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GIFアニメ 日本の野生動物(6)
食肉目


クロテン

  食肉目(しょくにくもく)


ホッキョクグマ ホッキョクグマ


クマ科 ホッキョクグマ(迷行種)
 頭胴長250-300cm。
 動物園ではおなじみのシロクマです。正式名はホッキョクグマ。本来の生息場所は北極圏ですが、日本でも明治時代に2回だけ捕獲の記録があります。北海道の宗谷と新潟。宗谷は流氷に乗って流れ着いたと考えられますが、新潟での記録は疑問。ツキノワグマのアルビノを誤って記録したのではないかと考えられています。
 子熊は可愛いですが、陸上では最大の肉食動物。とくにオスはメスの倍くらいの大きさで強力です。

ヒグマ ヒグマ


クマ科 ヒグマ
 頭胴長200-230cm。
 ヒグマは北海道にすむクマ。本州のツキノワグマと比べるとはるかに大きく強力です。
 野生の実物を見たことはありませんが、動物園のヒグマを見て、これと野外で出会ったらと想像してみると、そうとう恐い。動物好きを自負していても至近距離では勘弁してほしいです。
 それでも北海道のヒグマはまだ小さい方で、アラスカやカムチャッカのヒグマはさらに大きいそうです。

ツキノワグマ ツキノワグマ


クマ科 ツキノワグマ
 頭胴長120-145cm。
 ツキノワグマは本州、四国、九州にすんでいましたが、どうやら九州、四国では絶滅もしくはその寸前のようです。
 人家のそばに現れるとたちまち危険として駆除されてしまうことが多く、そうしたニュースを聞くと、いつも複雑な思いになります。
 確かに直接接触すれば危険でしょうが、なんとかそれを避けつつ共存する方法はないものか。唐辛子スプレーだとかで命を奪わずヒトの危険性を学習させるなどいろいろ研究はされているようです。危険回避のためのヒトの方の学習も必要でしょう。
 山のオヤジがいない森は想像しただけで淋しくなります。

アライグマ アライグマ


アライグマ科 アライグマ(移入種)
頭胴長40-65cm、尾長25-35cm。

カニクイアライグマ カニクイアライグマ

アライグマ科
カニクイアライグマ(移入種)
頭胴長40-90cm、尾長20-56cm。
 アライグマは北アメリカ、カニクイアライグマは中央〜南アメリカが原産の動物です。カニクイの方が体毛が短く、身体がスマートに見えます。
 どちらもペットとして飼われていたものが野に放されて野生化しています。雑食性で日本の気候にも合うらしく、北海道・本州で定着して、かなり増えているようです。
 こどものうちは可愛くても、大きくなると力も強くなって、もてあましてしまうのでしょうが、野に放すはやめてください。タヌキとの競合が問題になっています。
 水辺にすみ、カエルやザリガニのほか野菜も好きで農作物への被害がでています。

タヌキ タヌキ


イヌ科 タヌキ
 頭胴長50-60cm、尾長15cm。
 おなじみのタヌキです。
 もっとも世界的には珍しい種で、東アジア特産なので、欧米の人はアナグマやアライグマと勘違いしている場合が多いそうです。
 北海道にいるのがエゾタヌキ、本州以南にいるのがホンドタヌキ。
 ずんぐりしたイメージですが、なかなか敏捷で、木登りも得意です。

キツネ キツネ


イヌ科 キツネ
 頭胴長60-75cm、尾長40cm。
 これもおなじみのキツネです。
 北海道にいるのがキタキツネ、本州以南にいるのがホンドギツネ。キタキツネが有名ですが両種は別種まではいかない亜種の関係。
 キツネの分布は広く、ユーラシア、アフリカ北部、北アメリカにすんでいます。
 真上から襲われると動けなくなるネズミの習性を利用して、ジャンプして真上からネズミを獲るなかなかの知恵者です。

ノイヌ ノイヌ


イヌ科 ノイヌ(移入種)
 猟犬やペットの犬が捨てられて野生化したもの。捨てられた1代目はノライヌ、ノライヌ同士から生まれた2代目以降で、人に依存せず野山で生きているものをとくにノイヌと呼びます。ノイヌとして生きていけるのは中型〜大型犬です。
 イヌは野生に戻ると、ほとんどオオカミと同じ生態となり、群れをつくってシカやイノシシを襲います。オオカミが絶滅した現在、ノイヌが生態系の最高捕食者としてシカなどの個体数調整に役立つという意見もあります。いろんな品種が交じり合えば、いずれ姿もオオカミのようになるのではないでしょうか。
 しかし、奄美大島ではアマミノクロウサギを捕食している例があるように島や狭い地域では問題も起こしますし、そもそも、人為的に捨てられたものを生態系の中に位置づけていいものか、なかなか難しい問題です。

ニホンオオカミ ニホンオオカミ ニホンオオカミ

エゾオオカミ エゾオオカミ エゾオオカミ


イヌ科 オオカミ
 オオカミは、ヒトについで広い範囲に生息する動物でした。それだけに亜種も多く数十を数えます。
 それらの亜種のうち、最小のものと最大のものが日本にいました。本州以南のニホンオオカミ(頭胴長100cm、尾長30cm=別種説あり)と北海道のエゾオオカミ(頭胴長130cm、尾長40cm)です。
 いまでも生存を信じている人もいますが、サハリンや千島のエゾオオカミを除いて、残念ながら両種とも絶滅は覆らないでしょう。100年間に亘って生存の確かな証拠が得られていません。
 無念です。

テン夏毛 テン夏毛 夏毛

キテン冬毛 キテン冬毛 冬毛(キテン)

スステン冬毛 スステン冬毛 冬毛(スステン)


イタチ科 テン
 頭胴長45cm、尾長19cm。
 テンは本州以南にすむイタチ科の動物です。
 とてもかわいい顔をしていますが、スマートな身体ですばしこく、木登りもリス以上にうまいといわれていますから、リスやネズミにとっては一番恐い敵でしょう。
 冬に鮮やかな黄色になるキテンと夏毛とあまり変わらない茶色の冬毛のスステンの二つのタイプがあります。
クロテン クロテン

イタチ科 クロテン
 頭胴長50cm、尾長17cm。
 クロテンは大陸にすむイタチの仲間。日本では北海道にいます。
 ご存知のように西欧ではクロテンの毛皮は古くから極上の最高級品。ロシア帝国のシベリア開発の動機となったといわれるほどの魅力をもった毛皮です。日本でもかつては乱獲され数が減り、深い森に少数が生き残っています。
 冬でも毛色は変わりません。

イタチ・メス イタチ・メス メス

イタチ・オス イタチ・オス オス


イタチ科 イタチ

頭胴長♂27-37cm、♀16-25cm、尾長♂12-16cm、♀7-9cm。

チョウセンイタチ・メス チョウセンイタチ・メスメス

チョウセンイタチ・オス チョウセンイタチ・オス オス


イタチ科 チョウセンイタチ

頭胴長♂28-39cm、♀25-31cm、尾長♂16-21cm、♀13-16cm。
 イタチは、もともと本州以南にすむ日本固有の動物。北海道には人為的に移入されました。
 オスとメスとでは著しく大きさが違い、生物学では「性的二型」といいます。
 チョウセンイタチは、日本では対馬にしかいなかった大陸にすむイタチ。人為的に九州や関西に移入されて、最近では西日本一帯に分布を広げています。チョウセン…は市街地や農村で増え、日本のイタチは山間部に生き残っています。
 イタチはネズミ駆除のためなどに島に放されたりすることが多いのですが、野生動物を人為的に移動させるのは問題が大きいですね。他の動物への影響など、予想を超えた結果を招くことがあります。
 肛門近くに臭腺があり、敵に襲われた時などに臭い液体を出すのが、世に言う「イタチの最後っ屁」というやつです。

イイズナ夏毛 イイズナ夏毛 夏毛

イイズナ冬毛 イイズナ冬毛 冬毛


イタチ科 イイズナ
 頭胴長♂16-17cm、♀14-15cm、尾長♂♀3cm。
 食肉目中最小の種類です。本州には東北の山地に棲むニホンイイズナ、北海道には少し大きめのキタイイズナがいます。
 オコジョと違って、冬は尾の先まで真っ白になります。
 ネズミや鳥、昆虫などを食べていますが、時には体長が倍以上のウサギを噛み殺すこともあるといいますから、さすがは食肉目の猛獣です。

オコジョ夏毛 オコジョ夏毛 夏毛

オコジョ冬毛 オコジョ冬毛 冬毛


イタチ科 オコジョ
 頭胴長♂18cm、♀16cm、尾長♂6cm、♀5cm。
 オコジョは山で比較的よく見かけます。人を恐れない性格らしく、逃げずにかくれんぼをするように岩の隙間から顔を出したり引っ込めたりしています。
 冬は尻尾の先以外は真っ白になります。
 本州にいるのはホンドオコジョ、北海道にはちょっと大型のエゾオコジョがいます。

ミンク ミンク


イタチ科 ミンク(移入種)
 頭胴長♂45cm、♀36cm、尾長♂36cm、♀30cm。
 高級毛皮の代名詞になっているミンクです。原産は北アメリカ。毛皮養殖のために飼われていたのが逃げ出して北海道で定着しています。体色は黒〜茶褐色までいろいろ。
 泳ぎがとても上手で、水中にもぐって魚やザリガニなどを取ります。北海道にはもともとカワウソがいたのですが、カワウソが絶滅してしまった後、ちょうど同じような生態的地位を占めているようです。ときどきカワウソと間違えられて「カワウソ再発見か!」とニュースになりますが、身体はカワウソよりかなり小さめです。

アナグマ アナグマ


イタチ科 アナグマ
 頭胴長52cm、尾長14cm。
 アナグマはユーラシア大陸に広く分布しています。日本では、北海道以外に亜種のニホンアナグマがいます。
 ピーター・ラビットの絵本では、アナグマはズルイ、汚い、臭い、とひどく悪者のキャラクターにされてしまって、ちょっとかわいそうです。タヌキみたいで愛嬌のある顔立ちなんですが…。
 美味といわれるムジナ汁のムジナは、このアナグマのことらしいです。

カワウソ カワウソ


イタチ科 カワウソ
 頭胴長70cm、尾長46cm。
 カワウソはずいぶん前から絶滅寸前といわれています。
四国で、かろうじて生きている痕跡が今でもときどき発見されますが、よくて2桁程度の個体数だとすれば、復活はかなり困難でしょう。
 北海道や本州の山奥でまとまった生き残り群が、もしいれば・・・。報告例を調べると、ヌートリアだったりミンクだったり、なかなか希望はつながりませんが、この古来から人と親しい動物の消失はとてもあきらめられるものではありません。
 特別天然記念物。
 (2012年8月追記)
 環境庁のレッドリストでカワウソが絶滅種に分類されました。
 確実な観察記録は1979年が最後、以後30年以上も生存の確認が得られないためです。確かに生存の可能性はほとんどないと思わざるをえません。
 かえすがえすも残念です。

ラッコ ラッコ


イタチ科 ラッコ
 頭胴長110cm、尾長30cm。
 海にすむイタチ科のラッコは、かわいいしぐさで水族館の人気者です。
 北の冷たい海でくらせるように毛皮は最上級。その撥水と保温能力を維持するために毛づくろいは欠かせません。
 しかしその毛皮が災いして、戦前すでに北海道では獲りつくされてしまいました。
 歯舞諸島や国後・択捉では繁殖もしているようで、北海道沿岸にも姿をみせます。このかわいい動物がたくさん戻ってきて定着してほしいですね。
 子どものころは全身茶色ですが、大人になると顔が銀色になり、歳とともに銀色の範囲は上半身に広がります。

ハクビシン ハクビシン


ジャコウネコ科 ハクビシン
 頭胴長61-66cm、尾長40cm。
 日本に棲む唯一のジャコウネコ科(近年ジャワマングースが野生化して2種類となった)。
 在来種か移入種かなかなか決着がつきませんが、中部〜関東で分布はかなり広がっているようです。
 ミカンやリンゴが大好物で、農産物への被害がよく問題になります。
 私は、自宅近くの東京都府中市の住宅街の真ん中で目撃して、びっくりしたことがあります。

ジャワマングース ジャワマングース


ジャコウネコ科
ジャワマングース(移入種)
 頭胴長30-40cm、尾長25-35cm。
 沖縄本島に1910年、ハブを駆逐するために人為的に導入されました。奄美大島にも1979年に放獣されました。原産地はインド〜マレー半島。
 しかし、実際には、ハブを食べることはほとんどなく、ヤンバルクイナ、トゲネズミ、ケナガネズミ、アマミノクロウサギなど貴重な動物を食べてしまっています。農作物や果実も食べます。
 明治時代の沖縄はともかく、1979年に奄美大島に放獣したというのが乱暴すぎます(誰がしたのかは実は不明)。沖縄での失敗がすでに明らかだったでしょうに…。
 野生動物を人の都合で勝手に移動するのは、だいたい目的を達せずに、逆に予想を超えた深刻な被害を生む場合が多いようです。自然の連鎖をつくり変えるほど人類の知識は十分ではありません。

ノネコ ノネコ


ネコ科 ノネコ(移入種)
 飼い猫が野生化して、自然の中で獲物を捕らえているのがノネコですが、半野生の街のノラネコと「純粋な」ノネコとの区別は難しいようです。
 西表島や対馬ではヤマネコへの圧迫や病気を移す可能性があり、沖縄本島のヤンバルクイナ、小笠原諸島のメグロなど貴重な鳥を捕食している問題があります。ネコは有能なハンターですから、もともと食肉目のいなかった地域では鳥や小動物にとってはかなりの脅威となります。

ツシマヤマネコ ツシマヤマネコ


ネコ科
ベンガルヤマネコ(ツシマヤマネコ)
 頭胴長50-55cm、尾長20cm。
 イリオモテヤマネコが発見されるまで、ツシマヤマネコが日本で唯一のネコ科の野生動物でした。
 長崎県対馬にすんでいて、大陸に分布するベンガルヤマネコの亜種とされます。
 ヤマネコの瞳はイエネコのように縦長ではなく丸みがあります(トラはまん丸)。
 天然記念物。かなり減少しているといわれています。なんとか保護して増やしたいものです。

イリオモテヤマネコ イリオモテヤマネコ


ネコ科 イリオモテヤマネコ
 頭胴長55cm、尾長23cm。
 イリオモテヤマネコが発見されたとき(1965年)のことは子どもながら覚えています。
 地元の人は“ヤママヤー”とか“ヤマピカリャー”という名で呼び、知っていましたが、学者はイエネコの野生化したものと思って、まさか新種のヤマネコだとは思わなかったそうです。
 中型哺乳類の新種が、どこでも開発されつくされたと思っていた日本の、しかもかなり狭い西表島で、20世紀後半までひっそりと生きつづけていたわけです。
 原始的な特徴を残すヤマネコだそうで、胴長短足の親近感をおぼえさせる体形です。
 特別天然記念物。発見されてすぐ絶滅なんて悲しいことになりませんように。

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