1998年4月のミステリ

あくむ

井上夢人著 集英社 258ページ 1993年
あらすじ
「夢か現実か」という5話の短編
感想
読みやすかった。すらすら読めました。
「ブルーブラッド」と「ゴールデンケージ」が面白い。「ブルー・・」は美しい。読んでいて、弘兼憲史「ハロー張りネズミ」のう〜ん言ったらあかん? あかんね。某漫画を連想してしまいました。
「ゴールデン・・」は気色が悪い。リアル。「気持ちわる〜」とゾクゾクモゾモゾ感じながらそれでも読むのは止まらない。
おすすめ度:★★★1/2
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キルトとお茶と殺人と THE PERSIAN PICKLE CLUB

サンドラ・ダブラス著 文春文庫 333ページ 1997年 雨沢 泰訳
あらすじ
大恐慌時代のアメリカ、西部カンザス州の田舎町ハーヴェイヴィル。農家の主婦達は、キルトの会”ペルシャン・ピックル・クラブ”に集まり、指は針仕事、口はお喋りを楽しんでいる。さぼてんの大好きな「スリーピングマーダー物」の佳作。
感想
「針仕事は嫌いなの。家事も嫌い」という都会育ちのリタに、若い農家の主婦クィーニーが「本を読んでもなんにも残らないけど、キルトは残るわ」というくだり、耳が痛い。耳が痛いけれど、この本は面白い。
世代を越えた女同士の友情が、ベタベタ描かれていて、いつもはわりと斜に見てしまうんやけど、厳しい内容もあり、あったかな気持ちで読み終えました。読み終わったとたん、ホットケーキと紅茶が飲みたくなり、めずらしくササッと作った。

子供の頃、日曜洋画劇場で「怒りの葡萄」を観た。それから随分時がたっているけど、忘れられない映画です。流れ者の一家ブルーの窮状が映像としてわかるように思う。
おすすめ度:ペルシャン・ピックルとは、ベイズリー柄の事(さぼてん男のいう”ぞうりむし柄”)★★★★
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防壁

真保裕一著 講談社 270ページ 1997年
あらすじ
SP(セキュリティポリス)、消防士等危険な仕事に従事している公務員4人の物語。
感想
SP、消防士、海上保安庁特殊救難隊員、陸上自衛隊不発弾処理隊員の仕事内容は、興味深く読めました。警視庁警護課SPの「防壁」は、おもしろかったのですが最後が平凡。残念。
不発弾処理の話では、7年前に家のほん近くで不発弾が見つかり、撤去作業のため3時間程避難した事を思い出しました。貨物の引き込み線を取り壊している最中に不発弾が見つかったのです。
公務員への風当たりが強い昨今、著者は現業公務員を書き続けてはるけど、なんでなんかなあ。嬉しい事ではあります。
おすすめ度:★★★
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来なけりゃいいのに

乃南アサ著 祥伝社 280ページ 1997年訳
あらすじ
女子中学生物一遍、OL物6編からなる短編集。
感想
最初の2作は気が滅入るような話やってんけど、「夢」「降りそうで降らなかった水曜日のこと」とか、星新一を少し思い出させるような「ばら色マニュアル」は面白かった。
でも、最後の「春愁」は「なんじゃい?」と思う。「社会主義」とか聞いているだけだとすばらしいシステムのような感じがするけど、権力は腐敗するとか、性格のよい人がする事がたんなる押しつけだったり思いこみだったり、うまく働けへんやん。この話、とても恐ろしい話やよ。私には素直についていけまへん。
作者あとがきには、「プロとして「さすが!」と思わせる人、自分の領域として誇れるだけのものを持っている人がとにかく素敵だと思うのだ。」という文章にも素直にうなずけないな。イコール自分のやり方に固執する人、自分の領域を守りたい人って事もおおいにあるやん。(へそまがりやろか)
おすすめ度:★★★
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フリーキー・ディーキー FREAKY DEAKY

エルモア・レナード著 文芸春秋 426ページ 1988年作 高見 浩訳
あらすじ
1960年代ベトナム戦争最中のアメリカ。過激な活動にのめり込み地下活動に入った者も、ベトナム戦争にいった者も、流行として活動をしていた者も16年たち、今40代になろうとしていた。
感想
訳者あとがきには”意表をつくストーリー展開”とあるんですが、なんというか穴だらけのプランが、タガのはずれた男女を巻き込んで狂いまくるお話です。爆発物とはいえ、そう派手な展開ではありません。のらりくらりと面白いの。思いだし笑いが浮かぶ(^^)
元ブラック・パンサーのダネル・ルイス、元ビルの爆破犯で今は映画の特殊効果の仕事をしているスキップ・ギブス、みんな変、おかしい、どこかおかしい(^^)
おすすめ度:★★★★1/2
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誰もがそれを狙っている THE LOW END OF NOWHERE

マイクル・ストーン著 ハヤカワ文庫 331ページ 1996年作 三川基好訳
あらすじ
賞金稼ぎのストリーターは、美女ストーリーから「事故で亡くなった恋人の遺産を捜して欲しい」と仕事を依頼される。
感想
「LAコンフィデンシャル」の後なんで、軽い本をと思ったんやけど・・・ほんまに軽かった。アメコミのノリ。テンポよく読める。
善玉のペア対悪役のペア、そして2組にからむホンマの悪玉サイコ野郎2人組の話なんやけど、はっきりいって悪役の方が魅力的。
特に、悪役ペアの片割れ、秘書のロニーがいい。善玉の守銭奴美女ストーリーよりずっと人間味あふれてる。

まず、善玉の主人公バウンティ・ハンター(賞金稼ぎ)のストリーターがよくわからん。離婚歴4回、婚約破棄3回の経歴の持ち主。普通は、1回でもええかげん懲りるモンやと思うんやけどねぇ、結婚って。2回目は慎重になると思うねん。4回って、思わず「あほちゃう」とか思ってしまう。それが、憎めんかわいげのある男やったらまだしも、結構かっこしいで4回の離婚がキャラクターと違和感あり。
それから、お金にやたら執着するコンビの片割れ、美女ストーリーも、なんで「金金金」なんか「子供時代のトラウマ」でもあったんかと期待してたのに、なんも無し。
まあ、肩のぜんぜん凝らない、退屈しない、わりと面白い、「映画で見たような気がする」読み物。
おすすめ度:★★★1/2
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LAコンフィデンシャル L.A.Confidential

ジェイムズ・エルロイ著 文芸春秋 694ページ 1990年作 小林宏明訳
あらすじ
1950年代、ロサンジェルス市警(LAPD)の3人の白人警官の生き様を描く。ひとりは、母親が父親に殴り殺された過去を持つバド・”ウェンデル”・ホワイト、もうひとりはエリート警官で実業家の父を持つエド・エクスリー、最後は華やかなハリウッドにコネを持つジャック・ヴィンセンズ(ごみ缶ジャック)。
感想
やっと読み終えました。ふぅ。
<ヴェロニカ・レイクに似た娼婦>リン・ブラッケンの役が映画「LAコンフィデンシャル」では、キム・ベイシンガーが演じているのかな? ヴェロニカ・レイクは「サリヴァンの旅」「奥様は魔女」を見た事あるんやけど、小悪魔のようなかわいい人ですね。ちょっとベイシンガーとは雰囲気ちゃうけど、映画が楽しみ。ヴェロニカ・レイクは「サリヴァンの旅」で新聞を手に駈けるシーン大好きです。何回くらいリハーサルしたんかなあなどと、また関係ないことを考えて見ていました。

この複雑なストーリーの映画化は、どんなでしょう。期待大。エド・エクスリーを間にはさんだバドとジャックがこんがらがってしまい、読むのにてこずりました。途中はかなり難解でしたが、最後はダダダダッと集束していきます。
映画は、3人の警官以外の人物についても、どういう人がどう演じているのかとても興味があります。

最近のさる裁判について、大学教授のコメントを読みました。「日本の刑事裁判は<真相究明型>に対し、米国は<問題解決型>の訴訟観といえる。国民が判断して浮かぶ物を木とし、沈む物を石とすればよいという考え方」というのを読んで「現実的な国なんだな」と思います。しかし、この著者は、<真実を知りたい>という飢えたような欲求に突き動かされているように感じます。
おすすめ度:★★★★1/2
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