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■V.まちづくりへの提言 |
3.まちの活性化について
石神井公園駅周辺地区は、石神井地域の顔であると共に、地域に関係する様々な人の暮しを支える拠点としての役割を担っている。「まちの活性化」では、石神井地域にかかわりを持つあらゆる人達の暮しをさらに充実するために、駅前周辺地区が今後担うべき機能、場について検討し、提案することとした。これは、石神井公園駅周辺地区並びに地域、周辺地域に住む人、商う人、集う人、愉しむ人など、様々な形で関わりをもつ立場からの提案である。
まちの活性化とは、
- まちの活性化を、商店街の活性化として狭義にとらえると、「買物客を増やすこと」、「売上を伸ばすこと」、「商店の経営を良くすること」などとなるが、もう一方で、地域住民や利用者にとってのコミュニティや空間の整備など、利用する上での改善を含んでいるものである。
- 顧客のニーズにあった業種の構成、品質、価格、営業時間や接客姿勢などの、商店の魅力を向上させることが第一歩である。これらはソフト的な対応の仕方である。これに対して、歩道の整備や商店街の道路の拡幅など、買物道路の安全性の向上を図る取組みや、駐車場、駐輪場の整備といった、利便性を高める取組み、街並み形成のためにデザイン等の配慮を行なうことや、共同ビル化などはハード的な取組みで、この両者が改善されなければ商店街の活性化はありえない。
- 地域住民や利用者は、単に商店街が買物をするだけの機能では満足せず、情報の交流や人との交流、自分の生き甲斐を見出すなど新たな機能を満たしてくれることを求めており、これをかなえることが、まちの活性化にとって不可欠の条件である。
- ここ石神井のまちは、まず地域の人が生活するうえで、満足できる機能を満たすことが求められるが、特に子育て家庭、シニア世代、中高生が生活しやすいということを念頭に置くことが必要である。
- さらに、地域にある文化的資源、環境的資源を積極的に用いて、地域外の人を呼込む施設や仕組みも必要である。
まちの活性化を図るための手段として活用できるものとして、以下のものが考えられる。
- 良好な住宅地という地理的資源
- 水と緑豊かな自然環境的資源
- 歴史的な遺産やお寺、沼沢植物などの文化的資産
- 多くの有能な人的資源
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(1)地区の現況
地区全体として鉄道による交通分断の問題がある。また、道路整備に関しては、北口地区では進んでいるが、南口地区では道路整備の遅れによる交通動線の混乱から、バス、自動車、歩行者、自転車が入り乱れ、危険な状況が日常化するなど、多くの問題を抱えている。個別の問題点と評価する点は以下のとおりである。
1)商店街の現況 |
- 地区内には規模の小さい店舗が多く、店舗数も少ない。また、全体的に商業集積もされておらず、業種のバランスも良くない。
- 商店街の道路事情から安全面での問題があり、商店街の活性化を阻害している。加えて各店舗に駐輪スペースが確保されていないことや、ベビーカーや車いすが入れないなど、不便である。
- 商店の営業時間が短いことや、シャッターの閉まった店舗(廃業したもの、店はやめて居住しているなど)の存在が、商店街としての連続性や広がりをなくし、結果的に活気を損なっている傾向も見られる。
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2)駅、駅周辺の現況 |
- 駅舎や駅周辺に、石神井公園のアイデンティティが感じられず、公園への演出に乏しい。
- 駅前広場が狭く、駅周辺の道路事情から使い勝手が悪い。
- 駅ならびに駅周辺に人が集まる施設が整備されていない。
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3)石神井公園の現況 |
- 都内でも有数の水と緑豊かな公園であり、自然に親しめることや安らぎを得られる貴重な場所である。特に三宝寺池周辺は自然が豊かで、沼沢植物が保護されており、野鳥公園には多くの野鳥が見られるなど、自然が残されている。
- 一方で、自然湧水がなくなり、水が汚染するなどの危惧もあり、この公園をどのように保っていくかが課題である。
- 石神井城址や史跡公園などの歴史的な遺産、沼沢植物群などの天然記念物や文化財など、貴重な文化的資源にも恵まれているものの、積極的に活用されている状況は見られない。
- 地域外の人に対して知名度がないのか、規模の割に外部からの訪問者が少ない。
- この場所を舞台にした催し物は、年に1回の照姫祭は大々的に行なわれているものの、その他はそれほど目立った活動になっているとはいえない。
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(2)まちの活性化に対する方針と提案
1)地域の文化と歴史を活かすために |
- 文化財、史跡等を中心に、郷土資料館なども含めてシンボルとし、文化ゾーンを形成する。それを核として地域の文化を保存し、伝承していくことを目的に、様々な人が活動できる場と仕組みを備え、地域内外から人を積極的に集める。
- 特にシニアが語り部として活動できることや、小冊子などの情報提供による、地域並びに外部へのPR活動を行うことにより、文化と歴史のあるまちとの認識を広める。
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方針 | 地域(住民、商店、NPOなど) | 行政 |
1.文化・歴史に親しむために |
●石神井観光協会[住民ボランティア]
●大泉シネコンへのシャトルバス[バス事業者]
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●郷土資料館の拡充・移転 |
2.地域の産物を活かすために |
●地元農産物・製品の流通(近隣農家との連携)[商店街]
●銘菓の創作(コンテスト)
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3.地域の人達の知識や経験を活かすために |
●コミュニティスクール(語学教室、料理教室、語りの会、学習塾など) 企画・運営[住民]/場の提供[商店街]
●地元在住文化人の協力
●まちかどギャラリーの設置(空店舗を活用して地元の若い芸術家たちに)
●インストラクター[住民]
●人材バンク[住民]
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●市民による活動支援(場の提供)
●ミニホールの設置
●楽器練習場の設置(バンドなど)
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2)自然と環境にやさしくするために |
- 石神井公園を中心に水と緑の動線を形成し、駅から公園への演出を行うと同時に、身近に自然を実感できるようにする。
- この地に自然と環境を守ることと、それを実施するための手法などの認識を広め、個人から団体まで、積極的に自然と環境を守るための行動が行えるようにする。
- エコステーションを地域の財産として利用し、楽しみながらリサイクルの習慣を身に付け、地域外にもリサイクルの認識を広める。
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方針 | 地域(住民、商店、NPOなど) | 行政 |
石神井公園の自然に親しむために |
●自然を生かした活動(ホタルの飼育など)
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●活動支援(場の提供)
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身近な環境を大事にするために |
●リサイクル活動(ゴミの捨て方)
●エコステーションを中心とした活動
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●活動支援(エコステーションへの支援も含む)
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石神井公園を活用するために(地域外から人を呼び込むために) |
●石神井公園情報の発信(四季の情報、お祭りの情報)
※地元向け:石神井公園駅
※地域外:池袋駅や電車車内広告
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●活動支援(場の提供)
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●駅前広場整備(モニュメント設置)
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●公園へのアプローチの明確化(景観整備)
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●石神井公園を活かしたイベント(ボートレースなど)
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●活動支援
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3)商店街を活性化するために |
- 商店街は地域の人々の消費ニーズに適確に対応していくことが求められている。
- そのためには、営業時間の延長や、顧客管理その他、商店個々の工夫も必要である。
- 空き店舗や商店を継続する意欲のないところには、積極的に外部から意欲のある店を誘致し、商店街としての充実を図ることが必要で、その仕組みを作り出す。
- また、高齢者や子育て家庭の利用のし易さや、品揃えなどの充実も求められる。
- 道路などの整備に伴い、新たな店舗の立地が想定される。それにより、商店街の面的な広がりと回遊性を増すことが可能となる。
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方針 | 商店街 | 地域住民 | 行政 |
地域ニーズにあった商店街になるために
商店街をみんなでささえるために
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●消費者モニターの設置●生活者シンクタンク設置
●コミュニティビジネスへの支援(空店舗の活用)
●チャレンジショップ(空き店舗活用による新規参入者の積極的誘致)
●マッチングシステムの導入(貸したい人と借りたい人)
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●できる限り地元で買物をする
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●コミュニティビジネス支援
●商人大学の実施(接客方法、商品知識、マーケティング手法など)
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楽しみながら買物ができる商店街にするために
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●休憩できる場所の設置(ポケットパーク、ベンチ、喫茶店など)
●コミュニティカフェの設置
●バリアフリー対応(ベビーカーや車いすでも入れるお店)
●ショッピングカートの貸し出し
●ペットも入れる喫茶店
●商店街マップの作成
●朝市開催
●買物客用駐輪場整備
●一階部分のセットバック
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●交通マナーの遵守(放置自転車
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●歩道整備
●歩行支援施設
●バリアフリー化補助
●文化施設設置
●電線地中化
●公共駐車場整備
●交通規制の徹底(一方通行、駐車違反)
●駅周辺ポイ捨て禁止
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もっと楽しい商店街になるために
<個別意見>
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<楽しめるお店>
●生演奏の聴けるお店
●遊べる場所(カラオケやボーリング)
●ゆっくりとできる本屋(専門書が多く、喫茶コーナーのある)
●おしゃれな小物屋
●便利なお店(東急ハンズのような、DIY・ガーデニングのお店)
<生活に便利なお店>
●閉店時間の遅いお店
●学割の利くお店
●シニア向けのお店
●生鮮三品のお店<食べる場所>
●営業時間の長い食堂
●家族で食事のできるお店
●一人で入りやすい食堂
●レストランビル
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※用語説明
【生活者シンクタンク】
生活者の相談にのったり、新しい生活様式などを提案する機能のこと。
4)安心して暮らせるようにするために |
- 子育て家庭が安心して子供を育てられ、シニアが愉しみながら活動し、生活できるまちを目指す。
- まちのあちこちに、人と語らう場所があり、会話のあるまちとする。
- 医療機関の整備と各種リハビリ機能の整備、並びに若年から高齢者までの健康維持のための施設や、仕組みのあるまちとする。
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方針 | 地域(住民、商店、NPOなど) | 行政 |
みんなで助け合えるまちになるために |
●自然を生かした活動(ホタルの飼育など)
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●活動支援(場の提供)
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●地域通貨の導入
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●住民参加型イベントの開催(誰もが参加できる運動会など)
●フリーマーケット開催
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健康的な生活ができるまちになるために |
●各種スポーツ指導者(ボランティア)
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●石神井プール温水化
●気軽に使えるスポーツ施設設置
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●総合的地域スポーツクラブ運営
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●活動支援
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●健康に関する研究機関(カウンセリング機能)
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●医療機関の誘致
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誰もが生活をしやすいまちになるために(こども、子育て家庭、若年単身者、シニアなど) |
●生活情報共有の仕組み(情報拠点の設置、ミニコミ誌発行、FM局、インターネット)
※生活情報(子育て情報、求人情報(アルバイト含)、医療機関、公園情報ほか)
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●生活情報拠点の支援(場の提供)
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●ボランティア活動(図書館ボランティア、カウンセラー等)
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●会話室のある図書館
●中高生向けの児童館
●児童館の増設
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●託児施設運営または支援
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●託児施設運営または支援
●保育園の定員増
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●安価で良質な集合住宅
●自立型シニアマンション
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●低家賃公共住宅の供給
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●商店街の共同配送
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●公園設置(児童公園)
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※用語説明
【総合型地域スポーツクラブ(SSC)】
地域住民が自主的に運営し、体育館などを拠点とした、地域住民の健康づくり、体力増進に資するだけでなく、潜在的スポーツ人口の掘り起こしや、豊かなコミュニティづくりに寄与する組織のこと。
【地域通貨】
地域コミュニティが独自に発行し、物やサービスを特定の地域やグループの中で循環させることによって、市場では成り立ちにくい価値を支えていくための道具の総体のこと。
【自立型シニアマンション】
健康な高齢者が一人でも不自由無く生活できるような環境・設備が整った共同住宅。
以上4つの視点から空間・施設整備について検討すると、以下のとおりである。
1)駅、駅周辺 |
- 鉄道南北間の歩行利便性の向上(連続立体交差完成までの暫定措置を含む)
- 地域の顔に相応しい駅並びに駅前のデザインの導入
- 駅のバリアフリー化の推進
- 駅前と一体となった空間整備
- 地域内外の人のための情報拠点の整備(公園情報、生活情報)
- 駅利用者を対象とした生活サービス提供施設整備(託児施設など)
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2)商店、商店街 |
- 安心して買物ができる空間整備(ポケットパーク、モール化、駐車施設、共同荷捌き施設、買い物用駐輪スペースなど)
- 生活者のニーズに応える業種の導入(チャレンジショップ、マッチングシステム)
- 駅前、公園への窓口に相応しい景観整備
- 生活情報拠点、市民による活動拠点の整備
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3)石神井公園 |
- 自然環境の保全と創造
- 周辺の文化的資源の有効利用
- 環境学習や公園でのイベントの核となる拠点整備
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4)その他 |
- 年代間の交流ができる空間整備(広場、集会施設など)
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まちを活性化するには、上に述べたように空間や施設整備が必要であるが、経済活動の活発化を促す人の集積が絶対条件である。そのためにはハードを支えるソフト、すなわち仕組みをつくることが重要で、行政、住民、商店街、企業が協力して取り組むことが求められる。
図:まちの活性化に関する提言(図をクリックすると拡大します〔87.1kb〕)

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2002年(平成14年)3月
石神井公園駅周辺地区まちづくり協議会
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