Science News 2013年2月27日
銀ナノ粒子は環境に有害影響を与えるかもしれない
研究者等が模擬環境(メソコムス)で示す


情報源:Science News, February 27, 2013
Silver Nanoparticles May Adversely Affect Environment, Researchers Demonstrate
http://www.sciencedaily.com/releases/2013/02/130227183528.htm

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
掲載日:2013年3月12日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/news/130227_SN_silver_nano_ecosystem.html


【2013年2月27日】自然環境を模擬した実験で、デューク大学の研究者等は、多くの消費者製品中で使用されている銀ナノ粒子が植物や微生物に有害影響を及ぼすことができることを示した。

 科学者らが低用量の銀ナノ粒子を1回、施してから5日後、実験環境中の植物と微生物の生物量(biomass)(訳注1)が約3分の1、少なくなった。

 布製品、衣料品、子どもの玩具やおしゃぶり、殺菌剤、練り歯磨き等の中に見出される銀ナノ粒子の環境への影響については、ほとんど分かっていないので、これらの予備的な発見は重要であると、研究者等は述べた。

 ”環境中でこれらの粒子が及ぼす影響がどのようなものなのか誰も実際には知らない”とデューク大学の生物学部の博士研究員(ポスドク)であり、ナノテクノロジー環境影響センター(CEINT)のメンバーであるベンジャミン・コールマンは述べた。

 ”我々は、規制当局が銀ナノ粒子曝露による環境へのリスクを決定するのに役立てることができるデータを得ようと努力している”と、コールマンは述べた。

 今までの研究は、実験室での高い濃度のナノ粒子を使用するものであったが、これについて研究者等は、現実の世界の状況を表していないと指摘している。

 ”実際の曝露は低濃度で起こるであろうし、多様な微生物が存在する実際の生態系に、実験室での研究結果を当てはめるのは難しい”と、コールマンは述べた。

 銀ナノ粒子は、バクテリアを殺し、不快な臭いを防ぐことができるので、消費者製品中で使用されている。銀ナノ粒子は、微生物の細胞膜にDNA損傷を引き起こすが、人の細胞には引き起さない酸素フリーラジカル(訳注2)を生成することを含んで、様々なメカニズムで作用する。

 これらの粒子が環境中に入り込む主要な経路は下水処理施設の副産物である。ナノ粒子はフィルターで捕捉するには小さすぎるので、それらは他の物質と共に下水処理”汚泥”に堆積し、その後、肥料として地表に撒かれる。

 彼等の研究によれば、実際の環境を代表するような様々な植物や微生物を含む小さな人工の構造物メソコムス(mesocosms)を研究者等は造った。彼等は、いくつかのメソコムスに低用量の銀ナノ粒子を含む汚泥を施した。

 この研究は、ジャーナル『PLOS One』 2月27日オンライン版で発表された。

 研究者等は、メソコムスでナノ粒子の汚泥を施されたアシボソ(イネ科 )と呼ばれる一年草の生物量が32%少なくなったことを見出した。微生物もまた、ナノ粒子により影響を受けたとコールマンは述べている。微生物が外部ストレスへ対処するのを助けることに関連するある酵素は、活性度が52%低下し、一方、細胞中のプロセスを制御するの助けるもうひとつの酵素は、活性度が27%低下した。微生物の全体的生物量もまた35%低下したと、彼は述べた。

 ”我々の実地研究(field studies)は、汚泥有機肥料により施された単回低用量の銀ナノ粒子への植物と微生物の有害反応を示した”とコールマンは述べた。”毎年生成される汚泥バイオ固形物平均560万トンのうち推定60%が様々な理由で陸地に施されるが、これは自然生態系の工業用ナノ粒子への重要であるがまだよく分かっていない曝露経路となる。”

 ”我々の結果は、実際にあり得るであろう濃度で加えられた汚泥バイオ固形物中の銀ナノ粒子は、生態系レベルの影響を引き起こした”とコールマンは述べた。”特に、酸化窒素の流れを増やすナノ粒子は、地上の植生への種固有の影響はもちろん、微生物環境の構成、生物量、細胞外酵素作用を変更する”。

 研究者等は、銀ナノ粒子の長期的な影響を研究することと、どこにでも存在するもうひとつのナノ粒子である二酸化チタンを検証することを計画している。

 ナノテクノロジー環境影響センター(CEINT)の研究は、国家科学基金と環境保護庁から資金を得ている。


訳注1:生物量(biomass)
バイオマス/ウイキペディア
バイオマス (biomass) とは生態学で、特定の時点においてある空間に存在する生物(bio-)の量を、物質の量(mass)として表現したものである。通常、質量あるいはエネルギー量で数値化する。日本語では生物体量、生物量の語が用いられる。

訳注2:酸素フリーラジカル
活性酸素



化学物質問題市民研究会
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