KhasyaReport ひなたやまカフェ 035  ひなたやまカフェIndex

北極、壊れたの?


北極渦崩壊元年、ブラウン・ライスをインド・スリランカ料理研究家の香取薫さんからお裾分けでいただいた。香取さん、おまけに”もだま”さんが石垣島で作ったランペも付けてくれた。雪に囲まれる正月は熱帯の恵みで祝おう。


 2017年11月のこと、今期の冬は寒くて雪が多くなる、それはラニーニャの影響である、と日本の気象担当官庁がお触れを出した。米国気象センターではラニーニャが寒波と雪をもたらすと、10月中ごろに言っていた。
 でも、その後にアメリカ大気研究センターAERが2018年1月中旬まで米国中部・東部に寒気が居座れば北極振動Arctic Oscillationが北半球を覆う気象異常を起こしたことになるという報告を個人名で出した。この報告、グーグルに残っているけど、AERのサイトからは姿を消している。


 クリスマスの前になると米国の気象予報各社は「北極爆発でアメリカは極寒になる、南部で雪が降るかもしれない」と警告を鳴らしていた。国営の予測ではラニーニャが寒波と雪をもたらすはずだったけど、12月も終わりになったら気象予報各社が米国の寒波は「北極爆発Arctic blast」によると口をそろえ出した。彼らが「爆発blast」と呼ぶのは「北極振動Arctic Oscillation」という気象用語の言い換え。北極高層大気の渦巻きポーラー・ヴォルテックスpoler vortexが弱まって地球の北半球の中緯度、カナダから米国北部東部にまで北極の風が舞い降りた。

ラニーニャは悲しい

 ポーラー・ヴォルテックスPVは日本では当初、「極循環」と名づけられていたけど、いつの間にか「極渦」と気象業界で名を変えた。南極PVの渦型は西から東にきれいな円形で回っているけど、北極PVの渦型は「振動」を起こしてS字蛇行する。その極渦の降りてくるところが「寒波」というやつで、これで気象予報士の言う寒波の正体がやっとわかった。
 今シーズン、崩れたポーラー・ヴォルテックスのターゲットはアメリカと日本だった。ラニーニャが帰って来た、なんておちゃらけなタイトルで気象予報士がブログして余裕の冬を迎えた米国だったけど、実際はAERの或る人が予測したとおりの冷酷なアナ雪・ワンダーランドの結果となった。

 バージニア州で発行されているロアノーク・タイムス。この地方紙の気象予報ブログは1昨年末、「クリスマスには雪なんて期待できないね」、暖かな冬だから、と書いていた。ポーラー・ヴォルテックス(PV)の寒波なんてありゃしないよ、ともDec 21, 2016。でも、それがクリスマス明けにはポーラー・ヴォルテックスの寒波が降りてくると予測せざるを得なくなった。「寒くならない」と強気だったけど。
 でも、北極、壊れた。今年1月4日、「骨まで凍る寒気がロアノークを包む」というコピーがロアノーク・タイムスの1面に現れた。ポーラー・ヴォルテックスの破綻だ。共和党支持者と白人が作る温暖な田舎町。大学誘致、軍施設誘致に加えてリタイヤ年金族誘致で青い山脈の幸福を起死回生するすてきな田舎町のはずだったが。PVも酷なやつだ。

   極東の島国も今冬の寒気と多雪はラニーニャのせいと昨年秋に宣言したから、なかなか気象予報士も北極の「大きな」渦の異変には触れたがらないなと思っていたら、地上波フジの朝のワイド・ショーの予報氏が1月最初の金曜日放送で北極渦のイラストをTVモニターに映していた。ほほう、北極の極寒低気圧、真っ二つだ。米国本土を襲った極渦が来週には日本に襲い掛かってくるとか。次はどの気象予報士がPVに触れるだろう。ラニーニャ、悲しい。

 赤道直下のスリランカではポーラー・ヴォルテックスなど無縁だ。でも、この言葉が報道畑を始めて飛び交った年、スリランカのサンデー・タイムスも「北極高層大気の渦巻きpoler vortex」を扱ったことがある。「極渦がナイアガラ瀑布を凍らせた」というロンドンのデイリー・メールの記事を転載した2014-jan-12。赤道直下のランカー島。ヌワラエリヤに朝霜が降りることはあっても、北極とか、極寒の旋風とか、何のことやらわからない。エルニーニョが熱帯の驟雨をスリランカにもたらして山中の村を飲み干すことがあっても、北極の渦など話題になりようがない。



 

ブラウン・ライスを炊いて、ふっと思った。

写真奥の右。ブラウン・ライス。左にハールマッソー。
手前はポル・サンボールの準備。
転がっているのはココナツ、ライム、赤たまねぎ。

 思いもしない極渦にはまってしまったけど、いろいろ取りざたされるようになったブラウン・ライスをインド・スリランカ料理研究家の香取薫さんからお裾分けでいただいた。北極から赤道に気が向いてゆく。香取さん、ブラウン・ライスのおまけに”もだま”さんが石垣島で作ったランペも付けてくれた。完璧じゃん。この南国趣味には食指が動く。
 ブラウン・ライスを炊く。熱帯地方のご飯だ。ネットのいろんなサイトやユーチューブでは「ブラウン・ライスの炊き方」と題してあれこれ丁寧に教えてくれるけど、何であんなに小難しく炊くんだろう。
  私はスリランカの赤生米を炊く要領でブラウン・ライスをザザッと炊く。 「赤・生・米」はシンハラ語のラトゥ・カクル・ハールをそのまま訳したのだけど、これはブラウン・ライスのこと。シンハラ語の色彩言語では「茶」を「赤」として捉える。
 土鉢にブラウン・ライスを入れる。目分量で米の体積2倍強の水で炊く。水の量は大体でいい。火加減も適当。でんぷんが糊化するのは加熱20分ほどが相場だから、その頃に炊いた米を指にとって口に入れて噛んでみて程よい加減なら火から降ろす。ご飯が炊けた時点で湯が多ければ投げ捨てる。足りないようなら水を少々加える。ざっくばらんでいい加減。それでもご飯は炊ける。生米じゃなくて「茹で米」を炊くなら、もっとざっくばらん。何をどうやっても「茹で米」は炊けてしまう。
 あっ、茹で米のときはランペを必ず。忘れずに。
 
 でも、日本の玄米はそうはいかない。ハイテク技術を盛り込んだ高価な炊飯器で炊かなくてはいけない。日本米特有の長いでんぷんの鎖を解きほぐして美味に変えるためものすごいテクニックを炊飯器は使いこなすらしい。
 南国ブラウン・ライスの炊飯にハイテクは要らない。それなのに、日本でブラウン・ライスを炊くとなると、ブラウン・ライスは玄米だという能書きが染み出して腫れ物に触る日本のハイテク技術を陳列させなければならない。
 スリランカのブラウン・ライスの炊き方は「湯取り法」に分けられる。日本のハイテク玄米炊飯は「炊き干し法」だ。これがご飯の炊き方にも栄養にも徹底的な違いを生むと、人は言う。「湯取り法」だと炊いた湯を捨ててしまうから栄養価も流れてしまう。ビタミンBやミネラルが捨て去られる。だから「炊き干し」にしようと言うのだけど、そもそもご飯からビタミンBとミネラルを摂取しようという考えがせせこましいと言う人もいる。
 「そのミネラル、消化吸収されないわよ」、と言うのだ。「私、ご飯で育ったからどうしてもご飯の味が忘れられないの。でも、ご飯から栄養を摂るなんて考えない。ご飯を摂る。それは私の好みだから。どうしてもご飯から豚民やマグネシウムを取りたいなら強化米が断然有利」と言う。それ、間違ってないと思う。

 思うのだけど、食の基本って「おいしい」だけでいい。あんまりノーガキっていらない。ノーガキで「湯取り」のこと云々されるといやになるし。
 ただ「おいしい」「うまい」だよ。
 でも、グルメ番組で「う・ま・い!」とタレントさんが吼えるのは、わりゃあ、食番組グルメ出演に食傷しているんじゃい、と聞こえるけど。

ブラウン・ライスとハールマッソー。シンプルで健康志向。たまたま村の小学生が4人訪ねて来たので指食を教えた。指で食べる。これがうまい。

  2018-Jan-06


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