距離空間(R2,d)上の開集合の性質  : トピック一覧  


開集合どおしの共通部分は開集合   
開集合どおしの合併は開集合           


【関連】
 ・距離空間(R,d)上の開集合の性質/距離空間(Rn,d)上の開集合の性質  



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定理:開集合どおしの共通部分も開集合               

【はじめによむべき説明】

 距離空間(R2,d)上の任意の2つの開集合O1, O2から重複部分O1O2をとると、     
 O1O2もまた距離空間(R2,d)上の開集合となる。  

【きっちりした説明】

 距離空間(R2,d)上の開集合をすべてあつめた集合系Oとおくと、
  O1, O2O (O1O2O)




【文献】
 ・松坂『集合・位相入門』4章§1D(p.144);6章B(p.237);
 ・志賀『位相への30講』第3項(pp.20-22) 
 ・斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』第四章§5項目4.5.3(p.125);
 ・矢野『距離空間と位相構造』1.3.2開集合命題4.15(p.41)
 ・小平『解析入門I』§1.6-c p.60.

 ※ 有限回を繰り返してもこれは成り立つが、無限回の繰り返しについては、成り立つこともあれば、成り立たないこともある[志賀『位相への30講』第3項(p.24)]。
 ※ 活用例:距離空間上の開集合と位相  


【証明】

 [志賀『位相への30講』第3項(pp.20-23);斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』第四章§5項目4.5.3(p.125);
  矢野『距離空間と位相構造』1.3.2開集合命題4.15(p.41) ; 小平『解析入門I』p.60.]
設定
 
O:  距離空間(R2,d)上の開集合をすべてあつめた集合系 
 O1, O2: 距離空間(R2,d)上の任意開集合。つまり、O1,O2O  
(i) O1O2=φのケース 
 空集合φ開集合の定義を満たすので()、、O1O2=φO   
(ii) O1O2φのケース 
Step1:
 
任意のPO1O2にたいして、
   
PO1 かつ PO2 だから(の定義)
 
O1に含まれるPε1近傍Uε1(P )」を、少なくとも一つ作れて、
 なお
かつ、 
 
O2に含まれるPε2近傍Uε2(P )」を、少なくとも一つ作れる。 
      
(O1,O2距離空間(R2,d)上の開集合だから、開集合の定義にしたがって。)
 すなわち、 
  
(PO1O2) ( (Uε1 (P) ) ( Uε1 (P)O1 ) かつ (Uε2 (P) ) ( Uε2 (P)O2 ))  
  
   
  
Step2:  
 Step1でつくった、
 O1に含まれるPε1近傍Uε1(P )」とO2に含まれるPε2近傍Uε2(P )」のうち、
 小さいほうが、O1O2に含まれる。  
 すなわち、 、
 O1に含まれるPε1近傍Uε1(P )」とO2に含まれるPε2近傍Uε2(P )」との間で、
 ε
1,ε2を比べて、小さいほうをεと呼ぶことにすると、
   
Uε(P) O1O2     
 が成り立つ。 
 ※たしかに、そうなるようだが、いまひとつスッキリしない。
 ・
O1に含まれるPε1近傍Uε1(P )」、O2に含まれるPε2近傍Uε2(P )」をどうとっても、
  いずれか一方は、O1O2に含まれるという不思議。
 ・距離をユークリッド距離に設定すれば、ε近傍Uε (P )はPを中心とした同心円のひとつ。
  ところが、距離をユークリッド距離以外に設定しなおしていくと、
  ε近傍Uε (P )は、円とは限らない。そのときも、結果は変わらないのか? 
Step3:    
 Step1-2をまとめると、  
  任意のPO1O2に対し、O1O2に含まれるε近傍Uε(P)が少なくとも一つは作れることになる。 
 すなわち、
 (PO1O2) (Uε(P) ) ( Uε(P)O1O2 ) 
 つまり、任意の点PO1O2は、O1O2内点。 
Step4:    
 Step3より、 
 O1O2は、距離空間(R2,d)上の開集合であると言える(∵開集合の定義)。
 すなわち、   
 O1O2=φO  
 


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定理:開集合どおしの和集合も開集合                  

【はじめによむべき説明】

 距離空間(R2,d)上の任意開集合和集合は、距離空間(R2,d)上の開集合となる。
 これは、距離空間(R2,d)上の開集合を無限個とってつくった和集合についても成り立つ。   

【きっちりした説明】

 距離空間(R2,d)上の開集合をすべてあつめた集合系Oとおくと、
  OλOΛ) にたいして、



Oλ
λ∈Λ

 O 

 ※このことは、実用的には、
   O1, O2 , O3 ,…O にたいして  O1O2O3O 
  が成り立つと押さえておいたので、十分。  





 【文献】
  ・松坂『集合・位相入門』4章§1D(p.146)
  ・志賀『位相への30講』第3項(pp.20-22)
  ・斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』第四章§5項目4.5.3(p.126)
  ・矢野『距離空間と位相構造』1.3.2開集合命題4.15(p.41)
  ・小平『解析入門I』§1.6-c (p.59).

 ※活用例:距離空間(R2,d)上の開集合と位相 

 
【証明】 
 
設定
 
O  距離空間(R2,d)上の開集合をすべてあつめた集合系 
 Oλ (λΛ) 距離空間(R2,d)上の任意開集合のみからなる集合族
          OλO (λΛ)
        なお、添数集合Λも、任意。
        したがって、
        距離空間(R2,d)上の任意開集合のみからなる無限集合列
          O1, O2 , O3 ,O
        を、OλO (λΛ)は、
        添数集合Λを自然数とした一例として、包摂する。
(i) =φのケース  ※実用的には、O1O2O3…=φのケースと理解すればよい 
 空集合φ開集合の定義を満たすので()、
  =φO   
  ※実用的には、上記の理由から、O1O2O3=φO となることを理解できればよい。  
(ii) φのケース  ※実用的には、O1O2O3…≠φのケースと理解すればよい 
Step1:
任意のPにたいして、
   POλ'   
を満たす添数集合Λのλ'が少なくとも一つ存在する。
    (∵集合族の和集合の定義)   
 ※実用的には、
   任意のPO1O2O3…にたいして、 
   POλ' となるOλ' 無限集合列{ O1, O2 , O3 ,…}のなかに少なくとも一つ存在する(∵の定義)
  と押さえておいたのでよい。
Step2:
Oλ'距離空間(R2,d)上の開集合だから、
開集合の定義より、
  Uε(P)Oλ'  
を満たすPのε近傍Uε(P)が少なくとも一つ存在する。  
Step3:
 Oλ'  
 であるから、Step2で存在が保証されたPのε近傍Uε(P)は、
 Uε(P)Oλ'  
 を満たす。 
Step4:
以上をまとめると、
 任意のPにたいして、
    Uε(P)Oλ'  
 を満たす、Pのε近傍Uε(P)が少なくとも一つ存在することになる。
    ※実用的には、
     PO1O2O3…にたいして、   
        Uε(P)OλO1O2O3…)を満たすUε(P)が少なくとも一つ存在する 
     と理解しておいたのでよい。 
 つまり、     
 P にたいして、
    Uε(P)   
 を満たす、Pのε近傍Uε(P)が少なくとも一つ存在する。
    ※実用的には、
     PO1O2O3…にたいして、   
        Uε(P)O1O2O3…)を満たすUε(P)が少なくとも一つ存在する 
     と理解しておいたのでよい。 
 この命題は、
  
 が開集合であることの定義にほかならない。(∵開集合の定義) 
    ※実用的には、上記の命題が、
     O1O2O3…が開集合であることの定義と一致する 
     と理解しておいたのでよい。
 


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Reference

日本数学会編集『岩波数学事典(第三版)』岩波書店、1985年、項目14位相空間、項目92距離空間(pp.253-256)、項目409ユークリッド幾何学(pp.1225-1229)、項目410ユークリッド空間 (pp.1229-1230).
矢野公一『距離空間と位相構造』共立出版、1997年。 1章距離空間1.3.2開集合(pp.40-41)
斉藤正彦『数学の基礎:集合・数・位相』東大出版会、2002年。第4章§5項目4.5.3(p.125)
松坂和夫『集合・位相入門』岩波書店、1968年。4章§1D(p.144)問題3(p.151);6章B(p.237);
志賀浩二『位相への30講』朝倉書店、1988年、第3講(pp.22-23)。
彌永昌吉・彌永健一『岩波講座基礎数学:集合と位相 I・II』 岩波書店、1977年。 II.位相第2章位相空間§2.1閉包写像と位相空間-§2.3近傍(pp.173-190)
小平邦彦『解析入門I』岩波書店、2003年、p.60.