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Environmental Health Perspectives (EHP), 2020年7月30日
ビスフェノール暴露と 2 型糖尿病： 潜在的リスク要素の新たな証拠 ネイト・セルテンリッヒ 情報源：Environmental Health Perspectives (EHP), 30 July 2020 Bisphenol Exposure and Type 2 Diabetes: New Evidence for a Potential Risk Factor By Nate Seltenrich https://ehp.niehs.nih.gov/doi/10.1289/EHP6637 訳：安間 武（化学物質問題市民研究会） http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日：2020年8月12日 このページへのリンク http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/EU/ehp_200730_ Bisphenol_Exposure_and_Type-2_Diabetes_New_Evidence_for_a_Potential_Risk_Factor.html アブストラクト 缶ライニング、感熱紙、及びポリカーボネート・プラスチックに使用されているビスフェノールA（BPA）［1］［2］は、2型糖尿病を含むさまざまな健康影響に関連付けられている［3］。過去10年間にわたる多くの実験［4］及び集団ベース［5］［6］の研究 は、BPAと糖尿病の関係を調査してきた。2019年10月に Environmental Health Perspectives に発表されたある縦断的研究は BPAだけでなく、その広く使用されている代替ビスフェノールS（BPS）も検証しており、糖尿病と関連付ける証拠に加わった［7］。 その研究では、糖尿病の発生率と、BPA 及び BPS への暴露との間に、従来のリスク要素とは無関係に、明らかな関連があることを見出した。 肥満と座りがちなライフスタイルがこの疾患の最大の予測因子であることを考えると、健康的な食事を取り、活動を続けることで 2型糖尿病を予防できることは十分に確立されている［8］。しかし、これらの既知のリスク要素を持たない個人であっても、BPA や BPS などの内分泌かく乱物質への暴露が糖尿病のお膳立てをする可能性がある。 その調査には、インスリン抵抗性症候群に関する疫学研究（DESIR）のフランスのコホートデータの一部として9年間にわたって追跡された 755人の個人が含まれている［8］。募集時に糖尿病がなかった参加者は、登録時に（1994年から1996）、そして3年後に再び、尿サンプルを提供した。著者らは参加者の BPA 及び BPSへの暴露をこれらのビスフェノール類の尿代謝物に基づいて推定した。 DESIR への 参加者合計 201 人は、その後の9年間のフォローアップ期間中に糖尿病の診断を受けたが、リスクは均等に分布していなかった。著者らは、推定 BPA暴露の第2および第3四分位の参加者は、最も低い四分位の参加者の2倍以上糖尿病を発症する可能性が高いと推定した。推定被ばくが最も高い参加者も同様にリスクが高かったが、中程度にばく露した個人ほどではなかった。分析はまた、尿中 BPS 代謝産物のある参加者は、検出可能な暴露がない参加者と比較して、糖尿病を発症する可能性がほぼ 3倍高いことも示唆した。 ”この研究［7］は縦断的研究（訳注：同じ変数を短期または長期にわたって繰り返し観察することを含む研究計画）であり、ビスフェノール類に関する論文がほとんどないため、特に優れていると思う”とスペインのミゲル・エルナンデス大学のエンジェル・ナダル教授は言う。この研究に関わっていなかったナダルは、2006年以来、BPA暴露と糖尿病の間の生理学的関連を研究してきた［9］。2018年に彼は、低用量の BPAがインスリン反応（2型糖尿病の予測因子）を誘発する実験的研究を男性と女性の小さなグループで共同で実施した ［10］。 人間と動物の研究では、BPAは体内で1日以内に、または場合によってはより早く代謝されることが示されている［11］［12］。 このことは、尿レベルは最近の食物摂取に依存して劇的に変動するかも知れず、尿中の BPA の単一測定は過去の暴露の予測因子として信頼性のないものになるかもしれないことを意味する。”2、3の測定サンプルがあれば、BPA暴露と2型糖尿病の関係がより強くなる”とナダルは言う。 当該研究［7］の第一著者でありフランスのパリデカルト大学の准教授であるファニー・ランシエールによると、BPAとBPSの暴露が糖尿病リスクに影響を与えるメカニズムは複雑で、完全には理解されていないが、確かにありそうなことである。”BPAが糖尿病の発症に影響を与える可能性があるインスリン抵抗性及び膵臓ベータ細胞機能不全など、いくつかの生物学的経路が同定された［13］”と彼女は言う。 ランシエールは、BPSに関する文献が少ないことを指摘する。 ”しかし、実験的研究の最近の系統的レビュー［14］は、BPSには BPAと同様の内分泌かく乱作用があると結論付けたが、それらの化学構造間の類似性を考えると驚くべきことではない”と彼女は付け加える。 当該研究［7］の上級著者のダイアナ・マグリアノは、他の研究では BPAと BPS 以外の内分泌かく乱化学物質が糖尿病の発生率と関連付けている［13］［15］と、述べている。 「しかし間違ってはいけない。糖尿病に最もなりやすいのは、体重が増えて肥満になることである”と彼女は言う。 「しかし、[ある特定の内分泌かく乱物質]は、肥満や食事、喫煙の有無、運動の有無に関係なく、それ自体で何らかの関連性を持ってる”。 BPAとの関連のパターンは非単調な用量反応を示唆しており、中程度に暴露した人々の中に最も高い推定糖尿病リスクが存在する。 ただし著者らは、この傾向は偶然の発見である可能性もあると述べている。 非単調な用量反応は、非常に低いレベルの影響が内因性ホルモンの影響と一致するように、ホルモン模倣化学物質の特徴である可能性がある。 一方、高濃度の暴露は、圧倒された細胞受容体の下方制御または脱感作を引き起こす可能性がある［16］。 シカゴにあるイリノイ大学の准教授であり、内分泌かく乱化学物質と2型糖尿病の関連についてのレビューの共著者であるロバート・サーギス［17］は、 研究チームの発見はより安全な製品の必要性を示していると言う。”BPAがついに注目を集め、人々がその悪影響に同調していることを企業が認識し始めたため、企業はそれを他のビスフェノール類に置き換える方向に動いた。また、この論文で強調されていることは、代替化合物が常に優れているとは限らないということである”と、今回の研究には関与していないサーギスは言う。 ”企業は自社のラベルに’BPAフリー’を謳うことを誇りに思っている。これはある程度称賛に値するが、高いリスクがあることを誤って伝えている可能性がある”。 ネイト・セルテンリッヒは、サンフランシスコ・ベイエリアの科学と環境を取り上げている。エネルギー、エコロジー、環境の健康などの主題に関する彼の記事は、地域、国内、および国際的なさまざまな出版物に掲載されている。 References 1. National Institute of Environmental Health Perspectives.2019. Bisphenol A (BPA). [Website.] Updated 5 March 2020. https://www.niehs.nih.gov/health/topics/agents/sya-bpa/index.cfm [accessed 17 July 2020]. Google Scholar 2. Bernier MR, Vandenberg LN. 2017. Handling of thermal paper: implications for dermal exposure to bisphenol A and its alternatives. PLoS One12(6):e0178449, PMID: 28570582, 10.1371/journal.pone.0178449. Crossref, Medline, Google Scholar 3. Ranciere F, Lyons JG, Loh VHY, Botton J, Galloway T, Wang T, et al.2015. Bisphenol A and the risk of cardiometabolic disorders: a systematic review with meta-analysis of the epidemiological evidence. Environ Health14(1):46, PMID: 26026606, 10.1186/s12940-015-0036-5. Crossref, Medline, Google Scholar 4. Alonso-Magdalena P, Quesada I, Nadal A. 2011. Endocrine disruptors in the etiology of type 2 diabetes mellitus. Nat Rev Endocrinol7(6):346-353, PMID: 21467970, 10.1038/nrendo.2011.56. Crossref, Medline, Google Scholar 5. 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