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JTB MOOK 味覚シリーズ12 スパイスの本 豊かな香りでヘルシーライフを 1990年

少量多品目の料理をチョイスしながら食べるのが
スリランカ流
トモカ(スリランカ料理)



 JR四谷駅前、「しんみち通り」は居酒屋などの大衆的な飲食店が集まり、夜ともなると賑わいをみせる。そんな中で、本格的なスリランカ料理を作り続けて7年。本国の人々にも評価が高いのが『トモカ』だ。店内やベランダには、所狭しと植物や民芸品が置かれ、まさしく現地を訪れた気分にさせてくれる。わずか10席ほどの小ぢんまりした店らしく、経営者の丹野夫妻の温かな応対があるのもこの店の魅力だ。
 スリランカといえばインドに近いので、カレー料理がその代表と思っている人も多いのでは……。もちろんシナモンやカルダモンはどの香り付けの料理にもスパイスを多く使用するが、カレー仕立てのものはごく一部、「カレーという言葉はスリランカにはないんですよ」と丹野さんは言うから驚きだ。料理の大半にはココナッツミルクやカツオブシが使われるので、マイルドに仕上がっているものが多い。カルダモン、クローブ、サフランを入れて炊き上げたご飯に、いろいろな料理を少しずつ混ぜ合わせて食べるのがスリランカ流のやり方。
 トモカのメニューは3600円のコース料理のみ。そのかわり肉料理だけは数種類の中から選ぶことができる。丹野夫妻は毎年現地にスパイスや紅茶を買い付けに行っているので、スリランカのホットな情報を肴にして楽しめることうけあいだ。


【解題】
 「カレーという言葉はスリランカにはないんですよ」と丹野さんは言ったそうだが、正確には、
「カレーという言葉はシンハラ語じゃない。カレーは、え・い・ご」
なのだ。そうだから、英語としてのカリcurryはある。だから、彼らがカリと呼ぶときの料理はスリランカで食べても英国料理だ、なんて、そんな七面倒な言葉の理論武装をこねくり回したりしたら、いや、まだまだ、ここにタミル語がかかわって「カリ」はもともとタミル語だ、なんて始まったら、料理そっちのけで不毛なカレー論争が立って料理の民族紛争が起こって、料理がどんどんまずくなる。
 なんせ、カレーは今や、最も典型的なジャパニーズ・フーズだ。日本をしのぐカレーのアルゴリズム展開を果たしたカレーの国はない。日本にはカレーという唯一の頂点があって、そこへ行く道も、複雑な工程、材料があっても、効率的な方法がひとつ、決まってる。なんてことはスリランカにはない。だから、スリランカにカレーはない。

 まあ、んなこたぁ、どうでもいい。能書きは要らない。うまい料理を食べましょう。
 ということで、スパイスのこと。
 カーダモン、シナモン、クローブ。どれも甘い香り。ケーキに欠かせない黄金の取り合わせ。ケーキばかりじゃない、スリランカのスパイス料理にも欠かせない。
 ここにもう二つのスパイスを加えておこう。コリアンダーとクミン。
 この二つはスリランカ民間療法の煎じ薬の王道を行くことになる。これを煎じて飲めばくしゃみ、鼻水、のど詰まり、風邪の諸症状なんかあっという間に飛んでゆく。大体、カレーの元がクスリで、カレーはその集合体だったなんて、信じられる?  


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