空間湾曲

   ギャレオンによってもたらされた数々のオーバーテクノロジーの内、GSライドに並ぶ重要技術がこれ。ディバイディングドライバーの座右の銘。
   主な利用法としては、ある一点に対し空間的反発力場であるレプリションフィールドをねじ込み、空間を円型に湾曲。レプリションフィールドが一定距離広がったところで外側から空間的拘束力場であるアレスティングフィールドで拘束。それ以上の拡大を停止させるに伴い、空いた空間的隙間に戦闘フィールドを「形成」し、標的を閉じ込めるのである。これはディバイディングフィールドと呼ばれ、市街地への被害を防ぎ、目標の逃亡を防ぐ目的が在る。
   またアレスティングフィールドとレプリションフィールドを同時に射出、特定の標的に対し局部的に空間を湾曲、回転、拘束することで、標的の一切の行動を停止させることができる。これはガトリングドライバーに用いられた技術である。  
   では、この空間湾曲の原理は一体どのようなものなのか。そもそも空間が実態あるもののように伸縮すると唱えたのは、かのアルバート・アインシュタインである。彼は「光速度不変の原理」と「等価原理」という二つの仮説から相対性理論を完成させている。空間湾曲技術において重要なのは後者、即ち「等価原理」である。「等価原理」においては重力加速度と連動加速度は等しいものであるとする。つまり重力質量と慣性質量は等しくなければならない。これは論理的根拠こそなかったものの、観測によってその妥当性が認められている。ここから「重力は空間の歪みである」ということが言える。「空間の歪み」こそが「重力場」であるとするのが相対性理論の立場である。これに依れば「重力場」を形成することで空間は歪曲が可能であるということになる。しかし対EI−04戦以来のディバイディングドライバー使用において周辺地域における重力の変動が起こっている形跡は明確に認められていない。つまりGGGが誇る空間湾曲技術は相対性理論に基づくアインシュタイン的な空間をその立脚点としていないと考えられる。Gストーンによってもたらされた空間湾曲技術は重力場と無関係なものによって成立しているということである。
   では実際に重力場と無関係に空間を歪曲するとはどういうことなのだろうか。もっとも有力な仮説として、重力以外の相互作用の影響する範囲を変動させる、つまり見かけ上で物体の伸縮を行なっているのではないか、というものが挙げられる。あらゆる物体がその質量を変える事なく変形すれば、それはアインシュタイン的空間とは無関係な空間の湾曲であるといえる。またディバイディングドライバーの使用時、空間湾曲が戦闘フィールドの直径を描くことから始まり、それを基点として「押し広げられる」ことから分かるように、物体同士を一定方向へ引き離す、言い換えれば相互作用を一定の方向に働かなくしてしまう作用が見て取れる。この作用がレプリションフィールドと呼ばれるものである。その一方で相互作用の範囲を一定方向に拡大すれば、物体間の結合する力は強まり、拘束力を発揮する。これがアレスティングフィールドの作用である。
   以上はあくまで仮説ではあるが、アレスティングフィールドとレプリションフィールドという二つの力場が存在して初めて空間湾曲は成立し得る。しかし、何らかの原因で一方が作用しなくなった場合、あるいは両作用のバランスが崩れた場合、戦闘フィールドを維持することが出来なくなってしまうことは容易に想像できる。
   これらに限らず、空間湾曲技術は、いずれより様々な利用法、応用法が研究開発されていくであろうが、現在の地球人類が理解しうる空間湾曲技術はギャレオンがもたらしたもののごく一部、きわめて基本的な部分にすぎない。故に実用化は「比較的」容易であったが不安定な部分も多く、同時に事故の生じた空間を修復する技術が要求されるのである。