific Statement on Endocrine-Disrupting Chemicals)』を発表しました。この発表は、2015年9月28日−10月2日 ジュネーブで開催された第4回国際化学物質管理会議(ICCM4)で EDC 暴露の健康リスクを制限するために科学的アプローチを用いることの重要性に関して発言する機会に合わせたものであるとしています。

  • 同日に発表された内分泌学会のプレスリリースによれば、この報告書は”内分泌かく乱化学物質(EDCs)と人の健康に及ぼされるリスクに関する科学的証拠の状況を検証した、内分泌学会の画期的な 2009年報告書(参考情報)を増強するものであり、2009年報告書後の数年の間に、追加研究が暴露は糖尿病と肥満になるリスクを高めることと関連していることを発見した。また積み重なる証拠がEDC暴露は、不妊、ホルモン関連のがん、神経系の問題、及びその他の障害に関連していることを示している”としています。

     声明の中で、同学会は次のことを求めています。
    • EDC 暴露と健康状態との間の因果関係をもっと直接的に推測するための追加的な研究
    • 化学物質は使用が許される前に、低用量でのテストを含んで、内分泌作用についてテストされることを確実にするための規制
    • ”グリーン・ケミスト(環境と健康に配慮する化学者)とその他の産業パートナーが潜在的な EDCs のテストを実施し、それを除去する製品を作りだす要求 ”
    • 未だ生まれていない子どもたちを暴露から守るための方法はもちろん、EDCs を食品、水、空気から締め出すための方法に関する公衆と政治家のための教育

  • NGOは歓迎 (HEAL reaction
    Brussels, 28 September 2015 - The Health and Environment Alliance (HEAL) welcomes the release today of the Executive Summary of a crucial and authoritative scientific statement to be published in the October online issue of the Endocrine Reviews, a journal of the Endocrine Society.
▼内分泌学会とIPEN による内分泌かく乱化学物質に関する新たなガイド (15/11/14)
  • 内分泌学会とIPEN 共同イニシアチブとして作成した『内分泌かく乱化学物質(EDCs)入門:公益団体と政策立案者のためのガイド』を、2014年12月15日〜17日ジュネーブでの SAICM 推進のための「国際化学物質管理会議(ICCM)に関する公開作業部会第2回会合(OEWG2)」の開催に合わせて発表しました。

  • このガイドの序文は次のように述べています。
     内分泌かく乱化学物質(EDCs)の健康影響についての科学的理解は近年、増大しており、2012年にこの問題は、Annex I に示されるように国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)を経て、国際的化学物質政策の舞台に登場した。SAICM は、2020年までに化学物質が人の健康と環境への有意な悪影響を最小限にするような方法で使用され、製造されることを確実にすることを目標とした化学物質の適切な管理を促進する多様な利害関係者の政策の枠組みである。

     内分泌かく乱化学物質(EDCs)につての地球規模での意識向上を図るために、内分泌学会と IPEN は、共同でこの EDC ガイドを開発した。このガイドは、世界の EDC 暴露と健康リスクを包括的に描くために、双方の組織が単独で行うのではなく、双方の組織から情報を得て統合した。内分泌学会著者らは科学的及び健康関連の内容に貢献し、IPEN は、世界の政策に関する知識と途上国及び移行経済国の展望を提供した。

     このガイドを準備し配布するに当たり、我々は、世界的な政策策定者、政府指導者、そして世界中の公益組織がEDCsとは何か、EDCsは人の健康にどのような影響をもたらすのかについてより良く理化するのに役立つことを希望する。我々はさらに、よりよく知ることはEDCsの知識を強化し、これらの化学物質の影響についての新たな研究を推進し、EDC政策と規制の策定に適用されるべき内分泌原則の決定的な必要性のより高い評価を促進するための追加的なプログラムをもたらすであろう。
▼UNEPとWHOの新たな報告書
▼SAICMの新規政策課題


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