レザークラフトの工具の手入れや調整法などについての説明を中心に紹介するページです。
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菱目打ちの調整


 菱目打ちは、手縫いには欠かすことのできない工具です。でも、なかなか満足のいく工具がないのが実情ではないでしょうか。

 ここでは、私なりの調整法を紹介いたします。私が自分で持っている菱目打ちについてだけですが、参考にしてください。



「E社の菱目打ちの調整」


 E社の菱目打ちです。左が購入したままの状態です。右は私の好みに刃の形を修正した物です。

 ホビー用として販売されている製品の中では、基本的な設計には好感が持てると思っています。ただし、製品の仕上がりの安定感には欠けるようです。それが、残念な点ではあります。(2002年現在)

 でも、道具は自分で作る物ですから、素材としてはちょうど良いですね。自分好みの形に作り替えることができます。

 ほどよいピッチの物が3種類ありますので、好みで使い分けます。

 ピッチは、火造りの製品の、7本目・8本目・9本目に倣っているような気がします。



 この菱目打ちの素材は、それほど硬い物ではありません。ダイヤモンドヤスリで簡単に削ることができます。

 写真のように、1本1本刃の太さと形を整えていきます。刃の左右を均等に、またそれぞれの刃の太さと形が揃うように、気を付けて削ります。

 削る回数を数えながら作業をすると、一定に削りやすいと思います。仕上げには600〜1000番の耐水ペーパーを使います。私は油を付けて磨きます。

 写真では、手で持っていますが、実際にはバイスなどに菱目打ちを固定して、作業を行います。

 側面から見たときの刃の形状も大切です。側面の形を整えるときは、砥石や耐水ペーパーを使います。(耐水ペーパーの使い方は、菱ギリの項目を見てください。)仕上げは革砥で磨いてください。



 E社の菱目打ち一揃えです。右端の2本目は3本目を削った物です。細かいピッチの2本目は、形の整わない物が多いですね。材料を無駄にしないように切っているからだと思います。3本目と同じ価格で良いから、2本目も正確にカットして欲しいと思っています。

 製作中に無駄になってしまう刃があれば、その分値段が高くなっても、造りを良くして欲しいと思うのは、私だけではないと思うのですが。

 2本目は細かいカーブに便利です。3本目は大きめのカーブに使います。6本目は直線用ですね。この組み合わせは便利ですよ。


追加記事:2003年4月

 E社の菱目打ちの素材を、それなりに硬さのあるものだと思いこんでいたのですが、とても柔らかな素材でした。ある日ある時、刃を一本折ろうと思ってペンチで挟んであおってみると、グニャ〜。驚愕の柔らかさ。

 焼き入れ試験をしてみましたが、焼き入れをすると硬化する鋼材ではありました。硬くしすぎると、折れやすくなるので、刃先だけに焼きを入れる様に気を付けて処理しました。

 柔らかさを利用して、自分の好みに改造して、その後熱処理をすると良いかもしれません。そういうわけで、手持ちのものを全て熱処理しました。



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「火造りの菱目打ち」


 この写真は、職人用と言いますか、火造りの値段の高い菱目打ちです。

 この菱目打ちは焼きが入っている鋼なので、そのままでは加工性が良くありません。一度焼きなまして柔らかくしてから、刃を削り形を整え、その後もう一度焼き入れをしました。

 本当は熱処理を何度も行うのは良くないことらしいのですが、菱目打ちならば許されるのではないかなと思っています。この手の道具で、焼き入れが必要なのは刃の近くだけですし、特に問題はないようです。




「C社の菱目打ち」


 C社の菱目打ちのピッチは、現在4種類です。大雑把な寸法で言いますと、3ミリ・4ミリ・5ミリ・6ミリピッチの4種です。

 画像の右端の10連の製品は、この欄の記事を書き直している2003年6月に発売されたものです。製造工程は全く違うものですが、全体の形状は、上記の火造りの菱目打ちに似ています。

 この画像にある3本は、3ミリピッチの製品で、2002年に新たに加えられたピッチです。小物には便利なピッチですね。

 型板が新しく作られたためなのか、切削工具の状態が良いのか、刃の仕上がりはとても整っています。バリもそれほど目立ちません。製品価格が抑えられているのに、仕上がりがよくコストパフォーマンスのよい製品です。

 10連の製品は、3ミリピッチと4ミリピッチの製品に作られました。能率的に作業ができますし、手頃な価格設定でありながら、よくこの仕上がりを実現したものだと思いました。製品ニュースで紹介されていた写真よりも、実物の仕上がりがよく、バフ掛けもされているようでした。

 刃の数が多くなった分、刃先は少し薄く研磨して食い込みやすくした方が使いやすくなるかもしれません。砥石などに当てた時に、刃の並びがわずかに波打っているのを感じるかもしれませんが、実用上は問題にならないと思います。無理をして均す必要はないでしょう。かえって刃の形状が狂ってしまう可能性が出てきます。

 C社の菱目打ちの特徴で、刃の厚みと幅がかなり均一に作られていて、軽く研磨するだけで使うことができるようになっています。研磨のうまい人であれば、刃の一本一本をさらに調整できるかもしれませんが、一般にはあまり手を加えすぎないようにした方が無難だと思われます。



左4ミリピッチ・右3ミリピッチ


真横から見ると刃の部分だけ薄い。


左は、むかし販売されていた4ミリピッチの8連。
右が新しい10連。ずいぶん良い造りになりました。


 菱目打ちの全体の構成を見てみると、2002年〜2003年に掛けて格段に充実したと言えます。長らく2連の製品が整備されていなかったのですが、全てのピッチで2連も製作され、さらに10連と来たところで、ぐっと充実感が増しました。

 あとは5ミリピッチと6ミリピッチの製品が今後どうなっていくのか、注目したいと思います。

追加記事:2004年6月

 2004年6月に5ミリピッチの10連と6連が発売されました。個人的には、3連が欲しいところです。
 6ミリピッチは需要がどれほどあるのかわかりませんが、6連くらいの物があると、商品構成としては整いますね。もちろん3連も欲しいところ。

 3連が欲しい人はあまりいらっしゃらないかもしれませんが、私個人は3連がけっこう重宝だと思っているのであります。

 ところで、C社ではピッチの呼び方が、1.5・2・2.5・3 となっています。実際のピッチはその倍の数字になります。これが紛らわしくて、修正していただけないものかとずっと思っています。人にいちいち説明しなくてはいけないですからね。3が3ミリピッチではなくて、6ミリピッチというのは、やはりわかりにくいと思うのです。

 たぶん、この工具が最初に作られた頃に、平目打ちと同列に名前を付けられてしまったんでしょうね。平目打ちは刃の太さで2ミリ・3ミリと呼ばれますが、同じフォークみたいな形状だから、菱目打ちの寸法の呼び方も同じにしてしまえという感じだったのではないかと想像しています。

 このピッチですが、1ミリ刻みというのは、ちょっと間隔が空きすぎのような気がします。私の感覚では、3.5ミリくらいのピッチまでは0.5ミリくらいの間隔で、それから上は0.7ミリ間隔くらいでピッチを広げると、自然なピッチの段階になると思っています。

 実は、10連の4ミリピッチは、実際には4.2〜4.3ミリ位のピッチで仕上がっていました。3.0ミリピッチの上に3.5ミリピッチを作ると、その上がちょうど0.7ミリ刻みで4.2ミリピッチになるのですが・・・。これは私の考えすぎですね。私の希望が大きく入った妄想です。でも、もっとピッチが充実するとうれしいですね。


 さてさて、私の妄想はさておき、製造元がどこかにかかわらず、菱目打ちの1本刃というのはどのように考えればいいのでしょうか。私は、1本刃は不要だと長いこと思っていたのですが、養護教育やリハビリのことを考えるようになってから、使い道のあるものかもしれないと思うようになってきました。

 平面的な部分であれば、気軽に使えてよいのかもしれないと思うようになりました。

 でも、各ピッチに1本刃を設定するのは無駄だと思っています。実際にそれぞれのピッチの1本刃がそのピッチのために正確に作られているわけではなく、ただ名前を付けて商品として販売されているだけだと思うのです。

 私が思いますには、各ピッチに対応した1本刃というところから考え始めたから、このような状態になってしまったのだと思います。これはですね、本当は各ピッチの1本刃ではないのです。本質は叩いて使う菱ギリなのです。

 そう考えるとどうでしょう。菱ギリは、細・太の2種類くらいで、あとは使う人が調整して使っていますよね。菱目打ちの1本刃もそれで良いのではないでしょうか。いたずらに大差の無い製品を作るよりも、はっきりと違いのある細と太に製品を絞るか、あるいは1種類だけにしてしまい、使う人が微調整をして使うという方向が、理にかなっているような気がします。作る側も、売る側も、買う側も、不要になる分を、他の工具に回せばいいと思うのです。ちなみに、上の1本刃の画像は、左側のほうを少し細く仕立てています。

 それから、私の個人的な希望なのですが、4連は直線にも曲線にも使いにくい目数だと思っています。そこで大きなカーブ用に使いやすい、3連の菱目打ちがあると良いなーと思うのです。個人により、考え方の違いがあるかもしれませんが、私は3連のほうが合理性があるのではないかと思っています。特に、より目数の多い製品が作られるようになると、全体の構成の中での中間的な目数の位置づけは大切なような気がします。

 最後に、菱目打ちのピッチは、そのときどきの製品でピッチが微妙に変わっていることがあります。例えば、私が4ミリピッチの10連を使おうと思った時に、以前から持っている同じ規格のはずの菱目打ちと、ピッチが合わないと言ったことがあります。同時期に作られているもののほうが、ピッチがあっていることが多いはずです。多少ピッチがずれていても気にならない人はそのままでも良いと思いますが、私と同様に気になる人は一式あたらしくしたほうが良い場合もあると思われます。もし、新しいものでピッチが揃わない時は、問題有りですね。


 商品構成が十分ではなかったので、以前は右の菱目打ちのように、4本目を削って2本目を自分で作らなくてはいけないこともありました。それが昔話になったのは、とても良いことですね。

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