SAFENANO News 2014年9月5日
食品包装産業における
ナノテクノロジーについて知っていますか?


情報源:SAFENANO News, September 5, 2014
In the know… on nanotechnology in the food packaging industry
http://www.safenano.org/news/intheknow/in-the-knowon-food-packaging/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2014年9月29日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/safenano/140905_nano_food_packaging.html


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 ナノ物質は、包装材料に組み込むことができる広範な高度の機能特性を持つために、食品包装産業でますます多用されている。ナノテクノロジーが可能とする食品包装は一般的に3つの主要なカテゴリーに分類することができる(Silvestre et al. 2011; Duncan et al. 2011)。
  • 改善された包装:ガス遮断特性、及び包装の温度と湿度耐性を改善するために、ナノ物質がポリマーマトリクスに混入される。

  • ”活性”包装:製品のより良い保護を可能とするために、ナノ物質を使用して食品又は環境と直接相互作用させる。例えば、銀ナノ粒子及び銀のコーティングは抗菌特性をもたらし、酸素又は紫外線スカベンジャーとしてのその他の物質とともに使用される。

  • ”知的(インテリジェント/スマート)”包装:食品中の生物化学的又は微生物学的変化を検出するように設計されている。例えば、食品中で増殖する特定の病原体、又は食物腐敗による特定のガスを検出する。ある”スマート”な包装はまた追跡装置として、又は模造品を回避するために使用するよう開発されている。

消費者の安全を確保する・・・

 消費者の安全という観点から、包括的なリスク評価のための包装材中成分の食品への潜在的な移動の分析評価と、それらの潜在的な有害性(ハザード)評価が重要である。しかし今日まで、ナノ物質の摂取の影響、又はナノ物質ベースの食品接触材料(FCMs)と食品との潜在的な相互作用について発表された研究は非常に少ない(Silvestre et al. 2011)。ヨーロッパの規則では現在、FCMs から食品に移動することができる全ての物質に対して、表面積(10cm)2当たり成分10mgの移動量制限値を適用している((Commission Regulation (EU) No. 10/2011)。食品1kgを含む1リットルの立方体の包装について、これは食品1kg当たり60mgの物質の移動に等しい。しかし、特に規則の Annex 1 にリストされているいくつかの物質を例外として、リスク評価は個別に実施されなくてはならない(Silvestre et al. 2011; Commission Regulation (EU) No. 10/2011)。

移動の可能性に関する研究・・・

 Echegoyen et al. (2013) は、移動する銀の形状(イオン又は粒子)を含んで、3つの異なるタイプのナノ複合体(nanocomposites)から模擬食品への銀移動を研究した。彼らの結果は、銀は模擬食品に移動し、酸性の食品は最も高い移動レベルであったことを示した。さらに、加熱は移動を増大し、マイクロ波による加熱は古典的なオーブンより多くの移動を引き起こすことが観察された。著者らは、銀の移動は二つの異なるメカニズム、すなわちナノ粒子のコンポジットからの分離、又は銀イオンの酸化溶解、を通じて起きるのであろうことを示唆している。

 Cushen et al. (2013) は、食品包装での抗菌特性のために使用されるナノ複合体(nanocomposites)からの銀と銅の移動を研究した。著者らは、ナノ複合体(nanocomposites)中のナノフィラーのパーセントは、移動を促進する最も重要なパラメータのひとつであり、粒子サイズ、温度、又は接触時間より重要であることを示した。著者らは、食品包装からの粒子の移動を研究するためにひとつのモデルを開発した。このモデルは、ナノ銀の食品中への移動レベルの良い指標であるが、ナノ銅については劣る。さらに開発され検証されれば、産業にとっては通常は移動研究に費やす時間とコストを削減できて便益をもたらすであろう。

 もっと最近では、食品接触材料(FCMs)として使用される有機化粘土ポリ乳酸(organo-modified clay polylactic acid)ナノ複合体の移動と毒性学的特性が分析評価された。移動研究は、実験条件下で水中でのナノ複合体移動は、(10cm)2当たり10mg 以下であることを示した(Maisanaba et al. 2014a)。さらなる模擬食品の分析は、測定された金属のレベルは許容レベル以下であることを示した。さらに、著者らは生体外(in vitro)及び生体内(in vivo)で移動抽出物の潜在的な毒性を分析した。消化器系の代表的な二種類の細胞に関する生体外(in vitro)の移動抽出物の潜在的な細胞毒性、及び DNA 変異を引き起こす能力の評価は、コントロールと比べて生体外(in vitro)毒性のどのような証拠をも示さなかった(Maisanaba et al. 2014a)。さらに、飲料水中における同じ移動抽出物へのラットの90日間暴露は、酸化ストレス、炎症、臨床的バイオマーカー、及び病理組織学的分析という点で、毒性の証拠を示さなかった(Maisanaba et al. 2014b)。

今後の方向性・・・

 これらの研究は、ナノ物質が、複合材中に存在するナノフィラーのパーセントに潜在的に関連する移動の割合で、食品接触材料(FCMs)から食品中に移動する可能性を示している。食品包装産業におけるナノテクノロジーの安全な開発を確実にするために、さらなる移動と毒性学的研究の必要がある。

 SAFENANO は現在、EU FP7 NanoSafePack プロジェクトを通じて包装中のナノ物質の毒性学的影響と移動の可能性を評価する研究に関与している。 SAFENANO の Hazard Assessment & Toxicology Testing Services に関するさらなる情報はここをクリック

参照



化学物質問題市民研究会
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