内分泌学会−IPEN 共同イニシアティブ
2014年12月
内分泌かく乱化学物質(EDCs)入門
公益団体と政策立案者のためのガイド


情報源:A JOINT ENDOCRINE SOCIETY.IPEN INITIATIVE TO RAISE GLOBAL AWARENESS
ABOUT ENDOCRINE-DISRUPTING CHEMICALS
INTRODUCTION TO ENDOCRINE DISRUPTING CHEMICALS (EDCs)
A GUIDE FOR PUBLIC INTEREST ORGANIZATIONS AND POLICY-MAKERS
December 2014
http://ipen.org/sites/default/files/documents/ipen-intro-edc-v1_9a-en-web.pdf

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2014年12月19日
最新更新日:2015年7月20日

このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/IPEN/
Dec_2014_Endocrine_Society_and_IPEN_New_Guide_for_EDCs.html

内容
内分泌学会と IPEN について
著者
謝辞
序文
エグゼクティブ・サマリー
1. 主要な健康科学機関が EDCs についての懸念を強調する
2. 人の内分泌系と EDCs についての紹介
 I. 人の内分泌系の背景
   図1. 人の体の主要な内分泌腺
   テーブル1. 主要な内分泌腺
 II. EDCs とは何か、どのようにそれらは使われているか、それらはどこで見つけられるか?
   テーブル2. いくつかの知られている EDCs 及びそれらの用途
   テーブル3. 人の EDC 暴露経路の例
3. EDCs の影響
 I. EDCs に関する歴史的な展望
 II. 個人、そして将来の世代の EDC 暴露
 III. EDCs と内分泌系疾患
   神経系及び行動障害
   肥満、代謝不全、及び関連する障害
   生殖系障害
   がん
   その他の疾病と障害
4. EDCs の科学における最近の進歩とEDCリスク評価のための新たな科学的パラダイムの必要性
 I. EDCs の我々の科学的理解を進めるためにパラダイム・シフトが必要
 II. 発達期の暴露とぜい弱性のウインドウ
   ボックス1: 健康と疾病の発達期起源 (DOHaD)
 III. 閾値、低用量、そして安全な用量はないという概念
   ボックス2: 現代科学と規制政策のギャップの概要
 IV. 混合物
5. 人のEDCsへの暴露
 A) 農薬
 I. DDT
   DDTはどこで使用されているか
   DDTに人々はどこで暴露するのか、暴露の証拠、リスクはどこにあるのか
   DDT がなぜ EDC なのかということに関する科学
   ボックス3: DDTs への暴露による人間の健康影
   有害な内分泌健康影響:2型糖尿病(T2D)
 II. クロルピリホス
   クロルピリホスはどこで使用されているか
   クロルピリホスに人々はどこで暴露するのか、そしてリスクはどこにあるのか
   バイオモニタリング/体内汚染の調査(暴露の証拠)
   クロルピリホスがなぜ EDC なのかに関する科学
   有害な内分泌健康影響:甲状腺かく乱
B) 製品中の化学物質
   ボックス4: フタル酸エステル類
 I. 子ども用品−無機鉛
   鉛はどこで使用されているか
   鉛に人々はどこで暴露するのか、暴露の証拠、そしてリスクはどこにあるか
   鉛がなぜ EDC なのかに関する科学
   ボックス5: 子ども用品中の鉛
   鉛の有害な内分泌健康影響:女性の生殖健康
 II. 電子機器
   PBDEs はどこで使用されているか
   ボックス6: サンアントニオ声明
   人々はどこで PBDEs に暴露するのか、暴露の証拠、そしてリスクはどこにあるか
   PBDEs がなぜ EDC なのかに関する科学
   PBDEs の有害な内分泌健康影響:有害な神経発達影響
C) 食品接触物質
 I. ビスフェノール A
   BPA はどこで使用されているか
   ボックス7 ロシアのBPA
   人はどこでBPA に暴露するか、暴露の証拠、リスクはどこにあるか
   なぜ BPA が EDC なのかの科学
   有害な内分泌健康影響:行動と生殖健康
Annex I
  (第3回国際化学物質管理会議(ICCM3)で採択された 「内分泌かく乱化学物質に関する決議」)
参照


内分泌かく乱化学物質について世界の意識向上を図るための
内分泌学会−IPEN 合同イニシアティブ


内分泌学会と IPEN について
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 内分泌学会
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 1916年に設立された内分泌学会は、内分泌に関する研究と内分泌学の臨床診療に専念する世界で最も古く、最も大きく、最も活発な組織である。内分泌学会の会員は、100か国以上からの18,000 人以上の科学者、医師、教育者、看護師、そして学生からなる。学会の会員は、内分泌学における全ての基礎、応用、及び臨床的関心を体現している。学会の会員の中には EDCs の健康影響に関する世界の主導的な専門家もいる。

 内分泌学会の会員は、外因性化学物質は内分泌系に影響を及ぼすことができるということが初めて認められて以来、EDCs の分野で科学的発達の先頭に立っている。学会は、EDCs に関する第1回公開会議を年次総会と併せて2005年にサンフランシスコで開催した。学会の EDCs に関する画期的な 2009年科学的声明は(訳注)、EDC 文献の最初の包括的なレビューであり、それは国際的な医学界の本流からのこの問題に関する最初の公開声明であった。
(訳注):Endocrine Reviews 2009年6月号 内分泌かく乱化学物質に関する内分泌学会の科学的声明の重要な点

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 IPEN
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 IPEN は、100以上の開発途上国及び移行経済国で活動する 700の非政府組織(NGOs)の主導的な世界のネットワークである。IPEN は、人の健康と環境を保護するために、安全な化学物質政策と実践を確立し実施するために働いている。それは、新たな政策を優先付け達成するために、現場での活動を実施し、お互いの活動から学び、国際的なレベルで働くために組織参加メンバーの能力を構築することにより行われている。その使命は、全てのために有害物質のない未来を築くことである。

 IPEN は 2003年以来、SAICM プロセスに関与しており、その地球規模のネットワークは SAICM の国際的な政策の枠組みの開発を支援している。1998年の設立時、IPEN は、残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約の開発と実施を推進することに焦点をあてた。現在、その使命は、SAICM プロセスを通じて (IPEN は SAICM 事務局に公益組織用座席を保持している) 安全な化学物質管理を促進し、有害金属の拡散を止め、有害物質のない未来のための運動を構築することを含んでいる。

著者
Lead Author:Andrea C. Gore, PhD, The University of Texas at Austin
David Crews, PhD, The University of Texas at Austin
Loretta L. Doan, PhD, Endocrine Society
Michele La Merrill, PhD, MPH, University of California at Davis
Heather Patisaul, PhD, North Carolina State University
Ami Zota, ScD, MS, George Washington University

謝辞
 内分泌学会と IPEN は、この文書の作成に当たり、 Meriel Watts, PhD, Olga Speranskaya, PhD, 及び Joseph DiGangi, PhD に率いられた IPEN リソースチームによる貢献を感謝したいと思います。さらにIPEN はこの文書の作成に当たり情報提供した次の個人に対し感謝します。Tadesse Amera, Bjorn Beeler, Fernando Bejarano, Alexandra Caterbow, Jayakumar Chelaton, Semia Gharbi, Mariann Lloyd-Smith, Gwynne Lyons, Pam Miller, Baskut Tuncak そして多くの他の人々。
 IPENはまた、この文書は、スウェーデン自然保護協会(SSNC)を通じて Swedish public development co-operation aid から財政的支援を得て生成されたことを感謝します。ここに示される見解は、SSNC 又はその寄贈者を含んでこれらの寄贈者の公式見解を必ずしも反映するものではありません

序文

 内分泌かく乱化学物質(EDCs)の健康影響についての科学的理解は近年、増大しており、2012年にこの問題は、Annex I に示されるように国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)を経て、国際的化学物質政策の舞台に登場した。SAICM は、2020年までに化学物質が人の健康と環境への有意な悪影響を最小限にするような方法で使用され、製造されることを確実にすることを目標とした化学物質の適切な管理を促進する多様な利害関係者の政策の枠組みである。

 内分泌かく乱化学物質(EDCs)につての地球規模での意識向上を図るために、内分泌学会と IPEN は、共同でこの EDC ガイドを開発した。このガイドは、世界の EDC 暴露と健康リスクを包括的に描くために、双方の組織が単独で行うのではなく、双方の組織から情報を得て統合した。内分泌学会著者らは科学的及び健康関連の内容に貢献し、IPEN は、世界の政策に関する知識と途上国及び移行経済国の展望を提供した。

 このガイドを準備し配布するに当たり、我々は、世界的な政策策定者、政府指導者、そして世界中の公益組織がEDCsとは何か、EDCsは人の健康にどのような影響をもたらすのかについてより良く理化するのに役立つことを希望する。我々はさらに、よりよく知ることはEDCsの知識を強化し、これらの化学物質の影響についての新たな研究を推進し、EDC政策と規制の策定に適用されるべき内分泌原則の決定的な必要性のより高い評価を促進するための追加的なプログラムをもたらすであろう。

心をこめて、

リチャード J. サンテン (Richard J. Santen, MD)
内分泌学会会長

オルガ・スペランスカヤ (Olga Speranskaya, PhD)
IPEN 共同議長


エグゼクティブ・サマリー
 内分泌かく乱化学物質(EDCs)についての科学的知識は近年急速に増加している。これらの化学物質の人の健康への影響に関する証拠とともに、化学物質の人の健康への影響を評価するために従来の科学的手法に依存することはEDCsを評価するには不適切であり、実際にそのような手法は危険で誤った政策をもたらすかもしれないということを示唆する文献が増加している。
EDCs は内分泌学会により、”ホルモン作用のどの様な面をも妨げる外因性(非天然)の化学物質、又は化学物質の混合”として定義されている。ホルモンは、体中に存在する内分泌腺内の細胞中で生成される天然の化学物質である。
    ホルモンは、ひとつの受精細胞から、血液、骨、脳、その他の組織を作り上げる何百万もの専門化した細胞まで、全ての人々の発達を調整する。各人が発達するにつれて変化する各器官のホルモン要求は、ホルモンが特定の時機に正確な量で存在することを求め、各器官と組織の要求は生涯を通じて変化するということを一世紀以上の生物学上の研究が証明している。非常に低濃度で循環しながら、ホルモンは、異なる栄養上の要求へ体の反応を制御し(例えば、空腹、飢餓、肥満など)、生殖機能に非常に重要であり、体と脳の正常な発達にとって必須である。全体として、内分泌系は環境との主要なインターフェースのひとつであり、身体上のプロセスと健康の発達、適応、及び維持を可能にする。言い換えれば、ホルモンは生活の質を決定する上で重要な役割を果たし、多くのホルモンは生存にとって絶対的に必須である。

 そのように多くの重要な生物学的及び生理学的機能における内分泌系の重要な役割のために、内分泌系のどのような部分の損傷でも病気を、そして死をも、もたらすことがあり得る。したがって、体の内分泌系を妨げることにより、内分泌かく乱化学物質(EDC)への暴露は多くのの機能をかき乱す可能性がある。

 EDCs は、世界の、そしていたるところに存在する問題である。曝露は、家庭でも、事務所でも、農場でも、我々が呼吸する大気からも、我々が食べる食物からも、我々が飲む水からも、起きる。何十万種も製造される化学物質の中で、約100種ほどが内分泌作用の特性を持つと推定される。生物的モニタリング(体液中及び組織中の化学物質の測定)は、ほとんど100%の人が、血液、尿、胎盤と臍帯血、及び脂肪組織のような体組織の中に、検出できるレベルの化学物質汚染を持っていることを示している。EDCs のいくつかの例には、DDT及びその他の農薬、子ども用品、身体手入れ用品及び食品容器などで使用されているビスフェノールA(BPA)及びフタル酸エステル類、そして家具や敷物などで使用されている難燃剤がある。知られている EDCs に加えて、無数の EDCs を疑われる又は今までにテストされたことのない化学物質がある。

 既知の EDCs への暴露は環境中で比較的高く、環境からは産業化学物質が土壌や水に漏れ出し、微生物、藻類、そして植物によって取り込まれ、動物が植物を食べるので動物界に移動し、そこでは大きな動物が小さな動物を食べる。人間を含む食物連鎖の頂点にいる動物は、そのような環境化学物質を体内組織中に最も高い濃度で持っている。

 化学物質の製造と使用の増大が、男性の生殖問題(停留睾丸、尿道下裂、精巣がん)、女性の早熟、白血病、脳腫瘍、及び神経行動学的障害を含んで、過去20年間の内分泌関連の小児障害の増大に関連していると疑うのには理由がある。同時に、世界のプラスチックの製造は1970年代中頃の5,000万トンから今日、3億トン近くにまで増加し、世界の化学産業の販売高は1970年の1,710億ドルから2013年の4兆ドルにまで急激に増加している。ポリ塩化ビフェニール類(PCBs)、BPA、そしてフタル酸エステル類は現在、世界中の人々の血清、脂肪、臍帯血中で検出できる。実際に、”化学を通じてより良い生活”という概念は1930年代に化学産業により導入された。この観念の普及が化学物質製造の世界的拡大の基礎を成した。

 過去2世紀にわたり、野生生物種の現地調査、人に関する疫学的データ、そしてEDCs がどのように生物学的変化を引き起こし、どのようにそれらが病気をもたらすかについての洞察を与える細胞培養と動物モデルによる実験室研究に基づく科学的証拠が急激に出現している。

 しかし、内分泌学者らは現在、従来の毒性テスト手法から転じることが必要であると信じている。化学物質リスク評価に適用されている広く行きわたっているドグマ(教義)は、”毒は用量次第”である。これらのテスト手法プロトコールは、用量と毒性の間には単純な線形の応関係があり、用量が高ければ毒性が高く、用量が低ければ毒性が低いという。この戦略は、ある化学物質がそれ以下では”安全”であるとみなされるある用量を確立するために用いられ、安全閾値を決定するために実験が実施される。従来のテスト手法では、一時にひとつのの化学物質が成獣でテストされ、もしそれらががん又は死亡をもたらさなければ安全であると推定される。

 EDCsの影響を完全に評価し、人の健康を守るために、このドグマからのパラダイムシフトが求められる。EDCは長期の又は連続した環境暴露のために体内に天然のホルモンと同様に存在する。また天然のホルモンと同様にEDCs は体の機能を制御するために、極めて低い用量(典型的にはpptからppbの範囲)で影響を引き起こす。この概念は、暴露が胎内で開始し、その後ライフサイクルを通じて継続することを考えると特に重要である。EDCs が日常生活で遭遇する低レベルであっても人の健康に影響を与えるということを反映するために、新たなテスト手法が必要である。

 純粋な化合物を使用しての単一暴露、用量反応アプローチという古い毒性学的手法よりもむしろ、新たなリスク評価手順が自然界に起きていることをもっと密接に模擬することが極めて重要である。純粋の化合物よりむしろ、我々は化合物の組み合わせ又は混合物の影響を知る必要がある。我々はまた、生命のある段階、特に発達の初期段階は特にEDCs に脆弱なので、従来のリスク評価では標準である成人のEDC 影響テストでは、胎児や幼児の暴露に外挿できないかもしれないということを認識する必要がある。


1. 主要な健康科学機関が EDCs についての懸念を強調する
 内分泌かく乱化学物質(EDCs)とそれらの健康影響についての研究の著しい進歩のために、多くの国際的な健康科学機関の中で、これらの化学物質についての懸念が近年を高まった。内分泌学会は、EDCs に関する科学的声明を2009年に発表して、EDC の状況に関する公的立場を初めて明らかにした(1)(訳注)。
訳注:Endocrine Reviews 2009年6月号 内分泌かく乱化学物質に関する内分泌学会の科学的声明−重要な点

 その時、内分泌学会は、EDCs が公衆健康リスクを及ぼすと結論付けるために十分な証拠があると強く主張した。科学に基づく EDCs への行動を鼓舞する同学会の EDCs と公衆健康保護に関する2012年声明、欧州委員会への書簡(2013年3月)、そして国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)事務局への書簡(2013年6月)は、EDCs の意識向上と理解をさらに促進した。

 2009年の内分泌学会の声明以来、EDCs について世界中で懸念の声を上げる医学会の数は、ホルモン活動を阻害する化学物質の有害な健康影響を明らかにする論文の数と相まって増大した。アメリカでは、医学専門家の最大組織である米国医師会は2009年11月に、”低レベル及び高レベル暴露の両方をカバーする包括的なデータ”に基づく EDCs の規制的監視の改善を求めるひとつの政策(D-135.982, Regulation of Endocrine-Disrupting Chemicals)を採択した(*)。同月、米国公衆衛生協会は、”内分泌かく乱化学物質へのアメリカ人の暴露を低減する予防的アプローチ”を要求した(†)。米国化学会は内分泌かく乱のテストに関する 2012-2015 政策声明を発表して(‡)、教育と研究の拡大、テスト手順の更新、及び EDCs へのより安全な代替物質の開発を勧告した。

* https://ssl3.ama-assn.org/apps/ecomm/PolicyFinderForm.pl?site=www.ama-assn.org&uri
=%2fresources%2fhtml%2fPolicyFinder%2fpolicyfiles%2fDIR%2fD-135.982.HTM
 (2015年7月12日現在リンク切れ)
http://www.apha.org/policies-and-advocacy/public-health-policy-statements/policy-database/
2014/07/09/09/03/a-precautionary-approach-to-reducing-american-exposure-to-endocrine-
disrupting-chemicals

http://www.acs.org/content/dam/acsorg/policy/publicpolicies/promote/endocrinedisruptors/
endocrine-disruption.pdf


 多くの国際的及び世界的健康機関もまたEDC政策の改善の要求を取り上げている。2013年2月に世界保健機関(WHO)と国連環境計画(UNEP)は、内分泌かく乱化学物質の先端科学に関する 2012年共同報告を発表した(*)(2)(訳注)
訳注:UNEP ニュースセンター 2013年2月19日 ヒトと野生生物のホルモンかく乱物質への曝露影響を画期的な国連報告書が検証

 この報告書は、EDCs とそれらの人の健康に及ぼす影響についての現在の理解を概観するものであり、それはまた、テスト手法の改善とEDCsへの暴露の低減を勧告している。また2013年に、高名な職業及び環境衛生の専門家の国際的な学会であるラマツィーニ協会は、欧州連合における EDCs に関する声明を発表し(†)(訳注)、REACH(化学物質の登録、評価、認可及び制限に関する規則)の範囲の拡大と、規制的意思決定において化学的証拠の完全性のもっと包括的な評価を求めた。
訳注:ラマツィーニ協会 プレスリリース 2013年6月13日 ラマツィーニ協  内分泌かく乱化学物質(EDCs)と欧州連合における化学物質安全政策に関する公式見解を発表

同じく2013年に独立系科学者らの大きなグループがベルEDCsに関する懸念を表明するレモン宣言を発表し、欧州委員会に対してこれらの化学物質を統括する規制体制を改善するよう求めた(‡)(訳注)。この宣言は、チリ、中国、チェコ共和国、メキシコ、南アフリカ、及びいくつかの欧州連合加盟国を含む19か国からの100名近くの科学者らにより署名された。
訳注:EurActiv 2013年5月24日 89人の科学者がホルモンかく乱化学物質に行動を起こすようEUに求めベルレモン宣言に署名

* http://www.who.int/ceh/publications/endocrine/en/
http://www.collegiumramazzini.org/download/EDCs_Recommendations(2013).pdf
http://www.brunel.ac.uk/__data/assets/pdf_file/0005/300200/The_Berlaymont_Declaration
_on_Endocrine_Disrupters.pdf


 上記の事例は全てを網羅したリストではなく、有害化学物質のより広い領域という脈絡で EDCs に目を向ける大きな医学協会による声明を含んでいない。2013年10月、米国産科婦人科協会、及び米国生殖医学会は、共同委員会意見を発表し、有害な環境物質の特定と暴露を削減するための時宜を得た行動を求めた(*)(3)。英国産科婦人科王室協会は、2013年妊娠中の化学物質曝露に関する科学的影響論文を発表し(†)、妊娠中又は授乳中の女性に、まだ生まれていない子どもへの危害を最小にすることに関して彼女らが積極的な行動をとるために化学物質の暴露源と経路を伝えた(4)。最後に、子どもの健康と環境に関する国際会議は、2013年子どもたちの健康を環境的ハザードから守るための彼らの使命に関するエルサレム声明を発表した(‡)。

 世界の科学及び医学コミュニティは、EDCsとそれらの人の健康への有害な影響への懸念を表明し続けているので、公共政策は利用可能な最新の科学的証拠に立脚するべきである。

* http://www.acog.org/~/media/Committee%20Opinions/Committee%20on%20Health%20
Care%20for%20Underserved%20Women/co575.pdf?dmc=1&ts=20140912T1804036966

https://www.rcog.org.uk/en/guidelines-research-services/guidelines/sip37/
http://www.isde.org/Jerusalem_Statement.pdf


2. 人の内分泌系と EDCs についての紹介
I. 人の内分泌系の背景

st_major_endocrine_glands.jpg(32594 byte)
図1. 人の体の主要な内分泌腺 女性(左)、男性(右)

 内分泌系は、体中に分散する一連の腺(glands)からなっている(図1)。それぞれの腺は、ひとつ又はそれ以上のホルモンを生成する。ホルモンは、腺内の細胞で生成され、循環系に放出される化学物質であり、血流を通じて目標とする組織や器官に到達するまで移動する。そこで、ホルモンは特定の受容体と結合し、特定のホルモンとその目標に依存しつつ、他のホルモンの生成、代謝の変更、行動的反応、又はその他の反応等を引き起こす。ある内分泌腺は、ひとつのホルモンを生成し、一方他のホルモンは複数の内分泌ホルモンを生成する(テーブル1)。例えば、副甲状腺(parathyroid gland)はひとつのホルモン(副甲状腺ホルモン)を生成するが、脳下垂体腺(pituitary gland)は、プロラクチン及び成長ホルモンを含んで8つ又はそれ以上のホルモンを生成する。プロラクチンは、母乳の生成に関わり、乳児に授乳する女性のプロラクチン腺においてのみ合成され分泌される。対照的に成長ホルモンは、小児期の成長と発達に、また成人期には筋肉と骨格の形成と維持に重要なので、生涯を通じて合成される。また、ある内分泌腺は他の非内分泌機能を持つことが注目に値する。膵臓がよい例である。それはインスリンを生成するが、それは血流中で循環し、血糖値のレベルを正常に保つために必要である。そして膵臓は、消化管に直接行く消化酵素を作るが、それらは血液中に放出されないので内分泌系の一部ではない。明らかに内分泌系と機能は複雑で多様であり、それぞれの腺とホルモンは健康と幸福に独自の役割りを果たしている。

 これらの例は、テーブル1 に示される追加的な情報とともに、全ての内分泌系についての極めて重要な点を強調している。それらは人の健康のために必須である。内分泌腺とそれらが生成するホルモンは、体が環境的変化に適応することを可能にする。それらは異なる栄養的要求への反応に見い出される代謝調整を可能にする(例えば、空腹、飢餓、肥満、等)。それらは生殖機能に極めて重要である。そしてそれらは体と脳の正常な発達にとって本質的である。この様に、内分泌系は全体として、体の環境との主要なインターフェースのひとつであり、肉体的なプロセスと健康の発達、適応、そして維持を可能にしている。

 内分泌系のそのように多くの重要な生物学的及び生理学的機能における極めて重要な役割のために、内分泌系のどのような部分の機能障害でも疾病や、さらには死亡すら、もたらすことがある。例えば、糖尿病患者はインスリン放出及び/又は活動が不足し、1型糖尿病の人はインスリン補充がなく死亡することがある。アルドステロンもまた生命にとって極めて重要であり、アルドステロン機能に影響を与える副腎疾患は命を危うくする。しばしば甲状腺ホルモンのようなホルモンの過小又は過剰分泌は、甲状腺ホルモンの日々の細胞代謝と脳機能における重要な役割のために、代謝障害と多くの物理的及び神経生物学的な変化をもたらす。他のホルモン障害には不妊、成長障害、睡眠障害、及びその他の慢性及び急性疾病がある。従って健康な生活を可能とするために、内分泌ホルモンは適切な量で放出されなくてはならず、内分泌腺は環境の変化に対応してホルモン放出を調整することができなくてはならない。


テーブル1. 主要な内分泌腺

内分泌腺 場所 分泌される主要ホルモン 一般的機能
脳下垂体
(Pituitary)
脳の直下
口蓋の上
1. 成長ホルモン
2. 甲状腺刺激ホルモン(TSH)
3. 副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)
4. 黄体形成ホルモン(LH)
5. 卵胞刺激ホルモン(FSH)
6. 乳腺刺激ホルモン(プロラクチン)
7. 下垂体後葉ホルモン(オキシトシン
8. 抗利尿ホルモン(バソプレシン )
1. 成長
2. 代謝
3. ストレスと免疫反応
4. & 5. 生殖(男性&女性)
6. 母乳生成
7. 授乳期間中の母乳分泌
及び分娩中の子宮収縮
8. 電解質バランス及び血圧
松果腺
(Pineal)
脳中の二つの
脳半球の間
松果体ホルモン(メラトニン) 睡眠、覚醒、活動の
24時間生物リズム
甲状腺
(Thyroid)
下部咽喉の両側 1. 甲状腺ホルモン
2. カルシトニン
1. 代謝
2. カルシウムのバランス
副甲状腺
(Parathyroid)
甲状腺に隣接 副甲状腺ホルモン カルシウムのバランス
視床下部
(Hypothalamus)
脳底 1. 成長ホルモン放出ホルモン
2. 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン
3. 副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン
4. 性腺刺激ホルモン放出ホルモン
5. ドーパミン
1. 成長
2. 代謝
3. ストレスと免疫反応
4. 生殖
5. 母乳分泌
膵臓
(Pancreas)
腹部 1. インスリン
2. グルカゴン
1. & 2. 血糖及びその他の
栄養素の制御
副腎
(Adrenal)
腎臓の上 1. 糖性グルココルチコイド群
(コルチゾール)
2. 副腎皮質ステロイド
(アルドステロン)
3. 性ステロイド(DHEA 他)
1. ストレスと免疫反応
2. 血圧と水分バランス
3. 筋肉と骨の成長
卵巣(女性)
(Ovary)
下腹部 性ステロイド、特にエストロゲンと
黄体ホルモン
女性の生殖
精巣(男性)
(Testis)
陰嚢 性ステロイド、特にアンドロゲン
(テストステロン)
男性の生殖

II. EDCs とは何か、どのようにそれらは使われているか、それらはどこで見つけられるか?

 EDCs は、内分泌学の分野で働き、医療に従事している科学者と医師の最大の国際的団体である内分泌学会(endocrine.org)により、最近、”ホルモン活動のあらゆる面を阻害する外因性の[非天然の]ひとつの化学物質又は複数の化学物質の混合物”として定義された[5]。85,000以上の化学物質が製造されているが、そのうち数千が EDCs かもしれない。EDCs を代表するいくつかの化学物質とその用途がテーブル2 に示されている。これらの他に、EDCs を含む数十のプロセスと製品があるが、数が多すぎてこのテーブルに含めることができない。


テーブル2. いくつかの知られている EDCs 及びそれらの用途

カテゴリー用途 EDCs の例
農薬 DDT、クロルピリホス、アトラジン、2,4-D、グリホサート
子ども用品 鉛、フタル酸エステル類、カドミウム
食品接触材料 BPA、フタル酸エステル類、フェノール
電子機器、建材 臭化難燃剤、PCB 類
身体手入れ用品、医療用チューブ フタル酸エステル類
抗菌剤 トリクロサン
布製品、衣料品 過フッ素化合物

 人や動物は、食物や水の摂取、皮膚経由、呼吸、母親が体内に EDCs を持っていれば胎盤を通過して又は母乳を通じて母親から胎児への移行、など様々な経路を通じて EDCs に暴露する(テーブル3)。


テーブル3. 人の EDC 暴露経路の例

どのように EDCs に暴露するか どこから EDCs は来るか EDCs の例
汚染された食物や水の口からの摂取 土壌や地下水を汚染する産業排水や農薬 PCB類、ダイオキシン類、過フッ素化合物、DDT
汚染された食物や水の口からの摂取 食品や飲料容器からの化学物質の漏えい;食品や飲料中の残留農薬 BPA、フタル酸エステル類、クロルピリホス、DDT
皮膚接触や呼吸 難燃剤処理された家具類 臭化難燃剤(BFRs)
皮膚接触や呼吸 農業用、家庭用、疾病媒介生物防除用農薬 DDT、クロルピリホス、ビンクロゾリン 、ピレスロイド
静脈 静脈用チューブ フタル酸エステル類
皮膚への塗布 ある種の化粧品、身体手入れ用品、抗菌剤、日焼け止め、医薬品 フタル酸エステル類、トリクロサ、パラベン、防虫忌避剤
胎盤からの生物学的移行 母体の以前又は現在の暴露 様々な EDCs が胎盤を通過できる
母乳からのからの生物学的移行 母体の以前又は現在の暴露 様々な EDCs が母乳中で検出されている

 EDCs がどのように内分泌系をかく乱するかを理解するためには、体の中で天然のホルモンがどの様に機能するのかについての基本的な理解が必要である。それぞれの内分泌ホルモンの化学的組成と3次元的形状はユニークである。どのホルモンも標的とする細胞に局在している対応する受容体(ひとつ又は複数)を持つ。ホルモンと受容体の関係は補完的である、すなわち、ある鍵(ホルモン)はある錠(受容体)に特有である。ある組織又は器官のホルモンに対する反応は、標的細胞上の受容体の存在及びホルモン結合による受容体活性化によって決定される。受容体を活性化させるホルモンの能力は、どのくらい多くのホルモンが内分泌腺によって合成され放出されるか、それはどのように循環系を通じて移動するか、どのくらい多く標的器官に到達するか、そして、ホルモンがその受容体をいかに強く、長く活性化することができるか−ということを含んで、いくつかの要素に依存する。これらの特性は正常なホルモン信号伝達にとって基本的である。EDCs は、これらのありとあらゆるステップを阻害する。

 EDCs はしばしば、天然ホルモンを擬態する又は阻止することにより内分泌系をかく乱する。ホルモン擬態の場合には、 EDC は、ホルモンの受容体に EDC がホルモンであると考えるよう”だます”ことができ、このことが不適切に受容体を活性化し、通常は天然のホルモンによってのみ活性化されるプロセスを起動する。ホルモン阻止の場合には、EDC はホルモン受容体に結合することはできるが、この場合、例え天然のホルモンが存在しても、受容体は阻止されて活性化されることができない。

 最もよく知れれている例は、エストロゲンホルモン(訳注:女性ホルモンの一種)の内分泌かく乱であり、それは体のエストロゲン受容体(ERs)に作用する。オスにもメスにも ERs は、脳、骨、血管組織、そして生殖組織中の多くの細胞中に存在する。エストロゲンはメスの生殖における役割として最もよく知られているが、それらはオスの生殖にとっても重要であり、また、神経生物学的機能、骨の発達と維持、心循環系機能、その他多くの機能にも関与している。天然のエストロゲンは、腺(卵巣−メス、精巣−オス)から放出された後、標的組織中の ERs 結合することにより、これらの機能を働かせる。

 エストロゲン受容体は、最もよく研究されているが、しかしこの様な方法で EDCs により攻撃される唯一の受容体というわけではない。アンドロゲン(テストステロン)(訳注:男性ホルモンの一種)、黄体ホルモン、甲状腺ホルモン、その他多くのホルモンの受容体は、EDCs によりその機能を阻害される。加えて、EDCs は天然ホルモンではないので、単一の EDC であっても多様なホルモン信号伝達経路に影響を及ぼす能力を持っているかもしれない。従って、ひとつのタイプの EDC が、2、3、又はそれ以上の内分泌機能をかく乱し、これらのぜい弱な内分泌腺により制御されている生物学的プロセスに、広範な影響を及ぼすことができるということは全くありそうなことである。


3. EDCs の影響
I. EDCs に関する歴史的な展望

 1940年以来、工業的化学物質の数と量は指数関数的に増大しており、それらのあるものは環境中に(意図的にあるいは非意図的に)放出されてきた。この化学物質革命は、野生生物と人の健康に深刻な影響を及ぼすやり方で不可逆的に生態系を変えている。1962年に出版されたレーチェル・カーソンの本 『沈黙の春』 は、環境汚染、特に農薬 DDTが、その他の有害化学物質とともに引き起こした生殖系不全による鳥類の数の減少の原因に違いないとする最初の公的警告であった。

 しかし、化学物質曝露がヒトに毒性を及ぼすかどうかは、大規模な化学物質の漏えい又は汚染の場合を除いて明確ではなかった。さらに、現在ではある化学物質や医薬品が胎盤を通過するということはよく受け入れられているが、50年前には胎盤は発達中の胎児をどのような暴露からも保護する障壁として働くと考えられていた。しかし二つの不幸な臨床的出来事が、この考えを変え、最終的には否定した。一番目は、妊娠第一期のつわりを軽減するためにサリドマイドを与えられた妊婦が、時には深刻な形成異常をもった赤ちゃんを生んだという現実であった。明らかに胎児は母親に与えられた医薬品にぜい弱であった。二番目の貴重な発見は、流産防止のために母親に投与されたジエチルスチルベストロール(DES)についてであった。DES は、天然のエストロゲン・ホルモンに似た特性を持っている。胎内で DES に暴露した少女はしばしば、生殖器系の形成異常と、通常は閉経後の女性だけに見られる生殖器系がんの珍しい思春期での発症があった(6)。暴露(胎児期)と疾病(思春期)の間の長い潜伏期間のために、DES との関連は当初は明らかではなかった。しかし、マウスの胎児に DES を曝露さた実験研究もまた、暴露した仔マウスが成熟したときに生殖器系障害を持つことを示した。少女の胎児期の DES 暴露、生殖器系形成異常、及び後年のがんの間の因果関係は、マウスの実験的 DES 影響と結び付けられ、内分泌かく乱の分野が生まれた。

 一方、化学的に DDT に関連する有機塩素系農薬であるジコホルに暴露したフロリダ州の野生のアメリカアリゲーター(ミシシッピワニ)は、生殖器及び生殖系形成異常を示した。学童の自然観察旅行で発見されたミネソタ州の形成異常のカエルは、農業排水による慢性汚染の問題にさらに光をあてた。これらの及びその他の EDCs との関連を示す他の多くの事例が、あらゆる野生生物種で確認されている(7)。

 驚くに当たらないが、環境の化学物質汚染は、人に影響を与えることが証明されており、これについての更なる議論は後述する。しかし、因果関係の最も直接的な証拠は、急性毒性を持つ高レベル及び、慢性的で、微細で、長期に継続する影響を示すよりより低レベルの両方を含んで、人間が化学物質の様々な量に暴露したいくつかの大規模災害によって示された。ひとつの事例は、イタリアのセべソにおける化学物質製造プラントの爆発であり、住民は高いレベルのダイオキシンに暴露した。もうひとつの悲劇的な暴露事例は、汚染した食用油が大量の中毒を引き起こした、日本の油症(Yusho)事件のPCBs 暴露と、台湾のユーチェン(Yucheng)事件のポリ塩化ジベンゾフラン暴露である。最近の懸念は、2013年7月にインドで有機リン系農薬モノクロトホスによる食用油汚染を通じて起きた学童の中毒事件であり、23人が死亡した。マウスと魚の研究から得られたエストロゲン様特性の証拠があるが(89)、モノクロトホスの長期的内分泌かく乱影響がなお見られるべきである。 もうひとつのよくある人への暴露経路は、作物に定期的に散布される農業暴露である。このことは下記に述べるように農薬が、暴露した農民、近隣の人々、食物の消費者、そして将来の世代にすら影響を及ぼす体内汚染を作り出すことができることを明確にした。

II. 個人、そして将来の世代の EDC 暴露

 環境化学物質への暴露は、生涯続く。汚染された環境に住む動物と人間は、生涯を通じて蓄積された直接的暴露による各人の体内汚染負荷−各人の組織中に含まれている化学物質の量−を持っている。これらの EDCs のあるものは残留性があり、生物蓄積(すなわち、体内組織にに長い間蓄積)する。人間について、血液、脂肪、尿、その他の組織中の EDCs の存在をテストしてみれば、その結果は、世界中の人々について様々な EDCs を一貫して示す。これらの測定は、食物、水、皮膚吸収、そして大気を通じての EDCs への接触を反映する。これらの化学物質の成分は油溶性の傾向があるので、脂肪は特に EDCs の重要な蓄積場所である。さらに、EDC の体内負荷の測定は、現在の EDCs との接触だけでなく、過去の、場合によっては PCBs やその他のような残留性の高い化学物質への数十年前の暴露を含んでいる。個人の生涯の暴露を越えるものは、祖先からの EDCs 暴露の遺産である。例えば、妊娠中に女性の体脂肪に蓄えられた化学物質のあるものは胎盤を通過して、彼女の発達中の胎芽に影響を及ぼすかもしれない。ある EDCs は母乳中で検出することができ、授乳中の乳児に引き渡される。さらに EDCs は、精子細胞や卵子細胞の前身である生殖細胞を変化させ、それらの影響を子どもたちだけでなく、孫、ひ孫、そしてそれ以上の先に引き継がせるという証拠が現在ある。言い換えれば子どもたちは、彼らの祖先の暴露によって引き起こされた否定的な影響を遺伝的に引き継ぐことがあり得るということである。このことは、ある化学物質の環境中への放出は、もしそれが生殖細胞に影響を与えるなら、その化学物質が浄化又は分解されてからずっと長い期間、遺伝的に引き継がれるであろうという点を強調しているので、非常に重要である。

III. EDCs と内分泌系疾患

 世界的に、人の疾病と障害の24%までは環境的要因によるものであり(10)、環境は、がんや呼吸器系及び心臓血管系疾病を含む最も重大な疾病の80%に、ある役割を演じている(11)ということが推定されている。内分泌系のかく乱はこれらの疾病に根源的なので、EDCs は主要な要因かもしれない。男児の生殖系問題(停留睾丸、尿道下裂、精巣がん)、女児の早熟、白血病、脳腫瘍、そして神経行動障害などを含んで、内分泌関連の小児障害の発症は全て、過去20年間に急増している。アメリカでは発達障害の発症は1997年から2008年の間に12.84% から 15.04% に増加した(12)。アメリカ、イギリス、及びスカンジナビア諸国における流産率は1981年以来30%以上増加しているが、それに伴って神経系障害、呼吸器系異常、小児死亡率、成人の2型糖尿病及び心臓血管系疾病も増加している。人間、動物、及び細胞ベースの研究が EDC 暴露をこれらの、そしてその他の人間健康障害に関連付けるかなりの証拠を示している。

 内分泌関連疾病の増大は、工業的化学物質の生産の増大と平行している。世界のプラスチック生産は、1970年代中頃には5,000万トンであったものが、今日では3億トンに増大している。同様な傾向は、農薬、難燃剤、溶剤、界面活性剤等を含む他の化学物質分野にも当てはまる。世界の化学物質産業の販売は1970年の1,710億ドルから2013年の4兆ドル以上に急増した(13)。これらの、そしてPCBs、BPA、そしてフタル酸エステル類のような他の化学物質は、人間の血清、脂肪、及び臍帯血で検出できる141516)。

 増大する人の化学物質曝露と増大する疾病率との関係は暗示的ではあるが、この二つのことが関連しているということを’証明’はしていない。しかし、過去数十年間にわたる細胞ベース実験、動物実験、そして他の実験システムからのデータが、この直接的な関連を支持する多くの証拠を提供している。人の疾病への化学物質の寄与を証明するには、人々のグループを暴露させ、その結果生じる障害を観察する必要がある。この種のテストは医薬品では行われているが、有毒物質の人への影響をテストすることは非倫理的であり不可能であろう。したがって、EDC 関連の健康影響についての結論は、疫学的研究からのデータを使用して出さなくてはならず、それは、動物又は細胞ベースのモデルから得られた実験的データから人へのリスクについて推定することによって、その関連性を明らかにすることができるだけである。もうひとつある難題は、人は生涯を通じて複雑な化学物質の混合物に暴露しているということであり、健康影響がいくつかの問題ある化学物質によるものなのか、あるいは化学物質の集合的組み合わせによるものなのかを確立することを難しくしている。したがって、環境暴露が内分泌関連障害に寄与していることは認められるが、特定の EDC が特定の疾病に関連しているという’決定的な証拠(smoking gun)’を見つけることは難しい。

 多くの場合、EDCsについての現在の議論は、喫煙のリスクをめぐる長い間の問題ある議論に類似している。タバコの煙は、1950年に肺がんを引き起こすことが示されたが、その関連性及び、タバコをどのように規制するかについての議論が数十年間にわたり荒れ狂い、最大のタバコ会社からの重役たちがタバコの喫煙ががんや心臓病を引き起こしたとする証拠は決定的なものではないとする有名な証言を1994年に米国議会で行った。今日、喫煙は世界でガンの最大の単一原因であり、15分に1人の人間を殺している(17)。EDCs については、化学物質又は化学物質の 集合が慢性疾病に関連しているという利用可能なデータは、ある場合には、その強さと広がりにおいて喫煙が肺がんに関連するとする証拠に匹敵する。したがって、証拠は決定的ではないとするいくつかのグループによる主張にもかかわらず、EDC 関連健康影響を明らかにする多くのデータは、EDC が公衆の健康に有害影響を及ぼすとする懸念を正当化するのに十分である。

神経系及び行動障害

 世界保健機関、国連、及び米国の国家毒性計画を含む多くの公衆健康機関がEDCの脳と行動に及ぼす影響について懸念を表明している(1819)。小児期の神経精神病学的障害は、米国では6人に1人の子どもが、少なくともひとつの疾病診断を持つまでに増大している(12)。これらの障害は、うつ病及びその他の気分障害、学習障害、実行機能障害、及び行為障害はもとより、注意欠陥多動症(ADHD)や自閉症スペクトラム(ASD)を含んでいる。

 関連する化学物質の中で、PCBsは神経学的障害と最も強く最も長く知られた関連性を持っている。人間では、神経発達の障害(2021)、低い知能指数、及び注意力、記憶力及び筆記のような細かい運動能力の問題との関連性の証拠がある。これらの研究のあるものは北極近くの地域に住む人々について行われた。そこは長い間、きれいな場所であると考えられていたが、現在は地球上で最も高いレベルでPCBsや他の残留性汚染物質を生物蓄積していることが知られている(22)。あるPCB代謝物は甲状腺の活動を変え、神経発達を損なうリスクを高めることが長らく知られている。同様に、ポリ臭化ジフェニルエーテル類(PBDEs)は、低い知能指数及びその他の認識欠損に関連している(23)。PBDEs は神経伝達活動、接合組織、及び神経細胞の活性に影響を与え、PBDEs は脳の発達だけではなく、脳の老化にも影響を与えることを示唆している。農薬曝露と、パーキンソン病(24)のような神経変性障害及びうつ病行動(25)との間の関連性が報告されている。臭素化難燃剤、過フッ素化合物、及び農薬(クロリピリホスのような有機リン系及び有機塩素系)は ADHD, ASD、及び関連する学習行動に関連付けられるが(26)、その証拠は決定的ではない。動物実験のデータは、神経発達、シナプス構成の特性、神経伝達物質の合成と放出、及び脳発達への構造的及び組織的影響を含んで、EDCs によって引き起こされる多くの神経学的変化を示している。EDC の、特に発達期の行動的影響に関する増大する文献に関して、これらの研究は脳をEDCsのぜい弱な目標であるとして力説している(27)。

肥満、代謝不全、及び関連する障害

 肥満率は、世界中で急速に増加している。食事や運動のようなライフスタイル要素が明らかに主要な要因であるが、化学物質暴露を含む他の要因もまた、役割を果たしているかもしれないことを示唆する証拠が増大している。”オビーソゲン(obesogens)”と呼ばれる化学物質は、代謝、エネルギーバランス、及び食欲を制御しているが、肥満とそれに関連する有害健康影響をもたらす内分泌系の重要な部分を変更する又は再プログラミングすることにより、体重増加を強化すると考えられている(28293031)。動物実験による研究は、発達期の暴露は特に個人の体重増加の素因に有効で、その結果、2型糖尿病、心臓血管系疾病、脂質代謝の変更、グルコース感受性の変更を含む有害健康影響をもたらすことを示している(323334)。

 今日、最もよく知られている肥満を起こす EDCs は、トリブチルスズ(TBT)とトリフェニルスズ(TPT)である(30)。これら及びその他の化学物質は、PPARγと呼ばれるホルモン受容体を通じて作用する(34)。甲状腺ホルモン機能のかく乱は、正常な代謝の維持にはたす甲状腺の重要な役割に起因して肥満を起こす化学物質が作用することを可能にするもうひとつのメカニズムである。PCBs と PBDEs のある影響は、甲状腺軸を通じて解決されるかもしれない(3536)。臭素化難燃剤 Firemaster 550 は、妊娠ラットとその仔の甲状腺レベルを変え、仔が成長すると肥満、心臓病、早熟、及びインスリン抵抗性をもたらす(37)。この研究は繰り返され、拡張される必要があるが、Firemaster 550 は現在、アメリカで最も一般的に使用されている難燃剤のひとつであり、家庭の埃の中に広く存在する汚染物質であり、生物監視研究が Firemaster 550 を人間の尿中に検出しているということは注目に値する(38)。環境的肥満物質の分野は比較的新しいが、フタル酸エステル類、過フッ素化合物、BPA、ダイオキシン、そしていくつかの農薬などが潜在的な肥満物質(オビーソゲン/obesogens)として出現しており、将来の研究に値する分野である。

生殖系障害

 過去50年間、EDC 暴露と有害影響との間の最も強い関連は、生殖的発達、生理学、及び病理学に関する影響である。ホルモン感受性のがん(例えば乳がん、前立腺がん)、不妊、早熟、精子数の減少、生殖器形成異常、そして不均衡な性比の増大(39)は、少なくとも化学物質量の増大と暴露の増大に起因する部分がある。少女の早熟は、栄養、ストレス、そして民族性を含む多くの要因に帰する一方で、一部はエストロゲン様 EDCs への暴露のためかも知れない(4041)。そのようなエストロゲン様化合物はまた、子宮筋腫、卵巣機能不全、及び人間と動物モデルの低受胎に関連する(394243)。BPAは、不妊治療を求める患者の卵子の品質低下及び,その他の卵子生命力の側面に関連しており(4445)、これらの影響は動物モデルに見られる影響に非常に似ている(46)。プラスチック産業で働いている40歳以下のデンマーク人女性は、暴露を受けていない同年代の女性より不妊支援をより多く求めているように見える(47)。男性については、ある地域では過去半世紀の間に精子数が50%程度減少した(4849)。いくつかの化学物質、とりわけフタル酸エステル類は、 停留睾丸、尿道下裂、前立腺の疾病、及び精巣がんを含む男性の尿生殖路の様々な有害影響に関連している(50)。

がん

 他の複雑な疾病と同様、ほとんどのがんは、遺伝的体質と個人が遭遇する環境との相互作用に由来する。比較的少数のがんは、単一の遺伝子に関連し、環境の果たす重要な役割が強調される。実際に、3件のがんのうち2件は何らかの方法で環境的に関連して発症し、米がん学会は、ほとんどのがんは、食事の改善、もっと多くの運動、及び喫煙の低減のようなライフスタイルの改善により、防止できると結論付けている。ある種の職業はがんの高いリスクと関連しており、特に、塗装、消火、炭鉱、鉄鋼、ゴム、織物、製紙、及び鉱山での労働などの職種は化学物質曝露による人体汚染が高い。

 既知の化学的発がん性物質のリストは長く、金属、塩化ビニル、ベンジン(染料に使用)、ベンゼンのような溶剤、多環芳香族炭化水素(PAHs)、ダイオキシン、ファイバー及びダスト(シリカ、アスベストなど)、ストックホルム条約の残留性有機汚染物質を含むいくつかの農薬、及び合成エストロゲンなど多くの医薬品を含む。これらの化学物質のあるもの(全てではない)は EDCs である。どのくらい多くの前立腺、乳房、子宮、及びその他の生殖系組などのがんが、ホルモンに関与するかを考えると、ビスフェノールA(BPA)、フタル酸エステル類、及びいくつかの農薬のようなエストロゲン様及びその他のホルモン活性化学物質が、発がん性リスクに寄与すると考えられることは驚くべきことではないかもしれない(5152)。

 どの EDCs が最も大きな影響力を持っているか、及び生涯のいつ(胎児期、小児期、成人期)EDC暴露が最も顕著にがんリスクに寄与するかについての疑問は未解決の問題である。細胞及び動物モデルを使用した研究は、BPA、フタル酸エステル類、過フッ素化合物、PCBs、及びある農薬のような化学物質への生涯の早い時期の暴露は、後のがんリスクを高めることがある(52)。新たに出現している疫学的研究は、人間における相関的な関係を確立し始めている(53)。人間におけるそのような関連を確立することは、数年、さらには数十年早く起きていたかもしれない暴露についての情報をもつ必要があるので難しい。しかし、がん有病率と徴候に関する重要で広範な環境の影響 に基づけば、化学物質曝露を最小にすることはがんリスク及び生存確率に大変な肯定的影響をもたらすであろう。

その他の疾病と障害

 動物実験及び人の疫学的研究は、EDC暴露は心臓血管系疾病や糖尿病を含んで他の健康異常に寄与することを示している。新たな研究分野は、EDCsの免疫系及び炎症性の影響である。炎症は、肥満、認知障害、心臓血管系疾病、呼吸器系障害、がん、さらには自閉症すら含む広範な慢性疾病と関連している。免疫系と内分泌系はしばしば、環境的負荷に反応して一緒に作用し、それらの信号伝達経路は炎症影響のあるものの根底にあるかもしれない。


4. EDCs の科学における最近の進歩とEDCリスク評価のための新たな科学的パラダイムの必要性 (14/12/25)
 タバコの煙、鉛、放射性物質、そして多くの化学物質により及ぼされる有害性について、広く行きわたった決定的な合意がある。個人の臨床的証拠及び人の集団からの疫学的データとともに、数十年間の実験室の研究が、暴露と疾病又は死亡との因果関係について決定的な証拠を提供してきた。化学物質の評価と管理において、特定の化学物質への高レベルでの既知の暴露の場合には、ある暴露をある有害健康影響又は死亡と直接的に関連付けることができる。例えば大規模な事例として、初期の産業汚染(セベソ事故)や食用油汚染(カネミ油症、台湾油症)が、妊娠中に汚染された食用油を摂食したり、又は直接ダイオキシンに暴露した女性から生まれた子どもたちに深刻な出生障害や神経認知の損傷をもたらしたことを示した。したがって、従来の毒性学的テストは、人と野生生物に脅威を及ぼすそのような化学物質を特定し、特性化するのに非常に重要である。しかし多くの人々は、様々なEDCsに、通常は低用量で、混合物に、そして異なる生命の段階で、暴露しているので、成人における疾病、例えば 2型糖尿病を人生のある期間、特に重要な発達期間におけるEDCsへの暴露と直接的に関連付けることはとても難しい。次節では、EDCへの暴露と、生活の質の減退、慢性的疾病、そしてがんのような長期的な症状への影響を適切に理解するために、いかに新たな思考方法が必要かを述べている(テーブル4)。これらの概念の追加的な簡潔なまとめがこの節の末尾に示されている(ボックス2)

I. EDCs の我々の科学的理解を進めるためにパラダイム・シフトが必要

 化学の革命は、がんや重金属中毒、そして大気や水の汚染などをもたらす環境汚染を伴った。このことは、一般的な安全基準を作り出すためにテストの必要性をもたらした。純粋な化学物質の様々な用量での毒性学的テストは、明白な毒性、がん、そして死を引き起こす環境中のある化学物質を特定することに成功した。用量−反応曲線からの情報基づき、それ以下では暴露はどの様な明白な急性毒性をも引き起こさない閾値を決定するために、そして暴露の’安全’レベルを確立するためにこの情報を下方に外挿するのに用いるために、努力が行われた。標準的な毒性学的リスク評価に用いられるテストのタイプと用量の範囲は、EDCsに適用される時には、しばしば不正確であることを知っている(54)。’古い科学’アプローチはいくつかの仮定を置き、現実的ではないテスト・プロトコールに基づいている。例えば、ほとんどのテストは、単一の化学物質への急性暴露を用いて成獣(例えばラット)で行われる。しかし、全ての人間と動物は、彼らの一生を通じて様々なレベルでの様々なEDCsと混合物に暴露している。したがって、従来の毒性学的手法は有用ではあるが、それらはEDCsを特定し、影響を決定するのに卓越していなくてはならない。

 過去20年にわたり、野生生物種の現場研究、人に関する疫学的データ、及び動物モデルによる実験室研究に基づく科学的証拠が急激に出現し、EDCsがどのように生物学的変更をもたらし、どの様に疾病をもたらすかについての見識を提供している。我々は現在、EDCsへの個人の直接的な暴露が、広範な行動的、内分泌的そして神経学的な問題を引き起こすことを知っている。このことは、どの様にリスク評価を行うかについてパラダイム・シフトを求める。例えば、単一暴露、純粋な化合物用いての用量−暴露アプローチという古い毒性学的手法よりもむしろ、新たなリスク評価手順は自然界で起きていることをもっと密接に模擬するということが極めて重要である。単一化合物よりむしろ、我々は化合物の組み合わせ又は混合物の影響を知る必要がある。我々はまた、ある生命の段階、特に発達の初期には特にEDCsに脆弱なので、大人でのEDCsテストは暴露した胎児や幼児に外挿できないかもしれないことを認識する必要がある。我々はこれらの概念について、以下に精査する。

II. 発達期の暴露とぜい弱性のウインドウ

 ホルモンは、ひとつの受精細胞から、血液、骨、脳、その他の組織を作り上げる何百万もの専門化した細胞まで、全ての人々の発達を調整する。これらの内因性化学物質は、最初に母親から胎盤に、それから発達中の胎児に、非常に低濃度で、典型的にはpptからppbの範囲で循環する。ホルモンは遺伝子が活性になる必要がああるとき、及び不活性になる必要があるときに信号を送る。複雑なことに、絶えず変化する天然のホルモンは正常な発達を確実にし、少なすぎても多すぎても疾病と病態を招く。一世紀以上の生物学的研究が、生命プロセスのプログラミングと調節は特定の時機に特定の量のホルモンを必要とし、さらに、それぞれの器官と組織はライフサイクルを通じてホルモンの変化を必要とする。

 生命の初期、特に胎児と幼児はぜい弱な期間であり、天然のプロセスにどのようなかく乱も、生理学上のシステムの構造及び/又は機能を変化させ、それは時には不可逆的である。ホルモンの量に加えて、その放出の時機は正常な発達にとって絶対的に重要である。したがって、EDCs はホルモンの活動をじゃまするので、過敏な発達期におけるそれらへの暴露は直ちに又は潜伏期を経て結果をもたらすことがあり得る。体の異なる部分の発達は異なる速度で起きるので、暴露の時機はどの器官又は組織が影響を受けるかを理解する上で重要である。したがって有害な暴露の期間に発達する器官は、発達が既に完了した器官より影響を受けやすいようである。

 ぜい弱な期間の暴露のもたらす結果は、身体的な形成異常、機能的欠陥、またはその両方かもしれない。妊婦に投与された DES の事例をもう一度考えてみよう。女の子の胎児にはしばしば生殖管の構造的な形成異常があり、加えて後に稀な膣がんになる傾向が増大する。もうひとつの非常に現実的で複雑なぜい弱性ウィンドウという概念は、同じ暴露が、それが起きた発達の時機に依存する異なる影響を持つことがあるということである。例えば、げっ歯類では、EDC として知られる農薬クロリピリホスへの妊娠第一期の胎児の暴露は成獣になった時に甲状腺の構造と機能を変えることがあり得るが、一方、妊娠第二期の胎児のクロリピリホスへの暴露は成獣になってからインスリンのレベルを高めることがあり得る。

 ホルモンレベルのある外乱は明白な構造的変化は引き起こさないかもしれないが、後に、機能的変化、疾病、又は機能不全をもたらすかもしれない。このぜい弱性のウィンドウという概念は、”成人病胎児起源(Fetal basis of adult disease (FeBAD))”あるいは”健康及び疾病の発達期起源((Do-HAD))”として様々に言及されている((Box 1)。この分野は、子どもの体は発達中なので、子どもは EDCs への暴露に対して大人よりぜい弱であるということを認める研究者によって、よく受け入れられている。子どもたちはまた、下記を含む多くの理由により大人より暴露のリスクが大きい。子どもたちは: 1) 母乳や粉ミルク中の多くの脂溶性汚染物質に暴露する。2) 大人よりもはるかにしばしば手や物を口に入れる。3) 地面の近くで生活し、遊ぶ。 4) 大人に比べて体重あたり皮膚表面積が大きいので化学物質を相対的により多く吸収する((55)。子どもたちの暴露の害は、このように暴露の仕方、発達のぜい弱性、そしてより長い曝露期間をもたらす長い余命のためである。さらに、子どもたちは危険に対する理解が限られており、暴露を回避できない。

 ここでの議論は、胎芽、胎児、幼児、そして子どもの特別なぜい弱性に焦点を当てているが、子ども時代から思春期、成人、そして老人までのライフサイクルの全ての段階がホルモンと EDCs に敏感である。従来の毒性学的テストは、”毒は用量次第”という概念に頼っている(Table 4)。EDCsの新たな科学的な識見は、発達中の生物のぜい弱性を考慮して、”毒はタイミング”ということを示唆している。


ボックス1: 健康と疾病の発達期起源 (DOHaD)

 成人病胎児起源(Fetal basis of adult disease (FeBAD))とも呼ばれる健康と疾病の発達期起源 (Developmental Origins of Health and Disease (DOHaD))は、多くの疾病と機能不全の根源は生命の非常に早い時期、特に胎芽、胎児、幼児、及び子どもの時代にあるという科学的証拠に基づいている。例えば、妊婦の栄養不足又は栄養過多は、肥満、糖尿病、及びその他を含む代謝障害を後に発症するという胎児の生まれつきの傾向に影響を及ぼす。この研究は、タバコの煙、汚染物質、及び環境化学物質などの環境的影響にまで範囲を広げている。他の証拠は、発達中の生殖細胞(胎児の精子及び卵子細胞の先駆体)は例え低用量であってもEDCsによるかく乱に極めて脆弱であることを示している。もっと最近では、その発達は妊娠初期に始まり子ども時代まで継続する神経系は、EDC暴露に非常に感受性が高ことが発見された。ある種のがん、特に生殖系がんは、その起源は生命の初期にあるように見える。疾病や障害の兆候は出生時には明らかでないかもしれないが、潜在期間の後にこれらの暴露の結果は、しばしば思春期、成人期又は老年期に明らかになる。従って、DOHaD は、これらのぜい弱な期間における EDC 暴露の影響を理解する上で、重要な概念である。

III. 閾値、低用量、そして安全な用量はないという概念

 それぞれの化学物質には、’安全な又は許容できる暴露’があるという仮定は、全ての化合物は閾値を持ち、その閾値以下のレベルでの暴露は安全であるとする一般的に受け入れられているドグマを導いた。この結論が依拠する’古い化学’のパラダイムは、発がん性/生存指標を強調し、単一化合物だけをテストし、混合物の影響を無視し、それ以下では観察される有害影響がない閾値用量(最大無毒性量(NOAEL))を仮定する。安全な閾値を決定するためのテストでは、単一化学物質の異なる濃度が投与される。毒性は通常、げっ歯類(通常成獣)で、半分の動物が死ぬ又は標的とする疾病(通常はがん)を発症する用量を決定する二年間の慢性テストで確立される。この様にして、観察できる毒性(再び、評価点は通常、がん又は臓器不全)がない最も高い用量を確立する。この用量は次に任意の’安全係数’、通常は100で除される。少ないテストしか受けていない化学物質については、10という追加的係数が用いられることもある(その結果、安全係数は1000)。’安全’の定義は、もっと低レベルで他のもっと微妙な影響が誘引されるかもしれないという事実があるにもかかわらず、これらの研究の死又は死ぬことから推定される。死ほど明白ではない評価項目中のかく乱を実際に探さなければ、ホルモンのレベルが影響を受けているかどうか、そして疾病を発症させる素因を変化させるかどうか/させるならどのようにかを知ることはできない。いくつかの内分泌障害の結果は、週、月、又は年の期間に観察できないかもしれないということを考慮すれば、現在の毒性学的テストがそのような観察可能でない結果を定量化することができないことは、リスクを決定するためのこのアプローチの重大な限界である。

 ”安全な暴露閾値”アプローチは、科学者らが天然のホルモンは胎内でどのように作用するのか、ホルモンの合成と放出は我々の内分泌腺によってどのように精密に調節されているのか、そして体は発達中にどのように変化するのかについて、より良く理解し始めた1980年代に疑問が提起され始めた。(例えば、個人が通常、ある特定の天然のホルモンに全く暴露しない生命のある期間があり、あるEDCへの暴露が、その生命の段階では完全に不活性であったはずの経路に作用する。これらの時期において、例え非常に低いレベルであっても、どのような外因性のEDCも、ゼロであるべき体の天然の内因性ホルモンのレベルを越えるであろう。)このことは、ホルモンと化学物質への体の反応の仕方を実際に反映する(仮想的ではない)生物学に基づいた用量−反応モデルの開発を要求することにいたる。

 安全のための正確なリスク評価の開発は、動物による生物学的テストのコストにより妨げられている。しかし、EDCs には閾値はあり得ないことを示す、最初の、そして最も重要な実験は1990年代に実施された(56)。ミシシッピアカミミガメで個体がオスになるのかメスになるのかを決めるのは、人間では X 及び Y 染色体が性を決めるのと似て、発達中の妊娠中期の温度である。性を決めるのが染色体か温度かというこの違いを除けば、性的発達の残りの背う仏学的プロセスはカメと人間は非常に似ている。このことは、カメを性決定の独自の生物学的モデルにする。

 重要なことに、温度の影響はホルモン(57)又はEDCs(56, 58)を胎芽に投与することにより覆すことができる。低用量のホルモン又は EDCs が、個体がオス又はメスになることを変更できるかどうかテストするために、性が決定される重要な発達期間中にエストロゲン様作用をするあるEDCをカメの卵2400個に暴露させた(56)。例えば、エストロゲン又はPCBのようなエストロゲン様作用のあるEDCが、通常はオスだけを生成する温度でふ化される卵に投与されると、生まれてくる全ての子どもはメスになる。さらに、これらのメスは、大きくなっても不妊である。このモデルを使って、重要な実験が行われ、性が決定される重要な発達期間に投与された極めて低いホルモン又は EDCs は、個体がオスになるのかメスになるのかを恒久的に変更することができることを示した(56)。

 このことを理解するために、エストロゲンは非常に低い濃度で生物に影響を及ぼす天然のホルモンであること思い出してほしい。かくしてエストロゲンの影響を模擬する合成EDCへのどの様な追加的な暴露も、その生物の有害影響のための閾値を超えるレベルになるということになる。暴露の安全レベルについての従来の毒性学的仮説をテストするために、2400以上の卵を使った大きな研究が実施された(57)。そこでわかったことは、外因性エストラジオール(訳注:エストロゲンに含まれる成分のひとつ)への最低用量の暴露でさえ、温度制御を越えて、期待される女性の比率を10%以上増大させた。これらの研究の中で最も目覚ましい特徴は、外因性 EDC が同じ内因性メカニズムを通じて作用することにより内因性ホルモンを模擬する時には閾値用量は存在しないかもしれないということを示す最初の証拠となったということである。

 カメによる研究は二つの理由で重要である。第一に、これらの研究は議論の余地なく閾値なしを証明しているので、’閾値なし’と決定することは不可能であるとする主張を鎮めるということである。第二に、この生物種の発達の生物学的プロセスは、人間を含んで他の全ての生物種に直接、当てはめることができるということである。カメの初期の研究以来、極めて低用量の EDCs であっても生物学的結果を変更することができ、低用量の影響は高用量で観察される影響によっては予測することができないということを示す多くの研究がある(54)。


ボックス2: 現代科学と規制政策のギャップの概要
 EDCs への暴露がいかに人間に関係があるかに関する合意は形成されつつあるが、全ての論争が解決したわけではない。ひとつの問題は、非常に低用量の暴露がどの様に生物学的に関連性があるかについての理解の困難さの周辺にある。この概念は、発達の文脈の中で理解することで容易になる。天然ホルモンに文字通り暴露しない時期が人生の間にある。従って、微量であってもホルモン的に活性な物質への暴露は、ホルモンに敏感な標的細胞を定義によって変更する。内分泌学を専門とする基礎的科学者や医師は EDCs に関する研究や実践に対してますます関与するようになってきたので、低用量影響の証拠ははますます増大している。それにもかかわらず、内分泌科学と規制政策の間にあるギャップがまだ存在する。化学物質の規制についての決定は、ホルモンがどの様に作用するのか、及び EDCs がこれらの作用をどのようにかく乱するのかについての最も現代的で科学的な理解に基づくことが重要である。

IV. 混合物

 実験室では、環境が厳格に管理されるので、要素を処理し、結果を評価することができる。たとえば、ある作業は細胞株の均質な培養液の中で実施され、ひとつの培養皿から次へと同一条件の下で育てる。動物実験は、マウスの多くのおりのある実験室で実施される。マウスはそれぞれ他のマウスと遺伝子的に同等であり、非常に明確なタイプの寝床、食物、水、照明サイクル、及び温度制御が与えられる。従来の毒性学的手法の本質は、単一の純粋な化学物質の正確な用量の投与であり、コントロール(プラセボ)グループに対する化学物質の比較を可能とするためにその他の全ての条件は等しいということである。

 しかし、世界は実験室のようにはなっていない。人間は(一卵性双生児以外は)遺伝子的に独自であり、非常に異なる環境中に住み、新たな環境に移動し、各人は自身の食餌と栄養上の暴露を受ける、等である。各人は、様々な発達の木悪寒にEDCsの混合物に暴露する。すなわち、各人は、独自の”エクスポソーム”、各人が暴露する全ての合計、を持っている。EDCs の’新たな科学’は、これらの現実を認める。すなわち、自然界の暴露は慢性的であり;EDCsはいたるところに存在し世界的であ;食物連鎖中にEDCs の生物蓄積と生物濃縮がある。さらに、職業暴露は例外として、環境暴露に純粋の化合物が関わることは稀である。そうではなくて、暴露には、単一化合物の分解成分とともに、化合物の混合が関わる。

 かくして、現代科学は、単一化合物の影響に関する研究を含まなくてはならないが、もっと重要なことは、体内における化合物の相加効果又は相乗効果に近づくそれらの混合物である。EDCsが相乗的作用を示すかどうかに関してまだいくつかの議論がある。議論の熱さは、EDCsの多くは天然ホルモンより強度が低く、個々に考慮すれば、これらの化学物質は、懸念するには低すぎると信じられている濃度で環境中に存在するかもしれないという事実に由来する。しかし、いわゆる’安全用量’がないので、これらの低い環境レベルはそれでも生物学的作用を持つかもしれない。この領域の多くの議論は、EDCs の生物学的作用を理解する上で必要な現代のパラダイム・シフトであるホルモン作用の現実の生命生理学、あるいは現実の自然界の暴露に基づくのではなく、むしろ、高用量実験から低用量影響を外挿するという古い科学に基づいている。


5. 人のEDCsへの暴露 (15/04/19)
 EDCs は、地球規模の、そしていたるところにある問題である。家庭でも事務所でも、農場でも、私たちが呼吸する空気中でも、私たちが食べる食物中でも、そして私たちが飲む水でも、暴露は起きる。何十万という製造された化学物質のうち、約1,000の化学物質が内分泌作用の特性を持つかもしれないと推定されている。生物的モニタリング(体液と組織中の化学物質の測定)は、ほとんど100%近くの人間が化学的な体内汚染を持っている。既知の EDCs に加えて、無数の EDCs を疑われる、又はかつてテストされたことがない化学物質が存在する。

 既知の EDCs への暴露は、環境中で比較的高く、環境からは産業化学物質が土壌や水に漏れ出し、微生物、藻類、そして植物によって取り込まれ、動物界に移動し、食物連鎖に入り込む。人間を含む食物連鎖の頂点にいる捕食者は、そのような環境化学物質を体内組織中に最も高い濃度で持っている。大きな懸念は、ある化学物質は大気や水の流れにより、もともとの発生源から全く遠い世界の他の場所に運ばれるという証拠があることである。実際に、北極圏のような、いままでにどのような化学物質産業も存在したことのない地域に住む人間や動物たちが、ある EDCs を検出可能なレベルで持っている。さらに、ある化学物質の残留性、特に残留性有機汚染物質(POPs)と呼ばれる化学物質はたとえ禁止されても、数十年ではないとしても環境中に相当長く残留し続けるであろうことを意味する。ポリ塩化ビフェニル類(PCBs)、ダイオキシン類、そして DDT のような これらの POPs のあるものは内分泌かく乱物質(EDCs)である。

 EDCs への暴露は実際に、殺虫剤や殺藻剤、そして望ましくない生物を殺すように設計されているその他の化学物質という形で生じるかもしれない。家、農作物、そして池への散布は、化学物質の大気浮遊と堆積をもたらし、それらは吸入され、皮膚に接触し、散布された食物を通じて摂取される。これらの化学物質のあるものは EDCs であるということは驚くにあたらない。特に有害生物防除(例えば害虫やげっ歯類の駆除)のために使用されている多くは、神経毒素又は生殖毒素として特に設計されている。生殖系及び神経系の天然ホルモンへの高い感受性と、無脊椎動物及び脊椎動物の両方におけるこれらの生理学的プロセスの類似性は、ひとつの生物種でこれらの機能をかく乱するよう設計された化学物質は、人間を含む他の生物種にも影響を及ぼすであろうことを意味する。アトラジン、2,4-D、そしてグリホサートのような広く使用されている除草剤は EDCs であるとみなされており、殺菌剤ビンクロゾリンは EDC であることが知られている。二つの殺虫剤 DDT とクロルピリホス−前者は世界の多くの国で禁止されているが後者はほとんどの国で使用のための登録がなされている−についての更なる検討を以下に示す。

 EDCs への他の暴露経路には、食品や飲料に漏れだすかもしれない化学物質を含んだ食品や飲料容器がある。良く知られた例はビスフェノールA(BPA)であり、 BPA の代替物質もまた EDCs であるという証拠が増大している。静脈注射用やその他の医療用チューブはフタル酸エステル類のような既知の EDCs を含んでおり、化学物質と血流の直接的な接触を可能としている。

 次節では、3つのカテゴリー:殺虫剤(DDT、クロルピリホス)、製品(子ども用品、有機鉛、電子機器、臭化難燃剤)、及び食品接触物質(BPA)でよく使用される EDCs の事例を示す。これらは多くの既知の EDCs 暴露源(テーブル2及び3を参照)の中のほんの一部である。他のカテゴリーには、数ある中でも、身体手入れ用品(フタル酸エステル類、トリクロサン、水銀、アルキルフェノールポリエトキシレート)、布製品及び衣料品(過フッ素化合物)、及び建材(断熱材中での多量の臭化難燃剤と化学物質の使用)などがある。

A) 農薬

I. DDT

DDTはどこで使用されているか

 DDT は、1940年代、1950年代、及び1960年代に世界中で広範に使用された有機塩素系殺虫剤である。その用途は、商業用及び個人用作物栽培と家畜、及び家庭、庭、公共の場所、公共施設における害虫駆除を含んでいた。しかし DDT の野生生物への毒性とその残留性のために、多くの国が1970年代に DDT の使用を禁止した。それにもかかわらず DDT は、マラリア、リーシュマニア症、デング熱、シャーガス病のような病気を人間に運ぶ害虫を駆除するために広範に、特にインドとアフリカで未だに使用されている。

 2001年に採択され、現在179か国により批准されている残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約は、効果的な代替が利用可能になるまで屋内残留噴霧を認める WHO のガイドラインに従い、DDT の病害虫駆除の世界的な使用を制限することが意図されていた。その目標は使用を削減し、最終的には全ての使用を廃絶することであったが、ストックホルム条約の発効以来、世界的な使用は顕著には変化していない(59)。さらに、DDT の媒介虫駆除での使用制限にもかかわらず、監視報告書は、不法な農業での使用が未だにインド、エチオピア、及びガーナのような国で行われているかもしれないことを示唆している(60616263)。

 2013年現在、ストックホルム条約の下で DDT を使用するという意図を通知した国は、エリトリア、エチオピア、インド、マダガスカル、マーシャル群島、モーリシャス、モロッコ、モザンビーク、ナンビア、セネガル、南アフリカ、スワジランド、ウガンダ、ベネゼイラ、イエーメン及びザンビアである*。ミャンマーは、DDT使用の通知を撤回しており、中国は製造と使用を止めることを通知した†。エチオピア、インド及びナンビアは、DDT の実際の製造又は製造の提案を通知した‡。

DDTに人々はどこで暴露するのか、暴露の証拠、リスクはどこにあるのか

 マラリア対策のために DDT が使用されている地域に住み働く人々は、家及び職場で DDT 及びその代謝物 DDE (ともにDDTと呼ぶ)に暴露している。例えば、DDT を散布した家で暮す南アフリカの成人は、DDT を散布していない近くのコミュニティに住む人々の 10μgDDT/以下と比べると平均血中 DDT 濃度が 100μg/g(血清脂質)弱である(6465)。

 世界中の人々の多くはいまだに食物供給を通じて DDT に暴露している。DDTs は、動物の脂肪に蓄えられるので、しばしば最も高いレベルの DDT を含む食物は肉、魚、家禽類、卵、チーズ、バター及びミルクである。DDT はいまだに広範な食物汚染物質であり、そのレベルは、DDT の過去の製造とともに、その使用と製造が現在も続けられている地域では相当なものである(66)。DDT よりも DDE の方が半減期は長いので、半減期が短い DDT はもはや検出されなくても、DDE は検出されるかもしれない(67)。DDT 禁止によりもたらされる公衆の健康利益への証左として、長期間禁止している国の人々の平均血中 DDE 濃度は 1μg/g 血清脂質以下であるのに比較して、DDT が散布された住居で暮す人々の血清レベルは 215μgDDE/g 血清脂質である(67)。

 DDT を積極的に使用しているコミュニティに住んでいようと(61)、又はずいぶん以前に禁止されたコミュニティに住んでいようと(67)、子どもたちは近くに住む大人より体内の DDTs レベルが高い。暴露は、胎盤通過により胎児の時に、又は授乳を通じて乳児の時に始まることがあり得る(68)。国連環境計画と世界保健機関により2001年から2013年に実施された測定によれば、母乳中に高いレベルの DDT が エチオピア (2013), タジキスタン (2009), ソロモン諸島 (2011), インド (2009), ハイチ (2005), 太平洋諸州 (2011), 香港特別行政区 (2002), モーリシャス (2009), マリ (2009), モルドバ (2009), トーゴ (2010), ウガンダ (2009), フィージ (2002), スーダン (2006), フィリピン (2002), ウクライナ (2001), ジブチ (2011), コートジボワール (2010), その他 (Figure 2)である(高レベル順)。しかし、母乳は、感染症、乳幼児突然死症候群、及び子どもの肥満のリスクの低減を含んで、子どもにとって非常に重要な健康利益がある(69)。世界保健機関は、女性は少なくとも最初の2年間はその子どもに授乳することを勧告している。

 年配者もまた高いレベルの DDTs を持つ傾向があるが、それは DDTs が生涯を通じて蓄積し、多くの国で過去の暴露は現在の暴露より大きい傾向があるからである。実際に、年令は DDTs のレベルの最も強力な預言者である(70)。例えば、古いDDT 製造プラントの近くに住むコミュニティの人々の中で、平均的成人は159 ng DDT/ml の血清を持つが、70歳以上の人々の平均DDTレベルは350 ng/ml である(66)。このことは、慢性疾病のより高い負荷ももつ年配者はまた、若い成人より DDT 負荷への感受性が大きいかもしれないという可能性を提起しており、このことは、DDTs に暴露した集団について研究する時に心に留めておくべきことである。

 以前に使用された DDTs の残留は、人間の地球規模の移動パターンと相まって、長期間禁止している国の人々にさえ高いレベルの DDTs をもたらしている。人々の DDTs の濃度が半分に減少する(いわゆる”半減期”(71))ために 4〜10年かかる。モニタリング調査は、DDT 禁止は人間の暴露を低下させるのに成功しても、人々の DDT のレベルはその後数年間高く維持されることを示している(67)。例えば、アメリカでは DDT が禁止されて 30年以上経過しているが、メキシコでは DDT が廃止され禁止されてから日が浅く、メキシコから移動して来る農業労働者はアメリカで典型的に見られるよりずっと高い DDT レベルを持っていた。さらに、かつて DDT を製造していた製造施設から 10km離れたコミュニティに住む人々もまた、一般の集団より十分に高いレベルの DDTs を体内に持っていた(66)。従って、DDT を使用していない国であっても、移住者や以前の DDT 製造場所の近くのコミュニティに住む人々のように、自国の集団の中に DDTs に高いレベルで暴露している人々がいる可能性があることを認識すべきである。

 北極周辺の国々で DDTs への高い暴露があるが、それはこれらの化学物質が半揮発性で長距離を移動する、すなわち、それらは温暖な地域で空気中に上昇し、寒冷地域で地球の表面に堆積するためである。このよう環境由来の DDT は動物の体内に蓄積し、食物連鎖で濃縮される。実際に、イヌイットの人々による DDT の摂取は、マラリア対策のために DDT を使用している地域に住む人々の摂取に匹敵する(72)。

 気候変動予測のいくつかは、そのプロセスは複雑であるが、DDTs への暴露は今後数十年間に増大するであろうことを示している。気候変動がマラリアの発生を増大させ、そのことが潜在的に DDTs の需要と使用の増大をもたらすことが予測される(73)。氷河の溶解は、カナダの北極諸島に入り込む DDTs の46%に寄与し、カナダの亜高山帯の湖に入り込む DDTs の60%以上に寄与する。海の氷と永久凍土の溶解は更なる DDTs をもたらす(7475)。気候変動はまた POPs を水から大気に分離し、高速気流が大気輸送を増大し、その結果、北極での堆積がさらに増大するらしい。食物連鎖の頂点における DDTs の蓄積レベルは底辺のレベルより数千倍高く、水中のレベルより数十万倍高いので、氷河の溶解から放出される DDTs は、北極の食物連鎖に関連する食物を食べる人々の体内の DDTs 濃度を高めるであろう。さらに、EDCs への暴露は甲状腺ホルモン系に影響を及ぼすことが示されており、このことは、甲状腺ホルモンには体温維持の役割りがあるので、北極の野生生物が気候変動に適応する能力に影響を及ぼすと考えられる(76)。

DDT がなぜ EDC なのかということに関する科学

 DDT は生殖系及びホルモン系に広範な影響を及ぼすとして、最初に認識された EDCs のひとつである。DDT はレイチェル・カーソンにより彼女の画期的な著書 『沈黙の春』 の中で生態系全体の惨状に注意が向けられるまで、数十年間、殺虫剤として無差別に使用された。実験動物研究及び人間観察は、 DDTs と有害健康影響との関連を一貫して示し、DDTs は最も広く受け入れられた EDCs のひとつになった。動物及び培養細胞株において DDTs は、甲状腺、エストロゲン、アンドロゲン、レニン‐アンジオテンシン、インスリン、及び神経内分泌の各系を変更する。これらの経路は、数ある中で特に生殖系、心血管系、及び代謝系のプロセスの正常な機能に関与する。DDTs のひとつの影響としてエストロゲン擬態があり、DDTs はまた、体内でアンドロゲン(テストステロン)経路を妨げる(77)。人間を含む動物では、女性の性腺(卵巣)及び男性の性腺(精巣)は、レベルは異なるが、エストロゲン及びアンドロゲンを作る。女性は高いエストロゲンと低いアンドロゲンを持ち、男性は高いアンドロゲンと低いエストロゲンを持つ。体の主要で正常な性ホルモンをそれぞれかく乱することにより、そして性ホルモンの割合を変化させることにより、DDTs は多くの生殖問題と関連している。多数の研究が DDTs への高い暴露が、人間を含んで、オスの繁殖力を、そしておそらくメスの繁殖力も減らすことを示している(67)。例えば、屋内 DDT 散布をした家に住む男性の精子の質は低下しており(64)、そのことは生殖力の低下をもたらす。DDTs への暴露が授乳期間を短くすることを示唆する証拠もある(67)。これら及びその他の人間への DDT 健康影響についての簡単な概要がボックス 3 に示されている。


ボックス3: DDTs への暴露による人間の健康影響
 ●生殖力の低下
 ●泌尿生殖器の先天的障害(男性)
 ●授乳の障害
 ●2型糖尿病
 ●がん

 ほとんどの EDCs のように、DDT 暴露の健康影響は、発達中の胎児やこどもに暴露が起きる時に最も顕著である。少女が、乳房が十分に成熟する前の人生の早い時期に DDTs に暴露すると、後の乳がんリスクの増大に関係する(78)。いくつかの人間の研究が、DDT は停留睾丸のような先天的な泌尿生殖器異常のリスクを増大させることを示しており、ラットによる研究もまた、胎児の DDT 暴露がオスの生殖異常を引き起こすことを示した(67)。DDTs への人生初期の暴露が少女の早熟(早期の初潮)に寄与するかもしれないという証拠は、DDTs が長い月経周期と早い閉経を示す成人の研究とともに、DDTs が人生における月経周期をかく乱するかもしれないことを示唆している(67)。ラットによる最近の研究は、祖父母ラットへの DDT の高用量投与は、孫ラットの肥満を増大させることを示した(79)。その用量は人間で見いだされるものよりはるかに高かったが、それは、前世紀中頃における世界中での DDT の大量使用が現在の世界の肥満の発生をもたらしているかもしれないという潜在的な影響に注意を向けている。

有害な内分泌健康影響:2型糖尿病(T2D)

 多くの疫学的研究が、 DDT 代謝物 DDE と2型糖尿病(T2D)リスクとの強い関連性を示している(80)。これらの研究は、DDT 使用を数十年間禁止している国、及び DDTs レベルの高い汚染地域におけるものである。糖尿病の発生は、DDT が未だに使用されている南アフリカやインドのような国で劇的に増大し続けている(818283)。これらの報告されている人間への関連は、DDT への低用量胎児暴露及び高用量成獣暴露の両方が成獣げっ歯類における 2型糖尿病(T2D)の特徴を引き起こしたことを示した研究により確証されている(848586)。実際に実験的研究が、ある程度ぶどう糖を生成する酵素を増大することにより糖尿病の証明である血糖値の循環を増大することを示した(85)。通常の状況の下では、ぶどう糖レベルが上昇すると膵臓でインスリンを生成し、それにより、ぶどう糖レベルを低くする。 DDT に暴露したマウスは、2型糖尿病(T2D)の中心的な特徴であるインスリン抵抗性をもつが、それはマウスの DDT 暴露が、高いぶどう糖レベルに反応してインスリンを分泌する膵臓の正常な能力を低下させるからである(84)。

II. クロルピリホス

クロルピリホスはどこで使用されているか

 有機リン系農薬(OPs)は、世界中で最も一般的に使用されている殺虫剤であり、クロルピリホスは典型的な有機リン系農薬(OPs)である。それは、ゴキブリ、ハエ、白アリ、アカヒアリ(訳注:刺すと痛みを伴う熱帯・亜熱帯アメリカ原産の雑食性のアリ)、蚊、シラミのような家の中の害虫を駆除するために使用されている。クロルピリホスは、綿花、穀物、種子、堅果、果物、ワイン、野菜などの害虫を駆除するために農業でも使用されている。それはまた、森林、種苗場、食品加工工場、ゴルフ場、給水所などで、害虫の幼虫、特に蚊の幼虫(ボウフラ)を駆除するためにも使用されている。農場で熟成中のバナナを包む浸漬バッグ、家畜の耳輪、塗料など他にも数多くの用途がある。それはまた、ミミズやミツバチのように農業的に有益なある種の生物種に有毒である。

クロルピリホスに人々はどこで暴露するのか、そしてリスクはどこにあるのか

 有機塩素系農薬に比較して、クロルピリホスは環境中でより速く分解する。しかし、それでもやはりクロルピリホスは、ある条件の下では残留性についてストックホルム条約基準に合致する残留性がある[例えば (87-91)]。農業及び家庭園芸での規則的な使用は土壌、水、食物及び大気中の蓄積を引き起こす(92)。住宅での散布の後、クロルピリホスは、床、家具、おもちゃ、埃、そして空気中で検出される(93)。都市のアパートの調査で、クロリピリホスは散布後2週間、直接的に散布されていない部分を含んで、吸収性及び軟質性の表面に残留していた(93)。さらに、アメリカの家庭及び保育所のある調査で、その大部分は少なくとも週に1回以下の使用であったにもかかわらず、収集された屋内空気と埃の全てのサンプルにクロルピリホスが存在した(94)。ある調査では、シロアリ駆除のために散布されてから8年後の家屋内の空気中からクロルピリホスが検出された(95)。

 クロルピリホスはある生物種における食物連鎖に蓄積することがあり得ることを示すいくつかの証拠があり、クロルピリホスは地球規模の移動の結果、北極の魚で検出されている(87, 96-98)。残留農薬は、多くの国で野菜、果物、米、穀物中に一般的に見出される。それはまた、ある国々では魚、乳製品、飲料水、そしてソフトドリンクからさえ検出される。メキシコからの低温殺菌牛乳中のクロルピリホスの調査で、サンプル採取された8%の牛乳で規制閾値を超えていることがわかり、牛乳は子どもたちのいる家庭で使われていることを考えると、これはかなりの割合である(99)。

バイオモニタリング/体内汚染の調査(暴露の証拠)

 クロルピリホスは、人体内では比較的短命である(血液及び脂肪からは、それぞれ約24時間及び60時間で半分が除去される)。体内に蓄積する代わりに、クロルピリホスは、これもまた有害な代謝物に変換する。クロルピリホスとその代謝物は、尿、母親の血液と臍帯血、胎便(新生児の最初の便)、母乳、子宮頸管粘液、精液、幼児の毛髪の中で検出される((100-105)。

 クロルピリホスへの暴露は、農業及び家庭での使用、家畜やペットでの使用、そして食物及び水の中の残留を通じて起きる。クロルピリホスが使用される散布ドリフト、及び車、家庭、保育所、その他の建物の中の空気や埃の吸入によってももたらされる。チリの学童の調査で、学童の80%が尿中にクロルピリホスの代謝物を持っており、それは果物や野菜を食べることと関連することがわかった(106)。

  有機リン系農薬(OPs)は、それらの使用が減少している国からの人々を含めて、検査される農場労働者のほとんどすべてから検出可能である(107)。エジプトで主に OPs の取り扱いに従事する農業労働者について実施されたバイオモニタリング調査は、彼らの OPs 暴露レベルは彼らの仕事の内容が OPs に接触する程度によって変動することを見出した(107)。 高いレベルのクロルピリホス代謝物がニカラグアのバナナ栽培大農場と小規模農場で働く成人及び子どもの尿中で見いだされた(108)。

 クロルピリホス暴露の主要な経路は、ほとんどの職業的クロルピリホス暴露について皮膚経由であると考えられている。しかし、タイのタンボン・バン・リエンの農民が吸入する大気中のクロルピリホスのレベル測定で、農民は最大 0.61 mg/m3 の濃度を吸入していたことがわかったが、これは全ての暴露経路について1日当たりの許容摂取濃度の2倍以上であった(109)。

 クロルピリホスの住宅用途は、非農業従事者と子どもたちへの主要な暴露経路である。アメリカのいくつかの都市についてのある調査は、食物からの1日当たりのクロルピリホス暴露は 140 μg であるが、大気からのクロルピリホス暴露はその27倍であると見積もった(93)。クロルピリホス散布後の濃度は、成人が呼吸する高い位置に比べて、子どもたちが呼吸する床に近い低い位置の方が高いので、子どもたちは空気を通じてのクロルピリホス暴露のリスクがさらに高い(92)。実際、クロルピリホス処理されたアメリカの家庭の幼児は、約 2.7 mg/kg 吸い込み(92)、クロルピリホスの尿中代謝物は、1日当たり子どもの体重1kg当たり 約 120 ng であった(94)。これは明らかに、アメリカ及びメキシコの両方における妊婦に見出されるクロルピリホスの尿中代謝物のレベル(それぞれ平均1.4-1.8 ng/ml)より高い(110)。

クロルピリホスがなぜ EDC なのかに関する科学

 発達神経毒性は、クロルピリホスの実験的及び人間観察調査で観察される主要な有害健康影響であり、これらの影響は少なくとも部分的にはコリンエステラーゼ及びカンナビノイドの信号伝達を通じて引き起こされる(111)。神経伝達物質アセチルコリンは、脳の神経細胞の信号伝達に関与しており、酵素コリンエステラーゼ によって代謝される。脳のカンナビノイド経路はまた、神経機能にとって重要である。このことが、クロルピリホスの最も強力な影響が脳にあることの理由である。典型的に人で観察されるレベルのクロルピリホスへ発達期の暴露は、げっ歯類に多動症と低学習能力を引き起こした(112)が、後者は甲状腺ホルモンの変化と関連していた(112113)。クロルピリホスによる追加的な内分泌かく乱は、げっ歯類実験における内分泌副腎の重量と構造の変化により示唆されている。

 コリン作動性症状、例えば、神経系のダメージにより引き起こされる唾液分泌、排尿、排便、胃腸痛、嘔吐は、成人の急性クロルピリホス中毒の症状であり、神経損傷が数週間後に観察された。混合物として有機リン系農薬(OPs)を使用する成人農業労働者、及びクロルピリホスを含めて中程度の有機リン系農薬(OPs)暴露をしている労働者もまた、末梢神経系機能の損傷のような神経毒性の兆候を示した(114)。混合農薬に暴露したアメリカ居住者に関する二つの調査が、クロルピリホスはパーキンソン病に関連していることを見出した(115116)。他の農薬から隔離してクロルピリホスの神経毒性を検証した人間での調査を見つけることは難しいが、クロルピリホス散布者に関するある調査は、ずっと低いクロルピリホス暴露の人々に比べて散布者は神経学的テストの得点が低いことを発見した(117)。彼らはまた、記憶障害、疲労、筋力低下を報告した(117)。

 発達期の感受性は、クロルピリホスへの暴露に関連する人の神経毒性のための重要なリスク要素であるように見える。実際に、クロルピリホスに関する科学委員会の科学専門家の大部分は、クロルピリホスは神経発達障害をもたらすので家庭での使用を禁止されるべきことに合意した(92)。例えば、胎児期及び小児期のクロルピリホス暴露は、注意欠陥多動症、及び小さな子どもの精神及び運動能力発達障害に関連している(92110)。広範な動物研究もまた、クロルピリホスが発達期に神経毒性を引き起こすことに大きな役割を果たすことを支持している*(118)。
* http://www.panap.net/sites/default/files/monograph-chlorpyrifos.pdf

 新たに出現している実験的証拠は、クロルピリホスへの発達期の暴露はまた、脂質及びぶどう糖の代謝の調節を変化させることを示している。人間の典型的なレベルに匹敵する用量に暴露させた発達中のラットは成獣になって高いコレストロール、トリグリセリド(中性脂肪)、インスリンを持つ(119)。これらの発見は、クロルピリホスに暴露した人々は、2型糖尿病と心血管病のリスクが増大する可能性を提起するものである。今日まで、この予言はまだ、よく設計された人間の研究で評価されたことがない。

有害な内分泌健康影響:甲状腺かく乱

 クロルピリホスの研究のほとんどがその神経系毒性に目を向けているが、その甲状腺ホルモン系への影響に関する報告書が出現し始めており、クロルピリホスは 甲状腺機能低下症のリスク要素かもしれないことを示唆している。ひとつの研究では、クロルピリホスのある代謝物は甲状腺刺激ホルモンの減少と男性の T4 (チロキシン)の増加に関係し(120)、もうひとつの研究では、男性のこれらのホルモンについては反対の関係を持つ(120)。動物実験による研究もまた、発達期のクロルピリホス暴露は甲状腺ホルモン系を変更する(121)。どのようなコリン作動性毒性や行動の変化をもたらさない非常に低いレベルでの胎児期のクロルピリホス暴露は、ラットの生命の早い時期から成獣まで脳のチロキシンのレベルを低減した(121)。これは、発達期のクロルピリホス暴露はまた、オス及びメスのマウスの循環甲状腺ホルモンを減少させることを示すマウス研究と一貫性がある(122123)。神経内分泌、エストロゲン及びアンドロゲン影響を含むクロルピリホスの他の作用も報告されている。

B) 製品中の化学物質

 EDCs は、体に接触したり、あるいは家庭や職場環境で我々の身近にある多くの一般的な用途、家庭用品、そして身体手入れ用品の中に見出される。例えば、子ども用品、電子機器、食品接触材料、身体手入れ用品、布製品/衣類、そして建築材料などは、世界中で日常生活の一部である。www.ipen.org/site/toxics-products-overview

 これらの製品の化学成分は一般的に全ては開示されていないので、消費者はこれらの製品中の化学物質に暴露しているのかどうかほとんどわからない。これらの化学物質のあるものは、空気中に放出され、特に換気が不十分な建物の屋内環境中に留まる。そのような空気からある化学物質はカーペットやダスト中に沈降する。このことは、幼児や子どもはしばしば、床にあるものを拾い、口に入れる、又は床に落ちた食物を食べるので、大きな懸念がある。身体手入れ用品は皮膚につけられ、また練り歯磨きや抗菌石けん中に微量に吸収されたり摂取される化学物質が存在する。

 我々は、ここでは代表的な二つの製品、子ども用品と電子機器に焦点を当てることにする。それぞれについて我々はひとつの事例を選んだ。子ども用品中の重金属、もっと具体的には鉛;及び電子機器中の臭素化難燃剤(BFRs)である。鉛は広く認められている有毒物質であり、特に鉛への子どもの暴露は神経及び認識の障害と強い関連性を持ち、鉛はまた低レベルで EDC として作用するかもしれない。BFRs は、コンピュータやその他の電子機器、繊維製品、衣類などを通じて人に接触する様々な品目中に存在する。これらの製品中には子ども用品中のカドミウムやフタル酸エステル類(ボックス4)のような多くの他の化学物質があるが、このガイドで説明するには余りにも数が多すぎる。


ボックス4: フタル酸エステル類
 フタル酸エステル類は、ポリ塩化ビニル(PVCs)を柔らかくし、製品に香気を加え、又はプラスチックやその他の製品の柔軟性を強化するために使用される可塑剤のグループである。フタル酸エステル類は、低分子量(3-6 炭素主鎖)及び高分子量(6 を越える炭素主鎖)に分類されるが、低分子量のものは最も著しい健康リスクを及ぼすと考えられている。フタル酸エステル類はアンドロゲン(テストステロン/男性ホルモンの一種)を妨げる作用をする。アンドロゲンは、性器の発達を含んで男性の発達に極めて重要であり、少年は暴露に対して最も脆弱であると考えられる。しかし、アンドロゲンはまた女性にも重要な役割を果たすので、フタル酸エステル類は両性に関連がある。あるフタル酸エステル類は、EUでは1999年以来、アメリカでは2008年以来、おもちゃでの使用が制限されている。
 フタル酸エステル類は次のような製品中に見出される。
  • シャンプー、ローション、マニキュア液.及びその他の身体手入れ用品
  • 化粧品
  • シャンプー、ローション、ベビーパウダー、歯固めを含む赤ちゃん用品
  • おもちゃ
  • ろうそく、洗剤、エアフレッシュナーのような香気添加製品
  • 自動車(フタル酸エステル類は’新車’の臭いの原因である)
  • チューブ、輸血バッグ、集中治療室内のプラスチックを含む医療用品
  • ビニル床材、壁紙、塗料、接着剤及び粘着剤
  • 薬の腸溶コーティング
  • 塗料、粘土、ワックス、インクを含む美術用材料
 フタル酸エステル類への暴露は次のような症状に関連する。
  • 少年の性器形成異常
  • 少ない精子数
  • 男児特有の遊びの減少
  • 子宮内膜症
  • 肥満を含む代謝かく乱の要因

I. 子ども用品−無機鉛

鉛はどこで使用されているか

 鉛は、地殻中に見出される天然に産出する元素であり、環境中での広い存在は人間の活動によるところが大きい。鉛の環境汚染の主要な発生源には、鉛の採鉱、製錬、精製、非公式なリサイクル;加鉛ガソリンの使用;鉛蓄電池及び塗料の使用;非公式な家内工業での装身具類の製作、半田、セラミックス、加鉛ガラス製造;給水用鉛配管と半田−などがある。かなりの鉛暴露源は、特に発展途上国や移行経済国にまだ存在する(124)。先進国での経験によれば、加鉛したガソリン、塗料、配管、半田の使用の減少は、血中の鉛レベルの著しい低下をもたらすことができる。

鉛に人々はどこで暴露するのか、暴露の証拠、そしてリスクはどこにあるか

 鉛は、汚染された食物、水、そして屋内ダストの摂取;そして鉛で汚染された空気の吸入を通じて、体に入り込むかもしれない。喫煙もまた鉛暴露を増大するかもしれない。他の重要な文化的な鉛暴露源には、鉛釉陶器、いくつかの伝統的医薬品、メークアップ(例えばアラビア女性が用いる化粧の下地で瞼の端を黒くするコール(墨))などがある。血中の鉛レベルは現在の暴露を反映するが、鉛は時間とともに骨格骨中に、成人で体内汚染の 90-95% 、子どもで 80-95%、蓄積するので、骨中の鉛レベルは長期暴露のマーカーとしてより良いかもしれない(125)。世界の鉛の分布は、発展途上地域、特に加鉛ガソリンをまだ使用している諸国で最大である。その中で、さらに高いリスクに直面するかもしれない部分集団は、劣化した家に住む低所得層家族の子どもたち、ある産業活動の下にある’ホットスポット’に住むコミュニティ、及びある職業集団である(126)。暴露とリスクはまた、一生のうちの段階によって異なるかもしれない。すなわち妊婦と子どもたちは特に鉛毒性からのリスクにある。以前に鉛暴露した女性については、骨中の鉛が妊娠中に移動して母親の血中及び母乳中に放出されて、胎児や新生児に有害影響を与え得るので(127)懸念がある。子どもたちは、1) 体重あたりの鉛摂取がより高い;2) より多くのダストを吸入する;3) 消化器官の鉛吸収はより高い;4) 脳血流関門はまだ十分に発達していない;5) 成人に比べてより低い曝露で神経系影響が起きるので、小さな子どもたちはひとつのぜい弱な集団の一員である(ボックス5)。

鉛がなぜ EDC なのかに関する科学

 鉛は、神経、血液、胃腸、心循環、及び腎臓の各系を含む、体の多臓器に影響を及ぼす有害物質である。鉛暴露は、子どもの精神遅滞及び成人の高血圧がもたらす必然的な有害影響のために、世界の疾病の0.6%の原因となていると推定される(128)。慢性的な低レベル鉛暴露はまた、子どもと成人に有害な健康影響もたらし、これらの影響のための血中鉛レベルに閾値は特定されていない(127)。

 鉛に関するほとんどの知識は重金属としての特性に焦点を当てているが、鉛はまた内分泌かく乱物質(EDC)でもある。それは既知の生殖毒性物質であり(129)、内分泌系に作用することができる(130。エストロゲンの変化が実験動物モデルで観察されているので、鉛はエストロゲン受容体を活性化し、エストロゲン活性化遺伝子の転写を引き起こす能力を持つといえる。動物モデルの生体外研究と人の疫学的研究は、鉛暴露による女性の生殖機能への有害影響を支持している。人間において鉛は、思春期前後の少女(131)及び閉経前の健康な女性の生殖ホルモンに変化をもたらす(132)。


ボックス5: 子ども用品中の鉛
 多くの国で、化学物質と金属の重要な暴露経路は、消費者製品、特に子ども用の製品を通じてのものである。IPEN (2012)により、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、ロシア、及びウクライナでテストされた子ども用品 569 項目のうち 100 項目(18%)以上が、土壌中の鉛のための地域の規制制限値を超えるレベルの鉛を含んでいた。フィリピンでは、2011年に IPEN によりテストされた子ども用品 435 項目の15%がアメリカの規制値と等しいかそれ以上の鉛を含んでいた。2011年に中国の 5 都市で IPEN により実施された 500 の子ども用品の同様なテストは、48 製品(10%)が中国の規制値と等しいかそれ以上の鉛を含んでおり、82 製品(16%)が、アメリカ及びカナダで使用されている塗料中の鉛含有量の規制値 90 ppm を越えていることを明らかにした(http://www.ipen.org/site/toxics-products-overview)。


鉛の有害な内分泌健康影響:女性の生殖健康

 疫学的研究が、鉛暴露と女性の生涯を通じての生殖健康影響との関連を報告している(133)。これらの研究のほとんどは、アメリカの女性における低レベル、慢性暴露の影響を検証している。二つの横断的な研究が、低レベル鉛暴露と、初潮、乳房発達、性毛発現のような主要な性徴発現の遅れとの関係を示した(134135)。最近の研究では、低レベル累積鉛暴露(骨の鉛レベルにより測定)は、434人の女性の早期閉経に関連していた(136)。鉛暴露と閉経時年齢との関係を調べた他の二つの研究は、同様な結果を見出した。ひとつは元精錬所労働者のもので、地域のコントロール群に比べて閉経が早いことが見出された(137。二番目の研究は、代表的なアメリカ女性 1,782 人の横断的な分析で、血中の鉛レベルが高い女性は自然閉経が早くなる可能性が見られた(138)。成熟時期の遅れと相まつて、早い閉経に関する集合的な証拠は、鉛暴露はたとえ低レベルであっても女性の生殖可能期間を縮めるかもしれないことを示唆している。

II. 電子機器

PBDEs はどこで使用されているか

 ポリ臭化ジフェニルエーテル類(PBDEs)は、コンピュータ、電子・電気機器、布製品、発泡体含有家具、発泡断熱材、及び建材を含んで、1970年代から消費者製品で難燃剤として広く使用されている残留性有機汚染物質(POPs)である[139]。歴史的に、ペンタBDE、オクタBDE、及び デカBDE と呼ばれる3種の異なる混合物が商業的に利用可能である。ペンタBDE の主要な用途は家具中のポリウレタンフォームであり、一方オクタBDE とデカBDE は電子機器及びその他のプラスチック製品中で使用されている。多くの国では、ペンタBDE とオクタBDE は廃止されており、ファイヤーマスター550、テトラブロモビスフェノールA (TBBPA)、そしてヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)を含んで、他の臭化難燃剤に置きかえられている[38140]。それらの残留性と生物蓄積性のために、そして長距離移動能力のために、ペンタBDE、オクタBDE、及びHBCD は世界的な廃絶のためのストックホルム条約附属書Aに追加された[141]。デカBDE は現在、同条約への追加について検討中であり、途上国ではまだ広く利用できる。臭化難燃剤(BFRs)に関する最近のサンアントニオ声明についての概要はボックス6 に示されている。


ボックス6 サンアントニオ声明
 22か国からの150人近い科学者らが、2010年にアメリカ、テキサス州サンアントニオで開催された第30 回残留性有機ハロゲン系汚染物質国際シンポジウムで発表された ”臭素系及び塩素系難燃剤に関するサンアントニオ声明” に署名した。このサンアントニオ声明は、臭素系及び塩素系有機難燃剤(BFRs 及び CFRs)の残留性、生物蓄積性、及び有毒性、並びに集中的な使用の結果としての人間及び野生生物の暴露について科学界で増大している懸念に目を向けている。

 署名した科学者らは BFRs 及び CFRs 並びに一般的な環境汚染物質の健康影響と環境的運命に関する専門家である。化学物質汚染に関する様々な面で活動する科学者らの国際ネットワークである化学物質汚染国際パネル(IPCP)もまた、この声明を承認した。

 この声明は、ひとつの危険な難燃剤を他のものに代替する継続的なパターンに注意を向けるよう求めており、消費者製品中の BFRs と CFRs についての情報の表示と利用可能性はもちろん、 BFRs と CFRs の改善された使用と処分を勧告している。最後に、製品中の難燃剤の実際の必要性にもっと科学的な注意を向けるよう求めている。
  訳注:EHP Editorial 2010年10月28日 臭素系及び塩素系難燃剤に関するサンアントニオ声明

人々はどこで PBDEs に暴露するのか、暴露の証拠、そしてリスクはどこにあるか

 BFRs は製品に化学的に結合しているわけではなく、したがってそれらは環境に放出され、汚染された家庭内ダスト及び/又は食物の摂取及び吸入を通じて人の体内に入り込むかもしれない。ヨーロッパ及びアメリカでは PBDEs は10年以上前に廃止されたので[142]、PBDE 暴露は、低減しているが、PBDEs は体内排出半減期が長く[143, 144]、屋内環境に残留するかもしれず[145]、食物ウェブ中で生物濃縮することができる[146]ので、公衆の健康影響についての懸念がある。さらに、家庭内では PBDE 含有の消費者製品の更新に時間がかかるかもしれない。開発途上国における追加的な PBDE の暴露源は、主にアフリカとアジアにおける2,000万トンから5,000万トンの廃棄物処理である(*)。
(*)http://www.basel.int/Implementation/PartnershipProgramme/PACE/Overview/tabid/3243/Default. aspx (リンク切れ)

 ストックホルム条約への PBDEs の登録は、これらの化学物質を含む製品のリサイクルと使用を許す特定免除(specific exemptions)を含む[141]。アフリカやアジアで行われている電気・電子機器のリサイクルは、リサイクル作業中の労働者やリサイクル製品の使用者に BFR 暴露をもたらす[147]。例えば、インドにおけるリサイクルされたプラスチックに関するある研究は、検証したサンプル50%にデカ PBDE の含有を見出した[148]。リサイクルされたプラスチック製品の BFRs による汚染もまたヨーロッパで起きている。例えば、最近のある研究は、デカ PBDE 、TBBPA 及びその他の様々な難燃剤化学物質を、ヨーロッパ市場にあるリサイクルされた黒いサーモカップ及び台所用品中に見出した[149]。

 暴露源と暴露経路は、製品のライフ段階と個々の PBDEs によって変わり得る[144150]。例えば、 BDE-47, -99, 及び -100 の血清中の濃度(ペンタ BDE の特性)[151]は、ダスト暴露と高い関連性がある[140152]。対照的に BDE-153 (ペンタ BDE とオクタ BDEのマイナーな要素)[151]は、食事暴露(母乳を含む)との強い関連性があり、一方、他のダスト暴露との一貫性が小さいことを示している。平均して子どもたちは、大人より3倍高い濃度であった[153]。このことは母乳からの暴露、及び子どもたちは手を口に持っていくという行動のためにダスト摂取が増えることによる暴露であるように見える[154]。

 北アメリカにおける暴露は、ヨーロッパ及びアジアより一桁高い[155]。カリフォルニアの住人は歴史的にペンタ BDE コンジナーへの非職業的暴露が世界で最も高いが、それは同州の独自発泡体含有家具のための可燃性基準のためである[156]。ペンタ BDE コンジナーのより高い濃度はまた、低所得層社会の中で[154]、及び職業的に曝露する人々[157]の中で見いだされている。より高い暴露を受ける職業には、消防士、難燃製品製造者、難燃剤製品のリサイクルに関わる人々、コンピュータ技術者、及びカーペット敷設者などがある[157-160]。ニカラグアにおける廃棄物リサイクルに関わる子どものたちの PBDE の平均的な体内汚染は、500〜600 ng/g 脂質であり、アメリカの子どもたちより約10倍高く、今日まで報告されている最高濃度の部類である[161]。

PBDEs がなぜ EDC なのかに関する科学

 BFRs は、それらの分解代謝物はもちろん元々の化合物も甲状腺系を阻害するかもしれないので、潜在的な EDCs である。甲状腺ホルモン(TH)は胎児と小児の発達に極めて重要な役割を果たす[162]。動物による研究では、ペンタ BDE 混合物はそれらの成分とともに発達中及び成獣のげっ歯類の甲状腺ホルモンを減少するが、それはおそらく血清の TH クリアランスを増加させる肝臓酵素を活性化することによる[163 - 165]。ヒドロキシル化 PBDEs ([OH-PBDEs)[166]と呼ばれる PBDEs の代謝物は、甲状腺系にもっと強力に作用し、 PBDEs と甲状腺ホルモンの構造的類似性により、この化学物質が甲状腺ホルモン−結合タンパク質と相互作用することを可能にする[167]。さらに、ある OHPBDEs は甲状腺及びエストロゲンホルモン受容体に結合することができる[168169]。

 いくつかの疫学的研究は、生命の早い時期の PBDE 暴露は、生命の早い時期の甲状腺ホルモンかく乱と関連があり、発達中の胎児は特に脆弱であることを見つけている[170173]。妊娠中は、甲状腺の要求が増す。血清 TH レベルは妊娠第1期中に50%近く増大する[174]。妊娠中の不足は母親と子どもの健康を損なう[175]。妊娠初期に母親の甲状腺ホルモンがわずかに減少しても、知能の低下を含んで、長い期間継続する子どもの発達障害と関連する[176]。この様にして PBDE 暴露は妊婦の甲状腺の機能を損ない、子どもの神経生物学的健康に生涯にわたる影響を及ぼすことになるかもしれない。

PBDEs の有害な内分泌健康影響:有害な神経発達影響

 PBDEs の最も大きな公衆健康懸念のひとつは、神経発達毒性である。動物実験とヒト研究はPBDEs は、脳発達を直接的に変化させること及び甲状腺ホルモン規制を阻害することの両方により神経発達毒性を引き起こすことができることを発見ている[23]。人間の研究では、PBDEs への出生前又は出生後初期の暴露は、集中力、運動調整力、及び認識力の欠陥を含む子どもの神経発達的危害と関連している[177-179]。例えば、今日まの最大規模の研究で、 Eskenazi et al.[178]は、アメリカ、カリフォルニア州の移民農民地域における5歳児及び7歳時の胎児期及び小児期の PBDE 暴露と神経行動学的発達との間の関連を検証した。彼らは、胎児期及び小児期の PBDE 暴露の両方が10倍増大すると、7歳児のIQ 5点低下と関連することを発見した。これらの神経発達影響は、発達初期の鉛とポリ塩化ビフェニルエーテル類(PCBs)暴露で観察されるものと同等である。

C) 食品接触物質

I. ビスフェノール A (BPA)

BPA はどこで使用されているか

 BPA は、硬質プラスチックや缶詰用のエポキシベースのライニングのような様々な食品容器に見出される。過去数年前まで、飲料用ボトルのような硬質・再使用可能なプラスチック容器のほとんどは BPA を含んでいた。現在、異なる材料から作られた BPA を含まない代替製品が容易に入手可能である。健康への懸念の高まりのために、赤ちゃん用ほ乳びんのようなあるプラスチック容器中での BPA の使用は、現在多くの国で禁止されており、その他の国々でも自主的に削減又は廃止されている。しかし BPA は、スープ、野菜、豆などの缶詰の内面を処理するエポキシ樹脂の一般的な成分としてまだ使用されている。この内面処理は、ボツリヌス中毒症(訳注:厚労省ウェブ 参考情報)のような重大な食中毒を引き起こすことがある病原体による汚染から内容物を守るために重要である。全ての缶詰のライニングが BPA を含んでいるわけではないが、どれが含みどれが含まないかを消費者が知ることは不可能である。BPA はこれらのライニングから食品中に漏れだすことがあり、それにより消費者が暴露することになる。BPA を含むその他の一般的な家庭用品には、ポリカーボネート製メガネ、熱転写印字レシート、プラスチック水パイプなどがある。


ボックス7 ロシアのBPA
 2010年、チャパエフスク医療協会(CMA)は、ロシアの3都市から得た21種の食品サンプルの BPA レベルを検査し、81%のサンプルが汚染されていることを発見した。幼児用缶詰食品には、最も高い汚染レベルでのものがあった。その結果は、医師、化学者、政府当局、産業側指導者、及びその他のNGOsが参加したいくつかのセミナーやワークショップで発表された。いくつかの勧告の中で、CMA は、BPA レベルについての人間、特に幼児の継続的なバイオモニタリング、一般公衆の疫学的影響調査の実施、そして食品及び消費者製品中の BPA の危険性についての情報の公衆への公開と周知のためのキャンペーンの開始を提案した。

情報源: http://www.ipen.org/project-reports/survey-bisphenol-russian-foods

人はどこでBPA に暴露するか、暴露の証拠、リスクはどこにあるか

 BPA は高生産量(High Production Volume)化学物質であり、世界の生産量は2015年には540万トンを超えると予測されている。暴露は全世界に及んでいるように見える(ボックス7)。米・疾病管理センターは、全てのアメリカ人の96%以上が BPA を体内に持っていると推定している[180]。BPA は、尿、血液、さい帯血、及び羊水中に見出される。子どもたちはプラスチック製品を使って飲食することが多く、床の上で過ごす時間が長く、物を口に入れることが多いので、子どもたちの典型的な暴露レベルは大人より高い。反対に、プラスチック製品の使用が少ない人々や、BPA 含有製品との接触を減らす生活様式に変えている人々は BPA の体内汚染が低い[181, 182]。

 ほとんどの人々は、容器からBPA が漏れ出した食品や飲料を摂取することにより BPA に暴露する。漏洩は、熱、太陽光、及び酸性度のような環境的要因により高められるので、トマトのような酸性度の高い食品には缶のライニングから BPA が溶け出しやすい。プラスチック製品の中又はそれらに接している食品を電子レンジで再加熱したり、暑い車の中に飲料ボトルを放置しておくと、プラスチックからの BPA の溶け出しを強めることが知られている。他の可能性ある、しかし十分には調査されていない暴露経路には、汚染された屋内ダストの吸入又は摂取、及びBPA含有の熱転写印字レシートからの皮膚暴露がある。

 BPA は、どこでも暴露すると考えられるその様に多くの製品中で使用されている。DDT やその他のある EDCs とは異なり、BPA は急速に代謝され、体内に生物蓄積することはないので、暴露を低減すれば体内汚染も急速に低減させることができる。いくつかの研究が、缶詰食品やプラスチック容器の使用を最小にするよう基本的な生活様式を変更すれば、尿中やその他の体液中のBPAレベルを急速に低減することができるを示している[181, 182]BPA を使用しないプラスチックや缶内面ライニングの利用可能性の増大もまた暴露を減らすようであるが、代替成分もまた EDCs かもしれないという懸念が提起されている[183]。

 BPA を使用しない食品容器の世界市場への導入は BPA への人間の暴露の低減にとって明らかに好都合であるが、BPA はまだ高生産量化学物質であり、また、代替暴露源には重大な懸念が残る。環境汚染はまた、残留性の問題でもある。残念ながら、アメリカでは、全プラスチック・ボトルの3分の1 以下しかリサイクルされていないので、多くプラスチック・ボトルが埋立地や水系に行きつくことになる。2000年には米国の 30州の 139 の水路の 41%で BPA が検出されたが[184]、このプラスチックのゴミは最終的には海にたどり着く。海の全てのゴミの 90%以上はプラスチックであり、それらはそこに数十年あるいはそれ以上留まる可能性がある[183]。状況は、開発途上国でますます悪くなっている。これらのゴミのあるものから漏れ出している BPA は、海水中及び海洋の生物種からで検出されており、全てのプラスチックのゴミが風化し分解するのに数世紀を要するので、そのことは重大な環境汚染物質として残留し続けるであろうこと意味している。

なぜ BPA が EDC なのかの科学

 BPA は最もよく研究され、最もよく知られている EDCs のひとつである。1891年に初めて合成された BPA は、1930年代の初期にエストロゲン擬態化学物質として特定されており、したがってその内分泌かく乱特性は数十年間、認識されている。BPA はいくつかのことなるメカニズムを通じてエストロゲン信号伝達を阻害することができる。それは、天然のエストロゲンに比べてもっと弱いけれどもエストロゲン受容体に結合し刺激することができる[186, 187]。BPA 暴露は、例え低レベルであっても脳のような組織中のエストロゲン受容体の濃度を変え[188]、その結果その組織の天然エストロゲンに対する感受性を変えるという影響をもたらすことができる。エストロゲンは、脳、乳腺、そして精巣をも含んで多くの組織の発達に極めて重要な役割を果たすので、発達中のエストロゲン作用の阻害は、後々の生殖機能に影響を及ぼす恒久的な変化をもたらすことができる。例えば、早い時期の BPA への暴露は、女性の排卵と行動に極めて重要な脳領域の視床下部にある重要な神経伝達物質ドーパミンを生成する神経の密度を変更する[189, 190]。これは、エストロゲンに敏感な組織に及ぼす BPA の影響に関する多くの例のひとつである。男性も女性もともに天然エストロゲンを生成し反応するが、これらのプロセスには相当な性差があることを考慮すれば、BPA の作用が両性にとって同じではないということは驚くに当たらない。

 BPA が作用する生物学的分子メカニズムは、DNA のメチル化(訳注:ウィキペディア 参考情報)を通じて行われるものである。一卵性双子を除いて人間は誰でも独自の遺伝子の組み合わせを持っている。我々の体内で、これらの遺伝子の発現−すなわち、活性化され、ある細胞内のあるタンパク質の発現をもたらすかどうか−は、かなり異なる。例えば、遺伝子物質((DNA)は、皮膚細胞と神経細胞との間で同等であるが、これらの非常に異なる組織中で生成されるタンパク質は細胞タイプ毎に独自である。これらの相違を決定するのが遺伝子の発現である。DNA のメチル化は、メチル基と呼ばれる小さな化学基のDNA への付加である。これらのメチル基の総計と場所が、ある遺伝子が発現するかどうかと、発現のレベルを決定する。BPA についての情報が最も多い中で、いくつかの EDCs は遺伝子中でそのような変化を誘引する。BPA は、エストロゲンに敏感な経路を含んで、生殖健康、エネルギーバランス、及び行動に根源的な神経内分泌経路で DNA メチル化を引き起こす[46, 191-193]。細胞成長に関連する重要な遺伝子中で変更された DNA メチル化のパターンは、人間に関連する低レベルのBPAへの発達期の暴露が、なぜ動物モデルで子宮がん及び精巣がんのリスクを高めるのかを説明する潜在的なメカニズムかも知れない[194-196]。同様なかく乱はまた、肝臓、脳、及び卵巣でも特定されている。

 BPA はその後、様々な細胞ベースのモデルを使用して、テストステロン(訳注:男性ホルモンの一種) や甲状腺ホルモンを含む他のステロイドホルモン(訳注:ウィキペディア 参考情報)の作用をかく乱することが示された。サルでは、BPA は脳の海馬にある樹状突起スパイン(訳注:ウィキペディア 参考情報)のアンドロゲン依存増進を妨げるが、それは BPA が神経可塑性を阻害するかもしれないということを示唆している[197]。人間での研究は、アンドロゲンのレベルと、男性、女性、及び幼児の BPA のレベルとの関連を示している。それは十分に説明されていない影響であるが、変更されたアンドロゲン代謝、アンドロゲン生成を制御するフィードバックのかく乱、又はアンドロゲン生成の高まりの結果かも知れない[198]。BPA は、古典的なエストロゲン受容体よりエストロゲン関連受容体ガンマ(ERRγ)[訳注::九州大学 NEWS RELEASE 参考情報]に関して 80 倍強いかもしれないこともまた観察されている[199]。ERRγの機能的な役割についてはわずかしか知られていないが、胎児の脳や胎盤で強く発現し、このことは胎児が特にBPAに過敏であるという懸念を支持するものである。

有害な内分泌健康影響:行動と生殖健康

 2014年現在、BPA と人間の健康影響、とりわけ生殖、行動、及びエネルギーバランスの障害との関連について 100 近くの疫学的研究が発表されている[198]。それらのほとんどが、発達期の暴露は最も重大な影響を及ぼすという広く知られている懸念を支持している。BPA は、体外受精を含んで不妊治療を受けている女性の卵母細胞の質低下と関連していた[(44, 45]が、そのことは動物モデルで観察される卵巣影響と矛盾しない[200]。生殖生物学が実際には人間と同等な非ヒト霊長目を含んで、動物モデルからの証拠もまた、発達期の BPA 暴露は卵巣の発達、子宮構造、及び胚着床を阻害することを示している[201-203]。高いレベルの BPA は、女性の一般的な生殖障害である多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と高いレベルのアンドロゲンに関連している。BPA は 子宮内膜症、流産、早産、及び低出生体重を含む女性の他の生殖障害と関連しているが、その証拠はあいまいであり、入手可能な研究は、小さなサンプル数や小さな効果量を含んで設計上の弱点の影響を被っている。同様に男性では職業環境下での BPA への暴露は、精子の質と生殖機能の低下に関連しているが、一般の人々が暴露する用量で BPA が同様な影響を及ぼすかどうかを確立するための十分な証拠はない。

 世界保健機関(WHO)や国家毒性計画(NTP)を含むいくつかの機関は、胎児の脳発達と行動に及ぼす BPA の影響に関する懸念を表明している。多くの動物モデルからの証拠は、発達期の BPA 暴露は 不安、攻撃性、及びその他の行動を高めることを示しており[204]、これらの影響は現在、子どもたちについて報告されている[205-207]。これは、BPA は ADHD や ASD のような行動障害に寄与しているかもしれないという仮説に導くものである[26, 208]。脳の性差とシナプス可塑性への影響もまた、動物で観察されている。

 BPA と、心血管系疾患及び高血圧症との関連はかなり明確であり、多くの疫学的研究で報告されており、動物における反応機構研究によって支持されている[198, 209]。重要なことに、これは、発達期ではなく成獣の BPA 暴露を疾病と関連付ける強い証拠 の結果であるということである。広範な集団の中で有意な関連性が報告されており、コホート研究を通じて矛盾がなく、その関連性の信頼度を高める観察である。肥満との関連は希薄なので、心循環系の影響は体重の増加の二次的結果というより、むしろ直接的な影響であるように見える。


 Annex I
  第3回国際化学物質管理会議(ICCM3)における内分泌かく乱化学物質に関する決議

 下記の内分泌かく乱化学物質に関する決議は、2012年9月17−21日 ケニアのナイロビで開催された第3回国際化学物質管理会議において、様々な政府間組織、公益非政府組織、及び産業界とともに、80か国以上の政府の合意により採択された(*)。
脚注(*):決議 III/2:新規政策課題;F:内分泌かく乱化学物質 (訳注:38、39ページ);第3回国際化学物質管理会 2012年9月17−21日 ケニア、ナイロビ
http://www.saicm.org/images/saicm_documents/iccm/
ICCM3/Meeting%20documents/iccm3%2024/K1283429e.pdf


内分泌かく乱化学物質

 持続可能な開発に関する世界首脳会議の実施計画第23項に規定されているように、化学物質が、人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で使用、生産されることを2020年までに達成することを目指す包括的な目標に留意しつつ(†)、訳注(1)
脚注(†):持続可能な開発に関する世界首脳会議、ヨハネスブルグ、南アフリカ 2002年8月28日〜9月4日
(United Nations publication, Sales No. E.03.II.A.1 and corrigendum)第 I節、決議2、annex.
訳注(1):持続可能な開発に関する世界首脳会議実施計画(外務省 和文仮訳)

 化学物質のライフサイクルを通じての適切な管理を達成することを目指す、国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)の非拘束的、自主的及び多様な利害関係者という特性についても、また留意しつつ

 人の健康と環境に及ぼす内分泌かく乱物質の潜在的な有害影響を認めつつ

 特に戦略的アプローチ(SAICM)の包括的方針の14(b)で規定されているように(訳注2)、特に脆弱な人、生態系及びその構成要素を保護する必要性についても、また認めつつ
訳注(2):包括的方針戦略(国際化学物質管理会議の文書をもとに環境省仮訳)

 開発途上国及び移行経済国の特別の必要性を考慮しつつ

 政府、政府間組織及び市民社会、科学界、公益非政府組織、労働組合、並びに健康分野を含む戦略的アプローチ利害関係者による継続する取組みを認めつつ

  1. 内分泌かく乱化学物質は緊急の政策課題であることに関する自覚と理解を構築し、行動を促進するための国際的な協力に同意し、

  2. 内分泌かく乱化学物質に関する普及と意識向上は特に該当性があること、及びそのような化学物質に関する情報の利用可能性とアクセスを改善することは優先事項であることを考慮し、

  3. 内分泌かく乱化学物質への暴露と影響に関する現状の知識のギャップを認め、

  4. 緊急の政策課題として内分泌かく乱化学物質と戦うために求められるリソースの動員についていくつかの諸国が直面する現状の困難もまた認め、

  5. 政策策定者及びその他の利害関係者の中で、自覚と理解を増大するという全体的な目的をもって内分泌かく乱化学物質に関する協力活動を実施することを決定し、

  6. 化学物質の適正管理のための機関間計画の参加組織に、作業計画の一部としてそれぞれの権限範囲内で、戦略的アプローチの全ての参加者の既存の活動の上に、下記を構築することにより、オープンで、透明性があり、包括的な方法をもって、内分泌かく乱化学物質に関する協力的な行動を率先し推進するよう要請する。

    1. 開発途上国及び移行経済国の必要性に特別の注意を払いつつ、とりわけ、国連環境計画(UNEP)と世界保健機関(WHO)により共同で発表された内分泌かく乱化学物質の先端科学に関する2012年報告書の時宜を得た更新を通じて、特に脆弱な集団における内分泌かく乱化学物質への暴露又は影響の低減に寄与することができる潜在的な措置を特定し又は勧告するという目的のために、最新の情報と科学的専門家の助言を関連する利害関係者に供給する。

    2. 特に全てのレベルでの活動と戦略的アプローチのクリアリング・ハウスの使用を通じて意識の向上をはかり、内分泌かく乱化学物質に関する科学に基づく情報の交換、普及、及びネットワーキングを推進する。

    3. リスクを低減するための活動の優先順位づけを含んで、意思決定を支援するために内分泌かく乱化学物質に関連する情報の生成と問題の評価のために、諸国、特に開発途上国及び移行経済国において能力を構築するための活動のための国際的な支援を提供する。

    4. 事例調査の研究、開発、及び研究結果の調節行動への展開に関する助言の相互支援を促進する。

  7. 化学物質の適正管理のための機関間計画の参加組織に対して、会議事務局の参加者とその開発について協議しつつ内分泌かく乱化学物質に関する共同活動のための作業計画を開発し、戦略的アプローチのクリアリングハウスのウェブサイトにその計画を発表するよう要請する。

  8. 全ての関心を持つ利害関係者と組織は、利用可能な関連情報とガイダンスの開発と作成に参加することを含んで、共同活動のために、専門性と財源及び現物の提供を含む支援を自主的に提供することを求める。

  9. 化学物質の適正管理のための機関間計画に対して、内分泌かく乱化学物質に関する共同活動とその達成、及び第4回会合における検討のために更なる可能性ある共同活動のための勧告に関して報告するよう要請する。



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化学物質問題市民研究会
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