■石神井公園駅周辺地区まちづくりへの提言

目次
I. はじめに
II. まちづくり協議会活動の経緯
III. 石神井のまちは
IV. 検討テーマの設定
V. まちづくりへの提言


交通について


土地利用について


まちの活性化について


地域コミュニティについて
VI. おわりに
VII. 添付資料


まちづくり協議会開催記録


まちづくり協議会会則


地域への広報活動等


データ資料
VIII. 提言にあたって

V.まちづくりへの提言

1.交通について

石神井公園駅周辺地区にとって交通問題の解決は最大の課題である。現状の問題点と既に決定されている都市計画事業がもたらす効果と影響等を考察し、まちづくりの方針を提案する。

(1)地区の現況

地区全体として鉄道による交通分断の問題がある。また、道路整備に関しては、北口地区では進んでいるが、南口地区では道路整備の遅れによる交通動線の混乱から、バス、自動車、歩行者、自転車が入り乱れ、危険な状況が日常化するなど、多くの問題を抱えている。個別の問題点と評価する点は以下のとおりである。
1)問題点

1.西武線による南北道路交通の分断が招く渋滞と危険な踏切の存在


石神井公園駅周辺地区は西武鉄道により道路網が南北に分断されている。このことが自動車や歩行者にとって通行の妨げとなり交通渋滞の原因となっている。また地区内にある5カ所の踏切は歩行者、自転車はもちろん自動車にとっても危険である。


踏切による交通分断その1 踏切による交通分断その2


写真:踏切による交通分断

2.バス、自動車、歩行者、自転車が錯綜する南口地区の危険な道路


狭い道路にバスや一般車両、自転車、歩行者が錯綜し危険な状況が日常化している。特にバスルートになっている3カ所の踏切や南口商店街の交差点、南口駅前広場では歩行者が迫ってくるバスと接触しかねず、安心して歩くことができない。


地区内の路線バスその1 地区内の路線バスその2


写真:地区内の路線バス

3.商店街の障害物


荷捌き車両や、路上駐車、放置自転車、電柱、商店の看板などが歩行空間をふさいでいて、歩行者や自転車の通行の妨げとなっている。


放置自転車/商店街のバスと歩行者その1 放置自転車/商店街のバスと歩行者その2


写真:放置自転車/商店街のバスと歩行者

4.商店街の障害物


駅前広場が狭くバスターミナルに占められて歩行空間が確保できていないために歩行者が安心して歩けない。また、一時停車スペースが無いため送迎用自動車等が道路をふさぐなどの問題が日常化している。

5.危険な富士街道


富士街道は地区周辺で最も自動車通行量が多いにもかかわらず道幅が狭いうえに歩道が片側にしかなく、しかも狭い。その結果、歩行者や自転車にとって通行し難く、危険な道路となっている。

6.通過車両の抜け道の存在


環八及び関越、外環自動車道のインターチェンジを利用する車両が谷原交差点の混雑を避けるために通行する抜け道があり、ルート上で事故が発生している。

7.バリアフリー対応の遅れ


安心して歩けないことに加えて、点字ブロックや音声信号などのバリアフリー設備が地区内に数カ所と、皆無に等しい。特に駅舎のバリアフリー化が進んでおらず障害者や高齢者の鉄道利用を阻害している。

8.通行障害となる電柱


歩道がない道路上に立つ電柱が通行の障害となっている。歩行者や自転車は電柱を避けるために一旦車道へ出なくてはならず危険であるが、一方で今の道路事情では電柱が車から人を守るガードの役割を果たしているとの指摘もある。

9.緊急車両の進入が困難な細街路


南口地区には4m未満の細街路のエリアがあり、緊急車両の進入が困難である。さらに、ブロック塀の倒壊があれば緊急車両の進入が全くできなくなるなど防災上の問題がある。
2)評価する点

1. 南口商店街における時間帯交通規制


駅前通りと銀座通りの商店街が午後の買い物時間帯、和田稲荷前の道路が朝の通勤時間と夕方の買い物時間帯、ボート池北道路が休日の日中など、時間帯による車両進入禁止の通行規制を行っており、ラッシュ時の混雑緩和に一定の効果を上げている。

2. 一方通行規制による駅への車両の乗り入れ抑制


地区内には8カ所の一方通行路が設定されており、不用な車両の駅前や住宅地への進入を抑制する効果がある。

3.北口地区における富士街道と補助132号線の整備


北口地区再開発にともない、道路の拡幅整備と歩道の設置により、道路環境が大幅に改善され、安全な交通が可能となる。

交通検討資料

地区内の交通動線
地区内の交通動線

駅への通勤動線
駅への通勤動線

買い物への動線
買い物への動線

地区内のバス路線
地区内のバス路線

駅利用者の交通手段
駅利用者の交通手段

踏切による交通分断と危険性(自動車)
踏切による交通分断と危険性(自動車)

踏切による交通分断と危険性(歩行者)
踏切による交通分断と危険性(歩行者)

放置自転車と駐輪施設
放置自転車と駐輪施設

(2)都市計画事業とその効果と影響

バス、自動車、歩行者、自転車等の交通動線の混乱を既存の道路だけで解決するには限界がある。西武鉄道の連続立体交差化事業と都市計画道路を含めた交通動線計画を立てなければ、根本的改善は望めないであろう。既決定の都市計画事業が実施された場合の効果及び影響は以下のとおりである。


1)北口地区再開発等にともなう道路事業(北口地区再開発ては現在事業中)
駅北口にバスターミナル(交通広場)及び公共駐車場(270台収容)ができる。補助132号線(西武線踏切から三原台交差点までの間)が16m道路として整備され、三原台交差点から目白通り(放射7号線)までの間の既存道路が12m道路に拡幅される。これによって西武線踏切からから目白通りまでの間が完成することになる。また、富士街道の踏切南側交差点から補助132号線までの間(区街4号、区街7号)が15m道路に拡幅される。

<完成後の効果と影響>
  1. 駅北口への歩行者、自動車によるアクセスが大幅に改善する。
  2. 現在、駅南口を通過するバスの一部が、北口に移行することにより、南口商店街のバスの交通量が緩和される可能性がある。
  3. 富士街道整備区間内の危険な交差点が改善する可能性がある。
  4. 道路の拡幅や公共駐車場の整備により車利用の利便性が高まるが、一方で踏切渋滞の悪化が懸念される。
図:駅周辺地区の都市計画道路等の概要
駅周辺地区の都市計画道路等の概要

2)鉄道連続立体交差化事業
現在、環八の西側まで高架化されており、石神井公園駅西側までの高架化が都市計画決定しているが、地上に下りる位置が未定である。

<実施された場合の効果と影響>
  1. 交通の南北分断状態が解消し危険な踏切がなくなり、地区の抱える深刻な交通問題の多くが解決する可能性がある。
  2. 高架下の空間利用が可能となる。
  3. まちの景観、騒音や日影等の住環境への影響が大きいため最大限の配慮が必要である。
3)補助132号線(踏切から南側)

<実施された場合の効果と影響>
  1. 地区内の南北交通の流れが改善される可能性があるが、西武線の立体交差化が実現しないと効果が薄い。
  2. 補助132号線から南口バスターミナルへのアクセスが容易になり、南口商店街を通るバスを始めとした自動車交通量を大幅に減少させることができる。
  3. 抜け道利用の通過車両を呼び込み渋滞を引き起こすおそれがあるので、駅周辺地区への過度な通過交通を抑制する対策が求められる。
  4. 和田稲荷からボート池の間が急勾配となるので、高齢者や障害者に対する配慮と共に適切な安全対策が求められる。
  5. 和田稲荷から和田堀公園交差点間の交通量が増加することが予想され、一方通行等の規制が必要になると思われる。また、補助132号線との交差点は取り付け角度が急なため見通しが悪くなるので十分な隅切りなど安全に対する配慮が求められる。
4)補助232号線

<実施された場合の効果と影響>
  1. 富士街道から駅南口へのアクセスが改善される。
  2. 補助132号線が実施された場合、駅前広場への進入路となる。
  3. 富士街道から補助132号線までつながると南口商店街をモール化することも可能になる。
  4. 駅前再生や商店街の道路環境改善に寄与する可能性が高いが、商店街の中心を通過する形になり影響が大きいので、商店街がどうなるのか検討する必要がある。
  5. 補助232号線が担うべき東西交通については、現状では富士街道等が負担している。

(3)交通に対する提案

周辺地域が住宅を中心としたまちであり、駅へのアクセス手段が徒歩と自転車を合わせて90%を越えるという現状から、地区周辺の居住者や地区を利用する誰もが安全で快適に通行できるように道路環境を改善する必要がある。地区の骨格となる道路においては、自動車のスムーズな流れを確保することと安全対策に重点を置く必要がある。それ以外の地区内道路については、できるだけ歩行者、自転車を優先する。また、地区内の車両交通を抑制するために駐車施設を地区周辺に分散配置することが望ましい。
道路網整備にあたっては、南口商店街を通るバスを減らす方向で考えること及び、商店街への不用な通過車両を抑制し、安心して買い物ができる道路環境に改善することを目標とする。

1)連続立体交差化事業と駅前広場
西武線の連続立体交差化事業については、早期実施が地域住民の願いであり、まちづくりの前提ともいえる最重要課題である。石神井公園駅周辺地区が立体交差化された際に地区内への通過交通の誘引を防ぐため、石神井中学校脇南北の都道についても、同時に鉄道と立体化することが望ましい。ただし、高架鉄道はまちへ大きな影響を与えることから、住民の意見を集約し計画に反映するための仕組みが必要と思われる。
南口駅前広場は周辺との一体整備が望ましいが、本協議会では議論が不十分であり、駅前広場のあり方、高架下の利用法を含め更なる検討の機会が必要である。
危険な踏切(特に小学校の通学路のひとつにあたる女性センター前の踏切)の改善(踏切の拡幅等)や駅のバリアフリー化(エレベーター設置等)と駅改札を通らずに駅の南北を往来できる自由通路の設置は、立体交差化実施を待たずに早期の整備が求められている。

2)南口商店街
南口商店街については最終的にはバスがなく、一般車両の進入を規制し、モール化など歩行者優先道路とすることを目指す。そのためには、補助132号線及び補助232号線の一部(富士街道から補助132号線までの間)事業実施が必要条件と考えられる。しかし、実施にあたっては、長期間となるため、段階的にできることから改善を図ることが望ましい。そのための方策として以下のことを提案する。
  1. 放置自転車の駐輪施設への誘導に加え、重点箇所を設け放置自転車の撤去を徹底する。買い物客が使いやすい小規模点在型の駐輪施設を設置する。(大鷲神社を買い物客用の駐輪場として活用できないであろうか。)
  2. 商店の看板が路上にはみ出さないようにする。
  3. 歩行空間をふさぐ荷捌き車両を路外転換するための荷捌き場を設置する。
  4. 銀座通りを一方通行にして歩行空間を創出する。
  5. 一般車両通行止めの時間を増やす。
  6. 北口バスロータリー完成後は、駅へのバス乗り入れを可能な限り北口に移行する。南口に残ったバスについても小型化やルート変更などのバス対策を検討する。
  7. ビルの建て替え時には地上部分をセットバックし、道路空間を提供することをルール化する。
  8. 公園通りの拡幅を積極的に推進する。

3)富士街道
富士街道は東・西、南・北地域を結ぶ主要な幹線道路としての役割を担っており自動車交通においても、歩行者、自転車にとっても重要である。しかし、区街7号から石神井中学交差点間の幅員が8m程度と狭く、渋滞の原因となっていて、十分に機能していないのが現状である。バスのすれ違い時には車道幅いっぱいとなり、路肩を通行する自転車や歩行者にとってとても危険である。歩道も片側1.2mと狭く、荷物を抱えてのすれ違いが困難な状況となっている。石神井地区の主要道路としての機能を十分に発揮するには少なくとも石神井中学以西と同様に両側歩道、幅員12m以上への早急な拡幅整備が必要である。 石神井中学校前交差点以西の富士街道
写真:石神井中学校前交差点以西の富士街道

4)都市計画道路
一部の都市計画道路については、都市計画決定されてから長期間事業化されていないことから、時代の変化を踏まえ、計画内容や事業方法について、地域の住民や商店会の人などの意見を十分に聞いて進めていくことが重要である。石神井公園駅周辺地区のまちづくりを推進するためにも都市計画道路の事業化の見通しについては、早期に決めることが必要である。ただし、事業実施が決定した際には、新しい石神井の顔となるような質の高い街並みづくりが求められる。そのためにも住民の意見を反映させた形での道路づくりを強く要望する。ここでは特に補助132号線が駅から石神井公園へのアクセスとなることを意識し、歩道を広く取り道路そのものを緑豊かな公園道路にすることを提案したい。

5)環境と人に優しいまちづくり
石神井のまちづくりを進めるにあたっては、浸透式舗装や街路樹など自然環境に対して十分配慮し、全ての人に優しいユニバーサルデザインを取り入れたまちづくりをめざしたい。この観点から駅舎、公共施設、道路など多くの人が利用する施設の重点的整備を実施すること。また、商店街一丸となってのバリアフリーへの取り組みを期待したい。

※用語説明
【ユニバーサルデザイン】
障害の有無、年齢、性別、国籍、人種等にかかわらず多様な人々が気持ちよく使えるようにあらかじめ都市や生活環境を計画する考え方のこと。
図:交通に関する提言(図をクリックすると拡大します〔75.6kb〕)
交通に関する提言

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2002年(平成14年)3月
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