FOOD productiondaily.com 2010年9月20日
食品業界の見解
ナノ定義は法的な地雷原であると科学者らが警告
エライン・ウェストン

情報源:FOOD productiondaily.com, 20-Sep-2010
Nano definition is a legal minefield, warn scientists
By Elaine Watson
http://www.foodproductiondaily.com/Quality-Safety/
Nano-definition-is-a-legal-minefield-warn-scientists


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
掲載日:2010年10月8日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/news/100920_Food_Nano_definition.html


 先週、レザーヘッドで開催されたナノテクノロジー・ワークショップに集まった専門家らによれば、食品製造者、規制当局、実施機関、消費者の全てを満足させるナノ物質の法的定義に合意することは非常に難題である。

 現在、EUにおける唯一のナノ物質の法的定義は化粧品規則(EC 1223/2009)に述べられており(訳注1)、その定義(ラベル表示目的)は、ナノ物質とは、”不溶解性又は生物蓄積性があり、意図的に製造されており、1又はそれ以上の外部次元又は内部構造が1-100ナノメートル”であるとしている。

 ”意図的に製造された物質で100ナノメートル以下のもの”とする二番目の定義は、修正版の新規食品規則(Novel Food Regulation)の最新版ドラフトに含まれたものであり、それはまた、ナノ物質は食品包装上にラベル表示されるべきことを要求しており、多くの製造者が反対しているものである。

 機能よりサイズに焦点を当てているように見える三番目の定義は、欧州委員会の”新規の及び新たに特定された健康リスクに関する科学委員会(SCENIHR)”によって展開されたものである。

 しかし、レザーヘッド食品研究所(Leatherhead Food Research)、ナノセントラル( NanoCentral)、及びナノテクノロジー・知識移転ネットワーク( Nanotechnology Knowledge Transfer Network)の主催で開催された先週のワークショップにおける科学者ら及び法律専門家らによれば、上記の全ての定義は問題がある。

ナノ定義はサイズに基づくべきか?

 もし、定義をサイズだけに特化するなら、ミルクからチョコレート至るまでの製品中の広範な完全に無害で自然発生のナノ物質を含むことになり、そのことは買い物客を混乱させ、有用な目的を提供できなくすると、レザーヘッド食品研究所(LFR)の微小物質コンサルタントのキャシー・グローブは述べた。

 そのように微小な物質をどのように正確に測定するかもまた、多くのナノ粒子の通常ではない形状と構造のために、難しい問題であり、食品中のそのような微小な要素のサイズと分布を決定する標準化され、確認された手法はまだない。

 一方、このスケールの物質を検証するために通常使用される装置、例えば、原子間力顕微鏡の利用は高価であり難しい。

 さらに、多くの物質中の粒子サイズはほとんど一定ではないので、多くの物質がナノスケールのある粒子を含むことになると彼女は付け加えた。”ナノ物質が何パーセントならナノなのか? 我々は含まれているかもしれないナノ粒子のラベル表示をしようとしているのか?”。

人工ナノ粒子を定義の仕方

 一方、’不溶解性(insoluble)’、’人工的(manufactured)’又は’工学的(engineered)’ナノ粒子という定義を構築する試みもまた、これらの言葉の正確な意味をはっきりさせることは法的及び科学的にも難しいので、厄介であると彼女は述べた。

 ナノ粒子が通常サイズの物質と’著しく’異なる振る舞いをするかどうかの論点に焦点を合わせた定義であっても、必ずしも役に立つわけではないと彼女は示唆した。”’著しく’の定義は何か?”。

ユニリーバ:定義はいくつかの要素を考慮すべき

 食品標準機関(Food Standards Agency)による最近のナノテクノロジーに関する円卓会議での議論において、ユニリーバ R&D の規制、消費者、持続可能性担当のディレクター、チャールスフランスワー・ガウデフロイは、ナノ物質の実行可能な定義を見つける時には、いくつかの要素が考慮される必要があると述べた。

 ”考慮されるべきことは、粒子サイズ;意図的な加工;食品中で使用されるナノ物質の摂取率;家庭及び個人用手入れ用品で用いられる物質の溶解性;非ナノ形状のものに比べてのナノ物質の特性である”。

 ナノのラベル表示については、実施する前にその目的を明白することが重要であると彼は強調した。”我々は、消費者にとって意味のある特定の情報を提供するラベル表示は支持する”。

上院議員クレブス:ナノ表示には何も利点はない

 最近の上院議会での議論において、食品標準機関の前議長である上院議員クレブスもまたナノ表示の将来性についての懸念を表明した。

 ”消費者が買い物をする時にそのような情報で何をするのか見えないので、ナノ物質を含む食品の表示には利点がない”。

 ナノ物質の法的定義については、サイズだけでなく機能にも焦点を合わせるべきである。すなわちナノスケール物質がヒトの体にとのように作用するかである”と彼は付け加えた。


訳注1
2009年11月30日欧州議会及び理事会 化粧品に関する規則(EC) No 1223/2009 ナノ関連抜粋

訳注:ナノ食品関連情報
訳注:"ナノ物質"用語定義関連情報



化学物質問題市民研究会
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