「裏押し」…最初の作業
片刃の刃物は、まずはじめに刃裏の基準面を作るところから研ぎを始めます。「裏押し」という作業です。
私が作って頂いている革包丁は、裏押しが簡単にできますが、精度の悪い物と出会ったときはたいへんです。
伝統的な作業では、金盤という鉄の板と金剛砂という研磨剤を使って裏押しをします。この作業はかなりたいへんです。詳細は省略しますが、根気のいる作業です。
現在は、手ごろな価格のダイヤモンド砥石が販売されているので、私はダイヤモンド砥石で基準面を出しています。ダイヤモンド砥石が100%信頼できる平面性を持っているわけではないのですが、狂いにくく十分に実用的です。
写真は、ダイヤモンド砥石に刃裏を当てている様子です。ご覧のように刃先のほう2センチか3センチくらいでしょうか。その部分だけを砥石に当てます。このとき、柄の方に力を入れてはいけません。刃の途中に段差が付いてしまいます。
刃が浮かないようにしながら、刃先側を意識することが大切です。抽象的な言い回しになりますが、どこを意識するかによって研ぎ上がりが変わります。自分がどこを研いでいるのかイメージすることが、大切なような気がします。
革包丁の刃の側面は、かなり荒れた状態になっていることが多いので、刃の側面も軽く整えると良いと思います。
ダイヤモンド砥石で基準面を出してから、仕上げ砥石で鏡面に仕上げて裏押しはおしまいです。刃裏の先端が鏡のようになり、自分の瞳がきれいに映し出されればOKです。
裏押しの私の段取りは、下記の通りです。
1.ダイヤモンド砥石400番
2.ダイヤモンド砥石1000番
3.仕上げ砥石8000番
番手の数字が大きくなるほど砥粒は細かくなります。
|