るーとらの秘密基地
blog「日のすきま」
松吉
■詩集『ひまわり』

●草花はひかりに濡れ
●七月
●あんなにお茶を飲んだのに
●海の色に染まる
●真昼のシネマ
●教えてくれないか
●ここにいるよ
●日曜日
●五月連抄(一九八三年)
●だれもいない美術館
●言葉
●桜の森をてくてくゆくよ
●不眠の夜
●この水はきれいです
●雨の日には
●ひかりよりも先に
●スケッチ
●水切り
●白いクジラは病気です
●空がいいんだ
●二十世紀の終りの四月
●危ない魚
●空に言った
●ひまわり
●ねむれぬ夜は
●朝を上手に
●電話をください
●いい声きかせてね
●さくら
●なく狼
●いますぐどこかへつれてって
●抱いてあげましょうか

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■カイエ
■詩集『日の採集』
■詩集『サマータイム』
■くうくう!
■MK対話

なく狼

 夜明の丘に立って 泣いていた とてもまじめな 狼に ぼくは 
 何度も繰り返すんだ

 そばにいておくれよ そばにそばにいておくれよ
 朝がきて ひとははたらき 空の下 傷ついて 眠ったよ

 そばにいておくれ そばにいておくれ
 みみたぶ かんであげる 髪をすいてあげる うなじを吹いてあげる
 なんでも きみの好きなことしてあげる

 きみのこと まってた ずっとまえから まってたよ
 夏の日 秋の日 冬の日まってた 晴れの日 風の日 雨の日まってた

 そばにいておくれ そばにそばにいておくれ
 まぶたにキスしてあげる 膝を曲げてあげる 指を吸ってあげるよ!

 それからぼくは 服を脱ぎ
 アフリカのライオンみたいに食べられた

 なぜって
 ぼくの体液の赤さと塩さと
 きみの美しい夜明と雪と
 おなかがとてもすいていたからさ