通用門横の外壁崩落

総重量6トン超える

 10月3日2時限目の授業が終わろうとしていた10時15分頃、大阪市立南津守小学校・北東校舎の南側外壁が、高さ8m・幅6mの楕円状に突然崩落しました。落ちた外壁は、鉄筋コンクリートの面 に塗られたセメントモルタル部分で、厚さは5Bありました。崩落したモルタルの総重量 は大型乗用車3台分以上にあたる6トンを超えます。
 落ちた部分の前は学童の通用門になっており、タイミングが悪ければ大惨事になる恐れがありました。

 10日3日に全体の3分の1が自然崩落しましたが、大阪市教育委員会は残る危険個所の除去と緊急点検を指示しました。撮影日の10月6日にも緊急工事で残る危険な外壁を除去していました。
  渡り廊下の右外壁は、モルタルセメント塗りの上からクリーム色に塗装されていました。除去作業により厚さ5Bのモルタルセメント左官面 は、ほぼ全面が落とされていました。
 左の校舎の一部は、2年前改修され塗装工事が行われていましたが、その時点での点検では、今回の崩落部分には異常がなかったようです。

 

 除去作業により落とされたセメントモルタル片

 厚さは5〜7Bもありました

 雨水の浸食跡が

 写真右下の足場付近のコンクリート面 は、セメントモルタルが比較的よく接着していたことがわかります。それに比べ、上部の面 は黒く汚れた筋が縦横に走っているのが観られ、雨水が浸透浸食していたことを伺わせます。

 この校舎は、1978年に建てられた同校では一番新しい建物でした。文部科学省の大規模改修事業への基準が20年から25年に延長されたため、数年前に行われた大規模改修からは除外されていました。

新聞報道より

朝日新聞2001年10月4日朝刊

 
 

他市のこととは
安心できない実態

 大阪市では、JR大阪環状線の内側に位置する古い学校から改築工事を行いながら、文部科学省基準に沿った学校施設の改修工事を進めてきました。南津守小学校での外壁崩落事故を、正確に検証することは、学校施設を良好に維持管理しなければならない他市においても必要だと言えます。
 吹田市では、市立豊津中学校でのモルタル落下事故を受けて緊急点検調査を行い、業者による危険個所の叩き落とし作業をしましたが、その規模は37校、3100カ所と発表されました。10月からは、1億7千万円余りの予算で緊急補修工事も行われました。
  これらの工事は、緊急避難的な内容に留まり、1980年に当時の建設省が確立した既存建築物の診断法と改修工法の一般的なやり方からは、不十分なものでした。

 

 

 

建物の安全点検は
高度の専門知識が必要

外壁の劣化は、ある水準を超えると急速に進行することが知られています。建物の老朽を左右する大きな3つの要素。つまり、雨水・外気・温度変化・紫外線といった外的要因。建物の持つ設計・施工・材料等の内部的要因。それに加えて建物の良好な性能・機能を保つための維持管理業務の3つの要因が、組合わさった結果 としてその建物の状態に現れます。

 雨水を中心にした影響をどのように受け始めているのかを構造、部位、素材別に判断するという極めて高度な専門的知識に基づく適切な診断が必要であり、目視による検査から、ハンマー打撃や赤外線写真、超音波、X線などを利用した多様な診断方法を組合わせ実施されています。

建築後25年での
  総合的な評価を

 学校施設については、設置者である自治体に高度の安全配慮義務があります。学校施設の新築時から建て替え時に至る、長期の営繕計画を立案し、大規模改修工事が想定される築後25年を前にした時点での建築物としての安全性・耐久性についての総合的評価を行うための徹底した調査・診断を行い、十分な大規模改修工事を行うことが求められています。
 しかし、教育予算のページでも明らかにしたように、吹田市では過去の大規模改修工事が、不徹底なまま老朽化が進行してきました。大規模改修工事を、単なる化粧工事と位置づけるような対応があり、少ない予算と学校現場からの要望の間で、悩ましい判断が行わなければなりませんでした。この不徹底が現在の深刻な教育環境を巡る状態を生み出したのです。