るーとらの秘密基地
松吉
■詩集『サマータイム』
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●あれは幻
●雪がつもる
●道尽きて
●夜明けの寒さに
●summertime
●ひと夏の経験
●笛
●青空
●夜の蝉
●老子
●砂漠の駱駝
●恋する惑星
●光る乗客
●空の深さ
●猿が哭く
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猿が哭く

夜中に
猿が哭いている

寒く
梢をゆらして

猿が哭いている.


私は笛だ

だれが
吹くのか
知らないけれど・・・・


こんな処で
猿が哭いている.

みんな幻

けれど猿が哭いていて


////



坂を登ると
北風が吹いた
地軸を傾け 地軸を傾け
私は坂をのぼったよ

どこへ行っても
どこへ行っても

うたはなく
うた、はなく

猿の哭く声だけが聴こえた
猿、だけが哭いている

高い木よ、

なにが 全体の 出来事なのか
地軸を傾け 地軸を傾け

地を嘗め 地を舐め
私は、

ただ手のひらのように暮らしを見つめ
めまいのように私を離れる

みえないものは
あまりに近いので

猿が哭く
猿が哭く

猿がどうしようもなく哭く