西川青季:幾何学

作成日 : 2024-05-16
最終更新日 :

概要

「まえがき」から引用する。

予備知識としては,大学初年次で学ぶ微積分学と線形代数学,および集合と位相に関する基本的な事柄を仮定したが, 自習書としても使えるよう説明は簡潔であるよりも,できるだけ丁寧になるよう心掛けた.

本書の本文には問があり、章末には問題がある。章末の問題に関しては、巻末に解答が付されている。

第1章ではトポロジーの立場から連続曲線について考察する。第2章では微分幾何学の立場から滑らかな曲線の性質について考察する。 第3章では微分トポロジーの立場からジョルダンの曲線定理を証明し、ホイットニーの定理について解説する。

感想

第 1 章「§ 3. 回転数」の、p.17 にある問 3.1. を解いてみよう。引用する。

`x_1(u) != 0` のとき,`x_1(u)^2 + x_2(u)^2 = 1` に注意して

`[arctan {:(x_2(u))/(x_1(u)):}]^' = abs((x_1(u), x_2(u)),(x_1'(u),x_2'(u))) = x_1(u)x_2'(u) - x_1'(u)x_2(u)`
がなりたつことを確かめよ.

右の等号は行列式の定義である。左の微分を実行してみる。

`(arctan x)' = 1 / (1 + x^2), (x_2/x_1)^' = (x_2'x_1 - x_2x_1')/x_1^2` であるから、
`(arctan {:(x_2(u))/(x_1(u)):})' = ((x_2(u))/(x_1(u)))^' * 1 / (1 + ((x_2(u))/(x_1(u)))^2) = (x_2'(u)x_1(u) - x_2(u)x_1'(u))/(x_1(u))^2 * (x_1(u))^2 / (x_1^2(u) + x_2^2(u)) = x_2'(u)x_1(u) - x_2(u)x_1'(u)`
これは右辺と同じであるので、確かめられた。

第 2 章「§ 7. 正則な曲線」の、p.54 にある問 7.2. を解いてみよう。引用する。

`bbR^3` 内の滑らかな曲線 `alpha, beta : bbR rarr bbR^3` を

`alpha(t) = (e^t cos t , e^t sin t , e^t), beta(t) = (cosh t, sinh t, t), t in bbR`

で定義する.ただし `cosh t = (e^t + e^-t ) // 2, sinh t = (e^t - e^-t) // 2` である.`alpha, beta` を弧長 `s` をパラメーターとして表示せよ.

以下は p.53 の例 7.5. に倣って作った私なりの解答である。

`alpha` の接ベクトルは `alpha'(t) = (e^t cos t - e^t sin t, e^t sin t + e^t cos t , e^t)` であるから、 `norm(alpha'(t)) = sqrt(e^(2t)) sqrt((cos t - sin t)^2 + (sin t + cos t)^ 2 + 1) = sqrt(3) e^t`。よって `alpha` の弧長は

`s(t) = int_0^t sqrt(3) e^t dt = sqrt(3) (e^t - 1)`
となる。したがって `t` は `t = log (s // sqrt(3) + 1)` と書け、`alpha` は弧長 `s` をパラメーターとして
`alpha(s) = ((s / sqrt(3) + 1)cos log (s / sqrt(3) + 1),(s / sqrt(3) + 1)sin log (s / sqrt(3) + 1),s / sqrt(3) + 1)`
と表示される。

`beta` の接ベクトルは `beta'(t) = (sinh t, cosh t , 1)` であるから、 `norm(beta'(t)) = sqrt(sinh^2 t + cosh^2t + 1) = sqrt(2) cosh t`。よって `beta` の弧長は

`s(t) = int_0^t sqrt(2) cosh t dt = sqrt(2) sinh t`
となる。`y = sinh x` の逆関数は `y = log(x + sqrt(x^2+1))` であるから、`t` は `t = log (s// sqrt(2) + sqrt(s^2 // 2 + 1))` と書ける。 このとき、 `beta` は弧長 `s` をパラメーターとして
`beta(s) = (cosh log (s/ sqrt(2) + sqrt(s^2 / 2 + 1)),sinh log (s/ sqrt(2) + sqrt(s^2 / 2 + 1)),log (s/ sqrt(2) + sqrt(s^2 / 2 + 1)))`
と表示される。なお、さらに計算を続ければ、
`cosh t = (e^t + e^-t)/2 = 1/2(s/sqrt(2) + sqrt(s^2/2 + 1) + 1 / (s/sqrt(2) + sqrt(s^2/2 + 1))) = 1/sqrt(2)((s+ sqrt(s^2 + 2))/2 + 1 / (s + sqrt(s^2 + 2)))`
などとなるが、ここまでやっても美しくないと思う。それ以前に、計算が合っているかどうか、不安だ。

朝倉書店 新数学講座

  1. 伊藤雄二:微分積分学
  2. 服部昭:線型代数学
  3. 加藤十吉:集合と位相
  4. 永尾汎:代数学
  5. 西川青季:幾何学
  6. 高野恭一:常微分方程式
  7. 木村俊房・高野恭一:関数論
  8. 一樂重雄:位相幾何学
  9. 森本光生:関数解析とフーリエ級数
  10. 伊藤雄二:確率論
  11. 鈴木雪夫:統計学
  12. 和田秀男:計算数学
  13. 一松信:数値解析
  14. 組合せ数学
  15. 増田久弥:非線型数学

数式の記述

数式は MathJax を用いている。

書名 幾何学
著者 西川青季
発行日 2002 年 1 月 15 日 初版第 1 刷
発行元 朝倉書店
定価 3400 円(本体)
サイズ A5 版
ISBN 4-254-11435-4
備考 草加市立図書館で借りて読む

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MARUYAMA Satosi