UNEP ニュースセンター 2013年2月19日
ヒトと野生生物のホルモンかく乱物質への曝露影響を
画期的な国連報告書が検証


情報源:UNEP News Centre, February 19, 2013
Effects of Human and Wildlife Exposure to Hormone-Disrupting Chemicals
Examined in Landmark UN Report
http://www.unep.org/NEWSCENTRE/default.aspx?DocumentID=2704&ArticleID=9403

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2013年2月20日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/Int/130219_UNEP_News_EDC_Report.html


 【2013年2月19日ナイロビ】 国連環境計画(UNEP)と世界保健機関(WHO)による新たな報告書 『内分泌かく乱化学物質の科学の現状 2012年版(State of the Science of Endocrine Disrupting Chemicals 2012)』(訳注1:参考:内分泌かく乱化学物質の科学の現状 2012年版 意思決定者向け要約(nihs 版)) によれば、ホルモン系へのかく乱影響がテストされていない多くの合成化学物質は、著しい健康影響を持つ可能性がある。

 この共同研究は、多くの家庭用品や産業製品中に見出される内分泌かく乱化学物質(EDCs)と特定の疾病や障害との間の関連を十分に理解するために、もっと多くの研究を求めている。本報告書は、もっと包括的な評価とよりよいテスト手法をもてば、潜在的な疾病リスクは低減され、公衆の健康に著しい利益をもたらすと言及している。

 人の健康は、代謝、成長と発達、睡眠、そして気分のような機能にとって本質的なある種の内分泌の放出を制御するための良く機能する内分泌系に依存する。内分泌かく乱物質(EDCs)として知られるある種の物質はこの内分泌系の機能を変更することができ、有害な健康影響のリスクを増大させる。あるEDCsは、自然に存在するが、合成されたものは、農薬、電子機器、身体手入れ用品、化粧品などの中に見出すことができる。それらはまた、添加物又は汚染物質として食品中にも見出すことができる。

 今日、EDCに関する最も包括的な報告書であるこの国連の研究は、EDCsへの曝露と、そのような化学物質が引き起こす可能性のある若い男性の停留精巣、女性の乳がん、男性の前立腺がん、子どもの神経系の発達障害、子どもの注意欠陥多動症、そして甲状腺がんなどを含む健康問題とのある関係をハイライトした。

 EDCsは、主に産業及び都市からの排出、農業排水、及び廃棄物の焼却と放出から環境中に入り込む。人の曝露は食物摂取、ダストと水、ガスと大気中の粒子の吸入、及び皮膚接触で起きる。

 ”化学製品は、ますます現代生活の一部となり、多くの国家経済を支えているが、化学物質の不適切な管理は、全ての人々のための主要な発展目標の達成と持続可能な発展に疑問を抱かせる”と国連事務局次長でありUNEPの事務局長アキム・スタイナーは述べた。

 ”新たなテスト手法と研究への投資は、EDCsへの曝露コストの理解を強化することができ、リスクを削減し、便益を最大化し、グリーンエコノミーへの移行を反映するもっと知的な選択肢に光を当てることを支援する”と、スタイナーは付け加えた。

 化学物質曝露に加えて、年令や栄養のような他の環境的及び非遺伝子的要素も観察される疾病と障害の増大の理由である可能性がある。しかし厳密に正確な原因と影響を見つけることは知識の広いギャップのために極めて難しい。

 ”我々は、内分泌かく乱物質の健康と環境への影響のもっと十分な像を得るために、もっと多くの研究が至急必要である”とWHOの公衆健康環境のディレクターであるマリア・ネイラ博士は述べた。”最新の科学は、地球上の全てのコミュニティーがEDCsに曝露しており、それに関連するリスクに曝されている。WHOは、リスクを軽減するために、EDCsとヒト健康影響との関連を調査するための研究優先順位を確立するためにパートナーと作業を行うであろう。我々全てには将来の世代を守るための責任がある”。

 この報告書はまた、野生生物に及ぼすEDCsの影響に関する同様な懸念を提起している。アメリカのアラスカでは、そのような化学物質への曝露が、ある鹿の集団に生殖障害、不妊、角の異常をもたらしているかもしれない。カワウソとアシカの種の個体数の減少もまた、PCB類、殺虫剤DDT、その他の残留性有機汚染物質、水銀のような金属の多様な混合物への曝露が部分的に影響しているかもしれない。一方、EDCsの使用に関する禁止と制限は、野生生物の個体数の回復と健康問題の低減に関連している。

 この研究は、これらの化学物質の世界的な知識の改善、潜在的な疾病リスクの削減、そして関連するコストの削減のために、多くの勧告をしている。これらには次のようなものが含まれる。
  • テスト:
     知られているEDCsは氷山の一角であり、他の可能性ある内分泌かく乱物質、それらの発生源、そして曝露経路を特定するために、もっと包括的なテスト手法が求められる。
  • 研究:
     ヒトと野生生物がますます曝露しているEDCsの混合物(主に産業副産物から)のヒトと野生生物への影響を特定するためにもっと具体的な証拠が必要である。
  • 報告:
     製品、材料、及び商品中の化学物質に関する不十分な報告と情報のために、EDCsの発生源の多くは知られていない。
  • 協力:
     科学者間及び諸国間でのもっと多くのデータを共有することで、特に発展途上国及び移行経済国において、データのギャップを埋めることができる。
 ”研究は、内分泌かく乱が10年前に理解されていたより、はるかに広範であり複雑であることを示しつつ、最近の10年間に大幅な進展をみせた”と、ストックホルム大学の教授であり、本報告書の主著者であるアケ・バーグマンは述べた。

 ”科学は進展し続けるので、今こそ、内分泌かく乱化学物質の管理とこれらの化学物質の野生生物とヒトの曝露と影響に関する更なる研究の両方が行なわれるべき時である”。

記者へのノート

The full report, State of the Science of Endocrine-Disrupting Chemicals, is available at:
http://www.who.int/iris/bitstream/10665/78101/1/9789241505031_eng.pdf

A summary of the report is available at:
http://www.unep.org/pdf/EDCs_Summary_for_DMs%20_Jan24.pdf

For more information, please contact:
UNEP
Nick Nuttall, UNEP Spokesperson and Director of Communications (Nairobi) on Tel: +41 79 596 5737 / +254 733 632 755 or Email: nick.nuttall@unep.org
Bryan Coll, UNEP Newsdesk (Nairobi), Tel: +254 20 762 3088 / +254 731 666 214, Email: unepnewsdesk@unep.org

WHO
Glenn Thomas, Communications Officer, Department of Communications, WHO, Tel: +41 22 791 3983, Mobile: +41 79 509 0677 Email: thomasg@who.int
Nada Osseiran, Communications Officer, Public Health and Environment, WHO, Tel: +41 22 791 4475, Mobile: +41 79 445 1624 Email: osseirann@who.int

訳注1:参考
内分泌かく乱化学物質の科学の現状 2012年版 意思決定者向け要約(nihs 版)



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る