KhasyaReport さとやま食らいふ 021 2016-Apr-09

なんでここにシンハラ文字…?

ニュージーランドのフォンテラ社クリームチーズ。なぜか大きくシンハラ文字が…。ක්‍රීම් චීස් クリーム・チーズとシンハラ文字で書かれたパッケージ右下には「正味1キログラムශුද්ධ බර :1කි.ග්‍රෑ 」と、これもシンハラ文字。でも、なんでここにක්‍රීම් චීස් (クリーム・チース)のシンハラ文字が並んでるの?

  一面ぶどう畑のなだらかな丘があった。ここを山形県のふたつの市がURに委託して住宅地に変えた。この丘に小学校がつくられ公園が整備され、新興の民家もやたら建つようになって、見る見るうちに日本ならではの電柱がごちゃごちゃした住宅街が誕生した。その端っこにシアトル生まれのコストコが倉庫を構えた。そのコストコへ降りて行ってクリームチーズを買った。フォンテラ社のアンカー・ブランド1キロ入りのクリーム・チーズ。このパッケージにシンハラ文字が並んでいる。ええ、なんでニュージーランドの酪農会社のパッケージに、
ක්‍රීම් චීස් (クリーム・チース)
のシンハラ文字が並んでるの?


コストコのシンハラ文字

 日本の東北の山の上に突如、ホール・セールスの倉庫を開いたコストコ。そのアメリカスタイルの卸店舗でアメリカとは縁が薄いスリランカのシンハラ文字に出会うなんておどろいた。
 倉庫の奥の大型冷蔵庫にニュージー・ランドのアンカー社チーズのパッケージがある。そこに、

ක්‍රීම් චීස් (クリーム・チーズ)

とシンハラ文字があって、
ශුද්ධ බර :1කි.ග්‍රෑ (正味1キログラム)

と並んでる。なんでだ!?

 でも、そういえばアンカーのロゴはスリランカで見かけていたっけ、とコストコから車を走らせて山里の家に帰り途中に思い出した。
スリランカでは道路沿いに、
කිරි බොමු ! (ミルクを飲もう)

のキャッチで大きな看板が建っている。これって関係あるの?
 タブレットでanchor と sri lanka でキーワードを入れてググル先生に検索掛けたら、フォンテラ社がガンパハ近くの村で粉ミルク工場を経営していて事件が起きた、と出てきた。
 2013年のロイター記事がこう伝えている。どくろマークのプラカードを掲げたスリランカの婦人たちがガンパハの近くの村にある工場にデモを掛けた。ジシアンジアミドDicyandiamideが粉ミルクから検出されたようだというスリランカ政府衛生当局の告発とも言える発表があったからだ。
 裁判所は工場の一時操業ストップを命じて調査を行った。ジシアンジアミドは猛毒の農薬の成分でメラミンになり中毒を引き起こす。
 中国では2008年にメラミンの中毒事故をフォンタナ社傘下の地元サンルー社が起こしている。スリランカの消費者は敏感にならざるを得ない。中国と濃密な関係にあった剛腕マヒンダ大統領が様々なスキャンダルを起こしていた時代のことだった。
 ロイターが報じるスリランカのメラミン事件は結局、ジシアンジアミドはアンカー社ガンパハ工場の粉ミルクから確認できなかったと裁判所が判断を下して、その粉ミルク工場の操業再開を命じ、騒動は終息した。後日談だが、このメラミン騒動の翌年からフォンテラ社はスリランカの小学校へ無料ミルクを提供したり、また、来年にかけてのことになるが酪農家への援助を強化するなどスリランカ農業への振興策を強化することになった。

 コストコ倉庫の冷蔵庫にはフィラデルフィアやキリのチーズも並んでいる。でも、アンカーのシンハラ文字は私に強烈だった。この文字列が目に、真っ先に飛び込むのも、そりゃあ仕方がない。私、スリランカ熱だもの。

 クリーム・チーズは料理の素材だ。これにカボチャの水煮を漉して合わせて朝食の一品に加えることにした。
フォンタナのクリーム・チーズにカボチャの水煮を合わせて練り込む。練り込んだらインドラ神が暮らすメルの山の頂のように先をとんがらせて皿に盛る。これでカボチャのクリーム・チーズにヒンドゥ神話が乗り移る。
 小井戸の自家製カボチャは冬に食べつくしてしまったから春から秋まではニュージーランド産のカボチャのお世話になる。これをシンハラ語のクリーム・チーズで練って包む。練り合わせたら野菜ジュースで硬さを調節してブラジルのライムで調味する。ライムは手のひらに包んで絞るから、スリランカで朝食を指食したときの匂いが鼻先に広がる。
 


ひなたやまカフェ スリランカ料理道案内index

アマゾンで丹野冨雄の本を探す

アマゾンでKhasyaReportのシンハラ語本を探す