その3
微妙に受付時間の終了が迫ってきているので、喜多方からは真っ直ぐ受付会場の会津本郷町役場へと向かった。町役場への道も、田んぼの広がるのどかな景色。
曇っているために、遠くの山々が霞んで水墨画のように見えた。こういう景色を見るととても心が癒される。会津盆地は、深い山々に囲まれた、素晴らしいロケーションだ。
受付は会津本郷町役場と大内宿の2ヶ所だが、このうちどちらで受付をするかのハガキをおれは出し忘れてしまった。なんと出発直前に封筒の中をのぞいて初めて気付いた。どちらかというと町役場の方がメインの会場なので、とりあえずこっちで受付をすることになるだろうと予想して町役場に出向くと、その通りで、ここで無事受付を済ませた。
自己申告の車検誓約書と引き替えに、ゼッケンとタイム計測用の足ストラップ、それに参加記念品をもらった。参加記念品は地元のお菓子や伝統工芸品の器、コースター、VAAMウォーターやドリンクなど。
それまで1台くらいしか自転車を積んでいる車を見なくて、受付会場近くまでやってきても全然それらしき車を見かけなくて、ほんとにレースやるんかい……という感じもしたけど、受付会場にやってくると自転車を積んだ車がたくさんあって、ようやくレース前という雰囲気が感じられて安心した。
レーパンレージャーの格好の人もいたし、駐車場に停まっている車にはみなロードレーサーやMTBが搭載されていた。このレース前の自転車好きが集まっている雰囲気って、すごく好きだ。皆自分と同じように自転車が好きなんだな〜と思うと、なんだか嬉しくなってくる。
おれと山田さんはこの町役場で受付を済ませたが、永田くんは峠の上の大内宿での受付を指定した(ほんとは3人ともここでする予定だった)ので、時間もあまりないので、すぐ町役場を後にした。
町役場から県道に出ると、もうそこはレースのコース。この道を大内宿へ向かって走ると、ちょうどレースコースを下見できる。しばらくは田んぼの中を突っ切るフラットな直線が続いた。サイスポに載っていたのである程度知っていたが、実際に車で走ってみると、当日はここでハイスピード走行が展開されることが予想できた。
しばらく平坦な道が続いた後、交差点を曲がってからはようやく上りになった。橋を渡るとまた緩い下りになったが、その後はジワジワと上りが続いた。もうここからはひたすら上りだ。一応前日と当日のコースの試走はしてはいけないことになっているのだが、試走している人たちがけっこういた。
コースの長さと高低差の数値を見る限り、ヤビツより少しラクなくらいだろうと3人とも楽観視していたのだが、実際にコースを車で上っていると、次第に「このコースって思っていたよりきついんじゃない?」と思うようになった。
坂が始まって最初のうちは緩くて大したことがなかったが、ある地点から急に勾配がきつくなり、しかもその後はひたすらその勾配のまま上り続けるのだ。そして、思っていたより距離が長く感じた。今は車で上っているからいいけど、これを明日自転車で上るんだよなぁ……。
ようやく峠まで上りきると、峠の反対側へと道を進んだ。そして永田くんが受付をする会場にやってきたので車を止めた。ちなみにこのとき、直前まで案内の旗がなかったために通り過ぎそうになってしまった。もうちょっとわかりやすくするために手前にも旗を立てておいてほしかった。
受付を済ますと、今日泊まる大内宿へと出発した。しばらく走ると茅葺き屋根の集落が見えてきた。歴史を感じさせる集落に、3人とも「お〜」と声を出した。
入口から狭い道に入って大内宿の裏道を進む。永田くんが予約を入れてくれた「民宿 大黒屋」は、電話番号しか知らない。なので一旦止まって電話で場所を聞いてみた。そしたらもう少し進んだところにあるそうなので、もう少し進んでみると、大黒屋が見つかった。
駐車スペースが全然ないので心配だったが、とりあえず車を停めて荷物を宿に入れた。この民宿、外観は歴史を感じさせる古い造りだが、中はとてもきれいで驚いた。近代化しているというわけではなく、昔ながらの造りだけど古くさくなく、快適に泊まれるようなきれいさ、清潔さがあった。
夕飯は午後6時(!)ということなので、それまで大内宿を散歩することにした。茅葺き屋根の建物が並ぶメインストリートに出ると、ほんとに江戸時代にタイムスリップしたかのようだ。(サイスポに出てきた表現そのまま)
入口付近と中だけしか見ていなかったが、大黒屋も通りから見るととても趣のある造りだ。せっかく歴史ある土地に来たのだから、近代的なホテルなどではなく、こういう歴史を感じる民宿に泊まってレース以外の事も楽しんだりするのも大切。永田くんはいい宿を見つけてくれた。
通りの途中に鳥居があった。しかしその先には神社などはなく、大内宿の集落を抜けて裏の畑の辺りまで道が延びているだけだった。
どこまでも続いている道は、山の中まで続いているようだった。ひょっとしてひたすらこの道を歩いていくと山の中に神社があるのかな? それにしてもこの道が続く光景が日本昔話のワンシーンのようでとてもよかった。
道沿いにきれいな花がたくさん咲いた木があった。紫陽花の花によく似ていたが、「おおてまり」と書かれた板がついていた。後で調べてみたら、5月の花だそうで、「大手鞠」と書くそうな。
↑大内宿の通り
まるで江戸時代にタイムスリップしたよう?
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