東京都の緊急調査で700校の安全性について調査した結果、2000年8月時点で50校近い学校校舎の使用停止を決めたことが、マスコミで報道されました。
 コンクリートの強度不足と高齢化の進行が、思いの外深刻であることが判明しました。
 西日本では、JR山陽新幹線のトンネル・コンクリート落下事故でも明らかにされたように、事態はさらに深刻です。

 コンクリートの高齢化の原因

  1. コンクリートのがん 
    アルカリ骨材反応
  2. 中性化による表面からの劣化 
    酸性雨による促進
  3. 塩害 海砂の無防備な使用
  4. 施工不良と水セメント比

アルカリ骨材反応

 セメントのアルカリ性と骨材として使われる特定の砂利が、水分と反応して膨張し、コンクリートを内部から破壊する現象。1950年代にアメリカで発生が報告されたが、建築専門家の間では、日本では発生しないものとしてあつかわれていた。1984年NHKが、建築後10数年のマンションの老朽化を「雨漏りマンション」と報道し、名前が一般 に知られるようになった。1982年、大阪の阪神高速道路公団堺線の橋脚において、発見され行政レベルでも発生していることが確認された。詳しいことを知りたい人は、リンクページから「補修物語」へ。

中性化と酸性雨

 コンクリートの微細な空隙やクラックから、空気中の二酸化炭素(CO2)が雨にとけ込んだり、酸素が内部に入る。雨水に溶けることでいわゆる炭酸水を形成しセメントのアルカリと中和反応して中性化させる。セメントが中性化すると表面 からボロボロになるだけでなく、鉄筋を錆びさせない強アルカリの作用も失われるため、鉄筋の発錆→鉄筋の膨張→コンクリート表面 の爆裂→露筋(錆びた鉄筋が見える)と進行する。厳密な施工が行われていた第二次世界大戦以前のコンクリート構造物では、問題にならない緩やかな劣化とされていた。

塩害 海砂の無防備の使用

 大きな川を持たない西日本を中心に特に問題になっている。1970年代からの建設ブームのため川砂が採り尽くされ、瀬戸内海を中心とした海砂がコンクリートに使用された。塩抜きと呼ばれる撒水による除塩が現在では義務づけられているが、100%は難しく、海砂中の塩化物が作り出すアルカリが、アルカリ骨材反応の劣化を増幅させる。

水セメント比と施工不良

 コンクリート中のセメントと水の比率は、セメントと水の化学反応に必要以上の水を入れることで、ドライアウトと呼ばれる早期硬化不良や0.3mm以下とされる許容を超えたクラック(いわゆるひび割れ)、コンクリート中に微細な空洞が発生するなどし、強度不足と耐久性不足を起こす。鉄筋にどれだけのコンクリートが覆っているかや鉄筋の接合不良、鉄筋の量 的な不足(手抜き)と併せて、現場施工管理の問題もある。作業性をよくするためコンクリートに水を追加したときは、セメントも追加する必要があるが、やられていない。アメリカでは、コンクリートを打設する現場に、第三者の鑑理官が立ち会うことが制度化されるほど重視されている。
コンクリート高齢化調査行われず

 上記の4つの複合原因によるコンクリートの高齢化の進行は、安全が第一に求められる学校施設においても例外ではありません。建築物の耐久性向上に関しての研究は、建設省の手によって長期総合プロジェクトとして1980年まとめられました。
  国土交通省大臣官房・官庁営繕課は、その成果 を生かす施策を進めていますが、残念ながら建築業界も行政も新築建物には大きな関心を払いますが、既設建物の維持管理への関心も予算配分もおざなりになっているのが現状と言わねばなりません。
  学校施設の維持管理についても、行政全体の姿勢が反映し、人員配置、予算配分の面で見るとまだまだ問題を抱えています。
  吹田でも、コンクリートの高齢化に関する全市的な調査は、全く行われていません。




  吹田の学校に見るコンクリート高齢化

使用禁止になった教室

 

 5年前に窓がアルミサッシに改修された2つの教室は、2001年6月の緊急調査で教室内部の梁、壁に深刻なクラック発生が確認され使用禁止になりました。

    古江台小学校

同じ教室の内部

明かり取り窓からの光で、梁と壁全面にかなり広いひび割れが広がっています。

 駆体が心配

 梁のひび割れは縦の面だけでなく、底面にまであり、コンクリート駆体の何らかの影響によるモルタル仕上げ面 の剥離が、急速に進行していると考えられます。

緊急工事始まる    古江台小学校1年生教室の緊急工事が、8月18日に始まりまりました。工事内容は、梁、壁のモルタル左官仕上げ面 を全面的に剥離して、ボードを貼ります。

漏水が原因か?

 
 セメントモルタル仕上げのはつり作業は、驚くほどきれいにとれていて、本当に危険な状態であったことを証明しています。はつりを終えたコンクリート面 を見ると、骨材の石が見た目で確認できるいわゆる巣になった部分や打ち継部のずれなど、建築ブームの時期に建てられた鉄筋コンクリート建築物によく見られる問題がありますが、今回の剥離の原因と思われるのは、コンクリート表面 に付いたカビ等の汚れを見る限り漏水が原因です。

雨漏りが多かった校舎    この校舎は、以前から雨漏りが多く、しばしば業者が補修工事を繰り返していました。2000年にも、屋上防水補修工事を行っていて、長年のコンクリートへの水の影響が、コンクリート駆体とモルタルとの分離を促進したようです。

2階建て校舎屋根のコンクリート打ち継部のコンクリートも落下していました。

 同じく 古江台小学校

   

中庭に落ちた
モルタル片

山陽新幹線トンネルコンクリート崩落事故問題が大きく取り上げられていましたが、1999年秋、吹田市の学校でもセメントモルタル片が3階校舎から落下する事故が発生していました。

窓枠のモルタルが落ちた
吹田市立片山中学校

 重さ2kgのモルタルも落ちる
 片山中学校では、中庭に面した廊下側のスチール製窓枠のセメントモルタルでしたが、同校は開校から22年しか経っていない、老朽化と言うにはふさわしくない学校です。
 落ちたモルタルは、 直撃すれば重大な結果をもたらす重さ2kgを越えるものでした。
 いつもは生徒が腰を下ろしたりしていた場所であるだけに関係者は驚いていました。



 同じ片山中学校 右の工事と同時に行われたアルミサッシへの改修窓。白く見えるのは、白華現象と呼ばれるコンクリート老朽化の進行を示すものです。


2000年夏アルミサッシに改修された
しかし、落ちた部分をモルタル補修しただけで危険性は解消していないことがよく分かります。
 二種競技場認定のグランドを持つ古江台中学校の観覧席



 

大阪北部の中学校競技会を開いていた古江台中学校のグランドは、広くて観覧席までありましたが、今では老朽化が進みごらんのような有様です。


5年間放置された
震災による破壊の跡

 阪神・淡路大震災の時、校舎と渡り廊下がぶつかって割れたコンクリートの腰壁。長さ2m以上の亀裂が入り、腰壁上部は明らかに廊下内側に傾いています。学校から教育委員会への修繕以来に対して一度見に来ただけです。震災から5年経過してもそのまま放置されてきました。2000年9月撮影。
   青山台中学校

深いコンクリート亀裂

 管理棟の特別教室の外部壁は、コンクリートの剥がれが、深さ3にも達しています。壁式工法での、ここまで深い亀裂、コンクリートの破壊は、さらに急速に広がる危険性があり建物強度に影響します。
    同じく 青山台中学校

まだら模様の腰壁

 コンクリート剥離が進み、外壁の部分的補修と部分的塗装工事が行われました。まさにまだら模様のようです。
  開校から18年の1999年11月に補修工事が、クレーン車の入れるところだけで200個所以上行われました。下の写真のような厚さ2のコンクリート片が、何の前触れもなく子どもたちの頭上に落ちてきていました。この部分の下は、下足ホールになっており、人の出入りが一番多いところです。
    東佐井寺小学校

 落ちてきたポンピング片

 鉄は錆になるときに体積が200倍以上膨張し、表面の被りコンクリートをはじき飛ばします。これをポンピングと言いますが、はじき飛ばされたコンクリート片は鋭角に尖ったものが多く、危険です。

応急補修で放置?

 コンクリートの剥離・落下事故を受けて、補修工事がモルタル左官工事で行われましたが、塗装は行わないまさに応急補修のまま。

      片山中学校

下足ホール前の庇も劣化

 1988年に大規模改造工事が行われた校舎の下足ホール前の庇。塗装の剥離、コンクリートの落下、鉄筋の露出が見えます。
     津雲台小学校

豊津中学校事故を受けて緊急作業で叩き落とされた事例  

体育館の庇

 同じようにモルタル左官部分の剥離と鉄筋が錆びてコンクリート表面 をはじき飛ばした周辺を処理した第六中学校体育館

南小学校体育館
千里新田小学校・校舎
  2001年8月また10Kgのモルタル塊が落下
   

 

 大阪市で最大級の崩落事故発生

後日、市議会への報告では崩落壁の重量 は6t

 
 

   
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