ディバイディングドライバー

   GGG研究開発部が開発した超ハイテクツール。対機界文明の作戦における周辺地域への被害、主に建造物および人的被害を抑制するため、ガオーマシンの開発と合わせて研究、開発が進められていた。
   2003年、獅子王凱が搭乗していたスペースシャトル「スピリッツ号」大破寸前の記録に依れば、EI−01の全長はおよそ300m以上。Gストーンに残された記録から、EI−01を敵性体と認識した人類はそれに対抗すべく、Gストーンを用いた大型機動歩兵の開発に着手した。その段階で巨大な機動兵器同士の戦闘によって周辺地域への多大な被害は、既に予想されており、よってそれを抑制し得る何らかの手段を講じる必要が生じていたのである。発足間も無いGGG研究開発部はギャレオンのもたらしたオーバーテクノロジーの数々の中から、空間湾曲技術に注目した。主力機動歩兵・ガオガイガーの防御システムの要を担うこの原理を、都市被害の抑制に利用できないだろうか?
  いくつかの草案がまとめられ、最終的に採用された案は「空間湾曲技術によって敵性体周辺の地域を収縮移動させ、広範囲の戦闘領域を作り出す」と言うものであった。一見荒唐無稽なこの草案は、わずか2年弱の年月を経て現実のものとなった。空間湾曲により半径数十km四方の戦闘フィールドを形成する、それがこのディバイディングドライバーである。
   ある一点に対し、ディバイディング・コアと呼ばれるものを射出する。これは空間を湾曲させる二つの力場、即ち「レプリションフィールド」と「アレスティングフィールド」の総体であると思われる。
   つぎに空間的反発力場であるレプリションフィールドが展開される。レプリションフィールドは空間を反発させながら戦闘フィールドの直径を描くと、次にその中央から円型に湾曲を始める。湾曲空間がほぼ円型となったところで外側から空間的拘束力場であるアレスティングフィールドで拘束する。内部はディバイディングフィールドと呼ばれる半径数十kmの無人の空間である。この空間は周辺地域への被害を抑制すると共に、広大な面積をもって敵性体の逃亡を阻止する目的もある。
   ここで誤解してはいけないのは、ディバイディングドライバーは戦闘フィールドを本当に「形成」しているわけではない、という点である。もしそうであれば、GGGは空間を「創り出す」ことができる、と言うことになる。
   「空間を創り出す」ことはそもそも「空間湾曲」技術の範疇に無い。空間湾曲技術は、いわば空間の密度を変化させ、狭い空間を広く引き伸ばしたり、広い空間を小さく収縮させたりする技術であって、空間を創造することはではない。ディバイディングドライバーが「創り出す」戦闘フィールドは、実はディバイディングドライバーを発動させる際、ガオガイガーがドライバーを地面などに突き立てたときの穴、その穴の空間を湾曲、拡大したものなのである。ドライバーの先端は平均幅およそ0.8mであるが、それによって生じた穴を半径数十kmにまで拡大する技術はGGGならではと言えよう。
 このディバイディングフィールドの広さや維持時間、即ち寿命はレプリションフィールドとアレスティングフィールドのエネルギィレベルや減衰時間を調節する事で、高度に厳密な設定が可能になっている。GGGは対応する敵性体に対して、実施する作戦と周辺地域の状況などいくつかの判断材料をもとに、これを決定している。フィールドの拡張が充分でなければ戦闘フィールド周辺に被害が出る事は間違いないし、一方でフィールドの消滅に時間がかかりすぎたり、余りに拡張しすぎれば、非戦闘地域への影響が大きくなりすぎる。これを最終的に決定するのはディバイディングドライバー射出直前のセッティング時であり、参謀部が出撃ごとに頭を悩ます問題でもある。ディバイディングドライバーは対EI−04戦にて、満足な実地試験もされないままに始めて実戦に投入されたが、規模の決定やセッティングに時間がかかったために、EI−04による被害が拡大しており、参謀部にとっては苦い経験となった。
 殊に問題とされるのが、フィールドの維持時間である。対EI−17戦における空間自然復元に伴う危機に見られるように、湾曲空間が復元する際その内部に一定以上の質量を持った物体が存在した場合、その物体は空間の復元力によって圧壊する。と同時に物体と空間との反発によって生じたエネルギィが物体の圧壊と共に放出され、爆発を起こす危険がある。これは空間湾曲技術が持つ危険性のほんの一例に過ぎないが、それでも大阪どころか東アジア一帯を壊滅させるかもしれないほどの危機であった。EI−17出現当時、ディバイディングドライバーの使用を度重ね、性能を安定させ、残余していた問題点を解消していたGGGではあったが、それでもなおこれだけの窮地に陥るに至っている。満足な回数の実験も無いままディバイディングドライバーの使用を命じた大河長官の決断は、その結果成功を収めたが故に「英断」と称し得る範囲にあり、それを成功させたガオガイガー、そして初使用にして高い精度を発揮させ得たGGG・R&Dも称賛を受けるに値する。だが、失敗すれば文字通り「何が起こるかわからない」状況であり、相当に危険な決断であったことも、また心に留めておかねばなるまい。しかし、その有用性はこれまでの使用例から明らかであり、またGGGの数あるハイテクツールの中でも、最もその応用が利くツールとして重宝されている。後にディバイディングフィールドの規模設定とセッティングにおけるタイムラグを解消するため、ディバイディングドライバー自体にも改良が加えられる事となる。すなわち、ディバイディングドライバーを前後に二分割して、前部(ドライバー先端)に規模設定機能を集中させてキット化し、さまざまなセッティングが為された複数のキットを常備するようにしたのである。現場に最も適したキットを選ぶだけであるから、セッティングの時間と手間を省略できる上、機能的なストレスがキット部に集中するため、キット部のみの交換で短時間のうちに再度使用が可能になっている。
   このディバイディングドライバーの別仕様として目標一体に対して、その行動を拘束するというコンセプトで開発されたのがガトリングドライバーである。ガトリングドライバーの開発はかなり早い段階で始まってはいたが、実際に使用されたのは機界31原種襲来以後、対ZX−06戦が最初であった。

   分類 DB−1 Mk−U Space Bending Tool
   型式 アレスティングフィールドおよびレプリションフィールド発生装置
   全長 35.0m
   質量 235.0t
   エネルギー供給源 KT−88 真空ヒューズ
   エネルギー供給時間 80ミリ秒
   発生可能な戦闘フィールドの大きさ 平均半径15km
   戦闘フィールドの最大維持時間 3000秒
   湾曲空間面の重力ポテンシャル 1010
   戦闘フィールド内で発生する重力加速度 1030m/s