ひかりよりも先に
ひかりよりも先に
ぼくはきみの台所で
この朝を
ゆっくり飲み干すこともできるんだ
夢の水際で
痛んだ歯を磨きながら
白くひかる空のセロリを
しずかに噛むこともできるんだ
たくさんの野や畑
公園や工場を走ったよ
自転車が好きだから
風の胸にもさわったよ
それから泣いた裏山の
笹薮のむこうにみえた
遠い風景
たいせつなノートに写しておいた
晴れた時の堤防を走ろう
風より先に
指より先に
きみに追いつくよ
むこうにひかる露草まで
そこで今日はお昼にする
胸をひらくそらの青
川面にさっきから映っていた
水よりふかく
そらより高く
ぼくはきみの瞳のなかで
消えてしまうこともできる
どうなってもいいんだ
このままきみの異和として
空の涯に落ちてもいいんだ
ひかりよりも先に
ぼくはきみの朝を飲み干すよ
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