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spur 1990-10月号

TOMOCA トモカ
 素朴だけど味わい深い…
 スリランカ料理は遠い太古の味がする

 元気のいいエスニック料理に
探検気分で挑戦する
 
Spur Eye



 旅をして未知の文化に出会うと、胸がどきどきする。エスニック料理を食べる時に感じるスリリングなときめきも。ちょうどその感じ。だから、日本風にアレンジされているものは避け、まだ味わったことのない味を探検したい。

 指で混ぜ合わせたライスと具を口に運ぶ。その途端、古い仏教文化と英領だった頃のコロニアル文化、そして豊かな自然と共存する国スリランカの空気に包まれる。ここが日本だなんて忘れてしまえる。
 インドのカレーとは一味違う。たとえば鮮やかなオレンジ色の「ポル・サンボール」は、ココナツとカツオブシと玉葱に、ライムとチリを入れてペースト状に練った物。「バラマールのアンブルティアル」はスパイシーなカツオの角煮のようだ。
 「おいしいカレーを求めてスリランカへ行ったら、こんな素朴な料理ばかりだったんです」
 丹野冨雄さんは、その素朴さにぞっこん惚れ込んで、この店を7年前に開店。年に一度、スリランカに材料の調達に出掛け、頑固にスリランカの味を守っている。 カメラ/高橋武史 イラスト/ヨコタ ユリコ


ココナツ、ポテト、カツオ、じゃこ、ナス、豆などを使った料理7種とアーッパと呼ばれる米の粉のパン、そしてライス、セイロン・ティのディナーコースは3600円
東京都新宿区四谷1の7の27、第43東京ビル JR四谷駅から、しんみち通りを入って約60㍍、徒歩3分 電話**** 営業時間 18時~22時(21時ラストオーダー) 日曜、祝日休み 



SPUR 1990年10月号


【解題】
 取材のあとには料理を食べて紅茶を飲んでいただくというルールがあって、それにOKをいただいた方に営業時間を外した午後に店を訪ねていただく。料理の料金はもちろん、ちゃっかりといただいた。
 SPURの取材は面白かった。
 イラストレーターのヨコタユリコさんはバティックと古い振り子時計と水牛の角をおとぎ話のように描いた。それはヨコタユリコさんが坐った席の正面に見える風景だ。
 アンブルティヤルという調理をトモカで、スリランカの昔のままに再現しようとした。
 どんな取材でも必ずアンブルティヤルを試食してもらったが、SUPURの取材ではこの南国の島の魚料理が気に入ってもらった。かなり反応がよかったと記憶している。

 バラマールのアンブルティヤルはスリランカのどこで食べてもその味が違っている。もともとは保存食でカツオの角煮を水分が消えうせるほどに焼いてカラカラにする。ところがスリランカの食文化はそうした伝統の保存食を捨て去っていた。レストランではそつのない酸味を聞かせてしっとりとアンブルティヤルを仕上げているし、家庭では、もう、作る人もいない。アンブルティヤルの缶詰を見かけたので食べてみたが、胡椒の風味はおろか、ゴラカの酸味さえない粗悪品だった。

 素朴。深い味わい。太古の味…記事のタイトルになった三つのキーワードはTOMOCAのアンブルティヤルに、ごく自然にそう感じていただけた。
 料理を召し上がった後には紅茶。スリランカの紅茶の濃厚な香りに触れてカメラの高橋武史さんがびっくりしていた。
 TOMOCAのイラストに振り子時計が踊っている。Made in Occupied Japanの柱時計。これってスリランカじゃない、日本のじゃないのって、そうなんだけど、同じ代物がヒッカドゥワの丘の上の骨董品屋にある。そこには占領下日本の皿も転がっていて、床に山と詰まれた古皿をひっくり返して高台の中にMOJの文字を探すと、たまにお目当ての皿がまぎれていたりする。漱石のライスカレーをこしらえたとき、そのスリランカのMade in Occupied Japanに魚カレーを載せてみた。漱石の時代にそんな皿はなかったけれど。
 連合軍占領下の6年間、日本のあの刻印を持つ産品がセイロンの港にも陸揚げされたのだろうか。皿は完全品が探せるがMade in Occupied Japanの柱時計はどこの古道具屋を覗いても針の動かない壊れ物ばかりだった。


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