るーとらの秘密基地
blog「日のすきま」
松吉
■詩集『ひまわり』

●草花はひかりに濡れ
●七月
●あんなにお茶を飲んだのに
●海の色に染まる
●真昼のシネマ
●教えてくれないか
●ここにいるよ
●日曜日
●五月連抄(一九八三年)
●だれもいない美術館
●言葉
●桜の森をてくてくゆくよ
●不眠の夜
●この水はきれいです
●雨の日には
●ひかりよりも先に
●スケッチ
●水切り
●白いクジラは病気です
●空がいいんだ
●二十世紀の終りの四月
●危ない魚
●空に言った
●ひまわり
●ねむれぬ夜は
●朝を上手に
●電話をください
●いい声きかせてね
●さくら
●なく狼
●いますぐどこかへつれてって
●抱いてあげましょうか

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五月連抄(一九八三年)

日に日に若葉がふえる
ひかりに空がひろがる
路地路地をゆきながら
萌える緑のひかりに
不幸なこころの核を照らしだされた
すべて薄い膜のなかから
ぼくの鏡がみえる
鏡はさみしいかい
今年の蛙がまっすぐ半眼の眼で
現在をみすえている
その前を今年も
ゆくのはさみしい

    *

ひかりあふれる五月
胸が痛かった
ここがどこか解らない
ぼくは素裸で
空や丘やビルの反射に
目を細め
あるいていった

いつかもこうして
ひかりのなかを あるいていった
水に
入った
花が咲いていた

    *

夜になっても 五月のひかりが
まだどこかに残っている
草花がぼくを消して
ひかっていた
ひかっていた
ぼくはどこをあるいていたのだろう
空が 斜面が 大地が
ひかっていた