NIST News 2018年11月8日
台所用品は、抗菌ナノ粒子を使用後、放出するか?

情報源: NIST News: November 08, 2018
Do Kitchen Items Shed Antimicrobial Nanoparticles After Use?
Study Finds Very Low Amounts Released After Cutting, Washing or Scratching
https://www.nist.gov/news-events/news/2018/11/
do-kitchen-items-shed-antimicrobial-nanoparticles-after-use


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2018年12月25日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/nist/nist_181108_
Do_Kitchen_Items_Shed_Antimicrobial_Nanoparticles_After_Use.html


 抗菌性(antimicrobial)及び抗真菌性(antifungal)をもつので、米国以外(訳注1)ではそのサイズが 1〜100 ナノメートル(10億分の 1 メートル)銀ナノ粒子が食品接触材((FCMs)として知られる様々な台所用品中に導入されている。海外の市場にあるナノ銀をしみ込ませた食品接触材の中には、ヘラ、赤ちゃん用コップ、保存容器、まな板などがある。しかし、これらの製品の使用は、それらに含まれるナノ粒子が食品中及び環境中に移動し、その結果、人の健康にリスクを及ぼすのかどうかについての懸念を提起する。

 これらの問題に対応するために、世界中の政府機関がガイダンス文書を発表し、政策を策定し、規制を検討している。これらは、使用中又は使用後の実際の食品接触材((FCMs)ではなく、新しい未使用の消費者製品又は実験用代用物からのナノ銀の放出を検証した研究に大きく依存してきた。新しい論文の中で、米・医薬品局(FDA)、米・国立標準技術研究所(NIST)、及び米・消費者製品安全委員会(CPSC)からの科学者らは、消費者の使用方法がナノ粒子の放出に影響を与えるかどうかを見るために、ナノ銀含有のまな板の上での包丁の動き、洗浄、及びひっかき傷のつき方をどのようにまねたか記述した。

 NIST で開発されたテスト手法を使用して、5つの異なる”使用シナリオ”−それぞれが人の使用により共通にみられる摩耗の異なるタイプとレベルのシミュレート−が、ナノ銀導入まな板材の全サンプルについて、それぞれ 3 つのサンプルの表面を動かすことにより、実施された。

 研究者らは、彼らのテスト手法が、規制当局が食品接触材中のナノ粒子による安全又は健康リスクがあるかどうか同定し、もしリスクがあれば、それらが米国内での販売のために承認される前に適切に取り扱う方法を発見するのに役立つことを希望している。

 ”特注のカミソリの刃が包丁で切ることを再現し、スポンジタワシが通常の皿洗いを模擬し、タングステンカーバイドのバリが金属器具によるひっかき傷を真似た”と ジャーナル『Food Additives and Contaminants: Part A.(食品添加物と汚染:パート A )』に発表された論文の共著の一人である NIST の物理学者キアーナ C.K. スコットは述べた”。”洗浄とひっかきシナリオはひとつ又はふたつの摩耗レベルで実施された。例えばひっかきシミュレーションでは500サイクルと5,000サイクルが用いられた”。

 摩耗シミュレーションを実施した後、 NIST の研究者らは、はがれた銀ナノ粒子が存在するかどうか、そして摩耗したまな板サンプルから除去することができるかどうかを見るために、粘着テープを利用した。 NIST の走査電子顕微鏡法(SEM)及び金属イオンを検出するための極めて感度の高い手法である FDA の誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)は、まな板ポリマーの破片が摩耗により放出され、これらのあるものは埋め込まれていた銀を含んでいたことを示した。しかし、自由銀ナノ粒子は走査電子顕微鏡法(SEM)で検証したテープ上には見つからなかった。

 FDA の科学者らはまた、どのくらいの銀イオンと銀ナノ粒子が、もし存在するなら、水及び酢酸に暴露したときに、どのくらい、まな板から移行することがあるのかを調べた。彼らは、両方の溶液中で見つかったイオン状及び粒子状の銀の濃度は非常に低かったことを発見した。実際に、新しい未使用のナノ銀利用のまな板を、切り、洗い、ひっかかれたナノ銀利用のまな板と比べて、観察される銀の移行に認識できる相違はなかった。

 彼らの発見に基づき、NIST と FDA の研究者らは、将来の研究は使用シナリオの組み合わせが、放出される銀イオン又はナノ粒子の量を増やすことがあるかどうかを検証すべきと示唆している。例えば、ひっかき傷を与えた後、まな板を洗えば、恐らく異なる影響を示すであろう。

 ”我々は移行評価手法が機能することを示したので、その手法は、人々がナノ粒子を含む食品接触材類(FCMs)を使用した時に何が起きるかについての様々な疑問に答えるために役立てることができる”と、この論文のもうひとりの著者である NIST の化学者デービッド・グッドウィンは述べた。”これらの発見は健康又は安全リスクを決定しなくてはならない諸機関にとって価値のあるものにきっとなるであろう”。

論文: S. Addo Ntim, S. Norris, D.G. Goodwin, J. Breffke, K.C.K. Scott, L. Sung, T.A. Thomas and G.O. Noonan. Effects of Consumer Use Practices on Nanosilver Release from Commercially Available Food Contact Materials. Food Additives and Contaminants: Part A, October 23, 2018. DOI:https://doi.org/10.1080/19440049.2018.1529437


訳注1:アメリカにおけるナノ銀規制 訳注;当研究会が紹介したナノ銀関連情報


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る