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『宇宙年齢17才、イカイ少年のエレナ探し』

【2】

福原 哲郎




 人びとが月や火星に住み、多くの地球外生命体も発見されはじめた2050年代の世界。
 地球の生活も大きく変わった。人びとは、日常生活ではロボットスーツを洗練されたファッションとして愛用し、自己の分身として付き合うようになり、電脳空間では第三世代BMIシステムにより優秀な秘書ロボットを競って育て、さらには現実と異界の間を能力に応じて自由に往来できるスペーストンネルの通行技術を身につけた。その結果、コミュニケーションも、愛も、戦争も、家族も、死も、大きく変化した。

■目次

[序]
心改造ゲームがはじまった 【1】
[第1部]
【第1話】 スペーストンネル少年少女学校 【3】
【第2話】 現実(四次元時空)と異界(五次元時空) 【4】
【第3話】 ノアとアスカ 【5】
[第2部]
【第4話】 王女の夢、電脳サイト『イスタンブール』 【6】
[第3部]
【第5話】 異界の住人たち〜キベ・タナ・エレナ【7】 【8】 【9】
【第6話】 メタトロン軍の野望と戦略 【10】
【第7話】 エックハルト軍の『ヒト宇宙化計画』 【11】
【第8話】 アトム4世〜ヒトを愛せるロボット 【12】
【第9話】 宇宙の花計画〜破壊される月 【13】
【第10話】 エリカ攻撃と、イカイとエダの情報戦争 【14】
【第11話】 ノア、脳回路を使い分ける 【15】
【第12話】 電脳恋愛の光と影【16】
【第13話】 大家族の出現 【17】【18】


[序]

心改造ゲームがはじまった

2 青の刻印

 「僕=モリス」は、スペーストンネルの中を急いだ。
 でも、ちょっと早く着きすぎたみたいだ。おしゃれな仮想メガネをかけて僕の到着を確認したエリカが驚いている。
 それにしても、こんな形で僕とエリカが話している光景を誰かが見れば、秘書ロボットが登場してまもない20年前なら、特殊撮影の映画の世界と同じだから、誰もが腰を抜かすほど驚いたに違いない。仮想メガネで確認しなければスペーストンネルもその中の存在であるモリスの姿は人には見えないし、エリカが少しだけ変わったメガネをかけて透明人間とお喋りしているのと同じ光景が展開されているからだ。見た者は、この女は気がふれているとか、夢遊病で独り言を喋ってるとか、或いは一人で女優のまねをしているとか、そんな風に解釈するしかない。
 それでも、僕の声がモリスを通して部屋の中でするから、エリカの一人芝居ではないことはすぐにわかる。しかし、その声がどこから来ているかまではさすがに見た者にもわからない。スペーストンネルもその存在は透明だから、せいぜいモリスが到着した時に一瞬だけ部屋に砂ぼこりのようなものが立ったことを感じるだけで、それ以上のことは確かめられない。砂ぼこりだってすぐに消えてしまう。
 いま実際に出会っているのは、スペースチューブの中にだけ存在する秘書ロボットのモリスとエリカだ。エリカはまだサクラをロボットスーツとして着込んでいないし、姿も見えないので、サクラはまだエリカのベッドで眠りこけているのだろう。エリカの話しではサクラは大の寝ぼすけ。一方の僕自身は、依然としてニューヨークの路上にいる。こんな状態でも僕とエリカがリアリティをもってお互いの存在を感じ、実際に二人で会って話しているのと同じ感覚になれるのは、BMIシステムで二人の脳がつながっているせいもあるが、何よりもモリスがエリカの脳にも侵入しているからだ。
 それにしても、人間はすごい。或いは、すごいのではなく、人間とはいかに早く感性を鈍化させ何事にも慣れてしまう動物か、というべきか? いまでは人びとはこんなことは生活の中の当たり前の光景として見慣れてしまい、不思議とも何とも思わなくなってしまった。

 出迎えてくれたエリカが驚いている。まだパジャマ姿のままのエリカが、部屋の時計を見ながら言った。
 「えっ! もう来たの? まだ10分も経ってない。8分ね。スペーストンネルの侵入にも全然気づかなかった。音もしなかったわよ。また腕を上げたのね。混んでなかった? 最近はスペーストンネルもよく渋滞してるから」
 「僕=モリス」は、エリカの近くに寄っていきながら答えた。
 「すごく混んでたよ。でも大丈夫。スペーストンネルの層は自由に選択できるから」
 「あなたは上手だからいいわ。私はいつも渋滞の中に閉じ込められる。そこから抜け出す技術がまだないの。空間の新しいレイヤーが見つからなくて大変。お茶を飲む?」
 「いつものある?」
 愛用のオランダ産カモミール。カモミールはギリシャ語では「大地のリンゴ」。トルコ人のチャイと同じで、僕は一日に10杯は飲む。神経がやわらぐからだ。僕の仕事はストレスが多いから、カモミールは欠かせない。東京に着いたモリスが飲めば、ニューヨークの僕も飲める。モリスの人工脳が僕の脳にダイレクトにつながっているため、モリスが体験したことはそのまま僕の体験になる。もちろん、それは味だけの体験で、僕の胃に実際に紅茶が注ぎ込まれるわけじゃないけど。それでも、こうして僕は、エリカと接し、かなりの精度をもってニューヨークの路上からエリカと接触できている。
 「オランダ産のハーブティーね? もちろん。もう何十年も欠かしたことはないわ。あなたは子供だから、いつも同じものばかり好きなのよ。昔からのお気に入り。贅沢をすることを知らないわ。ところで、急ぎの話って例のこと?」
 「うん。この間の戦闘」
 「メタトロン軍のエダ大佐とは大変だったわね」
 「もう結果が出ているはずだから、確かめたい」
 エリカも本当は気になっているはずだ。着替えのために寝室に引っ込んだエリカが、大声を上げている。
 「ねぇ、エダはいまはどこにいるの?」
 「僕=モリス」も居間で大声で答えた。
 「それがまた行方不明になってるから不気味なんだ。エダは事件を起こす時には必ず姿を隠す」
 「あなたにも居場所を特定できないわけ?」
 「エダの心を正確に読むことは僕にも難しい。読める時もある。でも読めない時の方が多い。近くまで接近していないとわからない」
 「いまあなたはエダをマークしてるのね?」
 「メタトロン軍の最大の要注意人物だからね。一週間前にエダがメタトロン軍の月基地を出たことは、彼女の部下たちの動向から突き止めた。その後どこに行ったのか? 少なくてもメタトロン軍の本部があるイスラエル上空の宇宙ステーションには戻っていない」
 エリカが着替えて居間にもどってきた。サクラもロボットスーツとして着込んでいる。エリカは、見かけは若い方だし、相変わらず素敵だ。とにかくセンスがある。いつでも会社に行ける支度をしている。
 「でも、イスラエル上空の宇宙ステーションって、一体メタトロン軍とイスラエルはどんな関係なの? イスラエルはただ支援してるだけ?」
 「深い関係があると思うけど、詳しいことは不明のままだ」
 「とにかく、エダが宇宙ステーションに戻れば部下たちが動くから、部下たちをスキャンすることでエダの行動も特定できるわ」
 「だから警戒して今は部下たちからも姿を隠したんだと思う」
 「何してるのかしら?」
 「エダが自分が受けた傷を一人で癒しているか、或いは新たな攻撃準備をしているかのどちらかだ。いずれにしても、エダの動向をさぐる必要がある。この間の戦闘でエダの脳も傷つき、内面が変化しているはずだから」
 「エダの脳や内面の変化が私の心に痕跡として出てくるのね。それにしても、自分の脳なのに脳マップの変化を自分で読めないとは情けない。あなたにしか判読できないなんて」
 エリカは悔しそうだ。でも、仕方ない。脳の解読については、誰だってすぐには上達できないからだ。
 「大丈夫。焦らないで。君ももうすぐ読めるようになる。今日調べる箇所は経験を積んだ者でなければわらないよ。それに僕だって自信をもって判読できるのは、この部分だけだ。他の箇所はまだまだわからない」

 脳診断については、僕も、しょっちゅう専門家のフジイ博士か、部下の斉藤博士に相談に行く。
 最近は個々の診断も難しいケースが増えているし、そもそも心の領域は膨大すぎてその全体像はいまだ誰にもわかっていない。それに、いいのか悪いのか知らないけど、人間の脳は現在も成長を続けているからよけいにやっかいだ。
 脳はまったく不思議な生き物だ。心臓や胃とは違う。神経細胞はほっておいても増え続けていくし、投薬や手術によっても神経細胞は増え、脳は変化を繰り返す。それにつれて、心の領域や機能もつねに変化していく。だから脳については、昨日の真理が今日の真理でもあるとはまったく限らない。その判断は柔軟に行われる必要がある。とにかく、いまでは世界中に脳科学者とその関連の医者が増えている。その数は膨大。昔は、一つの町の中に何軒もの歯医者があった。ひどい時には、通りの向こう側にも別の歯医者があった。それと同じだ。脳を専門に扱う医院が、昔の歯医者なみに存在するようになったわけだ。病院の精神科と共に、この手の医院も医者も、大繁盛で食べることに困らない。それだけ脳診断の需要がうなぎのぼりで増えているからだ。当然ながら、一方で優秀な脳科学者や医者が輩出すると共に、同じ数だけのインチキ学者やヤボ医者も世に出回ることになる。誰だって、本当は抜く必要がなかった歯を抜かれてしまい、あとで気がついて悔しい思いをした経験をもっているだろう。それと同じだ。注意が必要、ということだ。
 エリカが心配そうな顔になった。
 「あなたの方は大丈夫だったの?」
 「僕の脳は何の損傷も受けていなかった。その分エダとエダの直近の部下にダメージを与えたはずだ。そしてその反動が君の脳に反映される」
 「さすがね。私にはハードな戦いだったから、あなたが心配するのね?」
 「だって、君は、たった2分間だけど、完全な昏睡状態に陥ったからね。危なかったんだよ。僕も驚いた」
 「私も不覚だった。私もはじめてよ、2分も意識を失ったなんて。恥ずかしい」
 「僕にも意外だった。結局何があったの? 話してもらえる?」
 「ずっと思い出したいと思っていた昔の高校生の時の風景が、急に蘇って出てきたの。突然だったから、反省する間も、逆らう間も、なかったの。会いたかった懐かしい友だちの姿が見えた。だから私は彼女を必死で追いかけた。親友だったし、どうしても聞きたいことがあったの。ある日、突然、彼女は奇妙な事故の犠牲になって、死んでしまった。次の日にクラスに来なくて、それで大騒ぎになり、先生が彼女の家に問合わせたことで彼女の死がわかった。もう彼女には会えないし、聞けなくなった。それでついつい。彼女に会えたので、嬉しくなった。油断したのよ。私は戦闘モードを忘れてしまった。知らないうちに回想モードを耽溺していたの。まるで麻薬の中毒患者みたいだった。懐かしくて、すごく気分がよくて。気持ちがよすぎたからとても怖かった」
 「それがメタトロン軍の最近の手だ。油断していると簡単に脳に侵入され、改造される。気をつけないとね。次に、同じような目にあって、僕が呼んでも目が覚めないことになったら、それこそ一大事だ。君はエダに乗っ取られてしまう」

 いずれにしても、エダたちの技術も進んできた。
 ターゲットにする相手の様子を見て、脳の微妙な箇所に介入できるようになった。腕を上げたのだ。そして、メタトロン軍では、科学リーダーのアジェイが特に危険だ。世界中の悪しき科学者たちの中でも、脳改造の最悪のシナリオを考えている。今回は彼が出てきて陣頭指揮をしている。その背後にいる怪物的な政治家オマールの動向にも注意する必要がある。オマールも、世界の潮流に逆行する新・中東王国論を本気で唱えているからだ。今回の戦闘はメタトロン軍の上層部による作戦なのだ。僕たちも慎重に行動しなければならない。
 「僕=モリス」が黙っていると、エリカが心配そうに僕の顔をのぞきこんできた。
 「私を心配してくれたのね?」
 それは当然だ。僕にはエリカはいつまでたっても特別な存在だ。エリカはそれを知っていて、わざと僕に聞いている。
 「だって君がやられたら、僕はもっとも大切な相棒を失うことになる。僕は、君がいるから精神のバランスを保っていられる」
 「私の代わりは見つからないの? 最近は新しい若い女のタイプもいろいろ登場してるけど」
 エリカは僕を試しているのだ。
 「残念ながら、それはムリ。永遠に。脳の改造技術がどんなに進んでも、エリカと同じ女だけはつくれない。個性はいつまでも、誰とも違う。僕に必要なのはエリカだけだ」
 何と、エリカが僕の女性関係を心配している。この年になっても嫉妬、か。何だか、エリカは昔の僕と恋人だった頃に気持ちが戻ってしまったみたいだ。脳に侵入されて、恋愛を感じる部分も一緒に刺激されてしまったのかも知れない。エリカは最近は『電脳恋愛塾』の校長も忙しくやっているから、そっちの関係からも刺激されているのかも知れない。いずれにしても、エリカが心配する種なんて僕にはあり得ないのに。
 「あなたに私の代わりの女が見つかったら、私も困る。私も自分の存在価値を失うわ。そんな女が出来るなんて、想像もしたくないわ。私は表向きは頑丈な女社長かも知れないけど、心の中は相変わらず無防備な女のままよ。この年になって、情け無いというべきか、楽しいというべきか、いつも悩むわ」
 それは僕だってまったく同じだ。年はたしかに取ったけど、身体改造もかなり行っているし、心は昔のままで若い。成長した心と、未熟な心が、今も驚くほど平気で同居している。まぁ、それは現代では誰だって同じなんだけど。
 「君だって、僕に似た男のタイプに興味があるかい? 似た存在ならいくらでもつくり出せるよ」
 「まるで関心がない。私にはあなただけ。私の心はあなたの心とだけつながっている。こういうつながり方は、他ではできない。それで私は幸せと感じてるわ。もちろん、あなた以外にも大切な関係は沢山あるけど、あなたとの関係が一番大切なの」
 「僕だって同じだ。僕も君と心がつながっているから幸福なんだ。それで精神が安定している。この幸福は得難い。絶対に無くしたくないよ。僕たちの関係は貴重なんだよ」
 「私たちのように愛し合った男と女は、たぶんこの世で私たちが最初ね。私たちは、一時期だったけど、お互いの人格を超えて愛し合ったわ。あなたを失う危険があって苦しい時期もあったけど、何度もいろんな境界を一緒に乗り越えてきた。素晴らしかったわね。そんな経験にはなかなか恵まれない。自我の否定や人格の拡張なんて、口で言うほど簡単じゃない。でも私たちはそれをなし遂げた。それが私の誇りよ」
 そうだ。僕たちは大きなドラマを経験してきた。それでエリカは、今でも僕を愛している。僕も同じだ。
 「でも、その経験を、いまエダが欲しがっているんだ。他人の心を操作し支配するための彼らの究極の方法を仕上げるためにね。だから、今後のエダたちの作戦の最大のターゲットは君になる可能性が高い」
 「でも、愛の経験を盗もうなんて変な話ね。盗めるもんじゃないのに。あなたは手ごわいから私を狙うのね。彼らも進化して最後の一歩手前まで来たということね?」
 「そういうことになる。彼らとの戦闘も危険水域に入った。追いつかれたら大変なことになる。彼らは世界中の100億のすべての人間を対象に、その全ての脳を乗っ取る計画だ。途方もないことを実際に考える連中だ。それで新しい人種を創り出せると真剣に考えている。誤解も甚だしい。そんなことが出来るはずがない。しかし、同時に危険極まりない。そんな野望のために、途方もない事件をひき起こす可能性があるからだ。僕たちはそれを未然に防がなければならない」
 「私の場合はどうなったら危ないの?」
 「それは君もわかっているはずだ」
 「僕=モリス」は、確認も含めて、エリカの目を真っ直ぐに見て言った。もちろん、エリカも本当はわかっているはずだが。

 君が、私はエダ、と思いはじめた時。

 「どういうこと? 何度も同じような経験をしてきたし、今ではそれと同じような経験を人に勧める立場でもあるから、わかってるけど、でも実際にはわからない。だって、私にはエダがどんな特殊な才能をもっているのか、それがまだつかめないからよ」
 「エダの場合は、才能じゃないと思うけど」
 「それなら何なの?」
 「たぶん、憎悪。エダが経験してきたことに関係している」
 「どんな経験?」
 「それはまだわからない。いずれにしても、エダの目的は、君を乗っ取ること。エダは、君と僕の関係を調べあげて全部知っている。君が、私はエダ、と思ってしまえば、その時エダは君の内部に住み込んでいる。君の秘密を盗むのは簡単だ。そして、僕も君に起きた変化を見破れない時は、彼女は君を通して僕への侵入を開始する」
 「あなたがエダに侵入されるなんて、力の関係からしてあり得ない」
 「僕は外部の敵には強いよ。でも、心を許している君との関係は別だ。そこから侵入される恐れはある」
 「だから私はわからないのよ。他人が私たちの心に侵入するのをわざと許したり、逆に人の心に侵入したり。そんなことは私たちもう何度もやってきたじゃない。それでもどんな時にも不安はなかった。それなのに、なぜエダだけがあなたを不安にさせる力があるの? あなたはなぜエダに怯えるの? 何か特別の感情をもち始めたの? 私にはそれがわからない。私はそれを知りたいの」
 エリカはさっきより不安な顔をして僕を見ている。もう紅茶も飲んでいない。
 「君の脳を調べてから詳しく説明するよ」
 「いいわ。時間がないから手早くしてね。そろそろ会社に行かないといけないわ」

 「僕=モリス」はさっそく、エリカの脳に侵入しているモリスにより、言語野・感覚野・運動野などの全体について、彼女の脳マップを参照しながら、エダによる侵入の痕跡の有無を調べた。特に大脳皮質と海馬の記憶層については入念に調べ、細心の注意を払った。でも、よかった。大した問題はない。大脳皮質にわずかにかすり傷がついているだけだ。海馬にはどんな傷もない。エリカにエダの影はない。重大な欠損はなく、エリカの脳は無事だった。
 しかし、念のため、最後にもう一度だけ調べたら、かすり傷がある大脳皮質の記憶層の裏側に、謎めいた青い小さな「刻印」が残されていた。見たこともない「刻印」だ。これは何だ? エダによるものか? 或いは他の勢力によるものか? おそらくはエダによるものだろう。まずはそれを調べなければならない。
 それにしても、僕は感じる。エダとの全面対決が近づいていることを。僕の夢もそう告げている。エダは、アジェイや最高指導者・オスマンとは違う。エダは単純にメタトロン軍が掲げる理念を信じているわけじゃない。フジイ博士の親友で同じく『ヒト宇宙化計画』の特別顧問であるサイード・S博士によれば、「エダは悩んでいる」という。サイード・S博士はエダのことを、同じ中東人としてよく知っている。エダは、僕に対しても、時々そういう悩ましげな表情を見せてきた。だから、僕はエダが気になるのだ。その悩みとは何か? エリカが心配するように、女としてエダが気になっているのではない。僕は、最初はそれはエダの性格によるものと思っていた。しかし、どうやらそうではない。事態はもう少し複雑のようだ。アジェイやオスマンはある意味では「通常の敵」にすぎない。しかし、エダは違う。エダだけが、どうしても僕にもつかみ切れない。なぜなのか?
 エダは一体どんな存在なのか? 何を考えているのか? エダが経験したものとは何か? 今後、メタトロン軍との闘争はどういう展開になるのか? 正直いって、現在の段階では僕にも予想がつかない。やっかいなことになるのかも知れない。


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