レザークラフトの工具の手入れや調整法などについての説明を中心に紹介するページです。
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砥石


  法隆寺 宮大工の棟梁であった 故西岡常一氏や、そのお弟子さんの小川三夫氏の著作を読んでいると、昔から砥石にこだわる職人として、床屋と革職人が紹介されています。

 床屋は肌(皮)を痛めないように、革職人は皮を切るために、良い砥石を必要としたと言うことです。どちらも「皮」に関係するところが共通している、というわけではありません。共通しているのは、使用する刃物の刃先の角度が小さいと言うことです。床屋さんのカミソリは8〜9度くらいの角度で研ぐと刃物の本に書いてあったように記憶しています。革包丁も浅ければ10度くらいの角度です。

 刃先の角度が小さければ小さいほど、仕上げ研ぎは難しくなります。良い砥石がないと刃先が合わないのです。そのために、床屋と革職人が砥石にこだわったのですね。

 大工が使用する鉋などの場合、25〜30度くらいが一般的な刃先の角度のようです。革包丁と比べると、角度がずいぶん大きいのですが、30度くらいでもよく研いだ鉋であれば、革がさくさくと切れます。切れ味には、刃先が合っているかどうかが大きく影響するのです。

 刃先の角度の大きい刃物のほうが、刃先は合わせやすくなります。研ぎを始めたばかりの人が、革包丁を丸刃に研いでも切れるのは、刃先の角度が大きくなって、刃先がうまく合っているからです。ミクロン単位で削る厚さを調節する鉋で丸刃になると問題ありですが、革包丁の場合は丸刃でも作業に使うことができます。

 さて、この砥石にこだわるという話、これは天然の合わせ砥の中でも特によい物を使ったという意味です。残念ながら、私は天然の合わせ砥の良い物を使用した経験がありません。一度使ってみたいのですが…。

 「良い」イコール値段が高いと言うことでして、現在いちおう「良い」に入るような砥石ですと、数万から数十万の価格の砥石であることが多いのではないかと思われます。研ぎ師の仕事用は最低で100万くらいからと言うのは、もう何年も前に読んだ文章の中にあった言葉です。

 コレクターのコレクションでは、何億という価格の物があるのだそうです。いったいいくらの刃物を研ぐと、砥石と釣り合いがとれるのか。もっとも、床の間を飾っていて、研ぎには使われないのかもしれませんが。

 小さく形の整わない砥石だと、安い物の中にも良い砥石があるという話なのですが、私は何度か試して当たったことがありませんでした。使わない砥石ばかり増えても仕方がないので、最近は挑戦していません。(床屋さんで砥石を使わなくなった人、譲ってくれないかなあ。最近は替刃式のカミソリを使うらしいです。)

 天然の砥石については、こだわっている人が、きっとホームページを作っていると思いますので、探してみてください。

 私は、質の安定した合成砥石の中から、好みのものを選んで使っています。このページでは、私の使用している砥石や、砥石の修正法について紹介します。
  




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「両面砥石」


 写真の砥石は「KDS]というキングの両面砥石です。2種類の砥石を張り合わせて1つにしてあります。

 中砥が1000番、仕上げ砥が6000番です。同じキングの製品の中で、いくつかの両面タイプがあり、中砥が800番、仕上げ砥が4000番の物などもあります。

 青い紙ケースの小さな砥石は、合成の名倉砥石です。仕上げ砥の研ぎ始めの研ぎ汁を準備したり、研いだあとの均しに使うことができます。仕上げ砥専用です。もともとは「G−1」という仕上げ砥石用の物ですが、特別に取り寄せています。

 価格や番手を考慮して、手頃な両面砥石を初めての方には勧めています。こだわる方は、単独の物を用意された方が良いです。



 写真の左側が新品の両面砥石です。 右側が、同じ砥石が減って薄くなった物です。中砥は狂いやすいので、しょっちゅう均し作業を行います。もちろん仕上げ砥も均し作業は行いますが、中砥よりは面が狂いにくいですね。

 砥石を均さないで使うと、砥石の変形に合わせた刃の形になります。丸くなって、その方が使いやすいこともあるかもしれませんが、私は均された平らな砥石で研ぐほうが好きです。

 「砥石は女房にも貸すな。」という言葉があるのだそうです。砥石を人に貸すと、人のクセが付いて形が狂ってしまうからです。




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「私が使っている砥石」

「中砥石」


 キングの「ハイパー」という中砥石です。私がふだん使っている物ですが、この砥石は面が狂いにくく研ぎ味も良いので気に入っています。

 硬度に「標準」と「軟質」の2種類がありますが、革包丁には「標準」で良いと思います。

 写真を撮影したとき、私の使用中の物しかなかったので、砥石が汚れています。新品は、もちろんきれいです。


「仕上げ砥石」


 キングの「G−1」という仕上げ砥石です。番手は8000番です。合成の仕上げ砥石の中では、定評と歴史のある製品です。私のハズレ天然合わせ砥石よりも、はるかに安心して使用できます。

 現在はもっと細かい番手の合成砥石も作られているようですが、8000番は、十分な番手だと思います。

 「G−1」には、合成の名倉砥石が標準で付いてきます。


「ダイヤモンド砥石」


 私が使っているダイヤモンド砥石です。左から400番・600番・1000番です。

 ダイヤモンドの砥粒を、何らかの結着剤で金属表面にくっつけた物です。このタイプは、比較的低価格で販売されていると思います。研ぎ汁や砥石の減りという部分で、通常の砥石と異なるため、使用感も違った物があります。

 砥粒を練り込んで焼成したタイプの物もあります。開発された当初は非常に高価な物でしたが、現在はかなり手頃な価格になっているようです。このタイプの使用感は、普通の砥石に近い物があります。

 ダイヤモンド砥石は、通常では砥石をかじってしまうような菱ギリなどの小さな刃物も安心して研ぐことができます。また、ガラス板などの成形にも使えますので、持っていると便利な道具です。




金物屋さんやDIYショップでいろいろな砥石が販売されています。ご自分にあった物をお使いください。もし砥石が身近で購入しにくいという方は、ご連絡ください。ここで紹介した砥石であれば、用意いたします。ここで紹介した砥石の中で、「G-1」はよく見かけるのですが、ほかの砥石は私の地元ではあまり店頭にはないんです。




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「砥石のならし方」


 左の写真の黒い台は、砥石を均すときに使っている台です。6センチくらいの木質系圧着素材(パーティクルボード・平面性が高いが水に弱い)の台に塗装を施し、厚いガラス板を接着しました。

 一般的に砥石の均しには、ブロックなどがよく使われます。ブロックを作る工場の人に話をうかがったことがあるのですが、ブロックは型から抜くために、かなりの精度で作られているのだそうです。

 料理屋さんなどでは、道の脇の側溝のふたの上で砥石を均していたりすることもありますね。とにかく、平らな物の上で削るのが基本です。



 均し台を実際に使っているところです。ガラスの上に適当に切った耐水ペーパーを置いて削っています。ペーパーは水でガラスにくっつきます。

 耐水ペーパーは100番前後の荒いものを使います。私はもっぱら120番です。砥石に鉛筆で線を引いておくと、削られたどうかが簡単に確認できます。

 目のつぶれたペーパーの上で均すと、砥石の目もつぶれます。ペーパーの上に軽く金剛砂をまいて均すと、楽に均しができますし砥石の目も立ちます。

 超荒砥石という感じの、砥石を均す砥石も使っていますが、使用感が今ひとつです。砥石を均したり、目を立てたりする道具を探していますが、なかなか良い物と出会うことができないでおります。手頃な良い物と出会ったら、また紹介します。



 さて、砥石を均していると、砥石の角がシャープになってきます。これが危ないんです。手が切れてしまうのです。

 写真のように砥石を斜めにして、砥石の角の面取りを必ず行ってください。砥石が欠けにくくなるという効果もあります。

 手を切るまでいかなくても、指の腹を砥石で削っているときがあります。これは自分でも気が付かず、傷になってしみてきて初めて気が付くこともあります。大きなケガではありませんけど、研ぎに夢中になりすぎないように気を付けてください。

 安全作業と言うことでもう一つ。砥石の手前側ではあまり研がないでください。万が一砥石から刃物がはずれると、刃物を痛めるばかりでなく、悪いときには自分の手を切ってしまいます。全体を安全にそして平均して使うためには、ときどき砥石の前後の向きを変えるようにします。砥石の端を使うときには、自分から遠い側で使うことが大切な基本です。




 研ぎと砥石について簡単紹介しましたが、研ぎや砥石については、こだわっている方が世間には大勢いらっしゃいます。私の解説などは、ほとんど戯れ言と言っても良いかもしれません。

 木工の道具の解説本などが、この手のことには詳しいと思います。私が好きな本を少し紹介します。

 秋岡芳夫氏の道具に関しての著作はわかりやすくおすすめです。実際の作業がよくわかります。美術出版社の「木工(道具の仕立て)」が最初に読む本には良いかもしれません。

 西岡常一氏の著作は、宮大工の棟梁の家系に伝わる口伝がたくさん紹介されていて、興味深いものです。道具に関しての含蓄のある言葉が参考になります。

 土田一郎氏の著作で、「日本の伝統工具」(鹿島出版会SD選書)は、独特の道具の世界観があっておもしろい本でした。図書館から3回くらい借りて読みました。

 道具の本ではありませんが、同じ鹿島出版会のSD選書で「木の心」という、ジョージ=ナカシマ氏の著作は、物作りのスピリットにあふれています。

 ほかに、木工の季刊誌などは参考になります。詳しい解説が掲載されていることが多いようです。

 大して本を読まない私が本の紹介をするなんて、とんでもない話ではありますが、図書館に行って道具の本を探してみてください。おもしろい本がきっとあると思います。

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