ペットボトル装置 顛末その3
会社および発注側より示された数少ない仕様の一つに下記がありました。
が、しかし、これが難題です。
@ 0.1秒/個の能力で分別したい。
前述の構想が成り立つためには、自由落下するキャップが十分に短い時間で落下を
終えなければなりません。キャップの直径はφ32mm前後なので、キャップがその直径
分移動する時間を考えると、以下になります。
D = (g・t^2)/2 であるから、
t = √(2D/g)
g = 9.8m/s^2
D = 0.032m として
t = 0.081秒
がーん。
確かに0.1秒よりは短いですが、ローターが間欠回転することを考えると、厳しいことに
なります。16の停止位置(ストップ)を持つカム式割出装置を1ストップ0.1秒で動かし
た場合、間欠停止時間の割り当ては50%が限度。すなわち0.05秒しかありません。
ロータ上の個室へのキャップの入り込み、排出ともに時間が足りません。
特に排出側は色ごとに複数の排出口があり、両端の排出口には下向き45度の傾斜が
付きます。鉛直には落とせません。両端の排出口の場合に、キャップが直径分自重で
移動するのに必要な時間は0.096秒。
がーん。ぜんぜん時間が足りません。
どうしましょう。。。。。まずは茶を飲め、まだ時間はある。
実はロータ個室への入り込み側の問題は大丈夫でした。
個室の仕切りはローラーで構成しています。よってローター回転が完了しなくても、
ローラーの丸みに沿う形でキャップの個室への入り込みは開始します。
さらにロータの回転はゆっくり始まって、ゆっくり終わるので停留時間よりかなり長い
入り込み時間を確保できます。
(以下の画像をクリックすると動画が立ち上がります。)
cap_insert_animation.wmv |
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ローター上の個室に入り込むキャップの挙動 |
0.1秒/ストップで間欠回転させた場合のキャップの挙動をシミュレーションしたもの。
ローターの回転は三共製作所が公開している「百分表」に従って計算。
キャップの運動は質点と見なしての自由落下。 |
入り込みはOKですが、排出側は解決が付きません。
しようがないので、排出口には超小型のエアガンを仕込んで圧縮空気でキャップを加速
することにしました。
(コンプレッサーの稼動で電気をいっぱい使うはめに。エコじゃなーい。)
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排出するキャップを加速するためエアガンを仕込んだ。 |
エコじゃないけど。ショウガナイ。しゅぱぱぱぱぱぱ。音もうるさい。
0.1秒/個のスピードが目標だったので、ローターを回すモーターやゲートを動かす
モーターの合計電力は1kW超。エコじゃなーい。 |
ここまでが11月の思いつきの段階。ここから詳細設計に落とし込みました。
以上の手段で何とかしようとしましたが、0.1秒一個はやっぱり無理。
最終的には0.15秒一個のスペックに強制着陸しました。
どん詰まり、引きこもりの自宅設計ののち、ジタバタと出図し、加工業者に頼み込んで、
何とか部品は間に合いました。
「さて、組み立てるぞ」と自宅よりの工具を抱えて、会社に来てみたら、
スペースが無い。。。。。。
他のお客様の案件でトラブルがあったとのことで、出戻り品の製品が作業台を埋め
尽くし、作業場の床もダンボール箱で埋まっていました。
しかも、狭い作業場にお客様も含めてわんさの人。
なして。。。どうしてなの。。。。。
ぶーぶー文句を言って、何とか畳2枚ほどのスペースを確保し、たたんだダンボール箱を
座布団がわりに正座して、組立を始めました。
大きさは幅0.8m、奥行き1m、高さ1.6mぐらい。重さは200kg弱といったところ。
でかい。重い。畳2枚の上で組み立てるもんじゃないぞ。
床に正座して長いアルミフレームを組み立ててると、ほとんど草庵での茶の湯状態。
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200kgの機械を正座して組み立てるの図 |
何やってるんだか、47歳。 |
ともかく。
3DCADの威力もあって、特に失敗も無く組み上がりました。
設計を進める上で各部のモジュール化を心がけたので、意外なほどすんなりと完成。
4つある排出口のゲートユニットも共通化してたりして、組バラシが意外なほど簡単。
(ちょっち、自慢ぐらいさせてよー。家の3DCADも自腹だもーん。儲からんな。。。)
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共通ユニット化したゲートユニットの図 |
3DCADってすげー便利。設計が苦手な私にも出来ました。 |
タイミングベルトテンション高過ぎー。
サーボモーターのエンコーダ細かすぎー。
パルスモータのスペックが足りなーい。
センターのエンコーダ、意味無いじゃん。
エアガンのパワーが足りなーい。0.1は無理ー。
入り口で跳ね返るぞー。
キャップが噛み付いて潰れるぞー。げ。この段差が原因か。
ぎゃうー。バリバリバリ。どかーん。ぷすぷすぷす。にょろーん。
など、などと。
初号機としては当たり前程度?にゴタゴタしましたが、
制御スタッフ様の御霊力素晴らしく、それなりに稼動しました。
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